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Oracle® Fusion Middleware Oracle WebLogic Server診断フレームワークの構成と使用
12c (12.1.3)
E59431-04
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1 概要とロードマップ

この章では、このガイド(『Oracle WebLogic Server診断フレームワークの構成と使用』)の内容と対象読者について説明します。このガイドでは、WebLogic Serverプロセス内で実行する一連のサービスの定義および実装を行い、標準サーバー・ライフサイクルに参加する監視および診断フレームワークである、WebLogic診断フレームワーク(WLDF)について説明します。WLDFを使用して、稼働中のサーバー、およびコンテナ内にデプロイされたアプリケーションで生成された診断データを作成、収集、分析、アーカイブし、そのデータにアクセスできます。このデータを基に、サーバーおよびアプリケーションの実行時パフォーマンスを把握できます。また、フォルト発生時に、このデータを使用して、フォルトを隔離および診断できます。

この章の内容は次のとおりです。

WebLogic診断フレームワークとは

WLDFには、次のようなデータの収集および分析用コンポーネントが含まれています。

  • Oracle HotSpotとの統合: WebLogic ServerがOracle HotSpotとともに構成されている場合、Javaフライト・レコーダ・ファイルにキャプチャされているWebLogic Serverに関して、WLDFによる診断情報の生成が可能です。

  • 組込み診断システム・モジュール: そのまま使用できる一連の診断モジュールです。これにより、JVM、WebLogic Serverの実行時間およびWebLogic Serverの主要サブシステム(JDBCデータ・ソース、メッセージング、Java EEコンテナ(サーブレット、EJB、リソース・アダプタなど)を含む)の基本的なパフォーマンス・データを動的に取得できます。組込み診断モジュールは複製や変更も可能なため、簡単にカスタム診断システム・モジュールを作成する方法として使用できます。

  • 監視ダッシュボード: WebLogic Serverおよびホストされたアプリケーションの現在の動作状態および動作状態の履歴をグラフィカルに表示します。これには組込み診断システム・モジュールにより収集された情報も含まれます。WebLogic Server管理コンソールからアクセスされた監視ダッシュボードは、重要性の高いランタイムWebLogic Serverのパフォーマンス・メトリックおよびそれらのメトリックの一定時間での変化を表示するビューに診断データを編成し表示するための一連のツールを提供します。

  • 診断イメージ・キャプチャ - 障害発生後の分析に使用できる診断スナップショットをサーバーから作成します。診断イメージ・キャプチャには、Javaフライト・レコーダ・データが含まれていて、それが使用可能である場合、Java Mission Controlで表示できます。

  • アーカイバ - サーバー・インスタンスおよびアプリケーションから、データ・イベント、ログ・レコード、およびメトリックをキャプチャし、永続化します。

  • インストゥルメンテーション - WebLogic Serverインスタンスおよびその上で実行されているアプリケーションに診断コードを追加し、コード内の指定された場所で診断アクションを実行します。インストゥルメンテーション・コンポーネントは、システム内のリクエストの流れを追跡できるように、診断コンテキストをリクエストに関連付けるための手段を提供します。WebLogic Server管理コンソールには、アプリケーションにおけるパフォーマンスの問題の識別に役に立つツールとして機能しているWLDFインストゥルメンテーション機能から取得したメソッド・パフォーマンス情報のリアルタイムおよび履歴ビューを表示する「リクエスト・パフォーマンス」ページが含まれています。

  • ハーベスタ - WebLogic Server MBeanやカスタムMBeanなどのランタイムMBeanからメトリックをキャプチャします。メトリックはアーカイブして、履歴データを参照するために後でアクセスできます。

  • 監視および通知 - サーバーおよびアプリケーションの状態をモニターし、監視の中で設定されている条件に基づいて通知を送信する手段を提供します。

  • ロギング・サービス - サーバー、サブシステムおよびアプリケーション・イベントを監視するためのログを管理します。WebLogic Serverロギング・サービスは、WebLogic診断フレームワークの他の部分とは別個のドキュメントで説明されています。関連ドキュメントを参照してください。

WLDFは、診断データに対する動的なアクセスと制御を可能にする標準化された一連のアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)、ならびにサーバーに関する可視性をもたらす改良されたモニターを実現します。独立系ソフトウェア・ベンダー(ISV)は、カスタム・モニタリングとWLDFとの統合に使用される診断ツールの開発にこれらのAPIを使用できます。「WLDFのプログラムの構成と使用」で説明されているように、これらのAPIにはJMXやWebLogic Scripting Tool (WLST)を使用してアクセスできます。

WLDFにより、標準インタフェースを通じてサーバー・データへの動的なアクセスが可能となり、特定の時点にアクセスされたデータを、サーバーの停止および再起動を行うことなく変更できます。

ドキュメントの範囲および対象読者

このドキュメントでは、WLDFによるモニター・サービスと診断サービスを構成および使用する方法について説明します。

WLDFは、WebLogic Serverインスタンスおよびクラスタを実行する際の問題点や、それらにデプロイされているアプリケーションにおける問題点をモニターし、診断するための機能を提供します。したがって、このドキュメント内の情報は、システム管理者とアプリケーション開発者の双方を対象としています。また、WLDFをサポートおよび拡張するツールを構築するサード・パーティのツール開発者向けの情報も記載しています。

読者は、Webテクノロジ、およびWebLogic Serverがインストールされているオペレーティング・システムとプラットフォームに精通していることが前提となっています。

このドキュメントの構成

このマニュアルの構成は次のとおりです。

  • この章「概要とロードマップ」では、WLDFコンポーネントの概要を示し、このガイドの対象読者について説明します。

  • 「WLDFアーキテクチャの概要」,では、WLDFアーキテクチャの概要を示します。

  • 「組込み診断システム・モジュールの使用」,では、組込み診断システム・モジュールについて説明します。これらはWebLogic診断フレームワーク(WLDF)に用意され、WebLogic Serverインスタンスの基本的なヘルス状態およびパフォーマンスの監視を実行する、シンプルかつ使用しやすいメカニズムです。

  • 「Javaフライト・レコーダと連携したWLDFの使用」,では、Javaフライト・レコーダのWLDF統合機能および基本使用方法のシナリオを説明し、Javaフライト・レコーダ・ファイルに取得されたWebLogic Serverイベントを確認するためにJava Mission Controlを使用したサンプル・ウォークスルーを提供します。

  • 「WLDF構成について」,では、WLDFの機能がサーバーとアプリケーションでどのように構成されるかについての概要を示します。

  • 「診断イメージの構成とキャプチャ」,では、サーバーの重要な構成設定と状態のスナップショットをキャプチャするために、WLDF診断イメージ・キャプチャ・コンポーネントを構成および使用する方法について説明します。

  • 「診断アーカイブの構成」,では、診断データをファイル・ストアまたはデータベースで永続化するために、WLDF診断アーカイブ・コンポーネントを構成および使用する方法について説明します。

  • 「メトリック収集用のハーベスタの構成」,では、WebLogic Server MBeanおよびカスタムMBeanを含むランタイムMBeanからメトリックを収集するために、WLDFハーベスタ・コンポーネントを構成および使用する方法について説明します。

  • 監視および通知の構成では、WLDF監視および通知の概要を示します。

  • 監視の構成では、指定した条件に対してサーバー・インスタンスおよびアプリケーションをモニターして、その条件に合致した場合に通知を送信するように監視を構成する方法について説明します。

  • 通知の構成では、監視によってトリガー可能な通知を構成する方法について説明します。

  • 「インストゥルメンテーションの構成」,では、WebLogic Serverクラスおよびサーバー上で実行しているアプリケーションのクラスに診断インストゥルメンテーション・コードを追加する方法について説明します。

  • 「診断コンテキストを管理するためのDyeInjectionモニターの構成」,では、DyeInjectionモニターを使用する方法、および診断モニターで仕分けフィルタを使用する方法について説明します。

  • 「データ・アクセサを使用した診断データへのアクセス」,では、診断データを取得するためにWLDFデータ・アクセサ・コンポーネントを使用する方法について説明します。

  • 「WLDFアプリケーション・モジュールのデプロイ」,では、診断アプリケーション・モジュールとしてアプリケーションのインストゥルメンテーションを構成および管理する方法について説明します。

  • 「監視ダッシュボードの使用方法」,では、WebLogic Serverの現在の動作状態および動作状態の履歴、およびWLDFでキャプチャした診断データを一部的に使用するホストされたアプリケーションをグラフィカルに表示する方法について説明します。

  • 「WLDFのプログラムの構成と使用」,では、JMX APIおよびWebLogic Scripting Tool (WLST)を使用してWLDFの各コンポーネントを構成および使用する方法について概要を示します。

  • 「WLDF問合せ言語」,では、データ・アクセサを使用して診断データを問い合せたり、監視ルールを作成したり、ログをフィルタ処理するためのルールを作成する式を作成するためのWLDF問合せ言語について説明します。

  • 「WLDFインストゥルメンテーション・ライブラリ」,では、WLDFインストゥルメンテーション・ライブラリであらかじめ定義されている診断モニターと診断アクションについて説明します。

  • 「式でのワイルドカードの使用方法」,では、どのようにワイルドカードをWLDF式で使用するかについて説明します。

  • 「WebLogic Scripting Toolのサンプル」,では、WebLogic Scripting Toolを使用してWLDFモニター・アクティビティと診断アクティビティを実行する方法の例を示します。

  • 用語集はWLDFの用語集です。

関連ドキュメント

  • 『Oracle WebLogic Serverログ・ファイルの構成とログ・メッセージのフィルタ処理』 12.1.3では、WLDFロギング・サービスを使用してサーバー、サブシステムおよびアプリケーション・イベントをモニターする方法を説明します。

  • Oracle WebLogic Server管理コンソール・オンライン・ヘルプWebLogic診断フレームワークの構成に関する項では、WebLogic Server管理コンソールのビジュアル・ツールを使用してWLDFを構成する方法を説明します。

  • WLDFシステム・リソース記述子はweblogic-diagnostics.xsdスキーマに準拠しています。このスキーマは、http://xmlns.oracle.com/weblogic/weblogic-diagnostics/1.0/weblogic-diagnostics.xsdで参照できます。

サンプルとチュートリアル

このドキュメントの他にも、WLDFの構成や使い方を示す様々なサンプルとチュートリアルが用意されています。

Avitek Medical Recordsアプリケーション(MedRec)とチュートリアル

MedRecはWebLogic Serverに付属したエンドツーエンドのサンプルJava EEアプリケーションであり、一元的で独立した医療記録管理システムをシミュレートします。MedRecアプリケーションには、患者、医師、および管理者に対して、様々なクライアントを使用して患者のデータを管理するフレームワークが用意されています。

MedRecはWebLogic ServerとJava EEの機能を例示し、推奨されるベスト・プラクティスを重要点として示します。MedRecはWebLogic Serverのディストリビューションにオプションでインストールされ、完全インストール・タイプを選択すると使用できます。Medrecは、デフォルトではインストール後にORACLE_HOME/user_projects/domains/medrecディレクトリに構成されます。ここでORACLE_HOMEは、使用するマシンのOracleホーム・ディレクトリを表します。詳細は、Oracle WebLogic Serverの理解 12.1.3のサンプル・アプリケーションとコード例を参照してください。

ダウンロード可能なWLDFサンプル

その他のWLDFサンプルは、http://www.oracle.com/technetwork/indexes/samplecode/index.htmlからダウンロードできます。これらのサンプルは、既存WebLogic Serverサンプル・ディレクトリ構成に展開できる.zipファイルとして配布されています。これらのサンプルには、Oracleが認定したもののほかに、開発協力者から提示されたサンプルもあります。

このリリースでの新機能と変更された機能

このドキュメントには次の変更点が含まれており、このリリースのWebLogic Serverに導入されたWLDFの新機能について説明されています。

  • 組込み診断システム・モジュール: WebLogic Serverインスタンスの基本的なヘルス状態およびパフォーマンスの監視を実行する、シンプルかつ使用しやすいメカニズムを提供します。組込み診断システム・モジュールの使用を参照してください。

  • Oracle HotSpotのサポート: WLDFはOracle HotSpotおよびJavaフライト・レコーダをサポートするようになりました。Javaフライト・レコーダは現在、デフォルトでは無効になっていることに注意してください。「Oracle HotSpotと連携したJavaフライト・レコーダの使用」を参照してください。

  • WLDF実行時制御: これにより、ターゲットのサーバーまたはクラスタを再起動することなく、診断システム・モジュールを動的にアクティブ化および非アクティブ化することが可能になります。「診断システム・モジュールの構成」を参照してください。

  • WLSTの新しいコマンド: 診断システム・モジュールの活性化および非活性化、ドメイン構成に永続化されないリソース記述子に基づいた診断システム・モジュールのデプロイおよびアンデプロイ、および診断システム・モジュールによりファイルに収集された、診断ハーベスタ・データのダンプを行います。「WLSTの使用による診断システム・モジュールの活性化および非活性化」および「診断のためのWLSTコマンド」を参照してください。

このリリースで導入されたWebLogic Serverの包括的な新機能一覧は、『Oracle WebLogic Serverの新機能』を参照してください。