ユーザー権限により、他のユーザー・アカウントの作成やデータベース表の変更などの特定のアクションを実行できるようになります。
トピック:
関連項目:
『Oracle Databaseセキュリティ・ガイド』ユーザー権限は、様々な方法で管理できます。
個々の権限の付与および取消し。UPDATE
SQL文を実行する権限など、個々の権限を個々のユーザーまたはユーザーのグループに付与できます。
ロールの作成と権限の割当て。ロールは、ユーザーまたは他のロールに一括で付与する関連権限の名前付きグループです。
セキュア・アプリケーション・ロールの作成。セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、データベース・ロールを有効にできるタイミングを制御する条件を定義できます。たとえば、セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、ユーザー・セッションでデータベース・ロールを有効にするのを許可する前に、そのセッションに関連するIPアドレスをチェックできます。
権限は、表の更新や削除など、特定のアクションを実行する権利であるため、データベース・ユーザーには必要以上の権限を付与しないでください。
ユーザー権限とユーザー・ロールの概要は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。『Oracle Database 2日でデータベース管理者』には、権限を付与する方法の例も記載されています。
つまり、最小権限の原則とは、ユーザーに、ジョブを効率よく実行するために実際に必要な権限のみを与えることです。この原則を実践するために、次を可能なかぎり制限してください。
データベース・ユーザーに付与するシステムおよびオブジェクト 権限の数
データベースにSYS
権限で接続するユーザーの数。
たとえば、一般的に、CREATE ANY TABLE
権限は、データベース管理者権限を持たないユーザーには付与されません。
権限分析ポリシーを作成すると、Oracle Databaseインストールが複雑でユーザー・アカウントの数が非常に多い場合でも、システム権限およびオブジェクト権限の過度の付与を検出できます。権限分析ポリシーでは、指定された条件に基づいて権限の使用状況が検索され、検索結果がデータ・ディクショナリ・ビューに格納されます。権限分析ポリシーの作成方法の詳細は、『Oracle Database Vault管理者ガイド』を参照してください。
ロールは、ユーザーまたは他のロールに一括で付与する関連権限の名前付きグループです。
ロールの管理の基礎については、Oracle Database 2日でデータベース管理者を参照してください。また、ロールの作成例は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。
ロールとは、ユーザーに権限を素早く簡単に付与するために便利なものです。Oracle Databaseで定義されているロールを使用することもできますが、 必要な権限のみを含む独自のロールを作成すると、より継続的な制御が可能になります。Oracle Database定義ロールの権限は変更または削除される場合があります。たとえばCONNECT
ロールの場合、現在持っている権限はCREATE SESSION
権限のみです。以前は他に8個の権限がありました。
定義したロールに含まれる権限が、特定の職務に必要な権限のみであることを確認します。アプリケーション・ユーザーが既存のロールに組み込まれている権限のすべては必要としていない場合は、適切な権限のみを含む異なるロールのセットを適用してください。または、権限をさらに制限するロールを作成して割り当てます。
CREATE DATABASE LINK
権限などの強力な権限を通常のユーザー(SCOTT
など)に付与することは避けてください(特にSCOTT
はデフォルト・ユーザー・アカウントとしてよく知られているため、強力な権限を付与することは絶対に避けてください)。かわりに、データベース・ロールに権限を付与してから、その権限を使用する必要があるユーザーにそのロールを付与してください。また、ユーザーが必要とする最小限の権限のみを付与するように注意してください。
セキュア・アプリケーション・ロールは、認可されたPL/SQLパッケージによってのみ有効にできるロールです。PL/SQLパッケージ自体は、アプリケーションへのアクセスを制御するために必要なセキュリティ・ポリシーを反映します。
トピック:
セキュア・アプリケーション・ロールは、認可されたPL/SQLパッケージによってのみ有効にできるロールです。
このパッケージは、アプリケーションへのアクセスを制御する1つ以上のセキュリティ・ポリシーを定義します。ロールおよびパッケージは通常、作成者(通常はセキュリティ管理者)のスキーマに作成されます。セキュリティ管理者は、データベースのセキュリティを維持する責任があるデータベース管理者です。
セキュア・アプリケーション・ロールを使用する利点は、ロール自体に付与された権限に加えて、アプリケーション・アクセスにセキュリティの追加レイヤーを作成できることです。セキュア・アプリケーション・ロールがセキュリティを強化する理由として、パスワードがアプリケーション・ソース・コードに埋め込まれたり表に格納されたりしないことがあります。このため、データベースが行う決定はセキュリティ・ポリシーの実装に基づいて行われます。これらの定義はアプリケーションではなくデータベースにまとめて格納されるため、各アプリケーションのポリシーを変更するのではなく、このポリシーを一度に変更します。ポリシーはロールにバインドされているため、データベースに接続しているユーザー数に関係なく、結果は常に同じになります。
セキュア・アプリケーション・ロールには次のコンポーネントがあります。
セキュア・アプリケーション・ロール自体。このロールを作成するには、CREATE ROLE
文をIDENTIFIED USING
句とともに使用してPL/SQLパッケージに関連付けます。次に、一般的にロールに付与する権限をこのロールに付与します。
セキュア・アプリケーション・ロールに関連付けるPL/SQLパッケージ、プロシージャまたはファンクション。PL/SQLパッケージは、データベースへのログインを試行する人物にロールを付与またはロールを拒否する条件を設定します。PL/SQLパッケージ、プロシージャまたはファンクションは、定義者の権限ではなく実行者の権限を使用して作成する必要があります。実行者の権限のプロシージャは現行ユーザー(プロシージャを実行するユーザー)の権限で実行されます。このユーザーには、PL/SQLパッケージからアクセスされる、基礎となるオブジェクトに対するEXECUTE
権限が付与されている必要があります。実行者の権限のプロシージャは、特定のスキーマにバインドされません。様々なユーザーがこのようなプロシージャを実行でき、集中化されたアプリケーション・ロジックを使用することで複数のユーザーが自身のデータを管理できます。実行者の権限のパッケージを作成するには、プロシージャ・コードの宣言部でAUTHID CURRENT_USER
句を使用します。
ユーザーのロールを有効(または無効)にするために、PL/SQLパッケージにはSET ROLE
文またはDBMS_SESSION.SET_ROLE
コールも含まれている必要があります。
PL/SQLパッケージを作成してから、適切なユーザーにパッケージに対するEXECUTE
権限を付与する必要があります。
ユーザーがログオンしたときにPL/SQLパッケージを実行する方法。PL/SQLパッケージを実行するには、ユーザーがロールによって付与される権限を使用する前に、アプリケーションから直接PL/SQLパッケージをコールする必要があります。ユーザーがログオンしたときにPL/SQLパッケージを自動的に実行するログオン・トリガーは使用できません。
ユーザーがアプリケーションにログインすると、必要に応じて、パッケージ内のポリシーによるチェックが行われます。チェックを通過したユーザーにはロールが付与され、アプリケーションへのアクセスが許可されます。ユーザーがチェックを通過できない場合、アプリケーションへのアクセスは拒否されます。
このチュートリアルでは、2人のユーザーMatthew WeissとWinston TaylorがOE.ORDERS
表から情報を取得する場合を説明します。
OE.ORDERS
表へのアクセス権は、emp_role
セキュア・アプリケーション・ロールで定義されています。MatthewはWinstonのマネージャで、OE.ORDERS
表内の情報にアクセスできますが、Winstonは情報にアクセスできません。
トピック:
最初の手順として、MatthewとWinstonのユーザー・アカウントを作成します。
MatthewとWinstonは、どちらもHR.EMPLOYEES
表の従業員のサンプルです。この表には、従業員のマネージャIDや電子メール・アドレスなどの情報を含む列があります。以降でセキュア・アプリケーション・ロールをテストするため、これら2人の従業員のユーザー・アカウントを作成する必要があります。
ユーザー・アカウントを作成するには、次のようにします。
Enterprise Managerでデータベース・ホームページにアクセスします。
詳細は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。
ターゲット・データベースにアクセスし、ユーザーSYSTEM
としてログインします。
「管理」メニューから、「セキュリティ」を選択し、「ユーザー」を選択します。
「ユーザー」ページで、「作成」をクリックします。
ユーザーの作成ページで、次の情報を入力します。
名前: mweiss
(Matthew Weissのユーザー・アカウントを作成するため)
プロファイル: DEFAULT
認証: Password
「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: パスワードの作成要件に示されている要件を満たすパスワードを入力します。
デフォルト表領域: EXAMPLE
一時表領域: TEMP
ステータス: Unlocked
「システム権限」をクリックします。
「リストを編集」をクリックします。
システム権限の変更ページの「使用可能なシステム権限」リストからCREATE SESSION
権限を選択し、「移動」をクリックして「選択したシステム権限」リストに移動します。
「OK」をクリックします。
CREATE SESSION
がユーザーmweiss
のシステム権限としてリストされた状態で「ユーザーの作成」ページが表示されます。
CREATE SESSION
の「管理者オプション」が選択されていないことを確認し、「OK」をクリックします。
ユーザー・ページのユーザー・リストでユーザーMWEISSの選択ボタンを選択してから、「アクション」リストで「類似作成」を選択します。次に「実行」をクリックします。
「ユーザーの作成」ページで、次の情報を入力してWinstonのユーザー・アカウントを作成します。このアカウントはMatthewのユーザー・アカウントとほぼ同じになります。
名前: wtaylor
「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: パスワードの作成要件に示されている要件を満たすパスワードを入力します。
ユーザーwtaylor
に対し、デフォルト表領域および一時表領域、またはCREATE SESSION
システム権限を指定する必要はありません。すでに指定されているからです。
「OK」をクリックします。
これで、Matthew WeissとWinston Taylorの両方にユーザー・アカウントが作成され、同じ権限が与えられました。
セキュリティを強化するためには、システム管理者に職務を割り当てる際に、責務分離の概念を取り入れる必要があります。
sec_admin
というセキュリティ管理者アカウントを作成し、使用します。 sec_adminセキュリティ管理者アカウントを作成するには、次のようにします。
「管理」メニューから、「セキュリティ」を選択し、「ユーザー」を選択します。
データベース・ログイン・ページが表示されたら、SYS
などの管理ユーザーとしてログインします。ユーザーSYS
は、SYSDBAロールが選択されている状態でログインする必要があります。
「ユーザー」ページで、「作成」をクリックします。
ユーザーの作成ページで、次の情報を入力します。
名前: sec_admin
プロファイル: Default
認証: Password
「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: パスワードの作成要件に示されている要件を満たすパスワードを入力します。
デフォルト表領域: EXAMPLE
一時表領域: TEMP
ステータス: UNLOCKED
「システム権限」をクリックします。
「リストを編集」をクリックします。
「システム権限の変更」ページが表示されます。
「使用可能なシステム権限」リストから次の権限を選択し、「移動」をクリックしてそれぞれを「選択したシステム権限」リストに移動します。(複数の権限を選択するには、[Ctrl]キーを押したままにします。)
CREATE PROCEDURE
CREATE ROLE
CREATE SESSION
INHERIT ANY PRIVILEGES
SELECT ANY DICTIONARY
「OK」をクリックします。
「ユーザーの作成」ページが表示されます。「管理者オプション」では、ボックスを選択しないでください。
「OK」をクリックします。
ユーザー・ページが表示されます。ユーザーsec_admin
が「ユーザー名」リストに表示されます。
参照ビューには、より大きな表からの情報のビューが含まれます。参照ビューには、必要な情報のみが含まれます。
このチュートリアルで作成するgrant_emp_role
プロシージャは、従業員ID 100のSteven Kingの直属のマネージャにのみemp_role
を付与します。この情報はHR.EMPLOYEES
表にあります。ただし、この表には給与情報などの機密データが含まれており、また、使用した場合すべてのユーザーがアクセスする必要があるため、このプロシージャでは使用できません。実際にはほとんどの場合に、必要な情報のみが含まれている参照ビューを作成します。(参照表を作成することはできますが、ビューに最新データが反映されます。)このチュートリアルでは、従業員の名前、従業員ID、マネージャIDのみを含む独自の参照ビューを作成します。
HR.HR_VERIFY参照ビューを作成するには、次のようにします。
SQL*Plusで、ユーザーHR
として接続します。
CONNECT HR
Enter password: password
HR
がロックされているというエラー・メッセージが表示された場合は、そのアカウントのロックを解除し、次の文を入力してパスワードをリセットします。セキュリティを向上させるため、以前のリリースのOracle Databaseで使用されたパスワードを再利用しないでください。「パスワードの作成要件」に示されているパスワードのガイドラインに従って、任意のセキュアなパスワードを入力します。
CONNECT SYSTEM Enter password: password PASSWORD HR Changing password for HR New password: password Retype new password: password Password changed. ALTER USER HR ACCOUNT UNLOCK; CONNECT HR Enter password: password
次のCREATE VIEW
SQL文を入力して参照ビューを作成します。
CREATE VIEW hr_verify AS SELECT EMPLOYEE_ID, FIRST_NAME, LAST_NAME, EMAIL, MANAGER_ID FROM EMPLOYEES;
次のSQL文を入力して、このビューに対するEXECUTE
権限をmweiss
、wtaylor
およびsec_admin
に付与します。
GRANT SELECT ON hr_verify TO mweiss; GRANT SELECT ON hr_verify TO wtaylor; GRANT SELECT ON hr_verify TO sec_admin;
管理アカウントと参照ビューを作成した後、セキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成できます。
多くの場合、プロシージャを格納するパッケージを作成しますが、このチュートリアルは、1つのセキュア・アプリケーション・ロールのみをテスト(プロシージャで定義)するシンプルなチュートリアルであるため、プロシージャのみを作成します。複数のプロシージャを作成してロールをテストする場合は、パッケージ内にプロシージャを作成します。この段階でロールは存在しませんが、それでかまいません。ロールは次の手順で作成します。
PL/SQLパッケージを使用すれば、SQL文からアクセスできる特定の関連プロシージャやタイプを、単純で明確なインタフェースとして定義できます。またパッケージを使用することでコードが再利用可能になり、メンテナンスもしやすくなります。パッケージをセキュア・アプリケーション・ロールに使用した場合の利点は、複数のセキュリティ・ポリシーを1つのグループにまとめることで、アプリケーション保護のための堅牢なセキュリティ計画を実装できることです。セキュリティ・ポリシーに失敗したユーザー(潜在的な侵入者)については、監査チェックをパッケージに追加して、その失敗を記録できます。
セキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成するには、次のようにします。
Enterprise Managerで「ログアウト」をクリックしてデータベースからログアウトします。
「確認」ダイアログ・ボックスで「(データベース・インスタンス)のログアウト」を選択し、「ログアウト後にログイン・ページを表示します。」チェック・ボックスを選択します。「ログアウト」をクリックします。
NORMAL
ロールを使用するユーザーsec_admin
としてログインします。
「スキーマ」メニューから、「プログラム」を選択し、「プロシージャ」を選択します。
プロシージャ・ページで「作成」をクリックします。
プロシージャの作成ページで、次の情報を入力します。
名前: GRANT_EMP_ROLE
スキーマ: SEC_ADMIN
ソース: 表示された空のプロシージャ・コードを削除してから、次のテキストを入力し、セキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成します。
AUTHID CURRENT_USER AS v_user varchar2(50); v_manager_id number :=1; BEGIN v_user := lower((sys_context ('userenv','session_user'))); SELECT manager_id INTO v_manager_id FROM hr.hr_verify WHERE lower(email)=v_user; IF v_manager_id = 100 THEN EXECUTE IMMEDIATE 'SET ROLE emp_role'; ELSE NULL; END IF; EXCEPTION WHEN NO_DATA_FOUND THEN v_manager_id:=0; DBMS_OUTPUT.PUT_LINE(v_manager_id); END;
次のように指定します。
AUTHID CURRENT USER
: CREATE PROCEDURE
文にAUTHID CURRENT_USER
句を追加します。AUTHID CURRENT_USER
句を使用すると、実行するユーザーは自信の権限を使用してプロシージャを実行できます。
プロシージャを機能させるには、実行者の権限を使用するプロシージャを作成する必要があります。実行者の権限は、プロシージャがアクセスするすべてのオブジェクトに対するEXECUTE
権限をユーザーに与えます。
実行者の権限のプロシージャ内で有効になっているロールは、プロシージャが終了した後でも有効なままですが、ユーザーは、セッションを終了するとセキュア・アプリケーション・ロールに関連付けられている権限を失います。この場合は、セッションの残りでロールを有効にする専用プロシージャを持つことができます。
ユーザーは、定義者権限のプロシージャ内のセキュリティ・ドメインを変更できないため、セキュア・アプリケーション・ロールは実行者権限のプロシージャ内でのみ有効になります。
実行者の権限を使用したプロシージャの作成についての重要性は、「セキュア・アプリケーション・ロールについて」を参照してください。
v_user varchar2(50)
: ユーザーのセッション情報を格納するv_user
変数を宣言します。
v_manager_id number :=1
: v_user
ユーザーのマネージャIDを格納するv_manager_id
変数を宣言します。
v_user := lower...
: ログオンするユーザーのユーザー・セッション情報を取得します(この場合はMatthewまたはWinston)。ユーザー・セッション情報を取得するには、SQLファンクションSYS_CONTEXT
をネームスペース属性USERENV
('userenv
'、session_attribute
)とともに使用して、この情報をv_user
変数に書き込みます。
このファンクションから返される情報は、ユーザーが認証された方法、クライアントのIPアドレスおよびユーザーがプロキシを介して接続したかどうかを示します。SYS_CONTEXT
の詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
SELECT manager_id ... INTO...
: 現行ユーザーのマネージャIDを取得します。SELECT
文によって、マネージャIDがv_manager_id
変数にコピーされ、HR.HR_VERIFY
ビューで現行ユーザーのマネージャIDがチェックされます。従業員の電子メール・アドレスはユーザー名と同じであるため、この例では従業員の電子メール・アドレスを使用します。
IF ... THEN ... END IF
: IF
条件を使用して、ユーザーにgrant_emp_role
ロールを付与すべきかどうかをテストします。この例の場合は、MatthewのマネージャであるSteven King(従業員番号は100)に報告を行うかどうかが条件となります。Matthewのように、Kingに報告を行う場合、ユーザーにはセキュア・アプリケーション・ロールが付与されます。報告を行わない場合は、ロールは付与されません。
結果として、Matthew WeissはSteven Kingの直属の部下であるためセキュア・アプリケーション・ロールを付与されますが、WinstonはSteven Kingの直属の部下ではないためロールは付与されません。
THEN ... ELSE NULL
: IF
条件内では、THEN
条件によってSET ROLE
文がすぐに実行され、ロールが付与されます。これが実行されない場合は、ELSE
条件により、権限付与が拒否されます。
EXCEPTION
: データが検出されない場合は、EXCEPTION
文を使用してv_manager_id
を0
に設定します。
DBMS_OUTPUT.PUT_LINE
: マネージャID (ここでは0
)をバッファにコピーしてすぐに使用できるようにします。
「OK」をクリックします。
ヒント:
PL/SQLコードの作成時または実行時に問題が発生した場合は、Oracle Databaseのトレース・ファイルを確認してください。USER_DUMP_DEST
初期化パラメータにトレース・ファイルの現在の位置が示されます。このパラメータの値は、SQL*PlusでSHOW PARAMETER USER_DUMP_DEST
を発行して確認できます。トレース・ファイルの詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。
セキュア・アプリケーション・ロールを設定するPL/SQLプロシージャを作成した後、セキュア・アプリケーション・ロールemp_role
を作成できます。
セキュア・アプリケーション・ロールを作成するには、次のようにします。
sec_admin
ユーザーとしてログインしたままであることを確認します。
「管理」メニューから、「セキュリティ」を選択し、「ロール」を選択します。
ロール・ページで、「作成」をクリックします。
ロールの作成ページで、次の情報を入力します。
名前: emp_role
認証: 「アプリケーション」を選択します。
ページが拡張され、セキュア・アプリケーション・ロールの作成に必要な他のプロンプトが表示されます。
「プロシージャ」オプションを選択します。
「プロシージャ名」フィールドにSEC_ADMIN.GRANT_EMP_ROLE
と入力します。
「OK」をクリックします。
OE.ORDERS
表を所有するユーザーOE
は、ORDERS
表に対するSELECT
権限をemp_role
ロールに付与する必要があります。
これにより、emp_role
ロールの使用を認可された任意のユーザーに、OE.ORDERS
表から選択する権限が与えられます。
EMP_ROLEにOE.ORDERS表に対するSELECT権限を付与する手順:
ユーザーOE
として接続します。
CONNECT OE
Enter password: password
OE
がロックされているというエラー・メッセージが表示された場合は、OE
アカウントのロックを解除し、次の文を入力してパスワードをリセットします。セキュリティを向上させるため、以前のリリースのOracle Databaseで使用されたパスワードを再利用しないでください。「パスワードの作成要件」に示されているパスワードのガイドラインに従って、任意のセキュアなパスワードを入力します。
CONNECT SYSTEM Enter password: sys_password PASSWORD OE -- First, change the OE account password. Changing password for OE New password: password Retype new password: password Password changed. ALTER USER OE ACCOUNT UNLOCK; -- Next, unlock the OE account.
次の構文を使用して、ユーザー・アカウントのロック解除と新規パスワードの作成する方法もあります。
ALTER USER account_name ACCOUNT UNLOCK IDENTIFIED BY new_password:
これで、ユーザーOE
として接続できます。
CONNECT OE
Enter password: password
次の文を入力して、OE.ORDERS
表に対するSELECT
権限をemp_role
ロールに付与します。
GRANT SELECT ON ORDERS TO emp_role;
ロールは、直接ユーザーに付与しないでください。ユーザーがセキュリティ・ポリシーに合格したと想定して、PL/SQLパッケージが付与の処理を実行します。
この段階で、MatthewとWinstonはOE.ORDERS
表にアクセスを試行できますが、アクセスはできません。
次のステップは、彼らにgrant_emp_role
プロシージャに対するEXECUTE
権限を付与してgrant_emp_role
プロシージャを実行できるようにし、OE.ORDERS
表から選択しようとしたときにアクセスが許可または拒否されるようにすることです。
grant_emp_roleプロシージャに対するEXECUTE権限を付与するには、次のようにします。
SQL*Plusで、sec_admin
ユーザーとしてログインします。
connect sec_admin
Enter password: password
ユーザーmweissとwtaylorで、次のGRANT
SQL文を実行します。
GRANT EXECUTE ON grant_emp_role TO mweiss; GRANT EXECUTE ON grant_emp_role TO wtaylor;
MatthewとWinstonとしてログオンし、OE.ORDERS
表にアクセスを試行して、emp_role
セキュア・アプリケーション・ロールをテストする準備ができました。
MatthewとWinstonがログオンすると、OE.ORDERS
表でSELECT
文を発行する前に、grant_emp_role
プロシージャが実行されてロールの検証が行われます。
トピック:
SQL*Plusを使用して、mweiss
ユーザーとしてデータベースに接続できます。
ユーザーMWEISSとしてemp_roleセキュア・アプリケーション・ロールをテストするには、次の手順を実行します。
SQL*Plusで、mweiss
ユーザーとして接続します。
CONNECT mweiss
Enter password: password
次のSQL文を入力してgrant_emp_role
プロシージャを実行します。
EXEC sec_admin.grant_emp_role;
この文により、現行セッションに対してgrant_emp_role
プロシージャが実行されます。(実際のシナリオでは、ユーザーがアプリケーションにログインしたときに、この文は自動的に実行されます)。
OE.ORDERS
で次のSELECT
文を実行します。
SELECT COUNT(*) FROM OE.ORDERS;
MatthewにはOE.ORDERS
表へのアクセス権があります。
COUNT(*) ---------- 105
次に、Winstonがセキュア・アプリケーションへのアクセスを試みます。
ユーザーWTAYLORとしてemp_roleセキュア・アプリケーション・ロールをテストするには、次の手順を実行します。
SQL*Plusでユーザーwtaylor
として接続します。
CONNECT wtaylor
Enter password: password
次のSQL文を入力してgrant_emp_role
プロシージャを実行します。
EXEC sec_admin.grant_emp_role;
この文により、現行セッションに対してgrant_emp_role
プロシージャが実行されます。
OE.ORDERS
で次のSELECT
文を実行します。
SELECT COUNT(*) FROM OE.ORDERS; ERROR at line 1: ORA-00942: table or view does not exist
WinstonはSteven Kingに直接報告を行わないため、OE.ORDERS
表へのアクセス権がありません。SELECT
文を実行した場合でも、ORDERS
表に含まれる実際の注文数はわかりません。
コンポーネントが不要になった場合、このチュートリアルで作成したコンポーネントを削除できます。
コンポーネントを削除するするには、次のようにします。
SQL*PlusでユーザーSYSTEM
として接続します。
CONNECT SYSTEM
Enter password: password
次のDROP
文を入力します。
DROP USER mweiss; DROP USER wtaylor;
ユーザーsec_admin
は削除しないでください。このマニュアルの以降のチュートリアルで、このユーザー・アカウントが必要になります。
SQL*Plusでユーザーsec_admin
として接続します。
CONNECT sec_admin
Enter password: password
次のDROP
SQL文を入力します。
DROP ROLE emp_role; DROP PROCEDURE grant_emp_role;
ユーザーHR
として接続してから、HR_VERIFY
ビューを削除します。
CONNECT HR
Enter password: password
DROP VIEW hr_verify;
SQL*Plusを終了します。
EXIT
Oracle Databaseでは、権限のセキュリティを構成するための初期化パラメータのセットが提供されています。
表3-1に、ユーザー権限を保護するために使用する初期化パラメータを示します。
表3-1 権限セキュリティに使用される初期化パラメータ
初期化パラメータ | デフォルト設定 | 説明 |
---|---|---|
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オペレーティング・システムが各ユーザーのロールを識別および管理するかどうかを決定します。 |
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他のロールに含まれるロールを含め、ユーザーが有効にできるデータベース・ロールの最大数を指定します。 |
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オペレーティング・システム・ロールがリモート・クライアントに対して許可されるかどうかを指定します。デフォルト値の |
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初期化パラメータを変更するには、「初期化パラメータ値の変更」を参照してください。初期化パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』および『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。