この章では、アセットの作成プロセスとアセットの使用プロセス、およびOracle Enterprise Repositoryを開発環境と統合する方法について説明します。
この章では、次の項目について説明します。
Oracle Enterprise Repositoryでは、開発者が開発環境を終了しないでアセットを容易に検索したり、リポジトリからアセットを使用したりすることができるように、開発環境内での統合が提供されています。アセットおよび関連するアーティファクトは、開発者のワークスペースに直接ダウンロードされます。統合を使用すると、簡単に開発環境からOracle Enterprise Repositoryにアセットの発行または収集を行って企業でアセットを使用できます。
開発者のワークスペース内でリポジトリにアクセスすると、Oracle Enterprise Repositoryへのビューも提供されます。これにより、開発者はリポジトリからのアーティファクトとアセットのダウンロード、リポジトリへの問合せおよびリポジトリの内容の表示を行うことができます。
統合の目標は、SOAガバナンスが日々の開発の枠組みの一部になることです。
この項の内容は次のとおりです。
この項では、次のベスト・プラクティス・プロセスについて説明します。
Oracle Enterprise Repositoryを使用し、アセットのリタイアを介してアセットが提供されたときから、新しいアセットとアセットの拡張を追跡します。アセットが開発されたときやアセットが完了したときからも追跡できます。Oracle Enterprise Repositoryで、アセットを使用してプロジェクトの作成や使用、トレース機能の提供、影響分析のサポートおよびアセットのリリース計画に対する変更についてのプロジェクト・レベルの影響の指摘を行います。
最初に、ビジネス・アナリストが、作成する必要のある機能について説明します。提案された機能がないと判断した場合、設計者が機能の設計や機能以外の要件を提供します。開発チームは、機能についての要件と機能以外の要件を満たすアセットの作成、収集または拡張を行います。
図8-1に、アセットの作成プロセスの例を示します。
これは、開発チームが、要件やユースケースなど、作成するアセットに対して可視性を必要としているということを示します。Oracle Enterprise Repositoryでは、開発者が開発環境から直接アセットの詳細を表示できるようにすることで、可視性を提供しています。開発チームが特定のアセットを構築し、次に、アセットをOracle Enterprise Repositoryに収集します。その後、レビューや承認プロセスに移行します。
この項の内容は次のとおりです。
アセットの作成および拡張は設計時のポリシーで管理できます。ポリシーは、設計および開発の段階で考慮する必要があるアセットの要件を示し、管理者にガバナンス、アーキテクチャや他の組織の標準にアセットが準拠し、これを監視する手段を提供するために、アセットに適用されます。たとえば、ポリシーは企業の品質基準を明確にし、アセットが実行されるプラットフォームを示し、許容可能な問題発生率を特定します。
ポリシーは複数のアセットに適用できます。
複数のポリシーを任意のアセットに適用できます。
各ポリシーは、少なくとも1つのアサーション文から構成されます。各アサーションには名前と説明があり、技術的な定義が含まれています。技術的な定義には、サードパーティのテスト・ツールや検証ツールを使用して、アサーションを自動的に検証する必要がある、追加のメタデータが含まれています。このメタデータは、Webサービス固有のポリシー情報、XML、または外部システムで読取り可能な他の形式である場合があります。たとえば、問題発生率に対するアサーション文は、問題発生率が1%未満でなければならないことを示す場合があります。
Oracle Enterprise Repositoryのポリシー情報には、開発環境からアクセスできます。開発チームがアセットをOracle Enterprise Repositoryに収集した後、ポリシーをツールで自動的に検証するか、専門家による検証を行うことができます。
アセットは、ロールおよび状況によって、様々な方法でOracle Enterprise Repositoryに提示または発行できます。その方法の一部を次に示します。
一般的なOracle Enterprise Repositoryのユーザー・コミュニティは、コンソールからアセット・リクエストまたは完了したアセットを発行できます。
ビジネス・アナリストおよび設計者は、アセット・エディタを使用して、構築するアセットを作成できます。
開発チームは、開発環境からアセットを発行および収集できます。
ファイルまたはディレクトリに格納された既存のアセットは、コンピテンシー・センターまたはポートフォリオ・マネージャが収集できます。
QAまたはIT業務担当者は、ビルド環境またはランタイム環境からアセットを収集できます。
標準のソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)プロセスには、次の2つの主要な設計時使用モデルがあります。
モデル1: 早期にライフサイクル内で特定されるアセット(プリスクリプティブな再利用とも呼ぶ)
ビジネス・アナリストまたはプロジェクト設計者(あるいはその両方)がプロジェクトの機能に関する要件および機能以外の要件を満たすアセットを特定します。
開発チームが関連するアセットのキットを受け取ります。
モデル2: 開発主導の検出
開発者がプロジェクトの機能に関する要件および機能以外の要件を満たすアセットを特定します。
モデル1は頻繁に再利用されるので、最も推奨される設計時使用モデルです。ただし、組織がSDLCプロセスに精通していて、ロールを十分に定義している必要があります。
この項の内容は次のとおりです。
Oracle Enterprise RepositoryのWebコンソールで、ビジネス・アナリストまたはプロジェクト設計者(あるいはその両方)がプロジェクトの機能に関する要件および機能以外の要件を満たすアセットを特定します。これらのアセットはコンプライアンス・テンプレートと呼ばれるキットにパッケージ化されます。コンプライアンス・テンプレートは、アセット要件セットまたはアセット・ソリューション・セットを内部またはアウトソーシングされたプロジェクト・チームに示します。Oracle Enterprise Repositoryには、次の2つのタイプのコンプライアンス・テンプレートが含まれています。
プロジェクト・プロファイル
アーキテクチャ・ブループリント
プロジェクト・プロファイルは、通常、個々のプロジェクトに対して作成されますが、アーキテクチャ・ブループリントは複数のプロジェクトで使用できる再利用可能なソリューション・セットです。一般的なユースケースには次のものがあります。
プロジェクトの計画担当者がポートフォリオの各プロジェクトのプロジェクト・プロファイルを作成し、プロジェクト計画に組み込まれた再利用可能なアセットを特定し、計画内容を評価します。
ビジネス・アナリストがプロジェクトのプロファイルを作成し、プロジェクトのビジネス要件を満たすアセットを特定します。
プロジェクト設計者がプロジェクトプロファイルを作成し、プロジェクトの技術要件を満たすアセットを特定します。
企業の設計者がアーキテクチャ・ブループリントを作成し、これに標準のフレームワーク、およびプロジェクト・レベルのセキュリティ要件を満たすために使用するアセットを指定します。
サービス指向アーキテクチャ(SOA)の担当者がアーキテクチャ・ブループリントを作成し、特定のビジネス機能を編成するサービスを判定します。
製品ラインの設計者がアーキテクチャ・ブループリントを作成し、これに特定の製品ライン(Bills of Material(部品表)と同様なもの)を構築するために使用するアセットを指定します。
図8-2に、プリスクリプティブな再利用プロセスの例を示します。
コンプライアンス・テンプレートは、Oracle Enterprise RepositoryのWebコンソールを介してプロジェクトに適用されます。コンプライアンス・テンプレートに特定されたアセットは自動的にプロジェクトの開発環境に表示されます。このように、開発チームは開発作業を迅速に開始します。
コンプライアンス・テンプレートの詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Enterprise Repository構成ガイドを参照してください。
開発者がOracle Enterprise Repositoryからアセットを取得するには、次の2つの方法があります。
Oracle Enterprise Repository Webコンソールによる方法
IDEによる方法(この機能は、現在、EclipseおよびVS .NETで使用可能です。開発者は、今後のリリースでJDeveloperからアセットをダウンロードできるようになります。)
開発者は、Oracle Enterprise Repositoryで、プロジェクトで使用するアセットを取得できます。Oracle Enterprise Repositoryの「使用-ダウンロード」機能を使用すると、アセット・アーティファクトにアクセスできます。さらに、開発者は、プライマリ・アセットに関連するすべてのアセットを選択してダウンロードし、アセットに必要な依存性がすべて含まれていることを確認できます。リポジトリでは、使用状況を追跡し、使用状況に基づいたレポートが生成されます。
開発者は開発環境からOracle Enterprise Repositoryにアクセスすることもできます。つまり、必要なアセットにアクセスするために開発者はIDEを終了する必要はありません。
Oracle Enterprise Repositoryでは、設計時のアセットの使用を追跡し、これについて報告します。使用状況の自動検出は、次の2つの方法で追跡されます。
手動のアセット(Oracle Enterprise Repository内の「使用-ダウンロード」プロセス)による方法または開発環境による方法
Software File Identification (SFID)を利用する使用状況の自動検出
Software File Identification (SFID)は、手動のアセット(「使用-ダウンロード」プロセス)とは別のアセットの使用状況を判断する機能を提供します。SFIDプロセスは、選択したファイルおよびアセット・アーティファクトを一意のSFIDフィンガープリントとタグ付けします。アセットが「使用-ダウンロード」プロセス以外の方法で取得された場合でも、このタグは、アセットが使用された時間と場所を検出するために使用されます。アセット内でタグ付けされたファイルを開発者のIDEで開いたときに、使用状況のインスタンスがOracle Enterprise Repositoryによって記録されます。SFIDの詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Enterprise Repository構成ガイドを参照してください。
8.2項「ベスト・プラクティス」では、作成および使用プロセスの概要について説明し、開発環境のユースケースを示しました。個々のケースについては、次の項で説明します。各開発環境には、これらのユースケースのサブセットが含まれています。
開発環境を使用すると、開発者はEnterprise Repositoryに発行するファイルを選択できます。ファイルは、発行するために.zip形式にバンドルされます。開発者は、単一のアセットまたは複合ペイロード・アセット(あるいはその両方)をOracle Enterprise Repositoryに発行できます。
Oracle Enterprise Repositoryでは、Oracle製品および標準ベースのファイルからファイルを収集できます。これには、Oracle SOA Suite、Oracle Service Bus、および標準BPEL、WSDL、XSDおよびXSLTファイルとファイル・ディレクトリが含まれています。収集すると、Oracle Enterprise Repositoryによって、アセットの作成、アセット・メタデータの移入、およびアーティファクト・ファイルの情報に基づいた関連リンクの生成が自動的に実行されます。収集機能はコマンドラインから使用可能で、IDEまたはビルド・プロセスに統合できます。
詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Enterprise Repository構成ガイドを参照してください。
開発環境から、Enterprise Repository内のアセットとアーティファクトにアクセスできます。IDEを介して、開発者は様々な基準に一致するアセットの検索、または開発プロジェクトに関係するアセットの表示を行うことができます。
選択したアセットに対して、開発者はアセット詳細(説明、使用履歴、削減予測、リレーションシップなど)を表示できます。アセット・メタデータ内で、ドキュメント、ユーザー・ガイド、テスト・ケースなどのサポートへのリンクが提供されていて、これを使用すると、開発者は既存の機能を再利用できます。
開発者はプロジェクトにアセットのアーティファクト(ペイロード)をダウンロードできます。通常、アセット・ペイロードは、開発者がサービス(WSDLファイルなど)を使用する際や、サービスをコード・ベース(バイナリやBPELファイルなど)に組み込む際に必要な機能です。
Oracle Enterprise Repositoryを介して、アナリスト、設計者、技術責任者、およびプロジェクトの設計段階で作業するその他の担当者は、プロジェクトの要件を満たすアセットの一覧を作成できます。アセットの一覧はリポジトリのコンプライアンス・テンプレートで取得され、コンプライアンス・テンプレートはOracle Enterprise Repositoryプロジェクトに関連付けられています。
IDE内から、プロジェクトに割り当てられたすべてのコンプライアンス・テンプレートに表示されるアセットの一覧を表示できます。どのアセットが他のプロジェクト・メンバーで使用されているかが示されます。コンプライアンス・テンプレートの詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Enterprise Repository構成ガイドを参照してください。
Oracle Enterprise Repositoryでは、開発環境内でアセットの再利用を自動的に検出できます。これにより、アセットがOracle Enterprise Repositoryでダウンロードされたか、開発者のデスクトップなど、他のソースから取得したかどうかにかかわらず、開発チームはアセットの再利用クレジットを取得できます。
様々なIDEの各ユースケースの詳細は、第11章「IDEによるOracle Enterprise Repositoryとの相互作用」を参照してください。
表8-1に、各開発環境でサポートされている具体的なユースケースを示します。
ユースケース | JDeveloper | Eclipse | VS .NET |
---|---|---|---|
ファイルの発行 |
はい |
||
収集(BPEL、WSDL、XSD、XSLT) |
はい |
はい |
はい |
収集(SCA) |
11g |
||
Oracle Enterprise Repositoryの検索 |
11g |
はい |
はい |
アセット詳細の表示 |
11g |
はい |
はい |
アーティファクトのダウンロード |
11g |
はい |
はい |
プリスクリプティブな再利用 |
はい |
はい |
|
使用状況の自動検出 |
はい |
はい |
表8-2に、サポートされているバージョンおよび各IDEの対象者を示します。