Oracle Applications概要 リリース12 E05390-02 | ![]() 目次 | ![]() 前へ | ![]() 次へ |
Oracle Applicationsの新規インストールの構成には、次の多くの段階があります。
目的の構成の作成に必要な情報の収集
適切なマシン上の正しい場所への構成情報の格納
適切な詳細を含むテクノロジ・スタック構成ファイルの作成
適切な詳細を含むApplications構成ファイルの作成
必要なすべてのプロセスの正しい順序での起動
AutoConfigは、Oracle Applications環境における構成管理タスクを単純化および標準化するツールです。リリース12の新規インストールには、AutoConfigが標準(かつ必須の)構成管理ツールとして含まれます。AutoConfigは、旧リリースのOracle Applicationsにも使用できます。
特定のOracle Applications環境に属するものとしてファイルを識別するためにシステム識別子(SID)が従来から使用されていた場合、E-Business Suiteリリース12などのAutoConfigにより管理されるApplications環境では、Applicationsコンテキストが使用されます。デフォルトのコンテキスト名は<SID>_<hostname>です(この章では<CONTEXT_NAME>としても参照されています)。
Applicationsコンテキストの使用には、多くの利点があります。
Applicationsシステムの全体的な管理が簡略化されます。
Applicationsサービスを容易に起動および停止できます。
サービスを他のサービスとは関係なくインストールまたは削除できます。
共有APPL_TOP環境とシームレスに統合されます(第9章「高可用性」を参照)。
構成管理にOracle Applications Managerを使用できます(第7章「Oracle Applications Manager」を参照)。
Real Application Clustersのサポートが容易になります(第4章「データベース機能」を参照)。
ApplicationsコンテキストおよびAutoConfigが導入される前は、構成管理タスクは時間がかかる場合があり、エラーが発生しやすく、場合によっては複数の構成ファイルに手動で変更を加える必要がありました。個々の構成ファイルはAutoConfig対応の環境でも使用されていますが、これらの構成ファイルは、Applications環境情報のXMLベース・リポジトリ(コンテキスト・ファイルと呼ばれます)に対する補助的な役割を果たします。
AutoConfigでは、構成情報が一元化されることで、テクノロジ・スタック・コンポーネントのアップグレードからApplicationsサービスの起動および停止に及ぶアクティビティの手順が簡略化されます。もう1つの利点は、AutoConfigで使用される各種ファイルを、標準のApplicationsパッチによって更新できるという点です。
Applicationsシステムのアプリケーション層およびデータベース層用に、別個のコンテキスト・ファイルがあります。
Applicationsコンテキスト・ファイル: Applicationsコンテキスト・ファイル(APPL_TOP/admin/<CONTEXT_NAME>.xml)は、AutoConfigでアプリケーション層の構成に使用される環境固有の詳細に関するリポジトリです。このファイルの情報は、Applications構成ファイルの生成および関連するデータベース・プロファイルの更新に使用されます。
格納される情報は、次のとおりです。
データベースの名称および場所
FormsサーバーおよびWebサーバーのポート番号
製品固有のポート番号
AutoConfigで管理されるアプリケーション層サービスに関する情報
コンテキスト・ファイルを構成するコンテキスト変数の値は、Rapid Installの実行時の選択により部分的に決定されます。たとえば、特定のアプリケーション層ノードがコンカレント処理サーバーとして使用されるように指定すると、必要なサービス・スクリプトを作成するように関連する変数が設定されます。
データベース・コンテキスト・ファイル: データベース・コンテキストファイル(<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/<CONTEXT_NAME>.xml)は、データベース層で同等の役割を果たします。このファイルの情報は、AutoConfigが次回実行されたときにデータベース層で使用される構成ファイルの生成に使用されます。
AutoConfig環境では、重要な構成および管理スクリプトが数多く使用されています。AutoConfigでは、これらのスクリプトおよび関連するファイル用に複数のディレクトリが作成されます。
UNIXでの主要なAutoConfig構成スクリプト(Windowsではコマンド・ファイル)は、次のとおりです。
adautocfg.sh: 特定の環境コンテキスト・ファイルの名称をadconfig.shに渡すラッパー・スクリプトです。
adconfig.sh: adautocfg.shにより起動されるスクリプトで、adconfig.plのラッパーです。
adconfig.pl: adconfig.shにより起動されるスクリプトです。このPerlスクリプトにより、実際の構成タスクを実行するJava APIがコールされます。
これらの構成スクリプトだけでなく、Applicationsシステムの管理に複数の追加AutoConfigスクリプトが使用されます。これらのスクリプトについては、「管理タスク」で説明します。
AutoConfigでは、次の表に示すように複数のディレクトリが作成されます。
ディレクトリ名 | ディレクトリの内容 |
<INST_TOP>/admin/install/<CONTEXT_NAME> | インストール・スクリプト |
<INST_TOP>/admin/scripts/<CONTEXT_NAME> | 管理スクリプト |
<INST_TOP>/admin/log/<CONTEXT_NAME> | ログ・ファイル |
AutoConfigは、インストールから保守まで、幅広いシステム構成アクティビティに使用されるため、AutoConfigの操作に関する次の説明は複数の項に分かれています。
コンテキスト値管理(CVM)は、コンテキスト・ファイル内の変数の値の管理と、必要な値の更新の自動化に使用されるAutoConfigコンポーネントです。CVMでは、アプリケーション層およびデータベース層の両方のコンテキスト・ファイルに対する更新がサポートされています。
CVMの処理は、次のとおりです。
コンテキスト・ファイルに新規変数を追加します。
既存のコンテキスト・ファイルに含まれる変数の値を更新します。
コンテキスト・ファイル・テンプレートの新規バージョンを適用します。
AutoConfigエンジンの起動前、たとえばtnsnames.oraファイルの生成時などに完了する必要があるスクリプトまたは構成ツールを実行します。
CVMは、Applicationsコンテキスト・ファイルが更新されたとき、ただしAutoConfigエンジン自体が起動する前に有効になります。これによりCVMは、ファイル・システム上の必要なファイルを操作するためのスクリプトまたはその他のツールを実行したり、必要に応じて適切な設定をファイル・システムおよびデータベースの両方に伝播することができます。たとえば、コンテキスト・ファイル内の値を更新し、この更新をファイル・システムに伝播することが可能です。
注意: AutoConfigは、Oracle E-Business Suiteのコンテキスト外に影響を及ぼす可能性があるオペレーティング・システム・レベルの操作など、すべての面の構成管理を実行するわけではありません。
AutoConfigのコア・コンポーネントと同様、CVMでは、次の表に示すように、アプリケーション層およびデータベース層の両方で構成ファイルが使用されます。
ファイルの場所 | 説明 |
<AD_TOP>/bin/adcvm.sh | CVMのメイン・スクリプト |
<AD_TOP>/admin/template/adcvmat.xml | アプリケーション層のCVM関連データを格納 |
ファイルの場所 | 説明 |
<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/bin/adcvm.sh | CVMのメイン・スクリプト |
<RDBMS_ORACLE_HOME>appsutil/template/adcvmdb.xml | データベース層のCVM関連データを格納 |
AutoConfigでは、前述したコンテキスト・ファイルおよび構成スクリプトの他に、構成管理アクティビティにおいて他の複数のタイプのファイルが使用されます。これらのファイル自体は、異なるカテゴリに分類できます。
テンプレート・ファイル
AutoConfigテンプレート・ファイルは、サイト固有の構成ファイルを作成するための第一歩として使用されます。AutoConfigでは、テンプレート・ファイル内のコンテキスト変数が評価され、必要な実際の値が決定され、さらにこれらの値に置き換えた構成ファイルが作成されます。このプロセスは後述しますが、インスタンス化と呼ばれます。各構成ファイルごとにテンプレート・ファイルが1つあります。テンプレート・ファイルは、アプリケーション層の様々な<PROD>_TOP/admin/templateディレクトリ、およびデータベース層の<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/templateディレクトリに置かれています。
AutoConfigで使用されるテンプレート・ファイルは、次のカテゴリに分類できます。
APPL_TOP構成ファイルのテンプレート: これらのファイルは、APPL_TOPの構成固有情報を必要とするファイル、またはApplicationsデータベースへの構成プロファイルのロードに使用されるファイルのいずれかです。
管理スクリプトのテンプレート: Applicationsで必要とされる標準プロセスをすべて実行するため、Rapid Installにより、これらの必要な各プロセスを起動および停止するスクリプトが作成されます。これらのスクリプトには、次の操作を実行するための構成情報が必要です。
プロセスごとの正しい環境の作成
正しいパラメータによるプロセスの起動
プロセスが正しいデータベース・インスタンスを指すよう設定(適用可能な場合)
ドライバ・ファイル
AutoConfigドライバ・ファイルは、対応するテンプレート・ファイルと場所をリストし、実行するコマンドを指定するために使用します。たとえば、コマンドによりプロファイル・オプションを更新する場合があります。
ドライバ・ファイルは、アプリケーション層の各<PROD>_TOP/admin/driverディレクトリ、およびデータベース層の<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/templateディレクトリに置かれています。
構成ファイル
httpd.confなどのAutoConfig構成ファイルは、AutoConfigによって対応するテンプレート・ファイルのインスタンス化の結果として作成されます。構成ファイルには、特定のサイトに対して指定された設定に対応する値が含まれます。AutoConfigが実行されると、多数の構成ファイルが様々なディレクトリに作成されます。
図5-1に、AutoConfigで使用する異なるタイプのファイルの関連を示します。
図5-1 AutoConfigファイル間の関連
前述のように、インスタンス化とは、AutoConfigにより、特定の環境にあわせて内容がカスタマイズされた構成ファイルが作成されるプロセスです。AutoConfigを使用してファイルまたはスクリプトをインスタンス化してから、インストールおよび構成用にこれらのファイルまたはスクリプトを実行できます。
インスタンス化の例を次に示します。
実行時に使用される構成ファイルのインスタンス化
プロファイル・オプションを設定するためのSQLスクリプトのインスタンス化
SQL*PlusでSQLスクリプトを実行するためのシェル・スクリプトまたはWindowsコマンド・ファイルのインスタンス化
アプリケーション層サービスを起動および停止するためのスクリプトのインスタンス化
adautocfg.shスクリプトにより、構成ファイルおよびプロファイル・オプションが次のように更新されます。
関連するコンテキスト・ファイルからインスタンス固有の値を導出して、テンプレート・ファイルをインスタンス化します。
カスタマイズ内容をコピーします。
新規にインスタンス化された構成ファイルで既存の構成ファイルを上書きします。
データベース・プロファイル・オプションを更新するためのSQLスクリプトを実行します。
テンプレート・ファイルとドライバ・ファイルの役割
AutoConfigでは、必要な基本設定を決定するために様々なテンプレート・ファイルが使用されます。各構成ファイルに1つのテンプレート・ファイルがあります。UNIXとWindowsでは、異なるバージョンのテンプレート・ファイルが存在します。例として、httpd_ux.conf(UNIX)とhttpd_nt.conf(Windows)、およびadfrmctl_ux.sh(UNIX)とadfrmctl_nt.cmd(Windows)があります。
ドライバ・ファイルには、コンテキスト変数を置換する必要があるファイルの名称と場所がリストされます。また、ドライバ・ファイルにより、インスタンス化が分割されるフェーズが定義され、特定の製品に対して実行されるコマンドが指定されます。AutoConfigを実行すると、様々な<PROD>_TOP/admin/driverディレクトリを巡回し、adtmpl.drv、fndtmpl.drvおよびicxtmpl.drvなどのドライバ・ファイルを検索します。
図5-2に、様々な構成ファイルを作成するためにAutoConfigで使用するインスタンス化メカニズムを示します。
図5-2 AutoConfigのインスタンス化のメカニズム
AutoConfigでは、インスタンス化アクティビティだけでなく、次のようなスクリプトを実行して、他の多くの必須構成管理タスクを実行します。
スクリプト | 処理 |
adgendbc.sh | dbcファイルの生成 |
adcpnode.sh | データベースでのノードの登録 |
ssodatan.sh | PortalのOracle Single Sign-Onへの関連付け |
これらのスクリプトおよびその他のスクリプトは、特定のApplicationsシステムの要件に応じて適宜実行されます。
注意: AutoConfig操作の詳細は、OracleMetaLinkのNote 387859.1の「Using AutoConfig to Manage System Configurations with Oracle E-Business Suite Release 12」を参照してください。
AutoConfigがドライバ・ファイルを解析する場合、複数の異なるフェーズにグループ化された一連の処理を実行します。
INSTE8: AutoConfigテンプレート・ファイルを、関連するテンプレート・ドライバ・ファイルで指定されたAutoConfig構成ファイルにインスタンス化します。
INSTE8_SETUP: データベースへの接続を必要としないアクティビティを実行する設定スクリプトを実行します。
INSTE8_PRF: プロファイル・オプションを更新する設定スクリプトを実行します。
INSTE8_APPLY: データベースの更新を必要とするアクティビティを実行する設定スクリプトを実行します。
BINCPY: 前述のファイルをソース・ファイルから構成ファイルにコピーし、必要に応じて構成ファイルの親ディレクトリを作成します。AutoConfigでは、ソース・ファイルが見つからない場合にエラーが報告されます。
BINCPY_IGERR: 前述のファイルをソース・ファイルから構成ファイルにコピーし、必要に応じて構成ファイルの親ディレクトリを作成します。AutoConfigでは、ソース・ファイルが見つからなくてもエラーは報告されません。
AutoConfigは、これらの処理を次の順序で実行します。
すべてのINSTE8およびBINCPY処理: INSTE8、INSTE8_SETUP、INSTE8_PRFおよびINSTE8_APPLYでコールされるすべてのファイルのインスタンス化と、ソース・ファイルからターゲット構成ファイルへのすべてのコピーを実行します。
INSTE8_SETUP処理: ステップ1でインスタンス化されたファイルについて、AutoConfigがすべてのSETUPスクリプトを実行します。
INSTE8_PRF処理: ステップ1でインスタンス化されたファイルについて、AutoConfigがすべてのPRFスクリプトを実行します。
INSTE8_APPLY処理: ステップ1でインスタンス化されたファイルについて、AutoConfigがすべてのAPPLYスクリプトを実行します。
このプロセスの最後には、E-Business Suiteインストールに対して、必要な構成ファイルおよびプロファイル・オプションが作成されています。
複数のエリアにおいて、管理者がAutoConfigを使用して、Applicationsシステムを更新、管理およびモニターできます。通常は多くのタスクをOracle Applications Managerから実行しますが、場合によってはコマンドラインからスクリプト(Windowsではコマンド・ファイル)を実行する必要があります。
Oracle Applications Manager(第7章「Oracle Applications Manager」を参照)により、必要に応じてApplicationsコンテキストを編集できます。「Administration」タブから、「AutoConfig」を選択し、関連するコンテキスト・ファイルについて「Edit Parameters」をクリックします。コンテキストに変更を加えた後は、AutoConfigを実行して、関連する構成ファイルを更新する必要があります。その前に、構成チェック・スクリプトadchkcfg.sh(次の「システムのチェック」で説明)を実行して、提示された変更を検査する必要があります。
警告: E-Business Suiteの構成ファイルを手動で編集しないでください。次回AutoConfigを実行したときにすべての変更が失われます。
リリース12などのAutoConfigにより管理される環境は、Applicationsコンテキスト・ファイル、AutoConfigテンプレート・ファイルまたはAutoConfigドライバ・ファイルの変数を追加または変更するApplicationsパッチの適用によっても更新されます。
場合によっては、構成変更を元に戻す必要があります。以前の構成を復元するには、restore.shユーティリティを実行します。このユーティリティにより、AutoConfigの実行で加えられた変更をロールバックできます。このためには、AutoConfigの実行時に作成された構成ファイルのバックアップ・コピーを利用します。
注意: バックアップ・ファイルは、アプリケーション層の<APPL_TOP>/admin/<CONTEXT_NAME>/out/MMDDhhmm、およびデータベース層の<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/out/MMDDhhmmに置かれています。この場合、ディレクトリ名は、AutoConfigが実行された月、日、時および分を示します。
適切なバックアップ・ディレクトリにナビゲートし、restore.shスクリプトを実行することで、現在の構成の直前に存在した構成を復元できます。以前の構成を復元するには、Oracle Applications ManagerのContext File History機能を使用する必要があります。
AutoConfigでは、<INST_TOP>/admin/scriptsに置かれている数多くのアプリケーション層管理スクリプトが使用されます。
スクリプト名 | 機能 |
adstrtal.sh | すべてのアプリケーション層サーバー・プロセスを起動 |
adstpall.sh | すべてのアプリケーション層サーバー・プロセスを停止 |
adautocfg.sh | AutoConfigを実行 |
データベース層の対応するディレクトリは、<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/scripts/<CONTEXT_NAME>です。ここでは、管理スクリプトにより、データベースおよびデータベース・リスナー・プロセスを起動および停止したり、AutoConfigを実行することが可能です。
その他、リリース12などのAutoConfigで管理される環境においてシステム管理を容易にするスクリプトがいくつか存在します。これらのスクリプトにより、提示された変更の影響を識別したり、AutoConfigにより保守される製品を知ることができます。
変更の検査
adchkcfg.shは、アプリケーション層の<AD_TOP>/binおよびデータベース層の<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/binに置かれています。
このユーティリティにより、既存の構成ファイルとAutoConfigにより生成される新規構成ファイルの差異が強調表示されたレポートが生成されます。このレポートはcfgcheck.htmlと呼ばれます。
adchkcfg.shの実行は、予定の環境の変更が行われる前にテストを実行する場合と、問題を調査する場合の両方に役立ちます。
使用可能な製品のリスト
adcfginfo.shは、アプリケーション層の<AD_TOP>/binおよびデータベース層の<RDBMS_ORACLE_HOME>/appsutil/binに置かれています。このユーティリティにより、ApplicationsシステムがAutoConfig対応であるかどうかがレポートされます(リリース12は必ず対応します)。さらに、オプションで、AutoConfigにより保守されるインストール済の製品をリストできます。
注意: システム構成パラメータの管理の詳細は、『Oracle Applicationsメンテナンス・プロシージャ』を参照してください。