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Oracle® Virtual Assembly Builderユーザーズ・ガイド
11g リリース1 (11.1.1.6)
B66713-02
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1 概要

この章では、Oracle Virtual Assembly Builderの主要な概念およびコンポーネントについて説明します。内容は次のとおりです。

1.1 Oracle Virtual Assembly Builderの概要

増加する運用コスト、非効率的なハードウェア使用、急速に拡大するデータ・センターにより、何年もの間、仮想化は最も有力なITテクノロジとなっていました。デスクトップおよびサーバー環境の仮想化は、ハードウェアの使用率を上げ、必要なハードウェアの全体数を減らすことで、運用コストを下げるという最終的な約束を果たすまで発展してきました。

仮想化によって数多くの問題が解決されている一方、複数の層およびコンポーネントで構成されている複雑なアプリケーションのデプロイおよび管理はいまだに難しいことです。さらに、仮想化は急速に商品化され、注目は現在、アプリケーションを直接仮想化して仮想化にかかわる次の段階の利益を得ることに移っています。

1.1.1 仮想化について

仮想化とは、オペレーティング・システムおよびアプリケーションからCPU、メモリー、ストレージ、ネットワーク・インタフェースなどのハードウェア・リソースを抽象化するプロセスです。ハードウェアでは、仮想化ソフトウェア(ハイパーバイザなど)が稼働します。これにより、複数のオペレーティング・システムをインストールして、それぞれ固有のセキュアな物理環境で、同時に実行したり単独で実行したりできます。

仮想化の目標は、完全な環境のデプロイメントをより速く、簡単に、効率的にすることです。仮想化の機能を統合して、完全なスタックのデプロイメントおよび管理を容易にする必要があります。仮想化によって、スタック全体がデプロイ、管理およびサポートしやすくなるようにする必要があります。

1.1.2 ミドルウェアの仮想化の課題

仮想化された環境でのアプリケーションの開発およびデプロイメントには、テスト、ステージング、本番などの一連の運用段階があります。ソフトウェア・コンポーネントの集合の一貫性および正確性を保証する機能が既存の仮想化インフラストラクチャにはほとんどないため、これらの段階の間を遷移することが難しいことがあります。P2V (物理から仮想)またはV2V (仮想から仮想)の遷移を実現することは単純に、元のデプロイメントの仮想イメージを作成し、次にターゲット環境で作成した仮想イメージをインスタンス化するように見えます。Oracle VMを使用すると、このようなソリューションを実装できます。

仮想化ソリューションを手作りすることには、様々な落とし穴があります。ネットワーク接続の詳細は、デプロイメント環境で変わることがありますが、このような変更を実行したり、追跡する自動メカニズムは存在しません。イメージは、デプロイメント環境の特定の詳細に固有の場合があります。イメージの急増は、スプロール化を招き、オペレーティング・システム・レイヤーおよびアプリケーション・レイヤーでそれぞれのイメージにパッチを適用する必要があるため、メンテナンスのオーバーヘッドが発生します。このような落とし穴は、予期しないコストを生み出します。

1.1.3 Oracle Virtual Assembly Builderについて

Oracle Virtual Assembly Builderは、インストールされたOracleコンポーネントを仮想化して変更した後、ユーザー独自の環境にデプロイするためのツールです。Oracle Virtual Assembly Builderを使用して、ソフトウェア・アプライアンスと呼ばれるアーティファクト内の既存のソフトウェア・コンポーネントの構成を取得します。その後、アプライアンスをグループ化して、その関係をソフトウェア・アセンブリと呼ばれるアーティファクトに定義できます。アセンブリは、完全な複数層アプリケーション・トポロジを記述するブループリントを提供します。

Oracle Virtual Assembly Builderにより、アセンブリ内のアプライアンス間の論理的な結び付きを、アセンブリ編集と呼ばれるプロセスで再構成できるようになります。目的のアセンブリ構成がアーカイブされている場合は、Oracle Virtual Assembly Builderを使用してデプロイメント用のアセンブリを準備し、環境にデプロイします。コンポーネントおよびプロセスについては、後述します。

図1-2 Oracle Virtual Assembly Builder

図1-2の説明が続きます
「図1-2 Oracle Virtual Assembly Builder」の説明

1.1.4 ソフトウェア・アプライアンス

ソフトウェア・アプライアンス(アプライアンス)は、単一のソフトウェア・コンポーネントとそのローカル実行環境を表します。

1.1.5 ソフトウェア・アセンブリ

ソフトウェア・アセンブリ(アセンブリ)は、デプロイ時に連携するように自動的に構成される、相互に関連付けられたソフトウェア・アプライアンスの集まりです。アセンブリは、最小限のユーザー入力により、ハードウェア・リソースのプールにデプロイされます。

アセンブリは、単なる相互に接続されたアプライアンスの集合であると同時に、本番環境で便利なように次のような一連の機能を提供する必要があります。

  • アプライアンスおよび外部システムの構成を可能にする機能

  • 簡単にカスタマイズできるメタデータ形式で構成を具体化する機能

  • 相互依存性を反映するようにアプライアンスの開始順序を定義する機能(オプション)

  • 既存の管理インフラストラクチャに組み入れる管理ドメインを提供し、メタデータ定義、デプロイメント、監視および診断を可能にする機能

アプライアンスで構成されている他に、アセンブリには外部システムへの参照を含めることができます。これは、アセンブリには含めることができないデータベース、サーバーまたはセキュリティ・プロバイダなどのインフラストラクチャを表すのに必要です。

要約すると、デプロイメント用に事前作成アセンブリを作成できるという考えは非常に強力で、運用コストや複雑度を低減する利点が数多くあります。これには次のものがあります。

  • 複雑度を増すことなくアセンブリの変化を考慮に入れても、作成中のアセンブリを簡単にレプリケートできます。

  • アセンブリが開発環境、テスト環境および本番環境を移動するときの、構成エラーのリスクを低減します。

  • レプリケートされた環境により、複数のアプリケーション・インフラストラクチャにわたる高レベルの標準化および一貫性の保持が容易になり、ベスト・プラクティスを簡単に実装できるようになります。

  • 新しいインフラストラクチャおよびアプリケーションのデプロイメント時間を短縮します。

1.1.6 Oracle Virtual Assembly Builderの役割

これらの利点を実現するために、アセンブリをアプライアンスで構成する単純な方法が必要です。特に必要なものは、アプライアンスの構成の他、具体化されたシステムや他の大規模なアプライアンスベースの非仮想システム(データベース、アイデンティティ管理サーバーなど)のエンドポイント・マッピングを可能にするツールです。

Oracle Virtual Assembly Builderには、直観的な仮想環境、コマンドライン・インタフェース、サポートされているインフラストラクチャが組み込まれています。Oracle Virtual Assembly Builderを使用すると、管理者は、潜在的に複雑なアプリケーション構造やインフラストラクチャを構成するコンポーネントおよびシステムすべてを含む完全なアセンブリを構築およびデプロイできるようになります。

Oracle Virtual Assembly Builderには次の機能があります。

  • 既存のアプライアンスおよびアセンブリのカタログをブラウズする機能。既存のインフラストラクチャを簡単に再利用できるようになります。

  • アセンブリ・エディタ。既存のアプライアンスおよび外部システムに基づいて新しいアセンブリの宣言構成が可能になります。

  • ドラッグアンドドロップを使用したアプライアンス間の接続を変更する機能

  • プロパティ・インスペクタ。アプライアンスおよびアセンブリの編集可能なプロパティが表示されます。

  • 完全な構成のテンプレート化された定義を作成する機能。デプロイメントが簡単になります。

  • 仮想化された複数層アプリケーションを仮想化されたリソースのプールに単一ステップでデプロイする機能

    図1-3 仮想化された複数層アプリケーション

    図1-3の説明が続きます
    「図1-3 仮想化された複数層アプリケーション」の説明

1.1.7 Oracle Virtual Assembly Builderの使用方法

アセンブリの作成およびデプロイメントは、4ステップの単純明快なプロセスです。最初に、イントロスペクト・フェーズで、アセンブリ内のアプライアンスを構成するすべてのコンポーネントについて、既存のデプロイメントから必要なメタデータおよび構成情報が取得されます。構成フェーズで、アプライアンスと外部リソース間の関係が確立されます。準備フェーズで、特定の仮想化プラットフォームに関連するアセンブリに必要なデプロイメント・アーティファクト(つまり、仮想イメージ)が作成されます。最後に、デプロイ・フェーズで、アセンブリが環境にデプロイされます。

1.1.7.1 イントロスペクト

イントロスペクト・フェーズでは、個々のソフトウェア・コンポーネントの構成メタデータを取得するか、複数の分散コンポーネントのメタデータをまとめて取得します。ターゲット・コンポーネントは、複数の分散システム上にローカルまたはリモートに存在できます。システムは物理でも仮想でもかまいません。

1.1.7.2 構成

構成フェーズでは、次のことを実行します。

  • ナビゲート可能なカタログに保持されているアプライアンスを使用して複雑なアセンブリを作成するために、コンポーネントを視覚的にドラッグアンドドロップします。

  • プロトコルの互換性を自動的にチェックする接続ツールを使用して、アプライアンス間で関係および接続を確立します。

  • アプライアンスからアセンブリ内に含まれない外部リソース(データベース、セキュリティ・プロバイダ、メッセージングなど)への接続を作成します。

1.1.7.3 準備

準備フェーズでは、次のことを実行します。

  • カスタマイズされたOracle Enterprise Linuxオペレーティング・システムのディストリビューションおよび構成可能なメタデータを使用してブート可能な仮想マシン・ディスク・イメージを作成し、ソフトウェア・コンポーネントのデプロイ時のカスタマイズを可能にします。

1.1.7.4 デプロイ

デプロイ・フェーズでは、次のことを実行します。

  • 仮想マシン・マネージャとの認証された直接接続を確立することによって、仮想化された環境で使用可能なターゲットを検出します。

  • アセンブリ内のアプライアンスの基本構成プロパティをオーバーライドするアセンブリのカスタマイズされたデプロイメント構成を作成します。

  • デプロイメント固有のカスタマイズによって遅延バインド・アプライアンスに自動的に対応します。

  • すべてのアプライアンス・ディスク・イメージのステージングと、ターゲットへのアセンブリ全体のデプロイを単一ステップで実行します。

  • アセンブリの初期デプロイ後にアプライアンス・インスタンスをスケーリングし、新たにデプロイされたインスタンスを既存のアセンブリに自動的に接続します。

1.2 Oracle Virtual Assembly Builderの理解

Oracle Virtual Assembly Builderでは、Oracle Fusion MiddlewareおよびOracle Databaseの特定のソフトウェア・コンポーネント・セットの現状を環境から取得し、アセンブリおよびアプライアンスとして表し、環境へのデプロイメントを可能にします。Oracle Virtual Assembly Builderにはコンポーネントを管理する機能が組み込まれておらず、コンポーネントに同梱されている管理ツールのかわりにはなりません。

Oracle Virtual Assembly Builderは、アセンブリのデプロイ先となる仮想環境を提供しません。Oracle Virtual Assembly Builderでサポートされるターゲット環境のいずれかを使用してデプロイメント環境を設定する必要があります。サポートされるデプロイメント環境の詳細は、『Oracle Virtual Assembly Builderインストレーション・ガイド』を参照してください。

1.2.1 製品コンポーネント

Oracle Virtual Assembly Builderは、次の2つの主要製品コンポーネントで構成されます。

  • Oracle Virtual Assembly Builder Studioには、アセンブリ作成の最初の3つのフェーズ、つまりイントロスペクト・フェーズ、構成フェーズおよび準備フェーズを実行する機能があります。Oracle Virtual Assembly Builder Studioにより、アセンブリの作成および編集、アセンブリ・アーカイブの作成、テンプレートとOracle Virtual Assembly Builder Deployerからのデプロイメントをサポートするデプロイメント・プランの作成ができます。

  • Oracle Virtual Assembly Builder Deployerは、Oracle Virtual Assembly Builder Studioによって作成されるアセンブリ・アーカイブのリポジトリを保守するJ2EEアプリケーションです。デプロイヤでは、Oracle VMなどの仮想化されたシステムにこれらのアセンブリ・アーカイブを登録するための操作と、アセンブリ・アーカイブによって定義されるソフトウェア・システムのデプロイメントを編成するための操作を提供します。

    Oracle Virtual Assembly Builder Deployerへのインタフェースは、アセンブリ・アーカイブのアップロード、仮想化システムへのアセンブリ・アーカイブの登録、およびアセンブリ・アーカイブに定義されるシステムのアセンブリ・インスタンスの管理のための操作を提供するWebサービスです。Webサービスの詳細は、『Oracle Virtual Assembly Builder開発者ガイド』を参照してください。

1.2.2 アプライアンスとアセンブリ

最小アプライアンスは、元のコンポーネントの状態を記述するメタデータ(名前と値のペア)と、デプロイ時に構成を再作成できるようにするコンポーネント固有の一連のファイルで構成されます。Oracle Virtual Assembly Builderを使用して環境にデプロイメント用のアセンブリを準備するとき、追加の構成情報が作成され、メタデータとともに格納されます。

アプライアンス・メタデータには、コンポーネントの論理入力および論理出力それぞれの記述が含まれます。これらの入力および出力をまとめてエンドポイントと呼びます。入力エンドポイントの例として、Oracle HTTP ServerコンポーネントのHTTP入力があります。出力エンドポイントの例として、同じOracle HTTP Serverコンポーネントのmod_wl_ohs出力があります。

エンドポイントを記述するメタデータには、プロトコル、ポート番号、URLなどが含まれます。Oracle Virtual Assembly Builderでは、コンポーネントの取得後かつデプロイ前に接続を更新できるように、各エンドポイントについて十分な情報を取得します。この機能により、Oracle Virtual Assembly Builderではデプロイメント環境内でアプライアンスが適切に接続することを保証します。

アプライアンスは、アセンブリにグループ化されます。アセンブリは、アプライアンスの論理コンテナであり、アプライアンス間の結び付きです。Oracle Virtual Assembly Builderを使用してアセンブリを作成し、アプライアンスおよび他のアセンブリを移入します(アセンブリには、他のアセンブリを含めることができます)。

ソフトウェア・コンポーネントを環境からOracle Virtual Assembly Builderアプライアンスとして取得するプロセスは、イントロスペクションから始まります。

1.2.3 イントロスペクション

イントロスペクションは、ソフトウェア・コンポーネントまたは関連コンポーネントのグループに対して(アプライアンスまたはアセンブリを作成するために)実行される操作です。イントロスペクション時に、Oracle Virtual Assembly Builderでは、コンポーネントのXML記述を作成し、コンポーネント固有の構成ファイル・セットを取得します。この情報は、イントロスペクション時にコンポーネントの構成のスナップショットを形成します。イントロスペクション・アーキテクチャはプラグイン・ベースで、サポートされるコンポーネント・タイプごとにプラグインがあります。使用可能なプラグインの詳細は、付録B「Oracle Virtual Assembly Builderのイントロスペクション・プラグイン」を参照してください。

ほとんどの場合、コンポーネントのイントロスペクションの結果はアプライアンスです。ただし、Oracle Virtual Assembly Builderを使用してOracle WebLogic Serverドメインのイントロスペクトする場合、イントロスペクタのプラグインはアセンブリを生成します。生成されたアセンブリには、ドメインの管理サーバーを表すアプライアンスと、ドメインの各管理対象サーバーを表す他のアプライアンスが含まれます。

Oracle Virtual Assembly Builderでは、ローカル・ホスト上のコンポーネントまたはネットワークアクセス可能なリモート・ホストにあるコンポーネントをイントロスペクトできます。Oracle Virtual Assembly Builderでは、業界標準のSSHプロトコルを使用して、イントロスペクション・エンジンをリモート・ホストに転送し、イントロスペクション結果を返します。

イントロスペクションがローカルでもリモートでも、結果はカタログにローカルに格納されます。

1.2.4 外部アプライアンス

外部アプライアンスは、Oracle Virtual Assembly Builder以外のツールを使用して作成され、Oracle Virtual Assembly Builderインストールにインポートする仮想マシン・テンプレートです。インポートされると、外部アプライアンスは、イントロスペクション・メタデータの欠落によって生じる特定の制限を受けますが、すべてのOracle Virtual Assembly Builder操作に関与します。外部アプライアンスは、他のアプライアンスと同様に、アセンブリの一部として編集、追加およびデプロイできます。現時点で、外部アプライアンスとしてインポートできるのは、Oracle仮想マシンのみです。

abctl importExternalTemplateコマンドを使用して、アセンブリ・テンプレート(Oracle Virtual Assembly Builder以外で作成)を外部アプライアンスとしてカタログで取得します。このコマンドの使用方法の詳細は、付録A「コマンドライン・リファレンス」を参照してください。

1.2.5 汎用アプライアンス

"GenericProd"というアプライアンス・タイプを使用して構築されるアプライアンスです。このようなタイプのアプライアンスでは、構成または製品の場所を取得するのに製品固有のロジックを使用しません。かわりに、単純なアプライアンスを作成し、一連のユーザー指定プロパティ、パスおよび製品を構成するスクリプトを一般的な方法で追加します。また、デプロイ時に製品を構成および起動するのにも製品固有のロジックを使用しません。かわりに、作成時に渡されたスクリプト・セットをデプロイ時に実行して必要な操作を実行します。

これにより、ユーザーは不透明なスタンドアロンの自己完結型製品またはアプリケーションをOracle Virtual Assembly Builderでは組込みサポートされていないアプライアンスとして作成およびデプロイできます。

1.2.6 カタログ

アセンブリおよびアプライアンスは、ディスク上のカタログと呼ばれる領域で表されます。アセンブリおよびアプライアンスのメタデータは、カタログ・ルート・ディレクトリのメタデータ・サブフォルダ内のネストしたディレクトリに格納されます。デプロイメントに必要な追加のアーティファクトは、Oracle Virtual Assembly Builderによって定義された他のサブディレクトリに格納されます。ディスク上のアーティファクトによっては非常に大規模である場合があるため、カタログでは共有モデルをアプライアンスおよびアセンブリの一部のアーティファクトに使用します。

カタログに対する操作に使用できるのは、Oracle Virtual Assembly Builderが提供するツールのみです。Oracle Virtual Assembly Builderメタデータ・ファイルを手動で編集することはサポートされていません。

1.2.7 外部リソース

アセンブリの定義時に、外部にあるサーバーへの参照を作成することが必要な場合があります。たとえば、IT環境に、データベース、アイデンティティ管理、多くの関連のない仮想デプロイメントによって共有される他のサーバーを組み込むことができます。このようなシステムを特定のアセンブリに内に含めることは望ましくない、または不可能であることがあります。このため、Oracle Virtual Assembly Builderを使用すると、環境に存在してアプライアンスとしてデプロイされないサーバー・リソースを表す外部コンポーネントを定義できます。それらを外部リソースとして表すことで、アセンブリ内の参照元アプライアンスがデプロイ時に正しく構成されることを保証し、仮想環境へのデプロイ後にネットワーク構成を手動で修正する必要がなくなります。

1.2.8 ファイル・セットの取得

イントロスペクション・プロセスでは、コンポーネントの状態を取得し、実際のコンポーネント・インストールのメタデータ記述を生成します。イントロスペクションでは、実行可能ファイル、共有ライブラリまたはコンポーネントの他のバイナリを取得しません。かわりに、デプロイメント環境の同じコンポーネント・インストールを再作成するために取得する必要がある1つ以上のファイル・システム階層を指定するファイル・セット定義を生成します。デフォルトでは、イントロスペクションの完了後に、Oracle Virtual Assembly Builderではメタデータで記述された実際のインストールのコピーを自動的に取得します。このステップは、ファイル・セットの取得と呼ばれます。

デフォルトでは、使用するコマンドライン・インタフェースがOracle Virtual Assembly Builder StudioであろうとOracle Virtual Assembly Builderであろうと、イントロスペクションとファイル・セットの取得は一緒に行われます。オプションで、これらのステップを別々に実行することができます。

1.2.8.1 アセンブリ・アーカイブ

Oracle Virtual Assembly Builder Studioによって作成されたアセンブリ・アーカイブには、互いに連携してアプリケーションを形成する複数の関連ソフトウェア・スタックで構成されるソフトウェア・システムに関する情報が含まれます。この仕組みはアセンブリと呼ばれます。アセンブリ・アーカイブには、仮想化された環境でアセンブリのインスタンスをインスタンス化するのに使用されるアセンブリおよびアセンブリ・テンプレートに関するメタデータが含まれます。

1.2.8.2 ファイル・セットと共有ファイル・セット

ファイル・セットは共有またはローカルとして構成できます。基礎となるインフラストラクチャ・プラットフォームでサポートされる場合、アセンブリ内の個々のアプライアンスで共有されるようにそのファイル・セットを指定できます。

1.2.8.3 ネットワーク

アセンブリ・アーカイブは、それが表すアプリケーションの論理ネットワーク・セットを定義します。また、アプライアンスごとに、アセンブリ・アーカイブは1つ以上のネットワーク・インタフェースを定義します。各ネットワーク・インタフェースはアーカイブのネットワークの1つに関連付けられ、アセンブリ・アーカイブはアセンブリのネットワーク接続要件をすべて表すことができるようになります。

デプロイメント・プランは、アセンブリ・アーカイブで宣言された各論理ネットワークに使用されるように、仮想環境のネットワークを指定します。このモデルでは、構成およびパブリック・ネットワークとプライベート・ネットワークの両方へのバインディングがサポートされます(プライベートは、アセンブリ内の2つのアプライアンス間に存在するように定義され、デプロイされたアプリケーション・トポロジにアクセスするためのパブリック・ネットワークの一部として表面にはでません)。

デプロイヤでは、1つ以上のVnetを作成し、仮想化システムの基礎となるインタフェースを使用して作成した仮想マシンにアタッチします。これらのVnetはハイパーバイザ・レベルのVnetであり、仮想マシン・レベルのVnetではありません。仮想化システムでサポートされる場合、デプロイヤでは、これらのVnetを関連付けるプライベート・ネットワークを動的に作成することもできます。

1.2.9 アセンブリ・テンプレート

アセンブリ・テンプレートは、仮想ディスク・イメージ・セットで、新しい仮想マシン・インスタンスの作成および開始に使用できます。テンプレートは、アセンブリ内のアプライアンスごとに作成され、ゲスト・オペレーティング・システム、アプライアンスのファイル・セットおよびメタデータ、サポートするOracle Virtual Assembly Builderインフラストラクチャで構成されます。テンプレートは、仮想化された環境に登録することで、その環境で使用可能になります。登録時、仮想マシン・インスタンスをテンプレートに基づいて作成できます。

Oracle Virtual Assembly Builderでは、仮想マシンのゲスト・オペレーティング・システムとしてOracle Enterprise Linuxがサポートされます。

1.2.10 デプロイメント・プラン

デプロイメント・プランは、デプロイ前にアセンブリをカスタマイズするのに使用します。デプロイメント・プランを作成し、そのプランでデフォルトのアセンブリおよびアプライアンス・プロパティをカスタマイズして、ネットワーク構成などのデプロイメント固有の情報を提供することができます。場合によっては、成功したデプロイメントを続行するために特定のプロパティ(静的IPアドレス、パスワード・プロパティなど)をカスタマイズする必要があります。

1.2.11 デプロイヤの概念の理解

この項では、デプロイヤの概念について説明します。

1.2.11.1 ターゲット

仮想化システムではそれぞれに異なる方法でリソースを編成し、リソースの参照およびアクセスのために異なる情報を必要とします。異なるシステム間で共通の操作性を提供するために、Oracle Virtual Assembly Builder Deployerでは、ターゲットの概念を定義しています。ターゲットは、管理インタフェース(このドキュメントで後で定義)を使用して構成され、仮想化されたシステムのリソースまたはリソース・プールの参照に使用されます。ターゲットごとに指定された構成情報は、ターゲットが含まれる仮想化システムに固有です。

Oracle Virtual Assembly Builder Deployerでは、Oracle VMおよびOracle Exalogicがサポートされます。Oracle Exalogicは、単一ターゲットで事前定義されています。

1.2.11.2 アセンブリ・インスタンス

アセンブリ・インスタンスは、特定のターゲット仮想環境に対するアセンブリ・アーカイブのデプロイ可能なインスタンスです。

1.2.11.3 アプライアンス・インスタンス

アプライアンス・インスタンスは、ターゲット仮想環境で実行されている、または作成された(あるいはその両方)アプライアンスのインスタンスです。

アセンブリ・インスタンスのデプロイ後、各アプライアンスのターゲット数のアプライアンス・インスタンスが開始されます。各アプライアンスの初期ターゲット数は、デプロイメント・プランで指定されます。アセンブリ・インスタンスのデプロイ後に、新しいターゲットを動的に指定できます。

1.2.12 デプロイメント・ライフ・サイクル

アセンブリ・インスタンスは、デプロイ可能なアーティファクトです。アセンブリ、デプロイメント・プランのいずれかおよびデプロイ先とする必要があるターゲットを選択して、アセンブリ・インスタンスを作成する必要があります。CreateAssemblyInstanceを使用すると、アセンブリ・インスタンスを作成できます。

デプロイ時、デプロイするアセンブリ・インスタンスを選択します。

アセンブリ・インスタンスのデプロイメントでは、様々なフェーズを遷移します(図1-4)。フェーズには、ステージング済デプロイ済および失敗があります。各状態では、オペレーションの一部を使用できます。たとえば、アセンブリ・インスタンスのデプロイ時に、アプライアンス・インスタンスを開始および終了できます。また、そのデプロイされたアセンブリ・インスタンスに関連付けられたアプライアンス・インスタンス数を増減できます。Oracle Virtual Assembly Builderでは、デプロイされたアプリケーションの状態を監視しません。アセンブリがデプロイまたはステージングされたかどうかと、デプロイメント関連の操作が成功したか失敗したかを通知するのみです。

図1-4 デプロイメント・ライフ・サイクル

図1-4の説明が続きます
「図1-4 デプロイメント・ライフ・サイクル」の説明

次に、アセンブリ・インスタンスの各フェーズのサマリーを示します。

  • デプロイ済: アセンブリ・インスタンスをデプロイし、操作が正常に完了すると、「デプロイ済」状態になります。「デプロイ済」アセンブリ・インスタンスに対して実行できる操作は、次のとおりです。

    • StopAssemblyInstance: この操作は、アセンブリ・インスタンスの実行中のアプライアンス・インスタンスをすべて停止します。アセンブリ・インスタンスは、この操作の完了後に「ステージング済」フェーズに遷移します。後で再開できるように、アプライアンス・インスタンスは仮想化された環境に残ります。

    • UndeployAssemblyInstance: この操作は、アプライアンス・インスタンスをすべて停止し、環境から削除します。この操作の完了後、再度デプロイできるように、アセンブリ・インスタンスはシステム内に維持されます。

    • RestartAssemblyInstance: この操作は、アセンブリ・インスタンスの実行中のアプライアンス・インスタンスをすべて再開します。アセンブリ・インスタンスは、「ステージング済」に遷移してから、「デプロイ済」に戻ります。

    • RedeployAssemblyInstance: この操作は、アセンブリ・インスタンスを再デプロイします。この操作の一環として、すべてのアプライアンス・インスタンスが停止し、ターゲット環境から削除されます。新しいアプライアンス・インスタンスが作成および開始されます。

    • スケール: アセンブリ・インスタンス内のスケーリング・グループをスケーリングします。スケーリングを実行し、アセンブリ・インスタンスでスケーリング・グループをスケール・アップまたはスケール・ダウンできます。スケーリング・グループ用に実行できるアプライアンス・インスタンスの数は、構成されたインスタンスの上限と下限の間である必要があります。デプロイメントでは、「デプロイ済」状態のままです。

  • 失敗: デプロイ操作またはアンデプロイ操作で失敗すると、アセンブリ・インスタンスはこのフェーズになります。デプロイメント操作は、リソース不足など様々な理由で失敗します。失敗したデプロイメントに対して実行できる操作は、次のとおりです。

    • DeleteAssemblyInstance: この操作は、必要なクリーンアップを実行します(アプライアンス・インスタンスの停止および削除など)。この操作の完了後、アセンブリ・インスタンスは存在しなくなります。

  • ステージング済: アセンブリ・インスタンスを停止すると、このフェーズになります。このフェーズでは、すべてのアプライアンス・インスタンスが停止されます。このフェーズから実行できる操作は、次のとおりです。

    • StartAssemblyInstance: この操作は、停止されたアプライアンス・インスタンスをすべて開始します。この操作の完了後、アセンブリ・インスタンスは「デプロイ済」状態に戻ります。

    • UndeployAssemblyInstance: この操作は、仮想化された環境から停止されたアプライアンス・インスタンスをすべて削除します。この操作の完了後、再度デプロイできるように、アセンブリ・インスタンスは維持されます。