Oracle VM環境用に記憶域プロバイダを設定して構成するには、記憶域アーキテクチャ全体の背後にある概念および設計の考えを理解する必要があります。これについては、この章の最初の項で説明します。次に、Oracle VMで記憶域要素を準備、構成および使用し始めるのに必要な手順について説明します。
この章の内容は次のとおりです。
記憶域リポジトリのコンテンツ(仮想マシン・テンプレート、ISOファイル、アセンブリなど)の管理および使用の詳細は、第8.5項「仮想マシン・リソース」を参照してください。
Oracle VMが記憶域にアクセスする特定の方法では、プラグインが使用されます。オラクル社では、記憶域の異なるカテゴリおよびタイプごとにStorage Connectプラグインを作成することによって、記憶域の構成および統合をできるだけ柔軟性が高くモジュール化されたものとしています。これらのプラグインの詳細は、第5.3項「Storage Connectプラグイン」を参照してください。
Oracle VMの記憶域は、2つの異なるタイプのディスク記憶域、つまりテンプレートやISOファイルなどの環境リソースが使用可能な領域と、仮想マシンが使用する論理ディスクまたは物理ディスクを指します。
注意: また、クラスタ化されたサーバー・プールのプール・ファイル・システムに使用されるディスク領域もありますが、これについてはこの項で説明しません。 |
仮想マシン・ディスクの場合、Oracle VMでは2つの選択肢が提供されます。
仮想ディスク: ファイル・システム上のディスク・イメージ・ファイル
RAW物理ディスク: 仮想マシンが直接アクセスするLUN
仮想記憶域のアクセスと物理記憶域のアクセスの設計上の要件は、サーバー仮想化のユースケースおよび使用できる既存の記憶域ハードウェアによって異なります。仮想記憶域では迅速かつ容易なオンザフライの構成が可能ですが、抽象化のレベルが高くなります。物理記憶域のアクセスは、物理記憶域ハードウェアで構成されているLUNに仮想マシンのディスク記憶域が直接マップされることを意味し、これは、物理サーバーが記憶域にアクセスする方法とまったく同様です。この場合の利点は、既存のプロシージャおよびストレージ管理の手法を保持できることです。
記憶域は、ローカルで構成でき、具体的にはOracle VM Serverのローカル・ディスクのOCFS2ファイル・システムを使用して構成できます。ただし、サーバー・プール内のすべてのOracle VM Serverでアドレス指定でき、これらのOracle VM Serverに接続できるように、記憶域リポジトリの別の場所を使用する方がはるかに効率的で信頼性が高くなります。これは、ライブ・マイグレーションおよびHA構成においても重要です。記憶域は、次のいずれかのテクノロジを使用して構成します。
ローカル・ディスク
共有ネットワーク接続ストレージ - NFS
共有iSCSI SAN: 既存のネットワーク・インフラストラクチャを介してアクセス可能な抽象化されたLUNまたはRAWディスク
1つ以上のホスト・バス・アダプタ(HBA)に接続されているファイバ・チャネルSAN
注意: クラスタリングが有効化されていないサーバー・プールを除き、これらのすべての記憶域構成でOCFS2(Oracle Cluster File System)が使用されます。 |
HAまたはライブ・マイグレーションを有効にするには、すべてのOracle VM Serverが同じ記憶域リソースにアクセスできることを確認する必要があります。特にライブ・マイグレーションの場合、Oracle VM Serverが同じサーバー・プールに含まれている必要もあります。サーバー・プールは、失敗や以降のサーバー・ロールの変更などの場合に、サーバー・プール情報が格納および取得される共有ファイル・システムへのアクセスが必要となることにも注意してください。サーバー・プールのファイル・システムは、NFS共有上、またはストレージ・アレイのLUN上に配置できます。ファイル・サーバーおよびストレージ・アレイの設定の詳細は、第5.6項「ストレージの準備および構成」を参照してください。
Oracle VMは、様々な記憶域型を使用できるように設計されているため、構成をニーズに合わせることができます。ハードウェア設定が限られるか、フルラックのサーバーがあるかに関係なく、またはテストと一時的な内部使用のためにインストールを実行するか、すべての領域で高可用性が必要な本番環境を設計するかに関係なく、Oracle VMでは適切な記憶域ソリューションのサポートが提供されます。
Oracle VMでは、汎用のStorage Connectプラグインとベンダー固有のStorage Connectプラグインの両方を利用し、次の型の記憶域を使用できます。
ローカル記憶域は、Oracle VM Serverにローカルにインストールされているハード・ディスクで構成されます。デフォルトのインストールでは、Oracle VM Serverによって最初のディスク(/dev/sda)のみが使用され、他のディスクは格納用に確保されます。
パーティションおよびデータが存在しないかぎり、デバイスはRAWディスクとして検出されます。ローカル・ディスクを使用して、仮想マシンのディスクとして論理記憶域ボリュームをプロビジョニングするのか、記憶域リポジトリをインストールするのかを選択します。ローカル・ディスクに記憶域リポジトリを配置した場合は、OCFS2ファイル・システムがインストールされます。
注意: ローカル記憶域は、サーバー・プールのファイル・システムに使用できません。 |
ローカル記憶域は、ディスク・サブシステム用の特別なハードウェアが必要ないため、設定が非常に簡単です。この設定の仮想化のオーバーヘッドは限られており、ディスク・アクセスは1つの物理サーバー内で内部的であるため、ローカル記憶域ではかなり高いパフォーマンスが得られます。
ただし、複数のOracle VM Serverでの構成を考えると、デメリットはすぐに明らかになります。ローカル記憶域は、当然、ローカルのままであり、異なるサーバー間で共有できません。したがって、複数のサーバーのプールを設定し、クラスタリングの利点を使用する場合でも、ローカル記憶域を使用している仮想マシンは、高可用性のメリットを得ることができず、あるサーバーから別のサーバーに移行できません。
注意: Oracle VMでは、VM間でローカルの物理ディスクを共有することは可能ですが、お薦めしません。 |
ネットワーク接続ストレージ(通常、NFS)は、一般的に使用されているファイルベースのストレージ・システムであり、Oracle VM記憶域リポジトリのインストールに非常に適しています。記憶域リポジトリは、テンプレート、仮想ディスク・イメージ、DVD ISOファイルおよび仮想マシン構成ファイルなど、リソースの様々なカテゴリを含み、これらはすべて、リモートにある、接続されたファイル・システム上のディレクトリ構造にファイルとして格納されます。
Oracle VMでは、サーバーIPまたはホスト名を介してNFS記憶域を検出し、通常はサーバー・プール内のすべてのサーバーに記憶域を提示してそれらが同じリソースを共有できるようにします。これは、クラスタリングとともに、環境の高可用性を実現するのに役立ち、ロード・バランシングの目的で、またはハードウェア障害によりオフラインにならないように重要な仮想マシンを保護する目的で、仮想マシンをホスト・サーバー間で簡単に移行できます。
NFS記憶域は、Oracle VM Serverのファイル・システムにマウントされるNFSサーバー上の共有の形式でOracle VM Serverに公開されます。NFS共有のマウントは、NFSが公開されているネットワーク・セグメント内の任意のサーバーで実行できるため、同じプールのサーバー間だけでなく、異なるサーバー・プールでもNFS記憶域を共有できます。
パフォーマンスに関しては、NFSは、論理ボリュームまたはRAWディスクと比較して、仮想ディスクのI/Oで低速になります。これは、主にファイルベースの特性によります。ディスク・パフォーマンスを向上させるには、Oracle VMでiSCSIまたはファイバ・チャネルSANの形式でサポートされる、ブロックベースの記憶域の使用を検討する必要があります。
インターネットSCSI(iSCSI)を使用すると、記憶域エンティティをクライアント・マシンに接続でき、ディスクはローカル接続されたディスクであるかのように動作します。iSCSIは、イニシエータと呼ばれるもの(クライアント)とターゲット(記憶域プロバイダ)間の既存のIPネットワークを介してSCSIコマンドを転送することによって、この接続を可能にします。
すべてのOracle VM Serverは、iSCSI SANとのリンクを確立する場合に、構成済のネットワーク・インタフェースをiSCSIイニシエータとして使用できます。次のことは、ユーザーが行います。
ストレージ・サーバーによって提供されるディスク・ボリューム(iSCSI LUN)の構成
Oracle VM ManagerによるiSCSIストレージの検出
Oracle VM Managerによる、iSCSIイニシエータのグループであるアクセス・グループの設定(どのLUNがどのOracle VM Serverで使用可能かを決定することを目的とする)
iSCSI SANは、NFSなどのファイルベースの記憶域よりもパフォーマンスが高く、多くの場合、直接のローカル・ディスク・アクセスと同等です。iSCSIストレージは、リモート・サーバーから接続されるため、記憶域の高可用性と仮想マシンのライブ・マイグレーションの可能性が重要な要素であるクラスタ化されたサーバー・プール構成に最適です。
iSCSIストレージのプロビジョニングは、追加コストなしでオープン・ソースのターゲット作成ソフトウェアを使用して、またはハイエンドの専用ハードウェアを使用して(あるいはその中間の任意のものを使用して)実行できます。iSCSIの汎用のStorage Connectプラグインにより、Oracle VMは事実上、iSCSIのすべての記憶域プロバイダを使用できます。また、特定のタイプの専用のiSCSIストレージ・ハードウェアの場合はベンダー固有のStorage Connectプラグインが存在し、Oracle VM Managerは追加の対話型機能にアクセスできます(それ以外の場合、この機能は記憶域プロバイダの管理ソフトウェアを介してのみ使用可能)。この例には、LUNの作成および削除、既存のLUNの拡張などがあります。Storage Connectプラグインが使用可能かどうか、記憶域ハードウェアのサプライヤに確認してください。インストールおよび使用手順については、サプライヤのプラグイン・ドキュメントを参照してください。
ファイバ・チャネルSANは、機能的にiSCSI SANとほとんど異なりません。実際、ファイバ・チャネルの方が古いテクノロジであり、ファイバ・チャネルではかわりに専用ハードウェアが使用されます(SANハードウェア上では特殊なコントローラ、クライアント・マシン上ではホスト・バス・アダプタ(HBA)、およびコンポーネント間の相互接続用には特殊なファイバ・チャネル・ケーブルとスイッチ)。
iSCSIと同様に、ファイバ・チャネル・プロトコル(FCP)を使用して、イニシエータとターゲット間でSCSIコマンドが転送され、直接ディスク・アクセスとほぼ同じ接続が確立されます。前述のiSCSI SANの同じ概念が、ファイバ・チャネルSANに同様に適用されます。この場合も、汎用およびベンダー固有のStorage Connectプラグインが存在します。記憶域ハードウェアのサプライヤによってStorage Connectプラグインの適切なドキュメントが提供されます。
Oracle VM Managerは、Storage Connectという名前の一連のプラグインを介してすべての記憶域と通信します。これらのプラグインは、実際はOracle VM Managerから実行されるのではなく、一部またはすべてのOracle VM Server上に存在します。これらのプラグイン・ファイルは、Oracle VM Serverのローカル・ファイル・システムの/opt/storage-connect/ディレクトリにあります。環境で使用する記憶域要素を作成および構成するときに、Oracle VM Managerのユーザー・インタフェースで、使用可能なプラグインを選択します。
図5-1の「Hardware」ビューの「Storage」タブに示されているとおり、記憶域要素はファイル・サーバーとストレージ・アレイに論理的に分けられます。この区別は、ファイルベースの記憶域とブロックベースの記憶域またはRAWディスクの違いを示します。両方のタイプの記憶域がサポートされており、第5.2項「記憶域型」で説明されている各カテゴリでStorage Connectプラグインが使用可能です。
さらに、Storage Connectプラグインは、提供する機能に従って分けられます。汎用プラグインと非汎用プラグイン(ベンダー固有のプラグインとも呼ばれる)があります。汎用プラグインは、既存の記憶域リソースの検出および操作など、事実上すべての記憶域ハードウェアに対して限定された一連の標準記憶域操作を提供します。これらの操作は、ストレージ管理と相互作用せず、単に使用可能な記憶域アーキテクチャを検出してOracle VM環境で使用できるようにするという点でパッシブに分類されます。
ベンダー固有のプラグインには、より多くの一連の操作が含まれ、これには、スナップショット、クローニング、LUNの作成、サイズ変更など、記憶域ハードウェアでのアクティブな直接操作も含まれます。汎用の記憶域プラグイン操作を実行するには、アクセス・ホストまたはファイバ・チャネル接続のみが必要です(iSCSIの場合、通常はホスト名またはIPアドレスとポート番号)。非汎用プラグイン操作では、追加の管理ホストが必要であり(管理ユーザー名およびパスワードはオプション)、Oracle VM Managerに記憶域ハードウェアの構成への直接アクセス権が付与されます。
ベンダー固有(非汎用)のStorage Connectプラグインは、記憶域ベンダーから直接入手できます。
Storage ConnectプラグインはRPMとして配布され、通常は単一のRPMですが、記憶域ベンダーによって複数のRPMが提供される場合があります。記憶域ベンダーからStorage ConnectプラグインのRPMを入力したら、このRPMをOracle VM Serverにインストールします。
注意: 特定の記憶域を使用するすべてのOracle VM ServerにRPMをインストールする必要があります。 |
記憶域プラグインのRPMをインストールするには、Oracle VM Serverのコマンドラインで次を入力します。
# rpm -ivh filename.rpm
既存のStorage Connectプラグインをアップグレードしている場合は、RPMアップグレード・パラメータを使用します。
# rpm -Uvh filename.rpm
Storage Connectプラグインをインストールして使用する前に、記憶域ベンダーのプラグインのインストールと構成に関するドキュメントを確認します。ここでは説明されていない追加構成が必要な場合があります。
Oracle VMでは、ファイルベースの記憶域の抽象化に、記憶域リポジトリの概念が使用されます。記憶域リポジトリは、基本的に、物理記憶域ハードウェア上のファイル・システムで使用可能となる論理ディスク領域です。記憶域リポジトリをファイル・サーバー(NFS共有など)上に作成する場合、ファイル・システムはすでに存在します。リポジトリをLUN上に作成する場合、OCFS2ファイル・システムが最初に作成されます。
記憶域リポジトリによって、Oracle VMリソースが存在する場所が定義されます。リソースには、仮想マシン構成ファイル、仮想マシン作成のテンプレート、仮想マシンのアセンブリ、ISOファイル(DVDイメージ・ファイル)、共有仮想ディスクおよび共有されていない仮想ディスクなどがあります。
記憶域リポジトリの構成を開始する前に、次の要件が満たされていることを確認します。
NFSベースのリポジトリ: 1つ以上のOracle VM Serverを検出する必要があります。記憶域リポジトリの作成において、サーバー上のOracle VM Agentは、Oracle VM Managerから与えられる指示を実行するワーカー・コンポーネントとして機能します。
LUNベースのリポジトリ: 使用されるOCFS2ファイル・システムの特性のため、設計上、LUN上の記憶域リポジトリはクラスタ化されたサーバー・プールにリンクされます。そのため、クラスタリングが有効なサーバー・プールが存在する必要があり、クラスタ化されたプール内に1つ以上のサーバーが存在する必要があります。
ローカル・ディスクは常にLUNとして検出されるため、ローカル・サーバーの記憶域のリポジトリもこのカテゴリに属します。ローカル記憶域およびリポジトリの詳細は、第5.6.4項「ローカル記憶域の使用」を参照してください。
注意: NFS記憶域リポジトリのみが複数のサーバー・プールで共有できます。 |
記憶域リポジトリの構成および管理方法の詳細は、第5.8項「記憶域リポジトリの準備および構成」を参照してください。
仮想インフラストラクチャをデプロイする前に記憶域構成を計画することが重要です。次のいくつかのガイドラインに注意してください。
LUNの追加、削除およびサイズ変更を行うときは、物理サーバーの再起動が必要な場合があるため注意してください。論理ディスクの一部として使用されているLUNのサイズは変更せず、かわりに、新しいLUNを作成してディスク・グループに追加します。
本番に進む前に、テスト環境で構成(特にフェイルオーバー)をテストします。(SAN)配列ファームウェアのリリース番号がテスト済のものとは異なる場合は、違いがあるかどうかを確認します。Oracle VM Serverのマルチパス構成ファイルに変更を加える必要がある場合があります。
ワークロードごとに、使用する記憶域のサイズとタイプを計画します。次に例を示します。
ほとんどのオペレーティング・システムでは、ブート・ディスク上のI/Oアクティビティは最小限ですが、そのI/Oの一部はレスポンス時間の影響を受けやすいメモリー・ページングであるため、ブート・ボリュームは通常、容量が大きいドライブに配置できます。
アプリケーションは、大量のI/Oを実行しないかぎり、より大きく低速なドライブ(RAID 5など)に配置できます。書込み集中型のワークロードでは、中速から高速のドライブのRAID 10を使用する必要があります。ログ・ファイルが、保護対象のデータとは異なる物理ドライブ上にあることを確認します。
DNSなどのインフラストラクチャ・サーバーのI/Oニーズは少ない傾向があります。これらのサーバーのドライブはより大きく、低速にできます。
クローニングやスナップショットなどのストレージ・サーバー機能を使用する場合は、RAWディスクを使用します。
論理ディスクを使用するときに、非常に大きなLUNを作成したいと考える場合がありますが、各仮想マシンが同じディスクに対するI/Oをキューに入れるため、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。記憶域リポジトリが2TBを超えないようにすることをお薦めします。
サーバー・プールのファイル・システムとして使用する小さな記憶域エンティティ(それぞれ12GB以上)を作成するのに、いくらかのディスク領域を使用可能なままにしておいてください。サーバー・プールのファイル・システムはサーバー・プールおよびクラスタ・データの保持に使用され、クラスタのハートビートにも使用されます。サーバー・プールのファイル・システム用の領域は、記憶域リポジトリの記憶域エンティティを作成する場合と同じ方法で作成します。クラスタおよびサーバー・プールの使用と管理の詳細は、第7章「サーバー・プールの管理」を参照してください。
サーバー・プールのファイル・システムは、別のNFSサーバーに配置するか、可能な場合は小さいLUNを使用します。OCFS2のハートビート機能は、同じ物理記憶域でのI/O集中型操作による影響を受けることがあります。たとえば、サーバー・プールのファイル・システムが存在する同じNFSサーバー上の記憶域リポジトリでテンプレートのインポートまたはVMのクローニングを行うと、ハートビート通信でタイムアウトが発生する場合があり、これはサーバーのフェンシングおよび再起動を行う原因となります。不要な再起動を回避するには、十分で安定したI/Oバンド幅があるサーバー・プールのファイル・システムの場所を選択することをお薦めします。
第5.1項「記憶域の概要」で説明したように、Oracle VM Managerは「Hardware」ビューの「Storage」タブでファイル・サーバーとストレージ・アレイを区別します。ハードウェアおよびネットワークの構成によっては、Oracle VM Serverの検出時またはそれらの物理ディスクの再スキャン時に外部記憶域が検出される場合があります。ローカル記憶域は、この検出操作時に常に検出されます。
外部記憶域要素は、記憶域ハードウェア上に作成されます(NFS共有を提供するNASに対して構成されているサーバー、汎用iSCSIターゲットおよびLUNまたは希望の記憶域ベンダーのSANデバイス)。記憶域を提供するサーバーまたはディスク・サブシステムには、ファイバ・チャネルまたはイーサネット・ネットワークを介してOracle VM環境のOracle VM Serverがアクセスできる必要があります。外部記憶域は、リポジトリ用の可能性のある場所またはVMで使用するRAWディスクとしてOracle VM Managerを介して検出可能なマウント・ポイント(NFS共有)またはLUN(iSCSIおよびファイバ・チャネル)として提供されます。
通常、外部記憶域をOracle VM環境に接続するには、Oracle VM Managerで新しい記憶域エンティティを作成し、適切なStorage Connectプラグインの選択時に外部記憶域プロバイダの場所を指定します。
その後、記憶域リソースをOracle VM環境内のサーバーおよびサーバー・プールに対して使用可能するために、検出された1つ以上の記憶域エンティティで記憶域リポジトリを構成することもできます。
これらの準備および構成手順については、次の項を参照してください。
記憶域リポジトリの構成については、第5.8項「記憶域リポジトリの準備および構成」を参照してください。
Oracle VMでは、ローカル記憶域に対し、ファイル・サーバーという用語を使用して、別の物理サーバーから環境に対して使用可能にされているファイルベースの記憶域を示します。ファイル・システム、NFS共有などの公開に使用されるテクノロジについては、このマニュアルで説明しません。次の手順では、公開されたファイルベースの記憶域をOracle VMに登録し、記憶域リポジトリのインストール用に準備し、ファイル・サーバーおよび検出されたファイル・システムを構成する方法について説明します。
ファイル・サーバーを登録するには、次の手順を実行します。
ストレージ・サーバーが、書込み可能なファイル・システムを(NFS共有またはSun ZFS記憶域プールを介して)サーバー・プールの記憶域ネットワークに公開していることを確認します。
Oracle VM Managerで「Hardware」ビューを開き、ナビゲーション・ペインで「Storage」タブを開きます。
ナビゲーション・ペインで「File Servers」を選択して右クリックし、「Register File Server」を選択します。「Register File Server」ダイアログ・ボックスが表示され、ここにOracle VM Managerが外部記憶域のマウント・ポイントを検出するのに必要な情報を入力します。
必ず次の情報を入力します。
Name: ファイル・サーバーの識別に使用する名前
Storage Plug-in: ファイル・サーバーのタイプに対応する記憶域プラグイン(汎用NFSまたはベンダー固有)
Access Host: ファイル・システムを提供するサーバーのホスト名またはIPアドレス
Description: このファイル・サーバーについて追加するオプションの情報
Sun ZFS Storage Applianceなど、非汎用のファイル・サーバーを追加する場合は、追加のプラグイン・オプションも入力して、Oracle VM Managerがファイル・サーバーの構成管理機能にアクセスできるようにします。
Admin Host: ファイル・サーバーへの管理アクセスが適切な資格証明で許可されるホスト名またはIPアドレス
User Name: ファイル・サーバーへの管理者アクセスでのユーザー名
Password: 入力したユーザー名の管理者パスワード
「Next」をクリックして管理サーバーの選択画面に進みます。クラスタ化されていないサーバー・プールを使用している場合は、この画面をスキップできます。
矢印ボタンを使用して、目的のOracle VM Serverを「Selected Servers」ボックスに移動します。「Finish」をクリックして、ファイル・サーバーの登録を完了します。
新しいファイル・サーバーがナビゲーション・ペインの「File Servers」の下に表示されます。
注意: サーバー・プールのファイル・システムとして使用する共有を作成した場合、これらは同じプロセスで検出されます。これらのファイル・システムは比較的小さいため、サーバー・プールがこれらを使用できるようにしておき、記憶域リポジトリはより容量が大きいファイル・システムに作成してください。 |
ファイル・サーバーの登録の終了時に、ファイル・サーバーで使用可能なファイル・システムに対して検出操作がトリガーされます。操作が完了すると、使用可能なファイル・システムがナビゲーション・ペインに表示されます(そのファイル・システムが属するファイル・サーバーの下)。特定のファイル・サーバーを選択すると、ファイル・システムは「File Servers」概要表の右側にも表示されます。
これで、ファイル・サーバーおよびファイル・システムを記憶域リポジトリに、またはサーバー・プールのファイル・システムとして使用する準備ができています。サーバー・プールのファイル・システムはサーバー・プールの作成時に選択されますが、ファイル・システムに記憶域リポジトリを作成するには、第5.8項「記憶域リポジトリの準備および構成」を参照してください。
もちろん、登録した記憶域構成はいつでも変更できます。次に、これを行う際の手順およびオプションについて説明します。
登録済のファイル・サーバー構成を変更するには、次の手順を実行します。
ファイル・サーバーを変更する必要がある場合は、ナビゲーション・ペインのツリー構造でそのファイル・サーバーを選択して右クリックし、次のオプションのいずれかを選択します。
Edit File Server: 名前、アクセス・ホスト、説明およびプラグイン・オプションなど、ファイル・サーバーの設定を変更します。
Refresh File Server: ディスクおよびファイル・システムに対して変更が行われた場合に、ファイル・サーバー構成の更新をリクエストします。
Add/Remove Admin Server: このファイル・サーバーとの情報交換を行うOracle VM Serverを決定します。
Delete File Server: 選択したファイル・サーバーをOracle VM環境から削除します。
ファイル・システムを変更する必要がある場合は、そのファイル・システムが属するファイル・サーバーを展開し、ナビゲーション・ペインのツリー構造でそのファイル・システムを選択して右クリックし、次のオプションのいずれかを選択します。
Edit File System: ファイル・システムの名前および説明を変更します。
Refresh File System: ファイル・システム情報の更新をリクエストし、サイズおよびコンテンツが変更されたかどうかを確認します。
Delete File System: 選択したファイル・システムのOracle VM環境での使用を停止します。
管理対象外のストレージ・アレイをリストする目的は、使用可能な特定の管理メカニズムがない環境の記憶域がOracle VMで検出された場合、または、適切な管理メカニズムを特定できない場合にOracle VMによって警告されるようにすることです。つまり、iSCSIおよびファイバ・チャネルにおいて、管理対象外のストレージ・アレイは、ストレージ管理ツリー内の適切な場所が不明である物理ディスクのプレースホルダです。
iSCSIとファイバ・チャネルでは、管理対象外のアレイの動作が異なることに注意してください。iSCSIの場合、実際の管理対象外のアレイの使用は一時的ですが、ファイバ・チャネルの場合、状況は異なります。汎用ファイバ・チャネル・アレイは、記憶域ネットワークに接続されると検出されるため、特定のアクセス・ホストに基づいて別のストレージ・アレイの下にそれらを配置するメカニズムが存在しません。そのため、汎用ファイバ・チャネルLUNは、アクセス・グループがない、管理対象外のファイバ・チャネル・ストレージ・アレイに存在したままとなります。
管理対象外の記憶域要素を使用しない場合は、その記憶域要素をOracle VM環境から削除できます。汎用iSCSIストレージ・アレイの場合は、第5.6.3項「ストレージ・アレイの登録および構成」の手順に従い、適切な方法でそのアレイを登録することをお薦めします。記憶域エントリを適切に登録するには、そのエントリを管理対象外のアレイから削除する必要があります。登録後、これらのエントリは、適切なタイプの管理対象のストレージ・アレイの下に表示されます。
汎用的なStorage Connectプラグインを使用しないベンダー固有の記憶域は、必ずその専用のプラグインとともに登録する必要があり、ストレージ管理ツリー内の独自のストレージ・アレイ・エントリの下に表示されます。
Oracle VMでは、ストレージ・アレイという用語を使用して、別の物理サーバーから環境に対して使用可能にされている、または場合によってはローカル記憶域として使用可能にされているブロックベースの記憶域を示します。iSCSIターゲットおよびLUNの形式でのRAWディスク領域の公開に使用されるテクノロジまたはSAN(ストレージ接続ネットワーク)の構成については、このマニュアルで説明しません。次の手順では、公開されたブロックベースの記憶域をOracle VMに登録し、記憶域リポジトリのインストール用または物理ディスクとしてのVM(仮想マシン)への直接接続用にストレージ・アレイおよび物理ディスクを構成する方法について説明します。
注意: Oracle VMには、デフォルトの管理対象外のファイバ・チャネル・ストレージ・アレイがあります。単一の汎用ファイバ・チャネル・ストレージ・アレイのみが存在できるため、このタイプの追加アレイは作成できません。そのため、以降の手順は、次のタイプのStorage Connectプラグインを使用するストレージ・アレイに適用されます。
|
エンドツーエンドの手順は次の3つのフェーズに分けられています。
この第1フェーズでは、登録部分のみ、つまり環境内で使用する記憶域要素のコンテナの検出方法について説明します。
ストレージ・アレイを登録するには、次の手順を実行します。
ストレージ・サーバーがRAWディスク(ファイバ・チャネルSANボリューム、iSCSIターゲットおよびLUN)をサーバー・プールの記憶域ネットワークに公開していることを確認します。
Oracle VM Managerで「Hardware」ビューを開き、ナビゲーション・ペインで「Storage」タブを開きます。
ナビゲーション・ペインで「Storage Arrays」を選択して右クリックし、「Register Storage Array」を選択します。「Register Storage Array」ダイアログ・ボックスが表示され、ここにOracle VM Managerが外部記憶域要素を検出するのに必要な情報を入力します。
次の情報を入力します。
Name: ストレージ・アレイの識別に使用する名前
Description: このストレージ・アレイについて追加するオプションの情報
Storage Type: SANまたはiSCSIストレージ・サーバーのいずれかのアレイ
Storage Plug-in: ストレージ・アレイのタイプに対応する記憶域プラグイン(汎用iSCSI、ベンダー固有のiSCSIまたはファイバ・チャネルのプラグイン)
Access Host: 記憶域要素を提供するサーバーまたはSANハードウェアのホスト名またはIPアドレス
注意: これは、ファイバ・チャネル・ストレージ・アレイには適用されません。 |
注意
iSCSIストレージを追加するときにアクセス・ポートも追加します。iSCSIのデフォルトのアクセス・ポートは3260です。 |
選択した記憶域型とプラグインによっては、ストレージ・アレイを登録するときに追加情報の入力が必要な場合があります。
表5-1 それぞれの記憶域型の登録に必要な情報
情報フィールド | 記憶域のカテゴリおよび型 | |||
---|---|---|---|---|
iSCSI | ファイバ・チャネル | |||
汎用 | ベンダー固有 | 汎用 | ベンダー固有 | |
Access host and port |
必要 |
必要 |
不要 |
不要 |
Access credentials/Chap |
不要 |
オプション |
不要 |
不要 |
Administration information |
不要 |
必要 |
不要 |
必要 |
Plug-in private data |
不要 |
オプション |
不要 |
オプション |
注意: ベンダー固有のストレージ・アレイを登録するときは、「plug-in private data」フィールドに入力した情報を必ず再度確認してください。ストレージ・アレイが登録されると、このフィールドは変更できなくなります。プラグイン・プライベート・データを更新する必要がある場合は、ストレージ・アレイを登録解除してから再登録する必要があります。 |
「Next」をクリックして管理サーバーの選択画面に進みます。クラスタ化されていないサーバー・プールを使用している場合は、この画面をスキップできます。
矢印ボタンを使用して、目的のOracle VM Serverを「Selected Servers」ボックスに移動します。「Finish」をクリックして、ストレージ・アレイの登録を完了します。
新しいストレージ・アレイがナビゲーション・ペインの「Storage Arrays」の下に表示されます。この時点で、Storage Connectプラグインによって記憶域の場所へのリンクが確立されています。新しい記憶域要素はまだ検出されていません。
ストレージ・アレイ上の物理ディスクを検出するには、ストレージ・アレイを選択して「Refresh Storage Array」をクリックします。ストレージ・アレイは、ナビゲーション・ペインまたは「Storage Arrays」管理ペインで選択できます。
操作が完了すると、使用可能な物理ディスクがナビゲーション・ペインに表示されます(その物理ディスクが属するストレージ・アレイおよびボリューム・グループの下)。特定のアレイを選択すると、物理ディスクは「Storage Arrays」概要表の右側にも表示されます。
この時点でストレージ・アレイの検出フェーズは完了しており、物理ディスクは「Hardware」ビューの「Storage」タブに表示されます。ただし、Oracle VM Serverはまだこの記憶域にアクセスできません。アクセス・グループを介した物理ディスクへのアクセスを最初に構成する必要があります。このルールの例外も、ファイバ・チャネル・ストレージ・ネットワークに接続されているすべてのOracle VM ServerにLUNを提供する、管理対象外のファイバ・チャネル・ストレージ・アレイです。
この項では、ストレージ・アレイ構成の第2フェーズ(検出された記憶域をOracle VM Serverが使用できるようにする方法)について説明します。
汎用ストレージ・アレイ以外は、要件に従って物理ディスク・アクセスを配置および制限するために、複数のアクセス・グループを作成できます。デフォルトでは、汎用iSCSIストレージ・アレイには、使用可能なアクセス・グループが1つあり、そこでOracle VM Serverからストレージ・イニシエータを追加または削除できます。
汎用ファイバ・チャネル・ストレージにはアクセス・グループがなく、常に「Unmanaged Fibre Channel Storage Array」の下にリストされることに注意してください。
ストレージ・アレイのタイプに適した手順を選択します。
非汎用iSCSIストレージ・アレイのアクセス・グループを構成するには、次の手順を実行します。
ナビゲーション・ペインの「Storage」タブの下で、ストレージ・アレイを選択して「Access Groups」タブに移動するか、ツリー構造のストレージ・アレイの下で直接「Access Groups」を選択します。
ツールバーの「Create Access Group」ボタンをクリックします。「Create Access Group」ダイアログ・ボックスが表示されます。これには、環境内にあるOracle VM Server上のこのタイプの記憶域で使用可能なストレージ・イニシエータが含まれます。
新規アクセス・グループの名前を入力し、オプションで説明を指定します。
矢印ボタンを使用して、目的のイニシエータを「Selected Storage Initiators」ボックスに移動します。
「OK」をクリックして、選択したイニシエータで新規アクセス・グループを作成します。新規アクセス・グループが「Access Groups」タブに表示されます。アクセス・グループを選択すると、そのイニシエータは「Storage Initiators」表に表示されます。
アクセス・グループを選択して「Present/Unpresent Physical Disk」をクリックします。現在のストレージ・アレイのボリューム・グループで使用可能な物理ディスクを示すダイアログ・ボックスが表示されます。
矢印ボタンを使用して、目的のディスクを「Selected Physical Disks」ボックスに移動します。「OK」をクリックして、選択したディスクを現在のアクセス・グループに提示します。
アクセス・グループを構成した後、ストレージ・アレイをリフレッシュして、現在の記憶域レイアウトとアクセス・ルールが有効であることを確認することをお薦めします。
これで、非汎用ストレージ・アレイ内の選択した物理ディスクは、このアクセス・グループのOracle VM Serverに対して使用可能になりました。次に示すとおり、汎用iSCSIストレージ・アレイのアクセス・グループの構成はより単純です。
汎用iSCSIストレージ・アレイにアクセス・グループを構成するには、次の手順を実行します。
ナビゲーション・ペインの「Storage」タブの下で、ストレージ・アレイを選択して「Access Groups」タブに移動するか、ツリー構造のストレージ・アレイの下で直接「Access Groups」を選択します。
このストレージ・アレイにはデフォルトのアクセス・グループがすでに存在し、汎用ストレージ・アレイ内の検出されたすべての物理ディスクがリストされます。
デフォルトのアクセス・グループを選択して、ツールバーの「Edit Access Group」ボタンをクリックします。「Edit Access Group」ダイアログ・ボックスが表示されます。これには、環境内にあるOracle VM Server上のこのタイプの記憶域で使用可能なストレージ・イニシエータが含まれます。
デフォルトのアクセス・グループの名前は変更できませんが、必要に応じてアクセス・グループの説明を指定します。
矢印ボタンを使用して、目的のイニシエータを「Selected Storage Initiators」ボックスに移動します。
「OK」をクリックして、デフォルトのアクセス・グループへの変更を保存します。「Access Groups」タブでアクセス・グループを選択すると、そのイニシエータは「Storage Initiators」表に表示されます。「Physical Disks」表にリストされているディスクはすべて、選択したOracle VM Serverに自動的に提示されます。
アクセス・グループを構成した後、ストレージ・アレイをリフレッシュして、現在の記憶域レイアウトとアクセス・ルールが有効であることを確認することをお薦めします。
これで、このアクセス・グループのOracle VM Serverは、ストレージ・アレイの物理ディスクを使用するのに必要な権限を持つようになり、この物理ディスクは仮想マシン(VM)のディスクとして、または、記憶域リポジトリ用にデプロイできます。物理ディスクに記憶域リポジトリを作成するには、第5.8項「記憶域リポジトリの準備および構成」を参照してください。
もちろん、登録した記憶域構成はいつでも変更できます。次に、これを行う際の手順およびオプションについて説明します。
注意: この項では、常にナビゲーション・ペインのツリー表示を使用して異なるレベルの様々な記憶域要素にアクセスしています。これらの要素には、ナビゲーション・ペインでストレージ・アレイを選択したときに使用できる様々なタブからもアクセスできます。 |
この項の第3(最終)フェーズでは、Oracle VM Managerを介してストレージ・アレイを登録した後で使用可能な更新オプションについて説明します。
登録済のストレージ・アレイ構成を変更するには、次の手順を実行します。
ストレージ・アレイを変更する必要がある場合は、ナビゲーション・ペインのツリー構造でそのストレージ・アレイを選択して右クリックし、次のオプションのいずれかを選択します。
Edit Storage Array: 名前、説明、アクセス・ホストおよびポートなど、ストレージ・アレイの設定を変更します。
Refresh Storage Array: 使用可能な物理ディスクの構成に対して変更が行われた場合に、ストレージ・アレイ構成の更新をリクエストします。
Delete Storage Array: 選択したストレージ・アレイをOracle VM環境から削除します。
ストレージ・アレイの物理ディスクを変更する必要がある場合は、ストレージ・アレイおよびボリューム・グループを展開し、ナビゲーション・ペインのツリー構造で項目を選択して右クリックし、次のオプションのいずれかを選択します。
Edit Physical Disk: 物理ディスクの名前および説明を変更するか、物理ディスクを共有可能にします。
Clone Physical Disk: 選択したターゲットの物理ディスクのシン・クローン、スパース・コピーまたは非スパース・コピーを作成します。オプションについては、次の表を参照してください。
クローン・ターゲット | クローン・タイプ | ||
---|---|---|---|
シン・クローン | スパース・コピー | 非スパース・コピー | |
物理ディスク | 可 | ||
ストレージ・アレイ | 可 | ||
記憶域リポジトリ | 可 | 可 |
これは、特に物理ディスクに適用されますが、VMクローニングの詳細は、第8.8項「仮想マシンまたはテンプレートのクローニング」を参照してください。
これらのクローン・ターゲット・タイプの定義については、「用語集」を参照してください。
Delete: 選択した物理ディスクのOracle VM環境での使用を停止します。
警告: 登録済のストレージ・アレイからLUNを事実上削除する場合は、必ず最初にOracle VM Managerで削除した後で、ストレージ・サーバーから物理的に削除してください。操作のこの順序を守らないとシステムは不明な状態となり、この状態は、削除したLUNが接続されているOracle VM Serverを再起動することによってのみ解決できます。 |
Oracle VM Serverがストレージ・アレイの物理ディスクにアクセスする方法を変更する必要がある場合は、ストレージ・アレイおよびアクセス・グループを展開し、ナビゲーション・ペインのツリー構造でアクセス・グループを選択して右クリックし、次のオプションのいずれかを選択します。
注意: 汎用iSCSIストレージ・アレイの場合、選択したストレージ・イニシエータのみ変更できます。他のプロパティは変更できません。 |
Edit Access Group: 名前、説明および選択したストレージ・イニシエータなど、アクセス・グループの設定を変更します。
Present/Unpresent Physical Disk: このアクセス・グループがアクセスできる物理ディスクの選択を変更します。
Delete: 選択したアクセス・グループの構成を削除します。
Oracle VM Serverに未使用のハード・ディスクがある場合は、それらを環境のローカル記憶域として使用できます。これらのスペア・ディスクは、完全に空である(つまり、パーティションやファイル・システムがない)ことを条件に、自動的にOracle VM Serverのローカル・ストレージ・アレイに含められます。
ローカル・ストレージ・アレイは、「Hardware」ビューの「Storage」タブの下にリストされないことに注意してください。ただし、ローカル記憶域エンティティは、それを使用できる場所で参照できます(記憶域リポジトリの作成時、または、VMの物理ディスクの選択時など)。
ローカル記憶域には、高速で使いやすいという利点がありますが、このタイプの記憶域は共有できず、高可用性構成で使用できないことに注意してください。そのため、重要なデータを格納し、高度なデータ損失防止を使用して事実上連続した稼働時間が必要である重要なVMを実行する必要がある場合は、ローカル記憶域を使用せず、かわりに適切な冗長性がある接続ストレージを使用することをお薦めします。
また、ローカル記憶域は、サーバー・プール内の複数のOracle VM Serverでクラスタ化された設定において柔軟性に欠けています。ローカル記憶域に存在するリソースおよびVMディスクは、他のサーバーと共有できません(このサーバーが同じサーバー・プール内に存在する場合も同様)。これは、別のOracle VM Serverのローカル・リポジトリに格納されているテンプレート、ISOまたはVMディスクを使用できす、ローカルに格納されたディスクがあるVMのライブ・マイグレーションが不可能であることを意味します。Oracle VM環境を設計するときは、このことを考慮することを強くお薦めします。
ローカル記憶域が最も有用な構成は、クラスタ化されたサーバー・プールにOracle VM Serverが1つのみ含まれる構成です。ローカル記憶域で記憶域リポジトリを構成することによって(第5.8項「記憶域リポジトリの準備および構成」を参照)、単一のサーバーで迅速かつ容易にOracle VMの仮想環境を設定でき、すべてのリソース、VMおよびそのディスクは、ローカルに格納されます。Oracle VM Serverは1つのみであるため、リソースへのアクセスは保証されます。
注意: ローカル記憶域要素の一部のプロパティは、Oracle VM Serverの管理ペインを使用して編集できます(「Hardware」ビューに移動して該当するサーバーを選択し、管理ペインで「Physical Disks」タブを開きます)。このサーバーが使用できるディスクが表示されます。 |
ストレージ・サーバーを削除する前に、記憶域リポジトリおよびそのストレージ・サーバー上のサーバー・プールのファイル・システムを削除する必要があります。
ストレージ・サーバー上に記憶域リポジトリがある場合は、仮想マシン・テンプレート、仮想ディスク、アセンブリおよびISOファイルなどのすべての仮想マシン・リソースをリポジトリから削除する必要があります。記憶域リポジトリがファイル・サーバー(NFSサーバー)上にある場合は、リポジトリを削除する前に、記憶域リポジトリの所有権をリリースする必要もあります。所有されていない記憶域リポジトリを削除すると、Oracle VM Managerデータベースからのこのリポジトリの削除のみが実行され、リポジトリ内のファイルは削除されません。記憶域リポジトリがストレージ・アレイ(物理ディスク)上にある場合は、記憶域リポジトリのすべてのコンテンツを削除する必要があります。次に、記憶域リポジトリが存在するファイル・システムも削除する必要があります。
ストレージ・サーバーにサーバー・プールのファイル・システムがある場合、サーバー・プールのファイル・システムを削除するには、サーバー・プールを削除する必要があります。
ストレージ・サーバーを停止して廃棄できます。
仮想マシン・リソースの使用の詳細は、第8.5項「仮想マシン・リソース」を参照してください。サーバー・プールの削除の詳細は、第7.7.5項「サーバー・プールの削除」を参照してください。記憶域リポジトリの所有権のリリースの詳細は、第5.8.3項「記憶域リポジトリの編集」を参照してください。記憶域リポジトリの削除の詳細は、第5.8.4項「記憶域リポジトリの削除」を参照してください。
マルチパスは、サーバーCPUとそのストレージ・デバイス間に複数の物理パスを作成する技術です。これによってフォルト・トレランスが向上し、パフォーマンスが強化されます。Oracle VMでは、マルチパスI/Oがデフォルトでサポートされます。SANディスクがOracle VM Managerで検出される必要があるため、Oracle VM Serverはマルチパスが有効な状態でインストールされます。
マルチパスの構成情報は/etc/multipath.conf
に格納されており、よく使用されるSANハードウェアの様々な構成詳細とともに、Oracle VMの固有の設定を含みます。ほとんどの場合、ユーザーはこのファイルを変更する必要がありません(変更しないことをお薦めします)。ファイルの内容を調べることは、それがOracle VMでどのように機能するかと、SANでマルチパスが使用されず、LUNが表示されない場合に構成が必要となる可能性がある内容をより深く理解するのに役に立つ場合があります。
この項では、マルチパスを有効にするのにユーザー処理が必要な場合にこれを行う方法について説明します。必要な手順は、実装されている記憶域ハードウェアによって異なります。そのため、次の手順はガイドラインとして使用し、SANハードウェアのドキュメントを優先する必要があります。
注意: すべての手順が環境に適用されるわけではありません。手順の詳細なリスト、手順を実行する順序および固有の環境との手順の関連性については、SANハードウェア・ベンダーのドキュメントを参照してください。 |
マルチパスを構成する一般的な手順:
Oracle VM環境で使用するSANハードウェアに適用するマルチパス構成を設計して文書化します。
ホスト・バス・アダプタ(HBA)のドライバが存在することを確認します。存在しない場合は、ドライバをインストールします。
ファイバ・チャネル・スイッチで適切なゾーニングを構成します。
ストレージ・アレイでLUNマスキングを構成します。
ベンダーのドキュメントで指示されている場合は、ディスク・サブシステムでパス最適化機能(ALUAなど)を構成します。
SANハードウェアにアクセスできる各Oracle VM Serverでファブリック情報をチェックします。multipath -ll
および関連コマンドを使用します。
Oracle VM Serverのファイル/etc/multipath.conf
に必要な変更を加えます。
注意: 環境内にあるすべてのOracle VM Serverのマルチパス構成ファイルに、まったく同じ変更を加える必要があります。 |
マルチパス・デーモン(multipathed)を再起動します。
ファブリック情報を再度チェックして、構成を確認します。
ベンダーのドキュメントで指示されている場合は、initrdを再構築します。
Oracle VM Serverを再起動して、再起動後にSANおよびマルチパス構成が適切に表示されることを確認します。
詳細は、SANハードウェア・ベンダーのドキュメントを参照してください。
注意: マルチパスSANからのブートは現在サポートされておらず、SANからのブートは単一パス構成でのみ可能です。 |
記憶域リポジトリを作成して構成し、サーバー・プール内のOracle VM Serverに1つ以上の記憶域リポジトリを提示するには、Oracle VM Managerを使用します。この章では、サーバー・プール内のOracle VM Serverに対して記憶域リポジトリを使用可能にするために、物理記憶域ハードウェア、LUN、ファイル・システムなどの検出後に実行する操作のフローについて説明します。記憶域リポジトリがアクセス可能になると、記憶域リソースを追加して、これらのリソースでVMを構築することを開始できます。
環境内のOracle VM Serverの構成によっては、記憶域リポジトリの作成に次の制限が適用される場合があります。
クラスタリング機能がないサーバー・プールを使用する場合は、ファイル・サーバー(NFS)上の記憶域のみが使用可能です。
ローカル記憶域またはOracle VM Serverの未使用のディスクは、ローカル・ストレージ・アレイのLUNとして検出されます。そのため、これらは、クラスタ化されたサーバー・プールとともにのみ記憶域リポジトリに使用できます。ローカル記憶域で単一サーバーの設定を使用する場合は、サーバー・プールでクラスタリングをアクティブにする必要があり、記憶域リポジトリのローカル・ディスクのみでなく、サーバー・プールのファイル・システムの場所(定義上、ローカル・ディスクに配置できない)も必要であることに注意してください。
複数のサーバー、アクティブなクラスタリングおよび接続ストレージ(NFS、iSCSI、ファイバ・チャネル)を備えたサーバー・プールのみが、高可用性、ロード・バランシングおよび同様の高度な機能を提供できます。
Oracle VM Managerを使用すると、その制御下の記憶域リポジトリで多数の管理操作を実行できます。表5-2に、記憶域リポジトリのレベルで可能な操作を示します。Oracle VM Managerでこれらの機能にアクセスするには、「Home」ビューを開いて「Server Pools」を選択し、「Repositories」タブに移動します。
注意: 記憶域リポジトリが個々のサーバーに提示されますが、これはすべてのリポジトリが必ずしも使用可能であるわけではないことを意味します(たとえば、特定のOracle VM ServerにVMをデプロイした場合など)。記憶域リポジトリにアクセスできるサーバーを確認するには、表でリポジトリを選択し、右側でアクセスのステータスを確認します。 |
表 5-2 記憶域リポジトリの管理操作
操作 | 説明 |
---|---|
リポジトリの作成 |
第5.8.1項「記憶域リポジトリの作成」を参照してください。 |
リポジトリの提示 |
第5.8.2項「記憶域リポジトリの提示」を参照してください。 |
リポジトリの編集 |
第5.8.3項「記憶域リポジトリの編集」を参照してください。 |
リポジトリの削除 |
第5.8.4項「記憶域リポジトリの削除」を参照してください。 |
リポジトリのリフレッシュ |
表でリポジトリを選択し、「Refresh」をクリックします。 Oracle VM Managerによって、選択したリポジトリのディスクの内容が再度確認されます。検出された変更は、記憶域リポジトリの様々な内容のタブ(アセンブリ、ISOファイルなど)に反映されます。 |
既存のリポジトリの検出 |
なんらかの理由で、いずれかの記憶域プロバイダに存在する記憶域リポジトリがOracle VM Managerに表示されない場合(たとえば、Oracle VM Managerホストが再インストールされた場合、または、記憶域プロバイダが停止したか別のアドレスに移動された場合)は、「Discover」をクリックして、Oracle VM Managerによって制御される記憶域プロバイダの既存の記憶域リポジトリ・コンテンツを検出できます。 |
第5.6.1項「ファイル・サーバーの登録および構成」と第5.6.3項「ストレージ・アレイの登録および構成」で説明されている準備フェーズを完了すると、Oracle VM Managerでは、記憶域リポジトリとして使用可能な、基礎となる物理記憶域プロバイダが完全に認識されています。
サーバー・プールの記憶域リポジトリを作成するには、次の手順を実行します。
Oracle VM Managerで「Home」ビューを開いて、ナビゲータで「Server Pools」を選択します。
管理ペインで、「Repositories」タブを開きます。
「Create」をクリックして、新しい記憶域リポジトリを作成します。
「Create Repository」ダイアログ・ボックスで、次の情報を入力します。
Name: リポジトリの識別に使用する名前
Repository Location: ネットワーク・ファイル・サーバーまたは物理ディスク
場所として物理ディスクを選択した場合は、手順7に進みます。場所としてネットワーク・ファイル・サーバーを選択した場合は、検索アイコンをクリックし、「Select Network File System」ダイアログ・ボックスで場所を選択します。
リストからネットワーク・ファイル・サーバーを選択します。使用可能なファイル・システムが表示されます。リフレッシュされたファイル・システムのみが使用可能であることに注意してください。
記憶域リポジトリをインストールするファイル・システムを選択します。「OK」をクリックします。
必要に応じて、次の追加情報を指定します。
Share Path: 選択したファイル・システム上のサブディレクトリへのパス
Description: この記憶域リポジトリについて追加する情報
手順9に進みます。
リポジトリの場所として物理ディスクを選択した場合は、検索アイコンをクリックし、「Select Physical Disk」ダイアログ・ボックスで場所を選択します。
ストレージ・アレイと、該当する場合はそれぞれのリストからボリューム・グループを選択します。使用可能なディスクが表示されます。
記憶域リポジトリをインストールする物理ディスクを選択します。「OK」をクリックします。
リストから、この記憶域リポジトリが提供されるサーバー・プールを選択します。必要に応じて、「Description」フィールドにこの記憶域リポジトリについての追加情報を入力します。
注意: 記憶域リポジトリをLUNに作成する場合は、クラスタ化されたサーバー・プールのみが選択可能です。 |
「OK」をクリックして新しい記憶域リポジトリを作成します。新しい記憶域リポジトリが管理ペインの「Repositories」表に表示されます。
この時点で、記憶域リポジトリの作成は完了し、Oracle VM Managerは所有権を取得しています。ただし、Oracle VM Serverでこれを使用して仮想マシン、ISOファイル、テンプレートなどを格納できるようにするには、最初にサーバー・プール内のOracle VM Serverにリポジトリを提示する必要があります。詳細は、第5.8.2項「記憶域リポジトリの提示」を参照してください。
記憶域リポジトリを準備して作成しても、移入するにはOracle VM Serverに対して使用可能にすることも必要です。通常、記憶域リポジトリはサーバー・プール内のすべてのOracle VM Serverに対して提示します。ただし、記憶域を異なる方法で設定する必要がある場合、Oracle VM Managerでは、サーバー・プール全体ではなく、選択したOracle VM Serverに対してリポジトリを提示できます。
記憶域リポジトリをOracle VM Serverに提示することは、ファイル・システムをマウントすることに相当します。実質的に、リポジトリをサーバー・プール内のOracle VM Serverに提示すると、リポジトリのファイル・システムは各Oracle VM Serverのrootユーザーによってマウントされます。これは、Oracle VM設定のHA構成の重要な要素です。
記憶域リポジトリをOracle VM Serverに提示するには、次の手順を実行します。
「Home」ビューを開き、ナビゲータで「Server Pools」を選択します。
管理ペインで、「Repositories」タブを開きます。
任意の記憶域リポジトリを選択して「Present」をクリックし、1つ以上のOracle VM Serverにリポジトリを提示または公開します。
「Present Repository」ダイアログ・ボックスで、矢印ボタンを使用して目的のOracle VM Serverを左側から右側のペインに移動します。
「OK」をクリックして、記憶域リポジトリをOracle VM Serverに提示します。
注意: NFSベースの記憶域リポジトリは、同じOracle VM Managerによって制御される複数のサーバー・プールで共有できます。OCFS2ベースの記憶域リポジトリは、常に、クラスタ化された単一のサーバー・プールに属します。 |
これで、外部記憶域の設定が完了しました。記憶域リポジトリはOracle VM Serverに対して使用可能になっています。Oracle VM Serverでサーバー・プールを作成して、この記憶域リポジトリを指定します(第7章「サーバー・プールの管理」を参照)。サーバー・プールの準備ができると、仮想マシンの作成を開始できます。
記憶域リポジトリを編集するには、次の手順を実行します。
表でリポジトリを選択し、「Edit」をクリックします。
「Edit Repository」ダイアログ・ボックスで、次の変更を行うことができます。
Name: 選択したリポジトリの名前を編集します。
Description: 必要に応じて、選択したリポジトリの詳細な説明を入力します。
Release Ownership: 別のOracle VM Managerがこのリポジトリを使用できるようにする場合は、このチェック・ボックスを選択します。
「OK」をクリックして、記憶域リポジトリの変更を保存します。
記憶域リポジトリを削除するには、次の手順を実行します。
削除する記憶域リポジトリからすべてのコンテンツが削除されていることを確認します。
表でリポジトリを選択し、「Delete」をクリックします。
この記憶域リポジトリを削除することを確認して「OK」をクリックし、続行します。
「OK」をクリックして、削除操作を実行します。
サーバー・プールがOracle VM Server、ネットワークおよび記憶域で完全に構成されている場合は、記憶域リポジトリでのすべての管理およびメンテナンス操作にOracle VM Managerを使用します。リポジトリに存在する記憶域リソース(ISOファイル、テンプレートなど)もOracle VM Managerを介して管理します。記憶域リポジトリ内の記憶域リソースでの管理操作の詳細は、第8.5項「仮想マシン・リソース」を参照してください。仮想マシンで各種の記憶域エンティティを使用する手順の詳細は、第8章「仮想マシンの管理」を参照してください。