アプリケーションを開発するためにLOBを操作するには、LOBのセマンティクスとLOBで使用される様々な方法について理解する必要があります。
永続LOBに関するほとんどの説明は、既存の表にあるLOBを扱うことを前提としています。通常、LOB列を含む表の作成作業は、データベース管理者が行います。
関連項目:
SecureFilesパラダイムを使用したLOBの作成については、「Oracle LOB記憶域の使用」を参照してください
LOBの作成に使用される記憶域パラメータについては、「アプリケーションでのLOB記憶域」を参照してください
ここでは、次の項目について説明します。
LOB列のセルにアクセスするときに使用する手法は、そのセルの状態に応じて異なります。
LOB列のセルの状態は、次のいずれかです。
NULL
表セルは作成されていますが、セルに値またはロケータは保持されていません。
空
セルにロケータを含むLOBインスタンスが存在しますが、値はありません。LOBの長さは0(ゼロ)です。
移入済
セルにはロケータと値を含むLOBインスタンスが存在します。
LOBを含む行をロックして、トランザクション中に他のデータベース・ユーザーがLOBに書き込むのを防止できます。
行をロックするには、行の選択時にFOR UPDATE
句を指定します。行をロックすると、トランザクションを終了するまで他のユーザーはそのLOBをロックまたは更新できません。
LOB APIには、LOBインスタンスを明示的にオープンおよびクローズできる操作が組み込まれています。
永続LOBインスタンスは、BLOB
、CLOB
、NCLOB
またはBFILE
など、どの型の場合にもオープンおよびクローズできます。LOBをオープンすると、次の一方または両方の結果となります。
LOBを読取り専用モードでオープンした場合
この場合、LOB(LOBロケータとLOB値の両方)は、明示的にクローズするまではセッションで変更できません。たとえば、このモードでオープンすることで、重要な操作でLOBを使用しているときに、そのLOBがプログラムの他の部分により変更されないようにできます。操作の実行後に、LOBをクローズできます。
LOBを読取り/書込みモードでオープンした場合(通常のBLOB
、CLOB
またはNCLOB
インスタンスのみ)
LOBを読取り/書込みモードでオープンすると、そのLOBをクローズするまでLOB列の索引メンテナンスが遅延されます。このモードでのLOBのオープンが役立つのは、LOB列に拡張可能索引があり、そのLOBに書込みを行うたびにデータベースで索引メンテナンスが実行されるのを避ける場合のみです。オープンしているLOBに対して複数の書込み操作を実行する場合は、この方法でオープンするとアプリケーションのパフォーマンスを改善できます。
オープンしたLOBは、セッションのいずれかの時点でクローズする必要があります。これは、オープンしているLOBに対する唯一の要件です。LOBインスタンスがオープンしている間は、オープン時のモードで許可されている操作であれば、LOBに対して必要な数の操作を実行できます。
関連項目:
これらのAPIの使用方法の詳細は、「OPENおよびCLOSEインタフェースを使用した永続LOBのオープン」を参照してください
OCIのLOB用データ・インタフェースを使用すると、CアプリケーションでCLOB
列とBLOB
列に対してバインド操作と定義操作を実行できます。
データ・インタフェースを使用すると、次のように、LOBロケータを使用せずにLOB列にデータを挿入したり、LOB列からデータを選択できます。
LOB列に関連付けられているバインド変数を使用して、CLOB
に文字データを挿入するか、BLOB
にRAW
データを挿入します。
定義操作を使用してアプリケーションで出力バッファを定義します。このバッファに、CLOB
から選択された文字データまたはBLOB
から選択されたRAW
データが保持されます。
関連項目:
LOBの他のデータ型への暗黙的な割当ての詳細は、「永続LOB用のデータ・インタフェース」を参照してください
LOBロケータを使用して、LOB値にアクセスして変更できます。
LOBの場所に対する参照であるLOBロケータは、データベースに格納されているインスタンス化されたLOBの値にアクセスできます。データベース表では、CLOB
、BLOB
、NCLOB
およびBFILE
列にロケータのみが格納されます。
LOBロケータとLOB値に関する注意事項は、次のとおりです。
LOBロケータは、LOB値をアクセスまたは操作するために様々なLOB APIに渡されます。
LOBロケータは、同じ型の任意のLOBインスタンスに割り当てることができます。
LOBインスタンスは一時または永続として特徴付けられますが、ロケータはそのように特徴付けられません。
LOB型BLOB
、CLOB
およびNCLOB
のロケータのセマンティクスとBFILE
型のロケータのセマンティクスの間には違いがあります。
LOB型のBLOB
、CLOB
およびNCLOB
の場合、LOB列にはLOB値のロケータが格納されます。各LOBインスタンスは固有のLOBロケータのみでなく、LOB値の固有のコピーも持ちます。
初期化済のBFILE
列の場合、行にはBFILE
の値を保持する外部オペレーティング・システム・ファイルのロケータが格納されます。行内の各BFILE
インスタンスは固有のロケータを持ちますが、2つの異なる行に同じオペレーティング・システム・ファイルを指すBFILE
ロケータを含めることも可能です。
LOB値の格納場所に関係なく、ロケータは初期化済LOB列の表の行に格納されます。また、表からLOBを選択した場合、戻されるLOBは常に一時LOBです。一時LOBのロケータの詳細は、「SQLファンクションから戻されるLOB」を参照してください。
注意:
単にロケータという場合は、LOBロケータとBFILE
ロケータの両方を指します。
ここでは、次の項目について説明します。
Oracle LOBの例の多くでは、Oracle Databaseサンプル・スキーマPM
の表print_media
を使用しています。
print_media
表は、次のように定義されます。
CREATE TABLE print_media ( product_id NUMBER(6) , ad_id NUMBER(6) , ad_composite BLOB , ad_sourcetext CLOB , ad_finaltext CLOB , ad_fltextn NCLOB , ad_textdocs_ntab textdoc_tab , ad_photo BLOB , ad_graphic BFILE , ad_header adheader_typ ) NESTED TABLE ad_textdocs_ntab STORE AS textdocs_nestedtab;
関連項目:
print_media
およびそれに関連付けられた表とファイルの作成の詳細は、「1つ以上のLOB列を含む表の作成」を参照してください
NULL
であるLOBインスタンスには、ロケータがありません。
LOBインスタンスをLOB APIルーチンに渡す前に、そのインスタンスにロケータを含める必要があります。たとえば、行からNULL
のLOBを選択できますが、そのインスタンスをPL/SQL DBMS_LOB.READ
プロシージャには渡せません。LOBインスタンスを初期化し(これによってロケータが提供されます)、NULL
以外にする必要があります。これにより、LOBインスタンスを渡すことが可能になります。
ここでは、次の項目について説明します。
サポートされているプログラム環境(PL/SQL、OCI、Visual BasicまたはJava)を使用してデータを永続LOBに書き込む前に、LOB列およびLOB属性をNULL
以外にする必要があります。
LOB列およびLOB属性をNULL
以外にするには、BLOB
に対してはEMPTY_BLOB
ファンクション、CLOB
およびNCLOB
に対してはEMPTY_CLOB
ファンクションで、INSERT
文およびUPDATE
文を使用して永続LOBを空に初期化します。
注意:
SQLを使用すると、NULL
値が含まれているLOB列にもデータを移入できます。
関連項目:
LOB列の初期化方法の詳細は、「アプリケーションでのLOB記憶域」を参照してください
サポートされているすべてのインタフェースの詳細は、「LOBをサポートするプログラム環境」を参照してください
EMPTY_BLOB()
またはEMPTY_CLOB()
ファンクションを実行すること自体では例外は発生しません。ただし、空に設定されたLOBロケータを使用して、PL/SQLのDBMS_LOB
またはOCI関数でLOB値に対してアクセスまたは操作すると、例外が発生します。
空のLOBロケータを使用できるのは、INSERT
文のVALUES
句やUPDATE
文のSET
句などです。
関連項目:
CREATE DIRECTORY
およびBFILENAME
の使用方法の詳細は、「ディレクトリ・オブジェクト」を参照してください
『Oracle Database SQL言語リファレンス』のCREATE
DIRECTORY
文の項を参照してください
注意:
文字列は、インスタンス用のデフォルトのキャラクタ・セットを使用して挿入されます。
次の例のINSERT
文は、「LOBの例の表: PMスキーマのprint_media表」で説明されているprint_media
表を使用し、次の処理を実行しています。
ad_sourcetext
に文字列'my Oracle'
を移入します
ad_composite
、ad_finaltext
およびad_fltextn
を空の値に設定します
ad_photo
をNULL
に設定します
ad_graphic
を、論理ディレクトリmy_directory_object
にあるmy_picture
ファイルを指すように初期化します
CREATE OR REPLACE DIRECTORY my_directory_object AS 'oracle/work/tklocal'; INSERT INTO print_media VALUES (1726, 1, EMPTY_BLOB(), 'my Oracle', EMPTY_CLOB(), EMPTY_CLOB(), NULL, NULL, BFILENAME('my_directory_object', 'my_picture'), NULL);
同様に、print_media
内のad_header
列のLOB属性は、次に示すようにNULL
、空、または文字/生のリテラルに初期化できます。
INSERT INTO print_media (product_id, ad_id, ad_header) VALUES (1726, 1, adheader_typ('AD FOR ORACLE', sysdate, 'Have Grid', EMPTY_BLOB()));
関連項目:
OCIでのLOBロケータのセマンティクスの詳細は、「OCILobLocatorポインタの割当」を参照してください
LOB APIを使用してBFILE
値にアクセスする前に、BFILE
列または属性をNULL
以外にする必要があります。
BFILENAME
ファンクションを使用して、外部オペレーティング・システム・ファイルを指すBFILE
列を初期化できます。
関連項目:
BFILE列の初期化方法の詳細は、「BFILEへのアクセスについて」を参照してください
LOBインスタンスにアクセスするには、様々な方法があります。
ここでは、次の項目について説明します。
LOBにはSQLを使用してアクセスできます。
LOBデータ型を使用する列に対するサポートは、多数のSQLファンクションに組み込まれているため、SQLセマンティクスを使用してLOB列にアクセスできます。ほとんどの場合は、VARCHAR2
列に使用するのと同じSQLセマンティクスをLOB列に対して使用できます。
関連項目:
LOBに対するSQLセマンティクスのサポートの詳細は、「SQLセマンティクスとLOB」を参照してください
LOBにはデータ・インタフェースを使用してアクセスできます。
OCIやPL/SQLインタフェースのLONG-to-LOB APIを使用すると、直接LOBを選択してCHAR
バッファまたはRAW
バッファに移動できます。次のPL/SQLの例では、ad_finaltext
がVARCHAR2
バッファfinal_ad
に移動するように選択されています。
DECLARE final_ad VARCHAR2(32767); BEGIN SELECT ad_finaltext INTO final_ad FROM print_media WHERE product_id = 2056 and ad_id = 12001 ; /* PUT_LINE can only output up to 255 characters at a time */ ... DBMS_OUTPUT.PUT_LINE(final_ad); /* more calls to read final_ad */ ... END;
関連項目:
データ・インタフェースを使用してLOBにアクセスする方法の詳細は、「永続LOB用のデータ・インタフェース」を参照してください
データベースで提供されるLOB APIにLOBロケータを渡すことで、LOBインスタンスにアクセスして操作できます。
LOBインスタンスにアクセスするには、サポートされている各プログラム環境で用意されている広範囲なLOB APIセットを使用します。OCIの場合、LOBロケータはLOB値へのアクセスに使用されるロケータ・ポインタにマップされます。
注意:
OCIを含め、どの環境の場合も、LOB APIはLOB値を暗黙的に操作することに注意してください。LOBロケータの間接参照先へアクセスして操作する必要はありません。
関連項目:
OCIでのLOBロケータのセマンティクスの詳細は、「OCILobLocatorポインタの割当」を参照してください
LOB列には次のルールと制限があります。
LOBは主キー列として指定できません。
Oracle DatabaseによるリモートLOBに対するサポートは制限されているため、リモートLOBをサポートされていない形式で使用すると、ORA-22992エラーが発生する可能性があります。
リモートLOBは、次の形式でサポートされています。
AS SELECT形式での表の作成または挿入
次の形式で作成された個別文の選択リストでは、スタンドアロンLOB列のみが使用可能です。
CREATE TABLE t AS SELECT * FROM table1@remote_site;
INSERT INTO t SELECT * FROM table1@remote_site;
UPDATE t SET lobcol = (SELECT lobcol FROM table1@remote_site);
INSERT INTO table1@remote_site SELECT * FROM local_table;
UPDATE table1@remote_site SET lobcol = (SELECT lobcol FROM local_table);
DELETE FROM table1@remote_site <WHERE clause involving non_lob_columns>
スカラーを戻すリモートLOB上のファンクション
LOBパラメータを含み、スカラー・データ型を戻すSQLおよびPL/SQLファンクションがサポートされています。他のSQLファンクションとDBMS_LOB
APIの場合、リモートのLOB列に対する使用はサポートされていません。たとえば、次の文はサポートされています。
CREATE TABLE tab AS SELECT DBMS_LOB.GETLENGTH@dbs2(clob_col) len FROM tab@dbs2; CREATE TABLE tab AS SELECT LENGTH(clob_col) len FROM tab@dbs2;
ただし、次の文は、DBMS_LOB.SUBSTR
がLOBを戻すため、サポートされていません。
CREATE TABLE tab AS SELECT DBMS_LOB.SUBSTR(clob_col) from tab@dbs2;
リモートLOB用のデータ・インタフェース
文字またはバイナリのバッファをリモートのCLOB
またはBLOB
に挿入、およびリモートのCLOB
またはBLOB
を選択して、(PL/SQLを使用するなどで)文字またはバイナリのバッファに挿入できます。
SELECT clobcol1, type1.blobattr INTO varchar_buf1, raw_buf2 FROM table1@remote_site; INSERT INTO table1@remotesite (clobcol1, type1.blobattr) VALUES varchar_buf1, raw_buf2; INSERT INTO table1@remotesite (lobcol) VALUES ('test'); UPDATE table1 SET lobcol = 'xxx';
クラスタには、キー列としてもキー列以外の列としても、LOBを含めることはできません。
次のデータ構造は、一時インスタンスとしてのみサポートされます。この種のインスタンスはデータベース表に格納できません。
任意のLOB型のVARRAY
LOB属性を持つオブジェクト型など、LOB型を含む任意の型のVARRAY
任意のLOB型のANYDATA
LOB型を含む任意の型のANYDATA
問合せのORDER
BY
句やGROUP
BY
句または集計ファンクションには、LOB列を指定できません。
SELECT
... DISTINCT
文やSELECT
... UNIQUE
文、または結合文には、LOB列を指定できません。ただし、列のオブジェクト型にその型で定義されたMAP
ファンクションまたはORDER
ファンクションが含まれている場合、SELECT
...DISTINCT
文、UNION
やMINUS
集合演算子を使用する問合せには、オブジェクト型列のLOB属性を指定できます。
LOBセグメントの最初の(INITIAL
)エクステントには、3つ以上のデータベース・ブロックを含める必要があります。
最小エクステント・サイズは14ブロックです。8Kブロック・サイズ(デフォルト)の場合は、112Kと同等になります。
AFTER UPDATE
DMLトリガーの作成時には、UPDATE
OF
句にLOB列を指定できません。
LOB列は索引キーの一部として指定できません。ただし、ドメイン索引の索引タイプ指定には、LOB列を指定できます。また、Oracle Textを使用すると、CLOB
列に索引を定義できます。
INSERT
... AS
SELECT
操作では、LOB列とLOB属性に最大4,000バイトのデータをバインドできます。バインド変数を指定せずにSQLを使用してある表から別の表にINSERT
... AS
SELECT
を行う場合、長さの制限はありません。
表にLONG
列とLOB列の両方がある場合、同一のSQL文でLONG
列とLOB列の両方に4,000バイトを超えるデータをバインドすることはできません。ただし、LONG
列またはLOB列のいずれか一方には、4,000バイトを超えるデータをバインドできます。
注意:
OCI関数またはDBMS_LOB
パッケージを使用して、LOB列の値またはオブジェクト型列のLOB属性を変更した場合、AFTER
UPDATE
DMLトリガーを定義した表では、DMLトリガーが起動されません。
関連項目:
SecureFilesの各機能(重複除外、圧縮および暗号化)については、「Oracle LOB記憶域の使用」を参照してください
クラスタ化表、レプリケーション、トリガー、ドメイン索引およびファンクション索引における移行の制限については、「LONGからLOBへの列の移行」の「LONGからLOBへのアプリケーションの移行」を参照してください
SQLセマンティクスの制限については、「SQLでサポートされないLOBの使用」を参照してください
LOBオーサリングには、一定の制限があります。
一般的なLOBの制限は、次のとおりです。
SQL*Loaderでは、LOBから読み取られたフィールドは句の引数として使用できません。「データをLOBにロードするためのデータベース・ユーティリティ」を参照してください。
共有サーバー(マルチスレッド・サーバー)・モードでのBFILE
のセッション移行はサポートされません。これは、オープンされたBFILE
に対する操作を、共有サーバーへのコール終了後も継続できることを意味します。BFILE
操作が含まれる共有サーバーのセッションは、1台の共有サーバーに限定され、サーバー間での移行はできません。
CLOB
列に対する大/小文字を区別しない検索は、多くの場合成功しません。CLOB
列に対して大/小文字を区別しない検索を行うには、たとえば次のようにします。
ALTER SESSION SET NLS_COMP=LINGUISTIC; ALTER SESSION SET NLS_SORT=BINARY_CI; SELECT * FROM ci_test WHERE LOWER(clob_col) LIKE 'aa%';
LOWER
関数がないとSELECTは失敗します。Oracle TextまたはDBMS_LOB.INSTR()
を使用すると、大/小文字を区別して検索を実行できます。「SQLセマンティクスとLOB」を参照してください。