2 ELS の機能

この章では、ELS の機能について説明します。

SMC の機能

SMC は次のことを行います。

  • ポリシーや、HSC/VTCS によって提供されるボリュームおよびドライブ特性に基づいてテープ割り振りを操作します。

    たとえば、実デバイスまたは仮想デバイスのどちらかにスクラッチ割り振りを指示するために使用できる SMC POLICY コマンドでは、スクラッチサブプールを選択したり、VTCS が仮想ボリュームの管理に使用するマネージメントクラス名を割り当てたりできます。

  • MVS のマウント、マウント解除、およびスワップメッセージをインターセプトし、それらを自動化のために HSC または VTCS に送信します。

SMC は、テープ処理が発生しているすべてのホストで実行される必要があります。ELS サーバーコンポーネント (HSC/VTCS) は SMC と同じ z/OS ホストで実行することも、個別のリモートホストで実行することもできます。SMC と HSC/VTCS が別々の z/OS ホスト上にある場合、クライアントホストからサーバーホストへの要求の送信には TCP/IP が使用されます。リモートの SMC クライアントからの HTTP 要求を受信するためには、サーバーホストで実行されている SMC で HTTP コンポーネントをアクティブ化する必要があります。

SMC クライアント/サーバー機能では、SMC をクライアントホストのみで実行し、HSC/VTCS と HTTP サーバーは 1 つ以上のサーバーホストで実行できます。SMC クライアント/サーバー機能を使用すると、次の利点が得られます。

  • HSC/VTCS を実行するホストの数を減らせる。Oracle では、HSC/VTCS を 2 台のホストのみ (プライマリとバックアップ) で実行することを推奨しています。少ないホストで HSC/VTCS を実行すると CDS の競合が減るほか、複数の MVS syslog ファイルを管理せずに済むようになります。

  • 物理的に異なるハードウェア構成の複数の HSC/VTCS TapePlex システムと通信できる

  • HSC を保守のために再起動する際にフェイルオーバー機能を提供できる。

HSC の機能

HSC は物理テープ環境を制御します。HSCは、SMC からの要求を受けて、物理テープをマウントおよびマウント解除するよう LSM ロボットまたは手動ロボットに指示します。HSC は、移動やスワップなどのその他のすべての物理テープ操作も制御します。さらに、HSC は実および仮想テープ環境に関する情報が格納されている CDS (Control Data Set) も管理します。

VTCS の機能

VTSS は、3490E デバイスをエミュレートする仮想テープドライブ (VTD) を提供します。VTD を使用することにより、VSM はデータを VTSS 上の仮想テープボリューム (VTV) に書き込みます。

VTCS とは、VTSS ハードウェアを制御するソフトウェアです。たとえば、VTSS の自動移行限界値 (AMT) の上限値と下限値を指定すると、VTSS スペース管理または VTV 移行サイクルを制御できます。実テープドライブ (RTD) では、移行された VTV が物理的な複数ボリュームカートリッジ (MVC) に書き込まれます。VTCS が制御するのは RTD ですが (ただし MVC のマウントおよびマウント解除サービスは HSC が提供)、HSC は VSM に割り振られていない ACS テープドライブを制御します。

MVC に移行されて VTSS に常駐していない VTV のマウントをホストが要求した場合、VSM は自動的に移行された VTV を VTSS にリコールします。図2-1 は、VTV の移行/リコールサイクルを示しています。

注:

VSM は、VTSS 間における RTD の動的共有をサポートしています。ただし、VTSS が RTD を共有する場合、VTSS は同じホストすべてに対してアクセス権が必要になります

図2-1 VTV 移行/リコールサイクル

図2-1 については、周囲のテキストで説明しています。
  1. 移行 — VTV に書き込まれるデータセットを仮想マウントし、VTSS に常駐している VTV を仮想マウント解除し、VTV がほかの VTV によって収集されたら、MVC にスタックしてる VTV を実際にマウントし、実際にマウント解除します。

  2. リコール — VTV をリコールするために実際にマウントし、VTV が VTSS にリコールされたら仮想マウントします。

CDRT の機能

CDRT では DR ホストによって使用される本番用 CDS のテスト用コピーが作成されるため、それによって同じ ACS ハードウェアを管理する 2 つの異なる CDS を含む 2 つの ELS サブシステムを使用できます。CDS は ACS ハードウェア内のテープカートリッジおよびリソースの状態に変更を反映します。ただし、CDRT を使用した DR テスト中は、2 つの ELS サブシステムが 2 つの異なる CDS を使用するため、通信しません。そのため、本番用 CDS で生じた変更はテスト用の CDS コピーには反映されず、その逆もまた同様です。CDRT はテスト用の ACS および VSM ハードウェアを本番用の ACS および VSM ハードウェアから分離するために動作し、本番用データの整合性が確保されるように DR テストを管理したり、テープボリュームや ACS ハードウェアリソースの競合を最小限に抑えたりします。CDRT を使用した DR テストの成功に欠かせない中心的なものは、ACS または VSM (あるいはその両方の) ハードウェアと ELS サブシステムによって管理されているすべてのテープボリュームの状態の有効なポイントインタイムコピーです。テープボリューム環境では、このようなテープボリューム状態データ (メタデータ) の一部が ELS サブシステムや ACS/VSM ハードウェアの外側で保持および管理されることがよくあります。テープボリュームのメタデータ (つまり VOLSER、DSN、有効期限、スクラッチステータス、実際または仮想の出力先など) は通常、1 つ以上のテープ管理カタログ (TMC)、1 つ以上の z/OS カタログ、および CDS に格納されます。DR テストの実行を成功させるには、ホストシステムで反映されるテープボリュームの状態が本番用ホストと DR ホストの両方で同じまたは同等であるようにすることがきわめて重要です。DR テストの開始時に本番用ホストと DR ホストの間でテープボリュームの状態の整合性がこのように取れていれば、顧客アプリケーションの並行処理が可能となり、ビジネス継続計画の検証に役立ちます。DR テスト用ホストは分離されたハードウェアを実行しますが、本番用ホストは分離されていない ACS ハードウェアと分離された ACS ハードウェアの両方を継続して使用します。

DR テストハードウェアは、最小限の 1 つの ACS です。オプションで、1 つ以上の VTSS を DR テストハードウェアとして採用できます。ACS は本番用ホストと DR ホストの間で共有されます。DR テスト中、DR ホストは分離されたあらゆる VTSS を排他的に使用します。TMC および z/OS カタログの有効なポイントインタイムコピーを作成する場合は、該当する他社ソフトウェアのドキュメントを参照してください。DR テストの終了時には、CDS のテスト用コピーを含む DR テスト用ホストから作成されたすべてのデータは通常破棄され、分離されたハードウェアは通常の本番環境に再配備されます。