1 Enterprise Library Software とは

Enterprise Library Software (ELS) とは、Oracle StorageTek の自動カートリッジシステム (Automated Cartridge System、ACS) および仮想ストレージマネージャー (Virtual Storage Manager、VSM) ハードウェアを使用可能にして管理するソフトウェアソリューションです。

モジュール構成ライブラリは、労働集約型の手動テープ操作を自動テープに変えるため、自動テープの中心的存在になっています。たとえば、SL8500 は HandBot High Performance(tm) ロボットを介してカートリッジテープのマウントとマウント解除を自動化します。SL8500 は、短期または長期にわたって高度にスケーラブルです。たとえば、RealTime Growth(tm) 機能は、より多くのスロット、ドライブ、およびロボットを追加して、中断することなく増大した負荷 (年度末処理など) を処理できることを意味します。SL8500 は Oracle エンタープライズドライブとミッドレンジドライブのあらゆる組み合わせをサポートし、これはつまり SL8500 が多数の小規模なライブラリを 1 つの高性能システムに統合するのに理想的であることを意味しています。SL8500 は Oracle の最新世代のテープドライブである、アクセス中心の T9840D と容量中心の T10000C をサポートしていますが、これらは基幹業務データを暗号化する機能も備えています。

Virtual Storage Manager (VSM) は、テープメディアやトランスポートの非効率使用の問題に対する Oracle StorageTek の仮想ストレージソリューションです。VSM は仮想ストレージサブシステム (VTSS) 上のディスクバッファーに仮想テープボリューム (VTV) を保存することでこの問題を解決します。VSM はその後 VTV を、実テープドライブ (RTD) にマウントされている、マルチボリュームカートリッジ (MVC) と呼ばれる実自動テープボリュームに移行 (およびスタック) します。ホストが移行されたテープボリュームを必要としたときに、それらが VTSS に常駐していない場合は、自動的に VTSS にリコールされます。VTSS と VTV によって、VSM はアクセス時間、スループット、物理メディアとトランスポートの使用状況を最適化できます。VSM は、MVS ホストソフトウェアである仮想テープ制御システム (VTCS)、ELS の VTCS をサポートする部分、および VTSS で構成されています。

次のセクションでは、ELS のソフトウェアコンポーネントについて説明します。

ELS 基本ソフトウェア

ELS 基本ソフトウェアは、図1-1 に示すように、ホストソフトウェアコンポーネント (Host Software Component、HSC)、ストレージ管理コンポーネント (Storage Management Component、SMC)、HTTP サーバー、および仮想テープ制御ソフトウェア (Virtual Tape Control Software、VTCS) で構成されます。

図1-1 ELS 基本ソフトウェア

図1-1 については、周囲のテキストで説明しています。
  1. ユーザーデータ

  2. ACS コマンド

  3. VTSS コマンド

  4. システム間 ELS 通信 (TCP/IP)

HSC

HSC は次のことを行います。

  • TapePlex の物理ドライブと仮想ドライブ、および対応するメディアに関する情報を格納している制御データセット (Control Data Set、CDS) の維持。

  • SMC からのマウント、マウント解除、スワップ、およびクエリーに関する要求の受信、およびこれらの操作を自動的に実行する LMU へのこれらの要求の送信。

  • 自動カートリッジシステム (ACS) と ACS を構成する LSM の管理。

  • カートリッジの消失など、エラー状態の管理。

SMC および HTTP サーバー

SMC は、IBM の z/OS オペレーティングシステムと HSC や MVS/CSC とのインタフェースです。SMC は必須の ELS コンポーネントであり、自動実テープや VSM 仮想テープにアクセスするすべての MVS ホストに常駐する必要があります。SMC は JES2 システムと JES3 システムの両方で実行されて次の処理を行います。

  • テープデバイスの割り振りの操作 (実テープと仮想テープ)。

  • テープ管理、オペレーティングシステムのマウント、マウント解除、スワップメッセージのインターセプト、これらの機能の要求の作成、HSC または MVS/CSC への要求の経路指定。

  • 複数の TapePlex 間での要求の調整。これらの要求は、マウント、マウント解除、スワップ、およびクエリー (構成、ボリュームルックアップ) で構成されます。

    TapePlex とは単一のハードウェア構成であり、通常は単一の HSC 制御データセット (CDS) で表されます。

    TapePlex には、複数の ACS と仮想テープストレージサブシステム (VTSS) を含めることができます。

SMC はいくつの TapePlex とでも通信できます (同じホストで実行している HSC または MVS/CSC との通信にはクロスアドレス空間機能、ほかのホストで実行している HSC システムとの通信には TCP/IP を使います)。

SMC HTTP サーバーとは、リモートの SMC クライアントからの TCP/IP インバウンドトランザクションを管理する SMC のコンポーネントです。この HTTP コンポーネントの起動と停止は、SMC コマンドを使って制御します。この HTTP コンポーネントは通常、HSC が動作しているホストでのみ起動されます。詳細については、SMC の構成および管理を参照してください。

VTCS

VTCS は HSC/SMC の拡張機能として実行されて、次の処理を行います。

  • 仮想テープドライブ (VTD) の割り振り操作

  • VTV の使用の管理

  • 仮想ボリュームの移行とリコールの管理

  • VSM で使用される実テープメディアとトランスポートの使用の管理。

CDRT

同時障害回復テスト (Concurrent Disaster Recovery Test、CDRT) 機能は ELS に組み込まれており、次の方法によって、顧客が保険、規制、または監査の要件を満たすためのビジネス継続 (障害回復) 計画を示すのを支援できます。

  • ACS または VSM ハードウェアを追加購入しなくても、障害回復サイトと本番サイトの間で ACS および VSM ハードウェアを同時に共有できるようにします。

  • 障害回復テストの期間中、既存の ACS ハードウェアおよびテープボリュームプールの顧客定義部分を分離して、ACS ハードウェアを同時使用できるようにします。

  • 本番用データを使用して本番処理を同時に実行しながら、分離された ACS または VSM ハードウェア (あるいはその両方) で本番用データを共有している障害サイトから同時に実行されている顧客アプリケーションの並列テストをサポートします。

  • 障害回復テストの終了後、通常の本番処理を中断させずに、分離されたハードウェアを簡単に結合して本番使用に戻せるようにします。

LCM ソフトウェア

図1-2 に、LCM およびそれと ELS メインフレームソフトウェアとの相互作用を示します。

注:

LCM は ELS ソフトウェアパッケージとともに配布されますが、LCM はほかの ELS コンポーネントとは別にライセンス供与される必要があるオプションのソフトウェアです。

図1-2 LCM および ELS メインフレームソフトウェア

図1-2 については、周囲のテキストで説明しています。
  1. LCM

  2. ELS メインフレームソフトウェア

ライブラリコンテンツマネージャー (LCM) では、ACS および VSM システムの管理を支援するために、ACS コンテンツや VSM リソース (MVC と VTV) を効率よく管理し、選択された VSM 操作 (移行やリコールなど) を実行できるようにします。

ELS 7.0 以降では、LCM はまた、MVC をオフサイトに保管したり、ボリュームを長期保存のために保管したり、フロアボリュームを管理したりできる障害回復 (DR) ソリューションである Offsite Vault Feature の管理インタフェースでもあります。

ELS のその他のメインフレームソフトウェア

ELS のその他のメインフレームソフトウェアには、図1-3 に示す LibraryStation および MVS/CSC があります。

図1-3 ELS のその他のメインフレームソフトウェア

図1-3 については、周囲のテキストで説明しています。
  1. サーバーとしての ACSLS の使用

  2. ACSLS へ

  3. サーバーとしての LibraryStation の使用

  4. オープンクライアントから

MVS/CSC および LibraryStation

MVS/CSC および LibraryStation は ELS 配布メディアにパッケージされていますが、ELS ソリューションの一部でもなければ、ELS FMID 内に含まれているわけでもありません。MVS/CSC は、ライブラリリソースが ACSLS によって管理される場合に必要です。LibraryStation は、MVS 以外のクライアントと HSC を使用する場合に必要です。