リファレンス・ガイド

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CICS Runtimeで使用する概念

 


目的

UNIX/Linux環境へのCICSアプリケーションの移行には、様々な手法があります。この項の目的は、CICS Runtimeとは何であり、何でないか、どういう機能を持ち、どういう機能を持たないかを説明することです。特に、CICS Runtimeは、UNIX/LinuxシステムにおけるCICSアプリケーション環境のエミュレーションではないという点の説明に狙いがあります。CICS Runtimeは、COBOLプログラムに含まれるアプリケーション・ロジックを維持していますが、そのロジックの実行に関しては、Tuxedoのクライアント/サーバー・アーキテクチャと、総合的に互換性があります。CICS Runtimeは、プログラム内のCICSコーディングと、Tuxedo OLTPシステム、UNIX\Linux OSおよびOracleデータベースの間にあって、トランザクションの実行と、永続性の提供を担当するミドルウェアです

 


CICS Runtimeの目標

CICS Runtimeの最初の狙いは、ネイティブのTuxedo機能に加えてAPIエミュレーション・ランタイムを使用することにより、移行済のプログラムが変更なしで(構文の調整を除く)動作できるようにすることにより、CICSアプリケーションにすでにつぎ込んだ大量の投資を保全することです。このため、移行の影響は次の点にとどまります。

同時に、CICS Runtimeは、アプリケーションの機能を保護および保証するTuxedoに基盤を置く堅牢な本番環境で完全に実行されます。

実際、CICS Runtimeは、アプリケーションAPIに影響を与えることなく、お客様にTuxedo分散アーキテクチャの利点を提供します。Tuxedoの主要な長所を活用し、SOAなど、将来への発展を可能にします。

 


CICS Runtimeアーキテクチャ

ソフトウェア開発の概要

次の図に、移行ソースとターゲット・プラットフォーム上にアプリケーション環境を作成するために使用されるソフトウェア・ブリックを示します。

図2-1 移行ソフトウェア環境

移行ソフトウェア環境

一番上と一番下のブリックを除いて、ソフトウェア開発者が変更するものはほとんどありません。

プログラムによるインタフェース

CICS Runtimeには、z/OS CICS APIの機能を再現し、同等のサービスを、移行されたCICSアプリケーションに提供する、CICS APIのライブラリが用意されており、さらに、3270画面をサポートするBMS機能も提供します。

z/OSプラットフォームの上のCICSアプリケーションでは、リソースとのすべての対話は、EXEC CICS APIを介して行われます(DB2を除く)。

CICS Preprocessor (Z/OS上の)は、これらのEXEC CICSを、CICSライブラリの呼出しに変換します。

ターゲット・プラットフォームでも、同じ考え方が使用されます。CICS Runtime Preprocessor (CICS Runtimeのコンパイル時ツール)が、これらのEXEC CICSを、CICS Runtimeライブラリへの呼出しに変換します。

ソフトウェア開発者の場合、変更点はほとんどありません。CICS Runtimeプリプロセッサは、呼び出されるCICS APIを自動的に変更します。使用できるコマンドには一部制限があります。これについては、CICSコマンドとパラメータの範囲に関する項に記載されています。

 


システム管理の概要

ソフトウェア管理者にとっては、変わらない部分はほとんどありません。実行されるアプリケーションが同じで、エンド・ユーザーは依然として同じ3270端末を使用してアプリケーションにアクセスします。それ以外はすべて異なり、ネイティブのTuxedoアーキテクチャに依存し、COBOLプログラムとTuxedoの間のAPIを提供するCICS Runtimeの支援を得てトランザクションを管理します。

図2-2 CICS Runtimeのアーキテクチャ

CICS Runtimeアーキテクチャ

CICS Runtimeは、実行時サポートを提供することで、変換済CICSアプリケーションがTUXEDO /Tに基づく堅牢な本番対応環境で動作することを可能にし、その一方で、アプリケーションに、機能的に同等の動作を提供します。

デプロイメント面では、単一のTUXEDOドメイン、または、1つのTUXEDOドメインを介して通信するいくつかのドメインにある、1つまたは複数のマシンにシステムを分散できます。

管理面では、管理はネイティブのTUXEDOで、すべてのtuxedo管理ツールを通常どおり使用でき、端末の定義や、トランザクション優先プログラム表など、CICSのみの概念に対応するいくつかの管理表が追加されます。

CICS Runtime環境におけるz/OS CICSの概念

z/OS CICS環境での作業に習熟した開発者や管理者は、ソース・プラットフォーム上で慣れている概念が、ターゲット・プラットフォーム上でどのように実装されているかを知りたいと思うものです。

表2-1に、ソース・プラットフォームの概念とターゲット・プラットフォーム上でそれに相当するものとの関係を示します。

表2-1 ソース・プラットフォームの概念
z/OS CICS
CICS Runtime
CICSセッション
TUXEDOセッション
トランザクション
トランザクション優先プログラム
Tuxedoサービス
サービスに関連付けられているプログラム
L.U.W.
SYNCPOINT [ROLLBACK]
トランザクション
tpcommit() / tpabort()
COBOLプログラム
COBOLプログラム
CALL "SUBPGMX"
CALL "SUBPGMX"
EXEC CICS LINKローカル
メモリー・スタッキングと分離を使用するローカル呼出し。
DPL(分散プログラム・リンク)
tuxedoサービスへのTpcall
対話型プログラム疑似対話
tpconnect()/tpsend()/tpreceive()
Request/Response tpcall()/tpreply()
COMMAREA(状態情報/コンテキスト)
Tuxedoはステートレスで、コンテキストはバッファを介して渡されます。

管理タスク

このガイドの大部分では、Tuxedoシステム上でCICS Runtimeとともに実行されるCICSアプリケーションのリソースを管理する方法を説明します。CICS Runtimeは、わずかな予備リソース・ファイルおよびサーバーとともにネイティブ環境でTuxedoを使用します。

次に示すような、Tuxedoの堅牢な特徴は、すべてこれによるものです。

 


CICS Runtime COBOL

ART CICS Runtimeは、Cobol Micro FocusまたはCOBOL ITで実行されます。

Micro Focus COBOLは、まだ参照です。COBOL ITでサポートされていないMicro Focusの機能は、この製品には含めることができません。

ART CICS Runtimeとの互換性を維持するには、COBOL ITはバージョン3.3.12以上であることが必要です。CICSプログラムは、以前のバージョンでCOBOL ITによって一度コンパイルされている場合は、再コンパイルする必要があります。

BDBファイルは、XAモードの場合のみ、COBOL ITで使用できます。

サブプログラム呼出しおよびMicro Focus COBOLでのリンク・レベル

サブプログラムの作業記憶域は、サブプログラムが1つのリンク・レベルで初めて呼び出されるときに初期化されます。戻るリンクの後、同じレベルの新しいリンクでサブプログラムが初めて呼び出されるとき、作業記憶域は再び初期化されます。

例:

LINK (level 1)+

SP1 first call -(working initialized)

RETURN

LINK (lev 1)

SP1 first call -(working initialized)

サブプログラムが下位リンクレベルで呼び出されると、作業記憶域は初期化されません。

例:

LINK (lev 1)

SP1 first call -(working initialized)

LINK (Lev 2)

SP1 first call -(working not initialized)

この動作はMicro Focus COBOL特有のもので、COBOL ITには当てはまりません。COBOL ITでは、どのリンク・レベルでサブプログラムが呼び出されても、初期化は行われません。

 


CICS Runtime C

ART CICS Runtime Cのサポートは、引き続きCOBOLに依存します。すべてのCICS CプログラムはCOBOL/cobコンパイラでコンパイルし、COBOLランタイムで実行する必要があります。このため、COBOLインストーラが必須であり、現在はMicrofocus COBOLのみがサポートされています。

CICS Runtime Cの詳細は、 CICS RuntimeのCプログラム・サポートに関する項を参照してください。


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