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Oracle® Fusion Middleware Oracle Identity Managementエンタープライズ・デプロイメント・ガイド
11g リリース2 (11.1.2.3.0)
E61956-03
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7 エンタープライズ・デプロイメント用の記憶域の準備

この章では、Oracle Identity and Access Managementエンタープライズ・デプロイメント用の記憶域を準備する方法を説明します。

このガイドで説明する記憶域モデルは、可用性の最大化、コンポーネントの最良の独立性、構成の対称性およびバックアップと災害からのリカバリの容易化を実現するために選択されました。このガイドの残りの部分では、この記憶域モデルに基づいたディレクトリ構造およびディレクトリ用語を使用します。その他のディレクトリ・レイアウトも可能で、サポートされています。

この章では、次の項目について説明します。

7.1 エンタープライズ・デプロイメント用の記憶域の準備の概要

記憶域は、エンタープライズ・デプロイメントがわかりやすくなり、構成および管理が容易になるように設定することが重要です。この章の情報に従って記憶域を設定することをお薦めします。この章で定義されている用語は、このガイド内のダイアグラムおよび手順で使用されます。

この章を参照情報として使用すると、インストールおよび構成手順で使用されているディレクトリ変数について理解できます。その他のディレクトリ・レイアウトも可能であり、サポートされていますが、このマニュアルで採用するモデルは、可用性を最大化するために選択されており、コンポーネントの最良の独立性と構成の対称性の両方を実現し、バックアップおよび災害からのリカバリを容易にします。ドキュメントの残りの部分では、このディレクトリ構造およびディレクトリ用語を使用します。

7.2 ディレクトリとディレクトリ変数の用語

この項では、Oracle Identity and Access Managementエンタープライズ・デプロイメントを構成するためにこのガイドで使用されるディレクトリ変数について説明します。これらを環境変数として設定する必要はありません。このガイドでは、インストールして構成するディレクトリを次のディレクトリ変数を使用して説明しています。

  • IDM_TOP: この環境変数および関連するディレクトリ・パスは、Oracleバイナリおよび構成情報が格納されているベース・ディレクトリを表します。

  • MW_HOME: この変数および関連するディレクトリ・パスは、Oracle Fusion Middlewareが配置されている場所を参照しています。MW_HOMEは、WL_HOMEORACLE_COMMON_HOME、および1つ以上のORACLE_HOMEからなります。

    各製品スイートに対して異なるMW_HOMEがあります。

    このガイドでは、この値の前に製品スイートの略語が付く場合があります(DIR_MW_HOMEIAD_MW_HOMEIGD_MW_HOMEWEB_MW_HOMEなど)。

  • WL_HOME: この変数および関連ディレクトリ・パスには、WebLogic Serverをホストするために必要なインストール済ファイルが含まれます。WL_HOMEディレクトリは、Oracleホーム・ディレクトリのピアであり、MW_HOME内にあります。

  • ORACLE_HOME: この変数は、Oracle Fusion Middleware製品(Oracle HTTP Server、Oracle SOA Suiteなど)がインストールされている場所を示し、その製品のバイナリが現在のプロシージャで使用されています。このガイドでは、この値の前に製品スイートの略語が付く場合があります(IAD_ORACLE_HOMEIGD_ORACLE_HOMEWEB_ORACLE_HOMEWEBGATE_ORACLE_HOMESOA_ORACLE_HOMEOUD_ORACLE_HOMEなど)。

  • ORACLE_COMMON_HOME: この変数および関係するディレクトリ・パスは、Oracle Fusion Middleware Common Java Required Files (JRF)ライブラリおよびOracle Fusion Middleware Enterprise Managerライブラリがインストールされている場所を表します。例: MW_HOME/oracle_common

  • ORACLE_INSTANCE: Oracleインスタンスには、Oracle Web Cache、Oracle HTTP Serverなどのシステム・コンポーネントが1つ以上含まれています。Oracleインスタンスのディレクトリには、構成ファイル、ログ・ファイル、一時ファイルなど、更新可能なファイルが格納されます。

    このガイドでは、この値の前に製品スイートの略語が付く場合があります(WEB_ORACLE_INSTANCEなど)。

  • JAVA_HOME: Oracle java JDKがインストールされている場所です。

  • ASERVER_HOME: このパスは、Oracle WebLogicドメイン情報(構成アーティファクト)が格納されているファイル・システムの場所を示します。

    使用されるドメイン(特にIGD_ASERVER_HOMEおよびIAD_ASERVER_HOME)ごとに異なるASERVER_HOMEがあります。

  • MSERVER_HOME: このパスは、Oracle WebLogicドメイン情報(構成アーティファクト)が格納されているローカル・ファイル・システムの場所を示します。このディレクトリは、pack/unpackユーティリティによって生成され、ASERVER_HOMEのサブセットになります。管理対象サーバーの起動および停止に使用されます。管理サーバーは、これまでどおりASERVER_HOMEディレクトリから起動されます。

    使用されるドメインごとに異なるMSERVER_HOMEがあります。オプションで、管理対象サーバーの起動および停止に使用できます。

これらの変数の詳細および例は、7.5.5項「ディレクトリの推奨場所」を参照してください。

7.3 エンタープライズ・デプロイメント記憶域の概要

共有記憶域の準備方法を決定する際は、次のことを考慮してください。

共有の要件

アーティファクトは、共有、非共有(つまりプライベート)または使用可能のいずれかです。

  • 共有: アーティファクトは共有記憶域に存在し、すべてのクライアント・マシンが同時に表示したりアクセスできます。

  • 使用可能: アーティファクトは共有記憶域に存在しますが、一度に1つのクライアント・マシンのみがアーティファクトを表示したりアクセスできます。このマシンが失敗した場合は、別のクライアント・マシンがアーティファクトにアクセスできます。

  • 非共有: アーティファクトはローカル記憶域に存在し、他のマシンからアクセス可能にする必要はありません。

読取り/書込みの要件

アーティファクトには読取り/書込みに関する特定の要件もあります。

  • 読取り専用: このアーティファクトが変更されることはほとんどなく、実行時に読取りのみ実行されます。

  • 読取り-書込み: このアーティファクトには、実行時に読取りと書込みの両方が実行されます。

アーティファクトの特性

これらの要件に基づき、標準的なエンタープライズ・デプロイメントでデプロイされたアーティファクトは、表7-1のように分類されます。

表7-1 デプロイされる標準的なアーティファクト

アーティファクト・タイプ 共有 読取り/書込み

バイナリ - アプリケーション層

共有

読取り専用

バイナリ - Web層

プライベート

読取り専用

構成 - ディレクトリ層

プライベート

読取り-書込み

構成 - Web層

プライベート

読取り-書込み

管理対象サーバー・ドメイン・ホーム

プライベート

読取り-書込み

管理サーバー・ドメイン・ホーム

使用可能

読取り-書込み

ランタイム・ファイル

使用可能

読取り-書込み

ノード・マネージャ構成

プライベート

読取り-書込み

アプリケーション固有のファイル

共有

読取り-書込み


7.4 ファイル・システムについて

記憶域にパーティションを作成した後、ファイル・システムをパーティションに配置して、Oracleファイルを格納できるようにする必要があります。ローカル記憶域または直接接続された共有記憶域の場合、ファイル・システム・タイプは、オペレーティング・システムのデフォルト・タイプである可能性が非常に高いです(たとえばLinuxの場合はEXT3)。

共有記憶域が、2つ以上のホストから排他的または同時にアクセスされるネットワーク接続記憶域(NAS)の場合、サポートされているクラスタ・ファイル・システム(NFSバージョン3や4など)を使用する必要があります。このようなファイル・システムは、競合解決およびロック機能を提供します。

7.5 エンタープライズ・デプロイメントのディレクトリ構造の理解

各Oracle Fusion Middlewareエンタープライズ・デプロイメントは、類似するディレクトリ構造に基づいています。このディレクトリ構造は、バイナリ、構成およびランタイム情報を分離するように設計されています。バイナリはOracleソフトウェア・インストールとして定義されます。バイナリには、JDK、WebLogic Server、使用されるOracle Fusion Middlewareソフトウェア(例: Oracle Identity and Access Management、WebCenter)などが含まれます。

ランタイム・ディレクトリには実行時に書込みが行われ、JMSキュー・ファイルなどの情報が保持されます。サーバー・ドメイン・ホームのディレクトリに対しては、実行時に読取りおよび書込みが行われます。

詳細は、以下のトピックを参照してください。

7.5.1 バイナリ(Middlewareホーム)ディレクトリの推奨事項

次の項では、Oracle Fusion MiddlewareのMiddlewareホーム・ディレクトリに対して共有記憶域を使用する際のガイドラインについて説明します。

7.5.1.1 バイナリ(Middlewareホーム)ディレクトリについて

Oracle Fusion Middleware製品をインストールする際には、製品のバイナリをMiddlewareホームにインストールします。Middlewareホームにインストールされたバイナリ・ファイルは読取り専用であり、Middlewareホームにパッチが適用されるか新しいバージョンにアップグレードされるまで変更されることはありません。

標準的な本番環境では、Middlewareホーム・ファイルは、Oracle Fusion Middleware構成ウィザードを使用して作成するドメイン構成ファイルとは別の場所に保存します。

Oracle Fusion Middlewareインストール用のMiddlewareホームには、Oracle WebLogic Serverのバイナリ、Oracle Fusion Middlewareインフラストラクチャ・ファイルおよび任意のOracle Fusion Middleware製品固有のディレクトリが含まれています。

複数層デプロイメントでは、多くの場合、単一の共有を複数層にわたってマウントできません。たとえば、ディレクトリ層からアプリケーション層への場合です。LDAPデプロイメントの場合は、3つのオプションがあります。

  • ディレクトリ・バイナリ用に別の共有を作成します。これは、アプリケーション層のバイナリと同じマウント・ポイントを使用してLDAPホストにのみマウントされます。たとえば、/u01/oracle/productsです。

    このオプションは、ゾーン間にファイアウォールがある場合にお薦めします。

  • アプリケーション層用とディレクトリ層用に同じ共有を使用します。

    このオプションは、ディレクトリ層とアプリケーション層の間でファイアウォールを使用しない場合にお薦めします。たとえば、Exalogicデプロイメントの場合です。

  • ディレクトリ・バイナリをローカルにインストールします。

    このオプションは、手動デプロイメントを実行する場合のみ該当します。

Web層バイナリは共有されません。これらはローカル記憶域に配置されるため、SANストレージをDMZにマウントする必要はありません。

Oracle Fusion Middlewareホームの構造および内容の詳細は、第7.2項「ディレクトリとディレクトリ変数の用語」を参照してください。

7.5.1.2 単一のMiddlewareホームの共有について

Oracle Fusion Middlewareでは、1つのMiddlewareホームから複数のOracle WebLogic Serverドメインを構成できます。これにより、共有ボリューム上の単一の場所にMiddlewareホームをインストールし、複数のホストのインストールにMiddlewareホームを再利用できます。

このエンタープライズ・デプロイメント・ガイドでは、ドメインごとに1つのMiddlewareホームを使用し、ディレクトリ用とWebサーバー用に追加のMiddlewareホームを使用します。

複数のMiddlewareホームを使用する利点は、独立してパッチを適用でき、共通ファイルに対して依存性が発生しないことです。この方法では、(accessとは異なる時点でパッチが適用される)identityとは異なる時点でディレクトリにパッチを適用できます。

ホストのoraInventoryを更新して、Middlewareホームを共有記憶域に追加するには、次のコマンドを使用します。

ORACLE_HOME/oui/bin/attachHome.sh

Oracleインベントリの詳細は、Oracle Universal Installerコンセプト・ガイドのOracle Universal Installerインベントリに関する項を参照してください。

7.5.1.3 冗長バイナリ(Middlewareホーム)ディレクトリの使用について

可用性が最大になるように、共有記憶域上でバイナリの冗長インストールを使用することをお薦めします。

このモデルでは、Oracle Fusion Middlewareソフトウェアの2つの同じMiddlewareホームを2つの異なる共有ボリュームにインストールします。まず、Middlewareホームの1つをサーバーの1セットにマウントし、もう一方を残りのサーバーにマウントします。いずれのMiddlewareホームも同じマウント・ポイントを持つため、サーバーがどのMiddlewareホームを使用しているかにかかわらず、Middlewareホームは常に同じパスを持ちます。

一方のMiddlewareホームが破損または使用不可になっても、影響を受けるのは半分のサーバーのみです。さらに保護を強化するために、これらのボリュームのディスク・ミラーを行うことをお薦めします。

共有記憶域で個別ボリュームが使用不可の場合、同じボリューム内の別々のディレクトリを使用して個別ボリュームをシミュレートしたり、ホスト側の同じマウント場所に個別ボリュームをマウントしたりすることをお薦めします。これによって、複数のボリュームでの保護が保証されるわけではありませんが、ユーザーによる削除や個々のファイルの破損からの保護が可能になります。

これは通常、デプロイメント後に次の手順を実行して行われます。

  1. バイナリ用の新しい共有ボリュームを作成します。

  2. 奇数番号のサーバー上の元のマウント・ボリューム(OAMHOST1、OIMHOST1など)を残します。

  3. 偶数のマウント・サーバーの同じ場所に新しいボリューム(OAMHOST2、OIMHOST2など)をマウントします。

  4. 奇数のホストから偶数のホストにコピーすることで、ボリューム1のファイルをボリューム2にコピーします。

7.5.2 ライフサイクル・リポジトリについて

ライフサイクル・リポジトリには、デプロイメント・ツールやパッチ適用ツールなどのライフ・サイクル管理ツールが含まれています。また、インストールされるソフトウェアおよび適用されるパッチを含むソフトウェア・リポジトリも含まれます。

プロビジョニング中に、トポロジ内の各ホストにライフサイクル・リポジトリをマウントすることをお薦めします。こうすることにより、デプロイメント・プロセスがこの場所にファイルを置き、別のホストで実行している可能性のある他のプロセス手順がこれを使用する準備ができるようになります。集中管理されたリポジトリを持つことで、プロビジョニング・プロセス中に手動でファイルをコピーする手間を省くことができます。

集中管理されたリポジトリを持つことは、パッチ適用においても重要です。リポジトリは、プロビジョニングまたはパッチ適用が発生したときのみ必要になります。それ以外のときには、このディスク共有はホストのいずれかまたはすべてからアンマウントして、ゾーンにわたるセキュリティを維持できます。

共有のライフサイクル・リポジトリを持つ利点は次のとおりです。

  1. ソフトウェア用の場所が1つになる。

  2. デプロイメント・プロビジョニングが容易。

  3. パッチ適用が容易。

組織によっては、最初のプロビジョニングまたはパッチ適用中のみであっても、ゾーン間でファイル・システムをマウントすることを禁止しているところもあります。この場合、デプロイメント・プロビジョニングを行う際、ソフトウェア・リポジトリを複製し、デプロイメント処理中に手動でのファイルのコピーを何度も行う必要があります。

簡単にするために、このガイドでは単一の共有のライフサイクル・リポジトリを使用することをお薦めします。ただし、このガイドには、これが不可能な場合のために、必要となる追加の手動での手順も含まれています。

7.5.3 ドメイン構成ファイルの推奨事項

次の項では、エンタープライズ・デプロイメントでOracle Fusion Middleware製品を構成する際に作成するOracle WebLogic Serverドメイン構成ファイルで共有記憶域を使用するためのガイドラインについて説明します。

7.5.3.1 Oracle WebLogic Server管理および管理対象サーバー・ドメイン構成ファイルについて

Oracle Fusion Middleware製品を構成すると、Oracle WebLogic Serverドメインが作成または拡張されます。各Oracle WebLogic Serverドメインは、1つの管理サーバーおよび1つ以上の管理対象サーバーで構成されます。

Oracle WebLogic Serverドメインの詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解』を参照してください。

エンタープライズ・デプロイメントでは、ドメイン内の管理対象サーバーをアクティブ/アクティブ型の高可用性用に構成できることを理解することが重要です。ただし、管理サーバーではこのようなことはありません。管理サーバーはシングルトン・サービスです。つまり、管理サーバーは1つのホスト上で所定の時間にのみ有効です。

ASERVER_HOMEはドメイン構成のプライマリの場所です。MSERVER_HOMEは管理対象サーバーの起動と停止に使用するドメイン構成のコピーです。WebLogic管理サーバーは、ASERVER_HOMEドメイン構成に適用された構成の変更を、ドメインの一部として登録されているすべてのMSERVER_HOME構成ディレクトリに自動的にコピーします。ただし、MSERVER_HOMEディレクトリには、管理対象サーバーに固有のデプロイメントおよびデータも含まれています。そのため、バックアップを実行する際には、ASERVER_HOMEMSERVER_HOMEの両方を含める必要があります。

7.5.3.2 管理サーバーのドメイン構成ファイル用の共有記憶域の要件

管理サーバーの構成ファイルは共有記憶域に配置する必要があります。これにより、プライマリ・ホストが使用できなくなった場合でも、別のホストで管理サーバーを起動できます。管理サーバー・ファイルがあるディレクトリは、ASERVER_HOMEディレクトリと呼ばれています。このディレクトリは共有記憶域に配置され、アプリケーション層の各ホストにマウントされます。

競合に関連するパフォーマンス上の問題を回避するために、管理対象サーバーの構成ファイルはローカル記憶域上に配置する必要があります。管理対象サーバーの構成ファイルがあるディレクトリは、MSERVER_HOMEディレクトリと呼ばれています。管理対象サーバー・ドメイン構成ファイルは、ローカル記憶域に配置することを強くお薦めします。

7.5.3.3 管理対象サーバー・ドメイン構成ファイルに対するローカル記憶域の要件

共有記憶域を使用する必要がある場合は、ノードごとに記憶域パーティションを作成し、その記憶域をそのノードに排他的にマウントすることをお薦めします。

このエンタープライズ・デプロイメント・トポロジに対して用意されている構成手順では、管理対象サーバーごとに各ノードのローカル・ドメイン・ディレクトリが使用されると想定しています。

7.5.4 ランタイム・ファイル用の共有記憶域に関する推奨事項

クラスタのすべてのメンバーに対して使用可能にする必要があるファイルおよびディレクトリは、独自のディレクトリに分離されます。これには、クラスタの1つのメンバー・マシンのみに属するJMSファイル、トランザクション・ログ、およびその他のアーティファクトが含まれますが、フェイルオーバー時には他のマシンで使用可能にする必要があります。

JMSおよびJTA情報のファイル・ストアへの保存の詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverサーバー環境の構成』のWebLogic永続ストアの使用に関する項を参照してください。

トランザクション・ログの内容は存続期間が比較的短く、通常はJMS操作に関連しています。バックアップおよび障害からの保護の目的で、両方のタイプのストア(jmsおよびtlog)が同期して継続的にコピーされ、JMSストアと同じ一貫性グループまたはreplication_projectに存在すること(複数のボリュームがtlogおよびjmsレプリケーションで使用される場合)が重要です。これで、両方のストアの即時かつ同期されたコピーが作成されます。これによって、データ損失が最小限になり、一貫性が保証されます。

7.5.5 ディレクトリの推奨場所

この項では、共有記憶域およびローカル記憶域のお薦めされる使用方法を説明します。

この項には次のトピックが含まれます:

7.5.5.1 ライフ・サイクル管理とデプロイメント・リポジトリ

ライフ・サイクル管理ツールおよびデプロイメント・リポジトリを保持するには、個別の共有が必要です。この共有は、デプロイメントおよび以降のパッチ適用の間にのみ必要になります。デプロイメントが完了すると、各ホストからこの共有をアンマウントできます。


注意:

パッチ管理ツールを使用してデプロイするパッチがある場合は、パッチを適用している間、この共有を再マウントする必要があります。

理想的には、プロビジョニング中に、すべてのホストにこの共有をマウントします。こうすることで、Web層で必要なキーストアなど、ファイルを手動でコピーする必要がなくなるため、プロビジョニング・プロセスを簡単にできます。組織で、(デプロイメントの間であっても) LCM_HOMEをWeb層のホストに共有することを禁止している場合、DMZホスト上にこの共有のコンテンツのローカル・コピーを作成し、デプロイメント・フェーズ中に手動でファイルをコピーする必要があります。

図7-1 デプロイメント・リポジトリ

図7-1については周囲のテキストで説明しています。

注意:

LCMデプロイメントの場合、ライフ・サイクル管理リポジトリは必須です。手動デプロイメントの場合は推奨です。簡単にするために、このガイドではLCMデプロイメントと手動デプロイメントの両方でデプロイメント・リポジトリを使用することを前提にしています。

ソフトウェア・リポジトリをhttp://edelivery.oracle.comからダウンロードすると、リポジトリ・ディレクトリ・ツリーが自動的に作成されます。製品を個別にダウンロードする場合は、ディレクトリ・ツリーを作成し、製品ごとに個別のサブ・ディレクトリを作成する必要があります。


7.5.5.2 共有記憶域

IAMのエンタープライズ・デプロイメントでは、次の共有記憶域が必要です。作成する共有記憶域は、作成するのが統合デプロイメントか分散デプロイメントかに関係なく同じです。異なるのは、その共有をマウントするホストです。

表7-2および表7-3には、推奨されるレイアウトの説明が記載されており、図7-2にはそれが図で表されています。


注意:

共有されていない場合でも、IDM_TOPの場所は書込み可能にする必要があります。

表7-2 共有記憶域上のボリューム: 分散トポロジ

環境変数 ボリューム名 マウント・ポイント マウントされるホスト 排他

SW_ROOT

Binaries

/u01/oracle/products

OAMHOST1 OAMHOST2 OIMHOST1 OIMHOST2 LDAPHOST1 LDAPHOST2脚注 1 

いいえ

SHARED_CONFIG_DIR

sharedConfig

/u01/oracle/config

OAMHOST1 OAMHOST2 OIMHOST1 OIMHOST2

いいえ

DIR_MW_HOME脚注 2 

dirBinaries

/u01/oracle/products

LDAPHOST1 LDAPHOST2

いいえ

RT_HOME

runTime

/u01/oracle/runtime

OIMHOST1 OIMHOST2



脚注 1 ディレクトリがアプリケーション・ゾーン内にあるときにのみLDAPHOST1およびLDAPHOST2にマウントします。

脚注 2 ディレクトリがディレクトリ・ゾーンまたはデータベース・ゾーンに配置された場合にのみ必要です。

表7-3 共有記憶域上のボリューム: 統合トポロジ

環境変数 ボリューム名 マウント・ポイント マウントされるホスト 排他

SW_ROOT

Binaries

/u01/oracle/products

IAMHOST1 IAMHOST2 LDAPHOST1 LDAPHOST2脚注 1 

いいえ

SHARED_CONFIG_DIR

sharedConfig

/u01/oracle/config

IAMHOST1 IAMHOST2

いいえ

RT_HOME

runTime

/u01/oracle/runtime

IAMHOST1 IAMHOST2



脚注 1 ディレクトリがアプリケーション・ゾーン内にあるときにのみLDAPHOST1およびLDAPHOST2にマウントします。

共有記憶域に関する注意

Oracle IAMでは、製品バイナリ用および共有構成情報用に共有記憶域が必要です。

専用ディレクトリ・ゾーンを使用し、ゾーン間での記憶域のマウントが組織で禁止されている場合は、ディレクトリ層用に別のバイナリ共有を作成します。

ただし、別のディレクトリ・ゾーンを作成しない場合、またはゾーン間でのファイル・システムのマウントが禁止されていない場合は、すべてのバイナリ(Web層バイナリを除く)用に1つの共有のみ必要です。

Exalogicデプロイメントでは、ディレクトリ層用とアプリケーション層用にバイナリを分離する必要はありません。

2つの異なるバイナリ共有(1つはアプリケーション層用、もう1つはディレクトリ層用)を作成する場合は、それらのホスト・マウント・ポイントが同じである必要があります。

NFSv4を使用する場合は、NISサーバーが必要です。第9.7項「ユーザーおよびグループの構成」に記述されているNISユーザーが、記憶域所有権が付与される前にNISサーバーに作成されていることを確認する必要があります。

図7-2 共有記憶域の推奨ディレクトリ構造

図7-2については周囲のテキストで説明しています。

この図は、共有記憶域のディレクトリ階層を示しています。マウント・ポイント/u01/oracle (IDM_TOP)の下にはディレクトリconfigおよびproductsがあります。

アプリケーション層とは異なるゾーンにディレクトリをデプロイすることを計画し、記憶域をゾーン全体にわたってマウントしない場合、DIR_MW_HOMEを保持する目的で、ディレクトリ層専用の共有記憶域を作成できます。この場合でも、アプリケーション層の共有記憶域と同じマウント・ポイント(/u01/oracleなど)となります。

ディレクトリconfigにはdomainsが含まれ、これには次のものが含まれます。

  • IAMAccessDomain (IAD_ASERVER_HOME)。IAMAccessDomainには3つのサブディレクトリ(applicationsserverskeystores)があります。serversディレクトリにはサブディレクトリAdminServerがあります。

  • IAMGovernanceDomain (IGD_ASERVER_HOME)。IAMGovernanceDomainには、5つのサブディレクトリ(applicationsserverskeystoresjmsおよびlogs)があります。serversディレクトリにはサブディレクトリAdminServerがあります。

productsディレクトリには、accessdirおよびidentityのディレクトリが含まれます。

access (IAD_MW_HOME)ディレクトリには、iam (IAD_ORACLE_HOME)、oracle_common (ORACLE_COMMON_HOME)、wlserver_10.3 (WL_HOME)およびjdk (JAVA_HOME)の4つのサブディレクトリがあります。

identity (IGD_MW_HOME)ディレクトリには、iam (IGD_ORACLE_HOME)、soa (SOA_ORACLE_HOME)、oracle_common (ORACLE_COMMON_HOME)、wlserver_10.3 (WL_HOME)およびjdk (JAVA_HOME)の5つのサブディレクトリがあります。

runtimeディレクトリは、実行時に生成されたアーティファクトを格納するのに使用されます。たとえば、JMSファイルおよびTLOGファイルです。

専用のディレクトリ層がある場合には、SW_ROOTの共有はLDAPHOST上であるかIAMHOST上であるかによって異なります。

7.5.5.3 プライベート記憶域

プライベート記憶域とは、排他的にマウントされた共有ディスク・ボリュームまたはローカル記憶域です。

すべてのホストでは、構成情報用にプライベート記憶域を使用します。さらに、Web層ホストはプライベート記憶域にバイナリを格納できます。これは、Web層ホストがDMZに存在する場合に特に重要です。

外部OHSを使用せずに物理Exalogicにインストールする場合、WEB_MW_HOMEは共有記憶域に配置することをお薦めします。これは、OTDホストがExalogicアプライアンス内に存在するため、ZFS記憶域デバイスにアクセスできるためです。

仮想Exalogicにインストールする場合は、共有記憶域に排他的にマウントされた共有を使用してバックアップを簡略化することをお薦めします。

Exalogicを使用するか、またはWeb層にNFS共有をマウントする場合は、Web層バイナリも共有記憶域に存在できます。バイナリのマウント・ポイントは、共有記憶域にあるかプライベート記憶域にあるかに関係なく同じです。Web層とアプリケーション層が同じコンピュータ・ノード上にあるExalogic物理デプロイメントを使用する場合、Web層バイナリ用に別の共有を作成する必要はありません。

表7-4 プライベート記憶域のディレクトリ - 分散トポロジ

環境変数 ディレクトリ ホスト

Web層

WEB_MW_HOME

/u01/oracle/products

WEBHOST1

WEBHOST2


OHS_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/ohsn

WEBHOST1

WEBHOST2


OTD_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/otdn

WEBHOST1

WEBHOST2


MSAS_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/gatewayid

WEBHOST1

WEBHOST2


OTD_ORACLE_HOME

/u01/oracle/products/web/otd

WEBHOST1

WEBHOST2


OHS_ORACLE_HOME

/u01/oracle/products/web/ohs

WEBHOST1

WEBHOST2

アプリケーション層

LDAP_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/oidn

LDAPHOST1

LDAPHOST2


IAD_MSERVER_HOME

/u02/private/oracle/config/domains/IAMAccessDomain

OAMHOST1

OAMHOST2


IGD_MSERVER_HOME

/u02/private/oracle/config/domains/IAMGovernanceDomain

OIMHOST1

OIMHOST2

ディレクトリ層

DIR_MW_HOME脚注 1 

/u01/oracle/products

LDAPHOST1

LDAPHOST2


OUD_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/oudn

LDAPHOST1

LDAPHOST2


OID_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/oidn

LDAPHOST1

LDAPHOST2


脚注 1 ディレクトリがディレクトリ・ゾーンまたはデータベース・ゾーンに配置された場合にのみ必要です。

表7-5 プライベート記憶域のディレクトリ - 統合トポロジ

環境変数 ディレクトリ ホスト

Web層

WEB_MW_HOME

/u01/oracle/products

WEBHOST1

WEBHOST2


OHS_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/ohsn

WEBHOST1

WEBHOST2


OTD_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/otdn

WEBHOST1

WEBHOST2


MSAS_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/gatewayid

WEBHOST1

WEBHOST2


OTD_ORACLE_HOME

/u01/oracle/products/web/otd

WEBHOST1

WEBHOST2


OHS_ORACLE_HOME

/u01/oracle/products/web/ohs

WEBHOST1

WEBHOST2

アプリケーション層

LDAP_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/oidn

IAMHOST1

IAMHOST2


IAD_MSERVER_HOME

/u02/private/oracle/config/domains/IAMAccessDomain

IAMHOST1

IAMHOST2


IGD_MSERVER_HOME

/u02/private/oracle/config/domains/IAMGovernanceDomain

IAMHOST1

IAMHOST2

ディレクトリ層

DIR_MW_HOME脚注 1 

/u01/oracle/products

IAMHOST1

IAMHOST2


OUD_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/oudn

IAMHOST1

IAMHOST2


OID_ORACLE_INSTANCE

/u02/private/oracle/config/instances/oidn

IAMHOST1

IAMHOST2


脚注 1 ディレクトリがディレクトリ・ゾーンまたはデータベース・ゾーンに配置された場合にのみ必要です。


注意:

OTD_ORACLE_HOMEは、Oracle Traffic Directorがデプロイされている場合のみ使用されます。

図7-3 プライベート記憶域の推奨ディレクトリ構造

図7-3については周囲のテキストで説明しています。

この図は、ローカル記憶域のディレクトリ階層を示しています。最上位ディレクトリ/u02/private/oracle (LOCAL_ROOT)には、サブディレクトリconfigがあります。


注意:

otdnディレクトリはExalogicデプロイメント専用です。

configディレクトリには、インスタンスを持つ各製品、つまりWebサーバーおよびLDAP (この場合Oracle HTTP ServerおよびOracle Unified Directory)のためのサブディレクトリがあります。適切なディレクトリが関連するホストにのみ現れます。つまり、WEB_ORACLE_INSTANCEディレクトリはWEBHOSTSにのみ現れます。

domainsディレクトリには、トポロジ内の各ドメイン(IAMAccessDomainおよびIAMGovernanceDomain)に対して1つのサブディレクトリが含まれます。

IAMAccessDomain (IAD_MSERVER_HOME)には、applicationsおよびserversが含まれます。serversディレクトリにはwls_oamnがあり、ここでnはAccess Managerのインスタンスです。OAAMが構成される場合、このフォルダにはwls_oaamnおよびwls_oaam_adminnも含まれます。

IAMGovernanceDomain (IGD_MSERVER_HOME)には、applicationsおよびserversが含まれます。serversディレクトリにはwls_oimnおよびwls_soanがあり、ここでnはそれぞれOracle Identity ManagerおよびSOAのインスタンスです。

図7-4 Webホスト上のプライベート・バイナリ記憶域の推奨ディレクトリ構造

図7-4については周囲のテキストで説明しています。

図7-4は、ローカル・バイナリ記憶域のディレクトリ階層を示しています。最上位ディレクトリ/u01/oracle (IDM_TOP)には、サブディレクトリproductsがあります。

productsディレクトリにはwebディレクトリが(WEB_MW_HOME)があり、これには4つのサブディレクトリweb (WEB_ORACLE_HOME)、webgate (WEBGATE_ORACLE_HOME)、oracle_common (ORACLE_COMMON_HOME)およびjdk (JAVA_HOME)があります。


注意:

WEB_ORACLE_INSTANCEディレクトリをローカル記憶域に配置することをお薦めしますが、共有記憶域も使用できます。共有記憶域を使用する場合、HTTPロック・ファイルを別の場所に配置する必要があります。