SNMPエージェント管理ガイド

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Oracle SNMPエージェントの概要

以下の項では、Oracle Tuxedo用のOracle SNMPエージェント、Simple Network Management Protocol (SNMP)、管理情報ベース(MIB)、およびOracle SNMPエージェント・コンポーネントの概要について説明します。

 


Oracle SNMPエージェントについて

Oracle TuxedoのOracle SNMPエージェント(以後「Oracle SNMPエージェント10.0」または単に「Oracle SNMPエージェント」と呼ぶ)を使用すると、SNMP準拠のネットワーク管理フレームワークでOracle Tuxedoのシステムとアプリケーションを管理できます。Oracle SNMPエージェントは、Simple Network Management Protocolバージョン1 (SNMPv1)仕様に準拠しています。

図1-1に示すように、Oracle SNMPエージェントは、TuxedoアプリケーションからSNMP対応管理ステーション(コンソール)へのSNMPリンクを提供します。また、Oracle SNMPエージェントを使用すると、任意のベンダーの複数のSNMPエージェントとサブエージェントを同じマシンで実行できます。

図1-1 Oracle TuxedoのOracle SNMPエージェント

Oracle TuxedoのOracle SNMPエージェント

Oracle SNMPエージェントは、TuxedoアプリケーションからSNMP準拠のネットワーク管理フレームワーク(HP OpenViewなど)へのSNMPリンクを提供して、以下のようなモニター、制御、およびアラーム通知を実現します。

 


SNMPについて

SNMPは、インターネット・ネットワーク・プロトコル(TCP/IP)ベースのネットワークを対象としたオープンなネットワーク管理標準です。 システム管理用の基本SNMP標準は、Network Working Group (NWG) RFC 1157に定義されています。

SNMPは、ハードウェア、ソフトウェアなどの分散クライアント/サーバー・システムの側面に関するシステム情報を分類するための標準システムを提供します。 SNMPによるネットワークおよびシステム管理は、International Organization for Standardization (ISO)によって定義されているネットワーク管理標準のマネージャ/エージェント・モデルに基づいています。

図1-2に示すように、このモデルでは、ネットワーク・マネージャはネットワークおよびシステム・リソースに関する監視情報と制御情報をエージェントと呼ばれる分散ソフトウェア・プロセスと交換します。

図1-2マネージャ/エージェント・モデル

マネージャ/エージェント・モデル

この情報交換によって管理できるネットワーク・リソースまたはシステム・リソースを、「管理対象リソース」と呼びます。 管理対象リソースは、メッセージ・キューやOracle Tuxedoアプリケーションなどのソフトウェア・リソースか、またはルータやNFSファイル・サーバーなどのハードウェア・デバイスです。

SNMPを使用すると、様々なソースによって収集されたフォルトおよびパフォーマンス・データを関連付けることができます。たとえば、データベースが存在するファイル・システムが満杯になったため、特定のデータベース挿入が失敗する場合があります。この結果、Oracle Tuxedoサービスが正常に実行できなくる場合もあります。

管理フレームワークがこの障害情報をシステム情報の他の側面と関連付けて、事前対応型のシステム管理を実現できるようにするには、すべての管理情報が同じ管理コンソールから利用できなければなりません。 このレベルの相関関係を実現するには、管理情報を交換するための標準化された手法が必要です。

SNMPは、この標準化された手法を提供します。 SNMPは、大規模な分散システムの異種コンポーネントの管理機能に関する情報を表す統一された手法を提供します。これは、SNMPがオープンなネットワーク管理標準だからです。

エージェントは、マネージャからのリクエストに応えて管理対象リソースに関するデータを収集および送信する収集デバイスとして機能します。また多くの場合、エージェントは、管理対象リソースで特定の定義済みのしきい値またはイベントを検出したときに非請求レポートをマネージャに発行できます。SNMPの用語では、こうした非請求イベント・レポートをトラップ通知と呼びます。

SNMP管理情報ベース(MIB)

SNMPマネージャは、管理対象リソースのプロパティとSNMPエージェントがサポートするサービスに関する定義と情報を格納するデータベース、管理情報ベース(MIB)に依存しています。新しいエージェントが追加されてマネージャのドメインが拡張されると、マネージャには新しいMIBコンポーネントが必要になり、このコンポーネントにより、その新しいエージェントの管理対象リソースの管理可能な機能が定義されます。

SNMP準拠のMIBに定義されるリソースの管理可能な機能を、管理対象オブジェクト(管理変数または変数)と呼びます。管理対象(またはMIB)オブジェクトには、Oracle Tuxedoドメインの状態、現在Oracle Tuxedoシステムにログオンしているユーザーの数、Tuxedoプロセス、Tuxedoアプリケーション変数などがあります。企業の分散システムの異種コンポーネントを管理フレームワークの共通MIBの内部に定義すれば、管理システムとネットワーク・リソースの全体像とシングル・アクセス・ポイントが得られます。

MIB内のリソースのデータ型と表現、および特定のMIBの構造は、Structure of Management Information (SMI)という標準で定義されます。 この標準は、NWG RFC 1155に規定されています。

MIBデータは、使用されるエンコーディング技術とは関係なく、ISO抽象構文表記法1 (ASN.1: Abstract Syntax Notation One)という公式言語で記述されます。 SNMPでは、ASN.1言語のサブセットを使用してMIBを表現します。

図1-3に、システム管理者による管理コンソールから管理情報へのアクセスを実現したSNMPのインストール例を示します。様々な管理変数(プラットフォームのMIBで定義される)の値を収集するために、管理コマンドがSNMPエージェントに対して発行されます。

図1-3管理コンソールからのSNMP管理/エージェントの対話

管理コンソールからのSNMP管理/エージェントの対話

ほとんどの管理フレームワークでは、定義されたイベント基準に基づいてアラームを生成するための条件を設定できます。 通常、この基準は管理対象リソースの特定の属性値の変更です。 これらの属性は、MIBオブジェクトとして表されます。 また、指定されたイベントが発生したとき(特定のしきい値を超えたときなど)に実行される処理を定義することもできます。

Oracle SNMP MIBは、Oracle Tuxedoのすべてのシステムおよびアプリケーション・イベントをサポートしています。これらのシステムおよびアプリケーション・イベントは、企業固有のトラップとして送信されます。Oracle SNMP MIBの詳細は、『Oracle Tuxedo SNMエージェントMIBリファレンス』を参照してください。

SNMPプロトコル

SNMPプロトコルは、リクエスト/レスポンス・コマンドをベースとしています。管理フレームワークは、GetまたはGetNextコマンドを送信してエージェントに対してMIB変数の値をリクエストするか、またはSetリクエストを送信して変数の値を変更します。データを収集した管理フレームワークは、SNMPエージェントによって提供された情報のビューまたはグラフを提供するか、または情報のレスポンスとして処理を実行します。

一般に、管理フレームワークは収集したデータを履歴レポート用にリポジトリに保存します。また、管理データを分析するための様々なツールおよびユーティリティも備えています。管理フレームワークを使用すると、イベント・ベースの操作に対するレスポンスの自動化、アクセス権限の変更、およびアプリケーション・パラメータの調整を行うことができます。

 


ネットワーク管理を統合する利点

Oracle Tuxedoアプリケーションは、組織またはビジネス・ミドルウェア・ソリューションの一部であり、SNMPと統合することによって、SNMP準拠のネットワーク管理ツールを使用して大規模アプリケーションを効率的に管理できるようになります。 ほとんどの管理フレームワークはSNMPをサポートしているので、Tuxedoアプリケーション用のOracle SNMPエージェントは事実上すべての管理フレームワークに統合できます。 こうした管理フレームワークには、以下のようなものがあります。

これらの管理フレームワークを使用すると、システム、データベース、アプリケーション、およびユーザー・アクセスの管理と制御を中央の管理コンソールから実行できます。 管理フレームワークに用意されているツールを使用すると、定型の複雑なシステム・タスクを自動化および委任できます。

SNMPを使用してOracle Tuxedoアプリケーションを管理するメリットは以下のとおりです。

 


Oracle SNMPエージェントのコンポーネント

Oracle SNMPエージェントは、以下の主要コンポーネントで構成されています。

図1-4に、Tuxedo SNMPエージェント、Oracle SNMPエージェント・インテグレータおよびOracle SNMP MIBの連携によって、Tuxedo情報がSNMP管理フレームワークに組み込まれるしくみを示します。

図1-4 Oracle SNMPエージェントのコンポーネント

Oracle SNMPエージェントのコンポーネント

注意: Oracle SNMPエージェント・コンポーネント・ファイルは、tux_prod_dir/binディレクトリとtux_prod_dir/udataobj/snmp/etcディレクトリに存在します。tux_prod_dirは、Oracle Tuxedo 10.0がインストールされているディレクトリです。

Tuxedo SNMPエージェント

Tuxedo SNMPエージェント(tux_snmpd)は、SNMPマネージャからのリクエストに応答し、TuxedoシステムおよびアプリケーションのSNMPトラップ通知を生成します。tux_snmpdは、Tuxedoアプリケーションの管理情報をSNMP互換形式に変換し、SNMPマネージャがアクセス(SNMPネットワーク管理フレームワークで実行されるフロント・エンド・プロセス)できるようにローカルのSNMP MIBに保存します。

tux_snmpdは、SNMPエージェントまたはSNMP多重化(SMUX)サブエージェントとして開始できます。 SMUXプロトコルは、RFC 1227に定義されています。

Oracle SNMPエージェント・インテグレータ

Oracle SNMPエージェント・インテグレータ(snmp_integrator)は、SNMPマスター・エージェントとSMUXマスター・エージェントの両方の機能を備えています。 このため、snmp_integratorを使用すると、任意のベンダーの複数のSNMPエージェントおよびSMUXサブエージェントが同じ管理対象ノード(マシン)に共存でき、SNMPマネージャはそれらを単一のSNMPエージェントとして認識します。

SNMP MIBファイル

Oracle SNMPエージェントには、以下の2種類のSNMP MIBファイルが存在します。

MIBファイル名
説明
bea.asn1
Tuxedo MIBから変換されるSNMP MIBを定義します。この結果、Tuxedoコンポーネントを認識できるようになり、SNMPネットワーク管理フレームワークで管理できるようになります。
SNMPネットワーク管理フレームワークが、Tuxedoアプリケーションの管理に必要なローカル(管理ステーション上の) MIBの部分を設定するために使用します。
mib.txt
bea.asn1ファイルと同じように、SNMP MIBの内容のテキストで記述したもの。mib.txtは、bea.asn1ファイルから作成されます。
tux_snmpdが起動時に管理対象ノードのローカルSNMP MIBを設定するために使用します。

bea.asn1およびmib.txtファイルから作成されるSNMP MIBを使用すると、SNMPネットワーク管理フレームワークで以下のコンポーネントを管理できます。

Oracle SNMPエージェント10.0とSNMP MIBを使用すると、Tuxedo 10.0、9.1、9.0、8.1、8.0、7.1、および6.5アプリケーションを管理できます。 Oracle SNMPエージェント10.0とSNMP MIBでは、WebLogic Enterprise 5.1以前のアプリケーションは管理できません。

Oracle SNMP MIBの詳細は、『Oracle Tuxedo SNMPエージェントMIBリファレンス』を参照してください。

構成ファイル

Oracle SNMPエージェントには、以下の2種類の構成ファイルが存在します。

構成ファイル名
説明
beamgr.conf
Oracle SNMPエージェント構成ファイル。起動時にtux_snmpdsnmp_integratorによって読み取られるユーザー定義の操作構成が含まれています。
beamgr_snmpd.conf
Oracle SNMPエージェント・パスワード構成ファイル。起動時にtux_snmpdsnmp_integratorによって読み取られるユーザー定義のパスワード構成(SNMPコミュニティ名、SMUXパスワード)が含まれています。
デフォルトの読取り専用コミュニティ名はpublicで、デフォルトの読み書きコミュニティ名はiviewです。 デフォルトのSMUXパスワードは、パスワードなしです。

Oracle SNMPエージェント構成ファイルの詳細は、「構成ファイル」を参照してください。

コマンドとユーティリティ

Oracle SNMPエージェント・ソフトウェアには、tux_snmpdおよびsnmp_integratorプロセスを制御する以下のコマンドが用意されています。

コマンド名
説明
stop_agent
UNIXのみ* :指定されたtux_snmpdまたはsnmp_integratorプロセスを終了します。
reinit_agent
WindowsおよびUNIX: 指定されたtux_snmpdまたはsnmp_integratorプロセスがローカルOracle Tuxedo構成ファイルの再読取りを行います。 UNIXシステムでは、このコマンドはrootパーミッションで実行する必要があります。
show_agent
WindowsおよびUNIX :指定されたtux_snmpdまたはsnmp_integratorプロセスの名前およびプロセスID (PID)のリストを表示します。
* Windowsシステムでは、Oracle SNMPエージェント(tux_snmpdsnmp_integrator)プロセスはWindowsサービスとしてのみ停止し、コマンドラインによる停止はサポートされていません。

Oracle SNMPエージェント・ソフトウェアには、tux_snmpdおよびsnmp_integratorプロセスをインストールおよびテストするための以下のユーティリティが用意されています。

ユーティリティ名
説明
instsrv
Windowsシステムのみ: tux_snmpdまたはsnmp_integratorをWindowsサービスとしてインストールします。
snmpget
SNMP MIBの管理対象オブジェクトに関する情報をレポートします。
snmpgetnext
SNMP MIBの次の管理対象オブジェクトを返します。
snmptest
SNMP MIBオブジェクトのGetおよびSet操作を選択的に実行します。
snmptrap
SNMP TrapRequestメッセージをホストに送信します。
snmptrapd
ローカル・マシンでSNMPトラップ・ポートに送信されたSNMP TrapRequestメッセージを受信し、記録します。
snmpwalk
SNMP GetNextRequestメッセージを使用してオブジェクト識別子(OID)ツリーを検索することにより、管理対象オブジェクトに問い合せます。

Oracle SNMPエージェントのコマンドとユーティリティの詳細は、「Oracle SNMPエージェント・インテグレータのコマンド」を参照してください。


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