この章では、Oracle Fusion Middlewareの推奨されるバックアップ計画およびその手順について説明します。
この章の項目は次のとおりです。
第15.3.2項で説明するように、Oracle Fusion Middleware環境のバックアップでは次の推奨される計画を使用する必要があります。
オンライン・バックアップを実行する場合、バックアップが完了するまでは、いずれの構成も変更しないでください。WebLogic Serverドメインで変更が行われないようにするには、第3.4.2項で説明しているようにWebLogic Serverの構成をロックします。
Oracle Fusion Middlewareをインストールしたらすぐに、全体オフライン・バックアップを行います。全体バックアップの実行の詳細は、第16.3.1項を参照してください。
管理上の変更を行った後、および定期的に、ランタイム・アーティファクトのバックアップを実行します。ランタイム・アーティファクトのバックアップは夜間に行うことをお薦めします。ランタイム・アーティファクトのバックアップの実行の詳細は、第16.3.2項を参照してください。
アップグレードやパッチの適用、次のいずれかのファイルの変更など、大きな変更を行った後には、新たな全体バックアップを実行します。
MW_HOME/wlserver_n/common/bin/nodemanager.properties MW_HOME/wlserver_n/common/bin/wlsifconfig.sh MW_HOME/wlserver_n/common/bin/setPatchEnv.sh MW_HOME/wlserver_n/common/bin/commEnvg.sh
全体バックアップの実行の詳細は、第16.3.1項を参照してください。
Oracle Fusion Middleware環境の記録を作成します。第16.4項を参照してください。
バックアップを作成したら、そのアーカイブ・ファイルに一意の名前を付けます。名前に日時を付加することを検討してください。たとえば、Middlewareホームのバックアップを2010年3月20日に作成した場合は、そのバックアップに次の名前を付けます。
mw_home_backup_032010.tar
図16-1のフロー・チャートは、特定の状況に適したバックアップのタイプを判断する方法の概要を示しています。
次の点に注意してください。
LDAPのバックアップ: 組込みのLDAPを使用する場合、LDAPデータのバックアップ進行中は、セキュリティ・プロバイダの構成を更新しないでください。LDAPのディレクトリ・ツリーのバックアップ中に、管理者がユーザーを追加するなどの変更が行われると、ldapfilesサブディレクトリ内のバックアップに不整合が生じる可能性があります。LDAPのバックアップ手順の詳細は、『WebLogic Server Managing Server Startup and Shutdown』を参照してください。
永続ストア: 永続ストアは、WebLogic Serverの永続性が必要なサブシステムおよびサービスを対象とした、組込み型で高性能のストレージ・ソリューションです。たとえば、永続ストアには、永続JMS(Java Messaging Service)メッセージや永続サブスクライバ情報を格納でき、ストア/フォワード機能を使用して使用不可の宛先に送信されたメッセージも一時格納できます。永続ストアは、ファイルベースのストア(ファイル・ストア)またはJDBC対応データベース(JDBCストア)への永続性に対応しています。ストアのデフォルトのデータは、ドメインのルート・ディレクトリのサーバ名サブディレクトリ内のdata\store\defaultディレクトリに保持されます。
現時点では、JMSおよびトランザクション・ログを使用するシステムの場合、永続ストアの一貫性バックアップはとれません。これは、トランザクション・ログがファイルベースのみであり、これに対してJMSはファイルベースであるか、またはデータベース内にあるためです。信頼性を最大限に高めるために、JMSおよびトランザクション・ログ・ファイルの格納には、SANなど可用性が高くフォルト・トレラントのストレージを使用してください。
クラスタ化されたサーバーの場合は、Oracle WebLogic ServerによってTransaction Recovery Serviceも含め、障害が発生しているサーバーを新たなシステムに移行できます。サーバーを別のシステムに移行する際は、トランザクション・ログのレコードを探してトランザクションの完了またはリカバリができる必要があります。トランザクション・ログのレコードは、サーバーのデフォルトの永続性ストアに格納されます。
障害発生時にクラスタ化されたサーバーを移行する計画の場合は、障害が発生したサーバーの移行先となりうるシステムからアクセス可能な共有ストレージ・システムにレコードを格納できるように、デフォルトの永続ストアを設定する必要があります。信頼性を最大限に高めるには、SANなどの共有ストレージ・ソリューションまたは可用性が高くポイント・イン・タイム・リカバリに対応しているOracleデータベースを使用してください。このソリューションは、すべてのJMSモジュールにも推奨されます。
Audit Framework: Oracle Fusion Middleware Audit Frameworkを、データベースにデータを書き込むように構成している場合は、バス・ストップ内のローカル・ファイルはバックアップしないでください(各コンポーネントから発生する監査対象イベントは、バス・ストップと呼ばれるリポジトリに格納されます。Oracle WebLogic Serverには、それぞれ独自のバス・ストップがあります。データはこのファイル内に永続的に置くか集中リポジトリにアップロードでき、集中リポジトリからは、レコードを表示したりレポート作成に使用したりできます)。
ローカル・ファイルをバックアップする場合、重複レコードがデータベースにアップロードされます。つまり、バス・ストップの作成時にデータベースにアップロードされ、その後ファイルをリストアした時に再度アップロードされます。
バス・ストップのローカル・ファイルのデフォルトの場所は次のとおりです。
Javaコンポーネントの場合:
DOMAIN_HOME/servers/server_name/logs/auditlogs/component_type
システム・コンポーネントの場合(Oracle HTTP ServerやOracle Internet Directoryなど):
ORACLE_INSTANCE/auditlogs/component_type/component_name
Oracle Fusion Middleware Audit Frameworkおよびバス・ストップの詳細は、『Oracle Fusion Middlewareセキュリティ・ガイド』の監査の構成と管理に関する項を参照してください。
全体オフライン・バックアップを行うには、Oracle Fusion Middlewareのファイルが含まれているディレクトリをコピーします。
アーカイブ用のツールを使用して、ソースMiddlewareホームをアーカイブおよび圧縮します。使用しているツールが、ファイルの権限を保存することを確認してください。
Windowsでのオンライン・バックアップにはcopy、Windowsでのオフライン・バックアップにはcopy、xcopyまたはjarを使用します。
一部のバージョンのWindowsでは、ファイル名が256文字を超えていると失敗します。この問題が発生しないようにするには、次のスイッチを指定したxcopyコマンドを使用できます。
xcopy /s/e "C:\Temp\*.*" "C:\copy"
構文と制限の詳細は、xcopyのヘルプを参照してください。
Winzipは、長いファイル名や拡張子には対応していないため使用しないでください。
LinuxおよびUNIXの場合はtarを使用します。
UNIXでソースをアーカイブおよび圧縮する方法を、次の例で示します。
cd Source_Middleware_Home
tar cf - * | gzip > mw_home_backup_032010.tar.gz
ファイルの中にsticky bitに設定されているものがある場合、tarユーティリティは警告を発する場合があります。この警告は無視してかまいません。
ファイル・システムのアーカイブおよび圧縮には、jarユーティリティを使用しないでください。これによって、ORACLE_HOME/jdkファイルなど、開いているファイルの圧縮に関する警告やエラーがzipツールから表示されなくなります。
次の手順に従います。
Middlewareホームのプロセスをすべて停止します。たとえば、管理対象サーバー、管理サーバー、およびMiddlewareホームで実行されているOracleインスタンスを停止します。
すべてのホスト上のMiddlewareホーム(MW_HOME)をバックアップします。次に例を示します。
tar -cf mw_home_backup_032010.tar MW_HOME/*
ドメインがMiddlewareホーム内に見つからない場合は、管理サーバーのドメインを個別にバックアップします。これによって、Oracle SOA SuiteやOracle WebCenterなどのJavaコンポーネントがバックアップされます。
たとえば、次のように指定します。
tar -cf domain_home_backup_032010.tar domain_name/*
ほとんどの場合、管理対象サーバーのディレクトリを個別にバックアップする必要はありません。管理サーバーのドメインには管理対象サーバーに関する情報が格納されているためです。バックアップが必要なものの詳細は、第15.5項を参照してください。
Oracleインスタンス・ホームがMiddlewareホーム内に見つからない場合は、Oracleインスタンス・ホームをバックアップします。Oracleインスタンス・ホームには、Oracle HTTP ServerやOracle Internet Directoryなどのシステム・コンポーネントに関する構成情報が含まれています(システム・コンポーネントの一覧は、第3.5.2項を参照)。
たとえば、次のように指定します。
tar -cf sc_home_backup_032010.tar ORACLE_INSTANCE/*
管理対象サーバーがドメイン内に見つからない場合は、管理対象サーバーのディレクトリをバックアップします。たとえば、次のように指定します。
tar -cf mg1_home_backup_032010.tar server_name/*
OraInventoryディレクトリをバックアップします。たとえば、次のように指定します。
tar -cf Inven_home_backup_032010.tar /scratch/oracle/OraInventory
oraInst.locファイルおよびoratabファイルをバックアップします。これらのファイルは、次のディレクトリにあります。
/etc
Oracle Recovery Manager(RMAN)を使用して、データベース・リポジトリをバックアップします。詳細な手順は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。次のリンクから入手可能です。
http://www.oracle.com/technology/documentation/database.html
Windowsの場合は、次のレジストリ・キーをエクスポートします。
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\oracle
また、Oracle Web Cacheなどのシステム・コンポーネント用に、次のWindowsレジストリキーをエクスポートします。
HKEY_LOCAL_MACHINE\System\CurrentControlSet\Services
キーをエクスポートするには、次のコマンドを使用します。
regedit /E FileName Key
たとえば、次のように指定します。
regedit /E C:\oracleregistry.reg HKEY_LOCAL_MACHINE/oracle
キーのエクスポートにはレジストリ・エディタを使用することもできます。詳細は、レジストリ・エディタのヘルプを参照してください。
Oracle Fusion Middleware環境の記録を作成します。第16.4項を参照してください。
ランタイム・アーティファクトのバックアップは、定期的に、また第15.3.2項で説明している時点で実行する必要があります。
ランタイム・アーティファクトをバックアップする手順は次のとおりです。
バックアップの矛盾を防ぐために、バックアップが完了するまでは、いずれの構成も変更しないでください。WebLogic Serverドメインで変更が行われないようにするには、第3.4.2項で説明しているようにWebLogic Serverの構成をロックします。
管理サーバーのドメイン・ディレクトリをバックアップします。これによって、Oracle SOA SuiteやOracle WebCenterなどのJavaコンポーネントがバックアップされます。たとえば、次のように指定します。
tar -cf domain_home_backup_032010.tar MW_HOME/user_projects/domains/domain_name/*
Oracle Portal、Oracle Reports、Oracle Forms ServicesおよびOracle Business Intelligence Discovererの場合は、管理サーバーのドメイン・ディレクトリ以外にも、管理対象サーバーのディレクトリをバックアップする必要があります。
Oracleインスタンス・ホームをバックアップします。これによって、Oracle HTTP Serverなどのシステム・コンポーネントがバックアップされます。たとえば、次のように指定します。
tar -cf sc_home_backup_032010.tar ORACLE_INSTANCE/*
Oracle Recovery Manager(RMAN)を使用して、データベース・リポジトリをバックアップします。詳細な手順は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。次のリンクから入手可能です。
http://www.oracle.com/technology/documentation/database.html
Oracle Fusion Middleware環境の記録を作成します。第16.4項を参照してください。
Oracle Fusion Middleware環境のリストアおよびリカバリが必要な場合は、必要なすべての情報を入手し、対処することが重要です。これは、特にOracle Fusion Middleware環境全体(またはその一部)を新しいディスクまたはホストに再構成する必要があるような、ハードウェアの損失が発生した場合に当てはまります。
この項で説明されている情報を含む、Oracle Fusion Middleware環境の最新記録を維持管理する必要があります。この情報は、印刷物と電子形式の両方で保管してください。電子形式のデータは、Oracle Fusion Middleware環境とはまったく別のホストまたは電子メール・システム上に格納する必要があります。
Oracle Fusion Middlewareのハードウェアおよびソフトウェア構成の記録には、次のものが含まれます。
環境内のホストごとに次の情報が必要です。
ホスト名
仮想ホスト名(存在する場合)
ドメイン名
IPアドレス
ハードウェア・プラットフォーム
オペレーティング・システムのリリース・レベルおよびパッチ情報
環境内のOracle Fusion Middlewareインストールごとに次の情報が必要です。
インストールのタイプ(Oracle SOA Suiteなど)
インストールが常駐するホスト
Oracleホームを所有するオペレーティング・システム・ユーザーのユーザー名、ユーザーID番号、グループ名、グループID番号、環境プロファイルおよびシェル・タイプ(/etc/passwd
および/etc/group
エントリ)
ディレクトリ構造、マウント・ポイントと、Middlewareホーム、Oracle Commonホーム、Oracleホーム、Oracle WebLogic Serverドメイン・ホーム(Middlewareホームのuser_projectsディレクトリに配置されていない場合)およびOracleインスタンス・ホームのフルパス
インストールで使用されるディスク領域の量
インストールで使用されるポート番号
コンポーネントのメタデータを格納しているデータベースに関して、次の情報が必要です。
ホスト名
データベースのバージョンとパッチ・レベル
基本言語
キャラクタ・セット
グローバル・データベース名
SID