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Oracle® Coherence開発者ガイド
リリース3.6.1
B61368-02
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44 ネットワーク・パフォーマンスのデータグラム・テストの実行

Coherenceにはデータグラム・テスト・ユーティリティが付属しており、2台以上のマシン間のネットワーク・パフォーマンスのテストおよびチューニングに利用できます。データグラム・テストは、パケット・パブリッシャ、パケット・リスナーおよびその両方の、3種類のモードのいずれかで動作します。パブリッシャを実行すると、UDPパケットがリスナーに送信され、スループットや成功率などの統計が測定されます。

最大のパフォーマンスを実現するため、これらのテストの結果に基づいて環境をチューニングすることをお薦めします。詳細は、第45章「パフォーマンス・チューニング」を参照してください。

データグラム・テスト・ユーティリティの実行

データグラム・テストでは数多くの構成オプションがサポートされていますが、基本的な操作に必要なものはごくわずかです。データグラム・テスト・ユーティリティを実行するには、コマンドラインから次の構文を使用します。

java com.tangosol.net.DatagramTest <command value ...> <addr:port ...>

表44-1は、データグラム・テスト・ユーティリティで利用できるコマンドライン・オプションについて説明しています。

表44-1 データグラム・テスト・ユーティリティのコマンドライン・オプション

コマンド 必須/オプション 適用範囲 説明 デフォルト

-local

オプション

両方

バインド先のローカル・アドレス、addr:portの形式で指定

localhost:9999

-packetSize

オプション

両方

作業対象パケットのサイズ、バイト単位で指定

1468

-processBytes

オプション

両方

処理対象の各パケットのバイト数(4の倍数)

4

-rxBufferSize

オプション

リスナー

受信バッファのサイズ、パケット単位で指定

1428

-txBufferSize

オプション

パブリッシャ

送信バッファのサイズ、パケット単位で指定

16

-txRate

オプション

パブリッシャ

データ送信の速度、メガバイト単位で指定

無制限

-txIterations

オプション

パブリッシャ

終了前に公開するパケット数を指定

無制限

-txDurationMs

オプション

パブリッシャ

終了前に公開する期間を指定

無制限

-reportInterval

オプション

両方

レポートを出力する間隔、パケット単位で指定

100000

-tickInterval

オプション

両方

ティック・マークを出力する間隔

1000

-log

オプション

リスナー

測定したパフォーマンスの表形式レポートを保存するファイルの名前

なし

-logInterval

オプション

リスナー

ログに測定結果を出力する間隔

100000

-polite

オプション

パブリッシャ

パブリッシャが公開を実行する前に、リスナーの接続を待つかどうかを示すスイッチ

オフ

arguments

オプション

パブリッシャ

空白で区切られた公開先アドレスのリスト、addr:portの形式で指定

なし


リスナーおよびパブリッシャのサンプル・コマンド

リスナーのコマンドラインは次のとおりです。

java -server com.tangosol.net.DatagramTest -local box1:9999 -packetSize 1468

パブリッシャのコマンドラインは次のとおりです。

java -server com.tangosol.net.DatagramTest -local box2:9999 -packetSize 1468 box1:9999

使いやすくするため、Coherenceのbinディレクトリにdatagram-test.shおよびdatagram-test.cmdのスクリプトが用意されており、このテストの実行に使用できます。

データグラム・テストの例

IPアドレス195.0.0.1Server AとIPアドレス195.0.0.2Server Bの2台のサーバー間のネットワーク・パフォーマンスをテストするとします。一方のサーバーがパケット・パブリッシャとして、もう一方がパケット・リスナーとして動作し、パブリッシャは可能なかぎり高速でパケットを送信し、リスナーはパフォーマンス統計を測定してレポートします。まず、Server A上のリスナーを起動します。

例44-1 リスナーを起動するコマンド

datagram-test.sh

[Enter]を押すと、データグラム・テスト・ユーティリティによってパケットの受信準備が完了したと表示されることがわかります。

例44-2 リスナーの起動からの出力

starting listener: at /195.0.0.1:9999
packet size: 1468 bytes
buffer size: 1428 packets
  report on: 100000 packets, 139 MBs
    process: 4 bytes/packet
        log: null
     log on: 139 MBs

前述の部分からわかるように、デフォルトのテストでは1428パケット、つまり約2MBを保持できるだけの大きなネットワーク受信バッファの割当てが試行されます。このバッファを割り当てることができない場合は、エラーがレポートされて終了します。-rxBufferSizeパラメータを使用してリクエストするバッファのサイズを小さくするか、またはオペレーティング・システムのネットワーク・バッファの設定を大きくできます。最高のパフォーマンスを実現するには、オペレーティング・システムのバッファを大きくすることをお薦めします。Coherence向けのオペレーティング・システムのチューニングの詳細は、第33章「本番チェックリスト」を参照してください。

リスナー・プロセスの実行中に、Server Bのパブリッシャを起動して、Server Aに公開するように指示できます。

例44-3 パブリッシャを起動するコマンド

datagram-test.sh servera

[Enter]を押すと、Server B上の新しいデータグラム・テスト・インスタンスでリスナーとパブリッシャの両方が起動されることを確認できます。この構成では、Server Bのリスナーが使用されないことに注意してください。例44-4に示す出力が、Server Bのコマンド・ウィンドウに表示されます。

例44-4 データグラム・テスト: サーバーでのリスナーとパブリッシャの起動

starting listener: at /195.0.0.2:9999
packet size: 1468 bytes
buffer size: 1428 packets
  report on: 100000 packets, 139 MBs
    process: 4 bytes/packet
        log: null
     log on: 139 MBs

starting publisher: at /195.0.0.2:9999 sending to servera/195.0.0.1:9999
packet size: 1468 bytes
buffer size: 16 packets
  report on: 100000 packets, 139 MBs
    process: 4 bytes/packet
      peers: 1
       rate: no limit

no packet burst limit
oooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooO

データがネットワーク上に出力(Output)されると、一連のoOのティック・マークが表示されます。oはそれぞれ1000パケットを表し、10,000パケットごとにOのインジケータが表示されます。

Server Aでは、これに対応してネットワーク入力(Input)を表すiIのティック・マークのセットが表示されます。これは、2つのテスト・インスタンスが通信していることを示します。

レポート

テストのそれぞれの側(パブリッシャとリスナー)から定期的にパフォーマンス統計がレポートされます。

パブリッシャの統計

パブリッシャでは、ネットワーク上にデータを公開する速度のみがレポートされます。通常のレポートは次のようになります。

例44-5 パブリッシャ・レポートのサンプル

Tx summary 1 peers:
   life: 97 MB/sec, 69642 packets/sec
    now: 98 MB/sec, 69735 packets/sec

このレポートには、現在の送信速度(前回のレポート以降)と存続期間の送信速度の両方が記載されます。

リスナーの統計

表44-2は、リスナーでレポートできる統計について説明しています。

表44-2 リスナーの統計

要素 説明

Elapsed

レポート対象の時間間隔

Packet size

受信したパケットのサイズ

Throughput

パケットの受信速度

Received

受信したパケット数

Missing

失われていることが検出されたパケットの数

Success rate

合計送信パケット数に対する受信パケット数の割合

Out of order

着信順序が乱れているパケットの数

Average offset

パケットの着信順序の乱れの程度を示すインジケータ


パブリッシャの場合と同様、現在と存続期間の両方の統計がレポートされます。例44-6に一般的なレポートを示します。

例44-6 存続期間の統計のサンプル

Lifetime:
Rx from publisher: /195.0.0.2:9999
             elapsed: 8770ms
         packet size: 1468
          throughput: 96 MB/sec
                      68415 packets/sec
            received: 600000 of 611400
             missing: 11400
        success rate: 0.9813543
        out of order: 2
          avg offset: 1


Now:
Rx from publisher: /195.0.0.2:9999
             elapsed: 1431ms
         packet size: 1468
          throughput: 98 MB/sec
                      69881 packets/sec
            received: 100000 of 100000
             missing: 0
        success rate: 1.0
        out of order: 0
          avg offset: 0

特に重要な項目は、スループットと成功率です。目標は、成功率を可能なかぎり1.0近くに維持しながら、最高のスループットを見つけることです。100MBのネットワーク設定では、約10MB/秒の速度を達成する必要があります。1GBのネットワークでは、約100MB/秒の速度を達成する必要があります。これらの速度を達成するには、多くの場合チューニング(後述)が必要になります。

速度調整

-txRate Mパラメータを組み込むことによって、テストのパブリッシャ側で、メガバイト/秒(MB/秒)単位のデータ速度を指定して速度を調整できます。Mは、テストでネットワークに設定される最大MB/秒を表します。

双方向テスト

このテストは、両方のサーバーがパブリッシャとリスナーの機能を果たす双方向モードでも実行できます。これは、テスト・インスタンスを再起動して、Server AのインスタンスにServer Bのアドレスを指定し、Server A上で例44-7のコマンドを実行するのみで実行できます。

例44-7 双方向モードでのデータグラム・テストの実行

datagram-test.sh -polite serverb

次に、Server B上で前述のコマンドを実行します。-politeパラメータを使用すると、このテスト・インスタンスに対し、データの受信を開始するまで公開を開始しないように指示されます。

分散テスト

3台以上のマシンをテストに使用することもできます。たとえば、1つのリスナーをターゲットとするパブリッシャを2つ設定できます。この形式のテストは単純な1対1のテストと比較してはるかに現実的で、他の方法では確認できないネットワークのボトルネックを特定できる場合があります。

4台のマシンによるクラスタを構成すると想定した場合、次のように、これらのマシンすべてでデータグラム・テストを実行できます。

Server A上:

datagramtest.sh -txRate 100 -polite serverb serverc serverd

Server B上:

datagramtest.sh -txRate 100 -polite servera serverc serverd

Server C上:

datagramtest.sh -txRate 100 -polite servera serverb serverd

Server D上:

datagramtest.sh -txRate 100 servera serverb serverc

このテスト・シーケンスでは、すべてのノードは他のすべてのノードに、1秒当たりで合計100MBを送信します(1ノード当たり33MB/秒に相当)。完全にスイッチが設定された1GbEネットワークでは、パケットを失うことなくこれを達成できる必要があります。

テストの実行を簡略化するために、すべてのノードは同一のターゲット・リストを使用して起動できます。自己への送信も行われることになりますが、このループバック・データは容易に除外できます。最後のノードが起動されるまで他のすべてのノードが遅延するため、最後のノードを除くすべてのノードは、-politeスイッチを使用して起動することが重要です。