この章では、Oracle Coherence管理の概要について説明します。管理は、Java Management Extensions (JMX)を使用して実装されます。JMXは、Javaアプリケーションとサービスを管理および監視するためのJava標準です。JMXの詳細は、次のドキュメントを参照してください。
http://docs.oracle.com/javase/7/docs/technotes/guides/jmx/index.html
この章には次の項が含まれます:
Oracle Coherenceでは、クラスタ管理用のJMXフレームワークが用意されています。このフレームワークは、MBeanサーバーをホスティングするように構成された1つ以上のクラスタ・メンバーに依存します。MBeanサーバーは、他のすべてのクラスタ・メンバーの管理対象オブジェクトを管理します。このフレームワークでは、どのクラスタ・メンバーからも管理情報にアクセスでき、JMXメンバーに障害が発生した場合はフォルト・トレラントになります。管理フレームワークは、デフォルトで無効になっています。MBeanサーバーをホスティングするクラスタ・メンバーを少なくとも1つ構成することで、管理フレームワークを明示的に有効化する必要があります。JMX管理を有効にする方法の詳細は、第2章「JMXを使用したOracle Coherenceの管理」を参照してください。
図1-1は、単一のクラスタ・メンバーに配置されているリモートMBeanサーバーで、クラスタ・メンバーとその管理対象オブジェクトが管理されている様子を示した概念図です。
Oracle Coherence MBean
Oracle Coherenceの管理対象オブジェクトは、com.tangosol.net.management.Registry
インタフェースを使用してMBeanサーバーに登録されます。このインタフェースはクラスタ化されたリソースの管理に特化したもので、基本的なJMX登録APIを抽象化しています。このインタフェースはJMXインフラストラクチャと密接に関係していますが、javax.management.*
のクラスには依存していません。このインタフェースでは、JMXサービスと一緒に配置されていないクラスタ・メンバーのリモート管理がサポートされており、管理対象オブジェクトと一緒に配置されているかまたは離れているMBeanサーバーにOracle Coherence MBeanを登録できます。
付録A「Oracle Coherence MBeanのリファレンス」には、すべてのMBeanのリストがあり、管理対象リソースに対して公開されている個々の属性と操作が説明されています。一部の管理対象リソースには、各クラスタ・メンバーのインスタンスが1つしかありません。しかし、いくつかの管理対象リソース(CacheMBean
MBeanなど)には、クラスタ・メンバーごとに複数のMBeanインスタンスがあります。さらに、MBeanは、少なくとも1つの管理対象リソースが運用されている場合にのみ登録されます。CacheMBean
MBeanでは、MBeanの登録前にキャッシュが起動されている必要があります。
カスタムMBean
カスタムMBeanを、管理フレームワーク内で管理および監視できます。カスタムMBeanは、アプリケーション固有の動的MBeanまたは標準MBeanです。MBeanは、XMLファイルで宣言的に登録されるか、Registration
インタフェースを使用してプログラム的に登録されます。カスタムMBeanを登録することで、アプリケーションのMBeanをクラスタ内のどのJVM、メンバー、エンドポイントからも管理または監視できるようになります。カスタムMBeanの登録方法の詳細は、第3章「カスタムMBeanの登録」を参照してください。
MBeanコンソール
MBean対応コンソールであれば、Oracle Coherence MBeanとやり取りできます。JDKとともに配布されているJava VisualVMコンソールとJava Monitoring & Management Console (JConsole)が一般的に選ばれています。JMXリファレンス実装の一部として用意されているJMX HTML Adapter Webアプリケーションもサポートされています。これらのコンソールを使用したMBeanとのやり取りの詳細は、「Oracle Coherence MBeanへのアクセス」を参照してください。
Oracle Coherenceには、時系列の管理情報を表示する管理レポートが用意されています。このレポートは、Oracle Coherence MBeanで取得したデータで構成されるテキスト・ファイルです。レポートは構成された時間間隔で自動更新されるため、MBeanを監視するだけでは得られない履歴コンテキストが提供されます。このレポートでは、トラブルシューティングおよび計画に役立つ傾向が特定されます。
図1-2は、すべてのクラスタ・メンバーの管理情報に基づいて単一クラスタ・メンバーで生成される、管理レポートの概念図です。
多数の事前定義されたレポートが用意されています。これらのレポートをカスタマイズするか、必要に応じて新しいレポートを作成できます。レポート機能はデフォルトでは無効になっているため、明示的に有効にする必要があります。また、最初はレポートのサブセットのみが構成されて生成されます。レポート機能を有効にする方法の詳細は、第4章「Oracle Coherenceのレポート機能の使用」を参照してください。また、事前定義されたレポートの詳細は、第6章「レポート内容の分析」を参照してください。
管理は、複数の構成ファイルを使用して構成されます。構成に関する詳細は、『Oracle Coherenceでのアプリケーションの開発』を参照してください。該当するファイルは次のとおりです。
オペレーション・オーバーライド・ファイル: tangosol-coherence-override.xml
ファイルは、オペレーション・デプロイメント・ディスクリプタをオーバーライドします。このディスクリプタはクラスタのオペレーションおよびランタイム設定を指定し、データ管理サービスを含みます。管理設定は、<management-config
ノード内で定義します。すべての管理設定のリファレンスについては、『Oracle Coherenceでのアプリケーションの開発』を参照してください。
MBean構成オーバーライド・ファイル: custom-mbeans.xml
ファイルはデフォルトのMBean構成オーバーライド・ファイルです。カスタムMBeanを宣言式に定義します。カスタムMBeanはオペレーション・オーバーライド・ファイル内にも定義できます。ただし、一般的にはカスタムMBeanではなくMBean構成オーバーライド・ファイルが使用されます。
レポート構成ファイル: レポート構成ファイルでは、レポートを定義し、特定メトリックのセットに基づいて管理情報を表示するレポート・ファイルが作成されます。レポート構成ファイルは、実行時に使用されるレポート・グループ構成ファイルで参照される必要があります。デフォルトのレポート構成ファイルはcoherence.jar
ライブラリ・ファイルの/reports
ディレクトリにあり、デフォルトのレポート・グループ構成ファイルによって参照されます。カスタムのレポート構成ファイルも必要に応じて作成できます。レポート・ファイル構成要素の詳細は、付録B「レポート・ファイル構成要素」を参照してください。
レポート・グループ構成ファイル: レポート・グループ構成ファイルは、レポート定義ファイルの名前と場所、およびレポートが書き込まれる出力ディレクトリのリストを示します。このファイルの名前と場所は、オペレーション・デプロイメント・ディスクリプタに定義されます。デフォルトでは、report-group.xml
ファイルが使用され、このファイルはcoherence.jar
ライブラリ・ファイルの/reports
ディレクトリに存在します。追加のレポート・グループ構成ファイルが用意されています。さらに、カスタム・レポート・グループ・ファイルを必要に応じて作成できます。レポート・グループ構成要素の詳細は、付録C「レポート・グループ構成要素」を参照してください。
管理呼出しサービス・ファイル: management-config.xml
ファイルは、Oracle Coherence JMX管理フレームワークで使用される管理呼出しサービス・インスタンスを構成します。このファイルはcoherence.jar
ライブラリ・ファイルのルートに存在し、クラスパスでcoherence.jar
ライブラリ・ファイルより前に別のmanagement-config.xml
ファイルを置くことでオーバーライドできます。この構成ファイルはXSDで定義されません。ファイルには<config
ルート要素が存在する必要があります。また、<invocation-scheme
要素で利用できる同じサブ要素をサポートします。管理構成ファイルの設定は通常変更されません。
Oracle WebLogic Serverには、Oracle WebLogic Serverドメイン内でのOracle Coherenceの管理方法を標準化するOracle Coherence統合が用意されています。この統合により、Oracle CoherenceがOracle WebLogic Serverのサブシステムになり、Oracle WebLogic Serverツールを使用したOracle Coherence環境の管理が可能になります。主な管理タスクは、次のとおりです。
Oracle Coherenceクラスタの設定および構成
Oracle Coherenceクラスタ・メンバーの追加と削除
Oracle Coherenceクラスタ・メンバーのプロパティの構成
Oracle Coherenceクラスタ・メンバーの開始と停止
Oracle CoherenceアプリケーションのGrid ARchive (GAR)モジュールとしてのデプロイ
Oracle Coherenceアプリケーションの起動と停止
Oracle Coherenceリソースのセキュリティ保護
Oracle CoherenceをWebLogicサーバーと一緒に使用する方法の詳細は、「Oracle Coherenceの管理」を参照してください。
Oracle Enterprise Manager Cloud Controlには、Oracle Coherenceクラスタの管理と監視に使用するOracle Coherence用のManagement Packがあります。管理者は、このManagement Packを使用してクラスタのパフォーマンスを積極的に監視することで、アプリケーション環境内のパフォーマンス問題を識別および診断するために要する時間を削減できます。主なメリットとして、次のようなことが可能になります。
クラスタ全体を単一ターゲットとしてモデル化することによる複雑性の管理
キャッシュとノードのリアルタイム・パフォーマンス監視および履歴パフォーマンス監視による診断時間と解決時間の短縮化の指定
アプリケーション・コンテキストでのキャッシュの監視による依存性の分析
しきい値とアラートを使用したプロアクティブな監視の指定
自動化されたプロビジョニングとライフサイクル管理を使用することによるリスクの軽減
迅速なランタイム構成変更によるキャッシュ・パフォーマンスのチューニング
Oracle Coherence用のManagement PackはOracle Enterprise Manager Cloud Controlに含まれており、Oracle Technology Network (OTN)からダウンロードできます。
http://www.oracle.com/technetwork/oem/grid-control/downloads/index.html?ssSourceSiteId=ocomen
Management Packの構成および使用に関する詳細な方法は、Oracle Enterprise Managerドキュメント・ライブラリのOracle Enterprise Manager Oracle Coherenceスタート・ガイドを参照してください。