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Oracle Solaris 11.1 ネットワークパフォーマンスの管理     Oracle Solaris 11.1 Information Library (日本語)
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ドキュメントの情報

はじめに

1.  ネットワークパフォーマンス管理の概要

2.  リンクアグリゲーションの使用

3.  VLAN の操作

4.  ブリッジネットワークの管理 (タスク)

5.  IPMP の概要

Oracle Solaris での IPMP

IPMP を使用する利点

IPMP を使用するための規則

IPMP のコンポーネント

IPMP インタフェース構成のタイプ

IPMP の動作方法

IPMP のアドレス指定

データアドレス

検査用アドレス

IPMP での障害検出

プローブベースの障害検出

検査用アドレスを使用するプローブベースの障害検出

検査用アドレスを使用しないプローブベースの障害検出

グループ障害

リンクベースの障害検出

障害検出と匿名グループ機能

物理インタフェースの回復検出

FAILBACK=no モード

IPMP と動的再構成

6.  IPMP の管理 (タスク)

7.  LLDP によるネットワーク接続情報の交換

8.  Oracle Solaris におけるデータセンターブリッジング機能の操作

9.  Oracle Solaris でのエッジ仮想ブリッジング

10.  統合ロードバランサ (概要)

11.  統合ロードバランサの構成

12.  統合ロードバランサの管理

13.  仮想ルーター冗長プロトコル (概要)

A.  リンクアグリゲーションの種類: 機能比較

B.  リンクアグリゲーションと IPMP: 機能比較

索引

Oracle Solaris での IPMP

Oracle Solaris では、IPMP には次の機能があります。

IPMP を使用する利点

インタフェースの故障や、インタフェースが保守のためにオフラインになっている場合など、さまざまな要因によりインタフェースが使用不可能になる可能性があります。IPMP を使用しないと、その使用不可能になったインタフェースに関連付けられたどの IP アドレスを使用しても、システムと通信できなくなります。さらに、それらの IP アドレスを使用する既存の接続が切断されます。

IPMP を使用すると、複数の IP インタフェースを 1 つの IPMP グループに構成できます。このグループは、ネットワークトラフィックを送受信するデータアドレス付きの IP インタフェースのように機能します。グループ内のベースとなるインタフェースの 1 つが故障すると、グループ内の残りのアクティブなベースとなるインタフェースの間でデータアドレスが再分配されます。したがって、インタフェースの 1 つが故障しても、グループはネットワークの接続性を維持します。IPMP では、グループで最低 1 つのインタフェースが使用可能であれば、ネットワーク接続を常に使用できます。

IPMP は、IPMP グループ内のインタフェースセット全体にアウトバウンドネットワークトラフィックを自動的に分散させることにより、全体的なネットワークパフォーマンスを向上させます。このプロセスは、アウトバウンド「負荷分散」と呼ばれます。システムはさらに、アプリケーションによって発信元 IP アドレスが指定されなかったパケットに対して発信元アドレス選択を実行することにより、インバウンド負荷分散も間接的に制御します。ただし、アプリケーションが発信元 IP アドレスを明示的に選択した場合は、システムはその発信元アドレスを変更しません。


注 - リンクアグリゲーションは IPMP と同様の機能を実行して、ネットワークのパフォーマンスと可用性を向上させます。これら 2 つのテクノロジの比較については、付録 B リンクアグリゲーションと IPMP: 機能比較を参照してください。


IPMP を使用するための規則

IPMP グループの構成はシステム構成によって決まります。

IPMP を使用するときは、次の規則に従ってください。

たとえば、3 つのインタフェースを備えたシステムが 2 つの別個の LAN に接続されているとします。一方の LAN に 2 つの IP インタフェースが接続し、他方の LAN に単一の IP インタフェースが接続します。この場合、最初の規則により、1 つ目の LAN に接続する 2 つの IP インタフェースは 1 つの IPMP グループとして構成される必要があります。2 番目の規則のため、2 つ目の LAN に接続する単一の IP インタフェースがその IPMP グループのメンバーになることはできません。単一の IP インタフェースでは、IPMP 構成は必須ではありません。ただし、その単一のインタフェースの可用性をモニターするために、そのインタフェースを 1 つの IPMP グループに構成してもかまいません。単一インタフェースの IPMP 構成の詳細については、「IPMP インタフェース構成のタイプ」を参照してください。

別のケースとして、1 つ目の LAN へのリンクが 3 つの IP インタフェースから構成され、もう 1 つのリンクが 2 つのインタフェースから構成される場合を考えます。この設定は 2 つの IPMP グループの構成を必要とします (1 つ目の LAN に接続する 3 つのインタフェースから成るグループと、2 つ目の LAN に接続する 2 つのインタフェースから成るグループ)。

IPMP のコンポーネント

IPMP のソフトウェアコンポーネントは次のとおりです。

IPMP インタフェース構成のタイプ

IPMP 構成は、通常同じ LAN に接続された同じシステムの複数の物理インタフェースで構成されます。これらのインタフェースは、次のいずれかの構成の IPMP グループに属することができます。

単独インタフェースをそれ自体の IPMP グループ内で構成することもできます。単独インタフェース IPMP グループは、複数のインタフェースを持つ IPMP グループと同じように動作します。ただし、この IPMP 構成は、ネットワークトラフィックの高可用性を提供しません。ベースとなるインタフェースが故障すると、システムはトラフィックを送受信する機能をすべて失います。単一インタフェースの IPMP グループを構成する目的は、障害検出を使用してインタフェースの可用性をモニターすることです。インタフェースで検査用アドレスを構成することにより、プローブベースの障害検出を使用してマルチパスデーモンでそのインタフェースを追跡できます。

単一インタフェースの IPMP グループ構成は通常、Oracle Solaris Cluster ソフトウェアなど、より幅広いフェイルオーバー機能を備えたほかのテクノロジとともに使用されます。システムは引き続き、ベースとなるインタフェースのステータスをモニターできますが、Oracle Solaris Cluster ソフトウェアは、障害発生時にネットワークの可用性を保証するための機能を提供します。Oracle Solaris Cluster ソフトウェアの詳細は、『Oracle Solaris Cluster Concepts Guide』を参照してください。

ベースとなるインタフェースが削除されたグループなど、ベースとなるインタフェースを持たない IPMP グループも存在できます。この IPMP グループは破棄はされませんが、このグループを使用してトラフィックを送受信することはできません。このグループでベースとなるインタフェースがオンラインになると、それらのインタフェースに IPMP インタフェースのデータアドレスが割り当てられ、システムがネットワークトラフィックのホスティングを再開します。

IPMP の動作方法

IPMP は、IPMP グループの作成時に構成されたアクティブインタフェースとスタンバイインタフェースの元の数を保持しようとすることによって、ネットワークの可用性を維持します。

グループ内の特定のベースとなる IP インタフェースの可用性を判定するための IPMP 障害検出は、リンクベースまたはプローブベース、あるいはその両方にすることができます。あるベースとなるインタフェースが故障したと IPMP が判定した場合、そのインタフェースは故障としてフラグが付けられ、使用できなくなります。次に、故障したインタフェースに関連付けられていたデータ IP アドレスが、グループ内で機能している別のインタフェースに再分配されます。さらに、使用可能な場合は、スタンバイインタフェースも配備され、アクティブインタフェースの元の数を維持します。

次の図に示すような、3 つのインタフェースを含むアクティブ - スタンバイ構成の IPMP グループ itops0 を考えます。

図 5-1 IPMP アクティブ-スタンバイ構成

image:itops0 のアクティブ - スタンバイ構成

IPMP グループ itops0 は次のように構成されています。


注 - 図 5-1図 5-2図 5-3、および 図 5-4 のアクティブ、オフライン、スタンバイ、および故障の各領域は、ベースとなるインタフェースのステータスを示しているだけであり、物理的な場所を示しているわけではありません。この IPMP 実装内では、インタフェースまたはアドレスの物理的な移動や IP インタフェースの転送は一切発生しません。これらの領域の役割は、ベースとなるインタフェースのステータスが故障、修復のいずれかの結果としてどのように変化するかを示すことだけです。


さまざまなオプションとともに ipmpstat コマンドを使用して、既存の IPMP グループに関する特定の種類の情報を表示できます。その他の例については、「IPMP 情報のモニタリング」を参照してください。

次の ipmpstat コマンドは、図 5-1 の IPMP 構成に関する情報を表示します。

# ipmpstat -g
GROUP     GROUPNAME     STATE     FDT        INTERFACES
itops0    itops0        ok        10.00s     net1 net0 (net2)

グループのベースとなるインタフェースに関する情報を表示するには、次のように入力します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS      LINK        PROBE     STATE
net0        yes        itops0    -------    up          ok        ok
net1        yes        itops0    --mb---    up          ok        ok
net2        no         itops0    is-----    up          ok        ok

IPMP は、アクティブインタフェースの元の数を維持できるようにベースとなるインタフェースを管理することで、ネットワークの可用性を維持します。したがって、net0 が故障すると、IPMP グループが引き続き 2 つのアクティブインタフェースを持てるように、net2 が配備されます。net2 のアクティブ化を次の図に示します。

図 5-2 IPMP でのインタフェースの故障

image:IPMP グループのアクティブインタフェースの故障

注 - 図 5-2 のデータアドレスとアクティブインタフェースとの 1 対 1 のマッピングは、図を単純化するためのものにすぎません。IP カーネルモジュールは、データアドレスとインタフェースとの間の 1 対 1 の関係に必ずしも縛られることなく、データアドレスをランダムに割り当てることができます。


ipmpstat コマンドは、図 5-2 の情報を次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS      LINK        PROBE     STATE
net0        no         itops0    -------    up          failed    failed
net1        yes        itops0    --mb---    up          ok        ok
net2        yes        itops0    -s-----    up          ok        ok

net0 が修復されると、アクティブインタフェースとしてのステータスに戻ります。一方、net2 は元のスタンバイステータスに戻されます。

別の故障シナリオを図 5-3 に示します。このシナリオでは、スタンバイインタフェース net2 が故障します (1)。そのあと、アクティブインタフェースの 1 つである net1 が管理者によってオフラインに切り替えられます (2)。その結果、この IPMP グループには、機能しているインタフェース net0 が 1 つ残されます。

図 5-3 IPMP でのスタンバイインタフェースの故障

image:IPMP グループのスタンバイインタフェースの故障

ipmpstat コマンドは、図 5-3 の情報を次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS       LINK        PROBE     STATE
net0        yes        itops0    -------     up          ok        ok
net1        no         itops0    --mb-d-     up          ok        offline
net2        no         itops0    is-----     up          failed    failed

この故障では、インタフェースが修復されたあとの回復の動作は異なります。この回復プロセスは、修復後の構成と比較した IPMP グループのアクティブインタフェースの元の数に依存します。この回復プロセスを次の図に視覚的に示します。

図 5-4 IPMP の回復プロセス

image:IPMP の回復プロセス

図 5-4 で、net2 が修復されると、通常、スタンバイインタフェースとしての元のステータスに戻ります (1)。ところが、この IPMP グループは依然として、アクティブインタフェースの元の数である 2 個を反映していません。これは、net1 が引き続きオフラインのままになっているからです (2)。したがって、IPMP は代わりに net2 をアクティブインタフェースとして配備します (3)。

ipmpstat コマンドは、修復後の IPMP シナリオを次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS       LINK        PROBE     STATE
net0        yes        itops0    -------     up          ok        ok
net1        no         itops0    --mb-d-     up          ok        offline
net2        yes        itops0    -s-----     up          ok        ok

FAILBACK=no モードも構成されたアクティブインタフェースが故障に関与している場合にも、同様の回復プロセスが発生します。その場合、故障したアクティブインタフェースが修復されても、自動的にはアクティブステータスに戻りません。図 5-2net0FAILBACK=no モードに構成されているとします。そのモードでは、修復された net0 は、最初はアクティブインタフェースであったとしても、スタンバイインタフェースになります。この IPMP グループのアクティブインタフェースの元の数である 2 個を維持するように、インタフェース net2 はアクティブのままになります。

ipmpstat コマンドは、回復情報を次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS      LINK        PROBE     STATE
net0        no         itops0    i------    up          ok        ok
net1        yes        itops0    --mb---    up          ok        ok
net2        yes        itops0    -s-----    up          ok        ok

このタイプの構成の詳細については、FAILBACK=no モード」を参照してください。