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Oracle® Fusion Middlewareパッチ適用ガイド
11g リリース1 (11.1.1.9.0)
B61412-13
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4 パッチ・セット・アシスタントによるスキーマのアップグレード

この章では、パッチ・セット・アシスタントを使用してOracle Fusion Middlewareコンポーネントのデータベース・スキーマをアップグレードする方法について説明します。

パッチ・セット・アシスタントは、Oracle Fusion Middlewareコンポーネントのデータベース・スキーマをアップグレードする場合に使用します。パッチ・セット・アシスタントによるアップグレードに有効なスキーマは、次のいずれかの条件を満たしている必要があります。


ノート:

  • Oracle Access Manager、Oracle Adaptive Access Manager、Oracle Identity ManagerなどのOracle Identity and Access Managementコンポーネントを使用している場合は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Identity and Access Managementアップグレード・ガイド』システムを参照してください。
  • パッチ・セット・アシスタントでは、カスタマ・データベース内のスキーマはアップグレードされません。これには、アップグレード・アシスタント(UA)、リポジトリ作成ユーティリティ(RCU)、またはパッチ・セット・アシスタント(PSA)を使用してアップグレードされていないデータベースが含まれます。

  • Oracle Portalユーザーは、状況によって、Oracle Portalスキーマがカスタマ・データベースにインストールされる場合があることに注意してください。詳細は、第4.3項「スタンドアロンのOracle Portalのリポジトリ・スキーマで行う特殊な手順」を参照してください。


ほとんどの場合、パッチ・セット・アシスタントでアップグレードされる11gリリース1のスキーマ・バージョンは、11.1.1.2.0から11.1.1.9.0までです。具体的な情報は、表4-1を参照してください。

既存のスキーマ・バージョンが11.1.1.1.0である場合は、パッチ・セット・アシスタントを実行する前に、バージョン11.1.1.2.0に移行しておく必要があります。詳細は、付録C「パッチ・アシスタントを使用した11gリリース1 (11.1.1.1.0)からリリース1 (11.1.1.2.0)への移行」を参照してください。

新しいスキーマを作成する場合や既存のスキーマを削除する場合は、リポジトリ作成ユーティリティ(RCU)を使用する必要があります。情報は、『Oracle Fusion Middleware Repository Creation Utilityユーザーズ・ガイド』にあります。


ノート:

11.1.1.9.0へのアップグレードを試行する前に、Oracle Fusion Middleware互換性マトリクスをチェックして、ドメイン内のすべてのコンポーネントでOracle Fusion Middleware 11.1.1.9.0コンポーネントとの相互運用がサポートされていることを確認する必要があります。ドメイン内に互換性のないコンポーネントがある場合、アップグレードを試行しないでください。

詳細は、第3.4.1項の「システム要件および動作保証の確認」および『Oracle Fusion Middleware相互運用および互換性ガイド』を参照してください。


この章の内容は、次のとおりです。

4.1 スキーマをアップグレードするための非SYSDBAユーザーの作成

スキーマのアップグレードに必要な権限を持つユーザーを作成することをお薦めします。次に示す権限は、パッチ・セット・アシスタントを起動する前に付与する必要があります。

次の例の"FMW"は、パッチ・セット・アシスタントを実行するのに作成されたユーザー、"welcome1"はパスワードです。権限を付与する際に、実際のユーザー名とパスワードを指定していることを確認します。

create user FMW identified by welcome1;
 
grant dba to FMW;
 
grant execute on DBMS_LOB to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_OUTPUT to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_STATS to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aq to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aqadm to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aqin to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aqjms to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aqadm to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aq to FMW with grant option;
grant execute on utl_file to FMW with grant option;
grant execute on dbms_lock to FMW with grant option;
grant select on sys.V_$INSTANCE to FMW with grant option;
grant select on sys.GV_$INSTANCE to FMW with grant option;
grant select on sys.V_$SESSION to FMW with grant option;
grant select on sys.GV_$SESSION to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_jobs to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_job_run_details to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_running_jobs to FMW with grant option;
grant select on dba_aq_agents to FMW with grant option;
grant execute on sys.DBMS_SHARED_POOL to FMW with grant option;
grant select on dba_2pc_pending to FMW with grant option;
grant select on dba_pending_transactions to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_FLASHBACK to FMW with grant option;
grant execute on dbms_crypto to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_REPUTIL to FMW with grant option;
grant execute on dbms_job to FMW with grant option;
grant select on pending_trans$ to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_job_classes to fmw with grant option;
grant select on SYS.DBA_DATA_FILES to FMW with grant option;
grant select on SYS.V_$ASM_DISKGROUP to FMW with grant option;
grant select on v$xatrans$ to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_system to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_SCHEDULER to FMW with grant option;
grant select on dba_data_files to FMW with grant option;
grant execute on UTL_RAW to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_XMLDOM to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_APPLICATION_INFO to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_UTILITY to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_SESSION to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_METADATA to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_XMLGEN to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_DATAPUMP to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_MVIEW to FMW with grant option;
grant execute on ALL_ENCRYPTED_COLUMNS to FMW with grant option;

ノート:

11.2.0.3データベース・ユーザーのみ: アップグレードを開始する前に、Oracleパッチ13036331を適用する必要があります。My Oracle Supportにアクセスしてパッチをダウンロードします。

このパッチを適用しない場合は、一部のスキーマで追加の権限を付与する必要があります。表4-1では、付与する必要がある権限について説明します。


4.2 パッチ・セット・アシスタントによるアップグレードが必要なスキーマ

表4-1におけるアップグレードに利用可能なコンポーネント・スキーマ(デフォルト名で表示)は、これらが11g リリース1 (11.1.1.9.0)にアップグレードされるようにするためにパッチ・セット・アシスタントを使用してアップグレードできます。


ノート:

表4-1のスキーマ列は、接頭辞とスキーマ名の間にアンダースコア(_)を使用したデフォルトのスキーマ名フォーマットを示します。デフォルトの接頭辞はDEVですが、RCUを使用すると、スキーマに新しく接頭辞を作成できます。

アップグレードが必要なスキーマに関する重要なノート:

  • 一部のスキーマのアップグレードには拡張権限が必要です。スキーマをアップグレードする前に、適切な権限をDBAユーザーに付与していることを確認します。表4-1では、各スキーマに必要な権限を示します。

  • リリース1 (11.1.1.9.0)のパッチ・セットの適用によってのみ、表4-1に示したスキーマがアップグレードされます。一部はアップグレードされず、元のスキーマ・バージョンのままのコンポーネント・スキーマもあります。

  • 表4-1に示すWebCenterおよびOracle Enterprise Content Management Suiteのコンポーネント名は、Oracle Fusion Middleware 11g リリース1 (11.1.1.6.0)で変更された、新しいコンポーネント名です。

    詳細は、第6.1項「Oracle WebCenterおよびOracle Enterprise Content Management Suiteの新しい製品名」を参照してください。

  • _OPSSスキーマを前のリリースからアップグレードする場合、OPSS監査データがJPS表ではなく、IAU共通表に保存されることに注意してください。JPS表の既存データはレポートまたは監査目的では変更されないため、JPS表に列を追加してアップグレードする必要はありません。

表4-1 最新のリリース用にアップグレードする必要があるスキーマ

コンポーネント名 スキーマ アップグレード前のスキーマ・バージョン アップグレード後のスキーマ・バージョン 依存関係

監査サービス

prefix_IAU

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

なし。

メタデータ・サービス

prefix_MDS

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

なし。

Oracle Enterprise Schedulerサービス

prefix_ESS

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

prefix_MDSスキーマを最初にアップグレードする必要があります。

Oracle Platform Security Services

prefix_OPSS

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

なし。

Oracle Portal脚注 1 

prefix_PORTAL

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.6.0

11.1.1.6.0

なし。

Oracle Internet Directory

ODS

ノート: Oracle Internet Directoryのスキーマ(ODS)には、カスタムの接頭辞を加えることができません。

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

11.2.0.3データベース・ユーザーのみ: このスキーマでは、アップグレードを開始する前に、Oracleパッチ13036331を適用する必要があります。My Oracle Supportにアクセスしてパッチをダウンロードします。このパッチを適用しない場合は、これらの追加の権限を付与する必要があります。

grant execute on sys.dbms_reputil to ODS;
 
grant execute on sys.dbms_reptuil to SYSTEM with grant option;
 
grant execute on sys.dbms_job to ods;

Oracle Business Intelligenceプラットフォーム

prefix_BIPLATFORM

11.1.1.3.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

prefix_MDSスキーマを最初にアップグレードする必要があります。

マスターおよび作業リポジトリ(Oracle Data Integrator)

prefix_ODI_REPO

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

なし。

SOAインフラストラクチャ

prefix_SOAINFRA

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

prefix_MDSスキーマを最初にアップグレードする必要があります。

11.2.0.3データベース・ユーザーのみ: このスキーマでは、アップグレードを開始する前に、Oracleパッチ13036331を適用する必要があります。My Oracle Supportにアクセスしてパッチをダウンロードします。このパッチを適用しない場合は、これらの追加の権限を付与する必要があります。

grant execute on utl_file to &&soa_user

WebCenter Portal (以前のWebCenter Spaces)

prefix_WEBCENTER

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.8.0

prefix_MDSスキーマを最初にアップグレードする必要があります。

Discussions (WebCenter Suite)

prefix_DISCUSSIONS

11.1.1.2.0

11.1.1.4.0

11.1.1.7.0

11.1.1.8.0

なし。

Discussions Crawler脚注 2 

prefix_DISCUSSIONS_CRAWLER

11.1.1.2.0

11.1.1.4.0

11.1.1.7.0

11.1.1.8.0

11.1.1.9.0

prefix_DISCUSSIONSスキーマを最初にアップグレードする必要があります。

アクティビティ・グラフおよびAnalytics

prefix_ACTIVITIES

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.8.0

なし。

Oracle Universal Records Management 11g

prefix_URMSERVER

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.8.0

なし。

Oracle Content Server 11g - 完全

prefix_OCS

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.8.0

11.1.1.9.0

なし。

Oracle Universal Content Management

prefix_OCSSEARCH

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.7.0

11.1.1.8.0


Oracle Secure Enterprise Search

prefix_SEARCHSYS

11.2.1

11.2.2

prefix_ESSを最初にアップグレードする必要があります。

Oracle User Messaging Service

prefix_ORASDPM

11.1.1.2.0

11.1.1.3.0

11.1.1.4.0

11.1.1.5.0

11.1.1.6.0

11.1.1.7.0

11.1.1.9.0

11.2.0.3データベース・ユーザーのみ: このスキーマでは、アップグレードを開始する前に、Oracleパッチ13036331を適用する必要があります。My Oracle Supportにアクセスしてパッチをダウンロードします。このパッチを適用しない場合は、これらの追加の権限を付与する必要があります。

grant execute on sys.dbms_aqjms to &&user

脚注 1 Oracle Portal 11.1.1.6.0がインストールされている場合はスキーマのアップグレードは必要ありません。11.1.1.6.0はOracle Portalの最新バージョンです。

脚注 2 Discussions Crawlerのスキーマが、RCUを使用してインストールされていない場合には、Discussionsを移行すると、Discussions Crawlerのスキーマが自動的にインストールされ、Discussionsのスキーマと同じパスワードが割り当てられます。Discussions Crawlerのスキーマを個別にアップグレードしようとすると、パッチ・セット・アシスタントによって、そのスキーマがアップグレード済であるという警告が表示されます。

4.3 スタンドアロンのOracle Portalのリポジトリ・スキーマで行う特殊な手順

OracleAS Metadata Repositoryの外に格納されているOracle Portalリポジトリ(アップグレード・アシスタント、リポジトリ作成ユーティリティ、またはパッチ・セット・アシスタントを使用したことがないデータベース)を使用する場合は、そのリポジトリ内のPortalスキーマのアップグレードにパッチ・セット・アシスタントを使用しないでください。かわりに、Oracle Fusion Middleware Oracle Portal, Forms, Reports and Discovererアップグレード・ガイドのカスタマ・データベースでのOracle Portalリポジトリのアップグレードに関する項を参照してください。

4.4 パッチ・セット・アシスタントの使用を開始する前に

この項では、パッチ・セット・アシスタントを実行する前に確認しておく必要がある事項について説明します。

4.4.1 Java Development Kit (JDK)バージョンがサポートされていてOracle Fusion Middleware 11g (11.1.1.9)に対して動作保証されていることの確認

Oracle Fusion Middlewareのこのリリースでは64ビットJDK 7 (1.7.x)が必要です(URL: http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/downloads/jdk7-downloads-1880260.htmlでダウンロードできます)。


ノート:

JRockitユーザー: JRockitはサポートされなくなりました。このリリースで使用するためにSun JDKをインストールする必要があります。

サポートされている構成の最新情報は、http://www.oracle.com/technetwork/middleware/ias/downloads/fusion-certification-100350.htmlの『Oracle Fusion Middleware Supported System Configurations』を参照してください。


JDKバージョン要件の詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Fusion Middlewareのシステム要件および仕様11gリリース1 (11.1.1.9)ドキュメントのOracle WebLogic ServerとJDKの考慮事項に関する項を参照してください。

このリリースのOracle Fusion MiddlewareでのJDK 7の使用の詳細は、『Oracle WebLogic ServerおよびCoherenceのインストールと構成』のWebLogic ServerとJDK 7の併用に関する項を参照してください。

アップグレードする前に必ず、サポートされているJDKバージョンについて、Oracle Fusion Middlewareサポートされるシステム構成ページのOracle Fusion Middleware 11gR1のシステム要件およびサポート対象プラットフォームに関するドキュメントを参照してください。


ノート:

アップグレードされたJDKバージョンを指すようにsetDomainEnvスクリプト・ファイルを更新してください。「アップグレードされたJDKの場所でのsetDomainEnvスクリプト・ファイルの更新」を参照してください。

4.4.2 Oracle WebLogic Serverのアップグレードおよび必須パッチの適用

パッチ適用プロセスを開始する前に、Oracle WebLogic Serverに必須パッチを適用したことを確認してください。詳細は、「Oracle WebLogic Serverのアップグレードおよび必要なWebLogic Serverパッチの適用」を参照してください。


ノート:

WebLogic Serverパッチを適用する前に、WebLogicドメインを10.3.6にアップグレードする必要があります。

Oracle WebLogic Serverパッチの中には、サーバーを起動する前に追加のパッチ適用後タスクが必要なものもあります。詳細は、Oracle WebLogic Server用のOracle Fusion Middlewareのダウンロード、インストールおよび構成のReadMeファイルを参照してください。

4.4.3 データベースとデータベース・スキーマのバックアップ

バッチ・セット・アシスタントを実行する前に、第3.4.5項「データベースとデータベース・スキーマのバックアップ」の手順に従って既存のデータベースとデータベース・スキーマを必ずバックアップしてください。

4.4.4 データベースとスキーマの確認

パッチ・セット・アシスタントを実行する前に、データベースが稼動していること、およびアップグレートするスキーマのバージョンがアップグレードのサポート対象であることを確認します。Oracleデータベースを使用している場合、SYSとしてデータベースに接続し、SQL*Plusから次を実行します。

SELECT OWNER, VERSION, STATUS, UPGRADED FROM SCHEMA_VERSION_REGISTRY;

VERSION列の数値が11.1.1.2.0以上であれば、そのスキーマはアップグレードでサポートされます。

Oracleデータベースを使用している場合は、パッチ・セット・アシスタントを実行する前にデータベース・オブジェクトを再コンパイルして、アップグレード前に無効なオブジェクトをチェックしてください。SYSとしてデータベースに接続し、SQL*Plusから次のコマンドを実行します。

/rdbms/admin/utlrp.sql

注意:

Oracle database 11g (11.2.0.3)を実行している場合、選択したスキーマのアップグレード時に最初にデータベースにパッチを適用して拡張権限を有効にする必要があります。表4-1では、各スキーマに必要な権限を示します。

utlrp.sqlの実行後、スキーマをアップグレードする前に、次の問合せを発行して無効なデータベース・オブジェクトがないことを確認します。

SELECT owner, object_name FROM all_objects WHERE status='INVALID';

無効なオブジェクトがあった場合は、すべて書き留めます。無効なデータベース・オブジェクトが存在すると、アップグレードを正常に完了できない場合があります。

単一のOracle Fusion Middlewareスキーマに属するオブジェクトのみを再コンパイルする場合は、次の例に示すOracle Databaseストアド・プロシージャdbms_utility.compile_schemaを使用できます。

SQL> execute
dbms_utility.compile_schema('DEV_SOAINFRA');
PL/SQL procedure successfully completed 

4.4.5 エディションベースの再定義に対応したデータベース・サーバーでのエディションの作成

エディションベースの再定義(EBR)を使用すると、1つのデータベース・スキーマの複数のバージョンを同一のデータベースで、同時にサポートできます。


ノート:

パッチ・セット・アシスタントを使用すると、データベース・タイプエディションベースの再定義に対応したOracle Databaseは、EBRデータベースで作成したエディションでアップグレードが必要な場合のみ選択されます。該当しない場合は、「Oracle Database」を選択します。

EBRは一部のOracle Fusion Middlewareコンポーネントでは使用できないため、EBRデータベース・オプションが使用不可になる場合があります。


EBR対応スキーマをFMW 11.1.1.7.0リリースから11.1.1.9.0にアップグレードする前に、データベース・サーバーに接続し、11.1.1.9.0リリースのデータベース・サーバーでエディションを作成する必要があります。11.1.1.9.0の新しいエディションは、以前のエディションの子である必要があります。

データベース・サーバーにエディションを作成するには、SYS (またはDBA権限のある別のOracleユーザー)としてログインし、次のコマンドを使用します。

SQL> create edition Oracle_FMW_11_1_1_9_0 as child of Oracle_FMW_11_1_1_7_0;
Edition created.

前述のコードの例Oracle_FMW_11_1_1_7_0は11.1.1.7.0スキーマを作成したときにRCU 11.1.1.7.0で指定するエディション名の例として使用します。エディションを作成する際は、実際に使用する名前を入力してください。

スキーマ作成の完了後に、そしてドメイン作成の前に、次のコマンドを使用して、新しいスキーマがデフォルト・エディションとして使用されることを指定する必要があります。

ALTER DATABASE DEFAULT EDITION = edition_name; 

4.4.6 アップグレード対象のスキーマを使用したすべてのコンポーネントの停止

(管理対象サーバーとOracleインスタンスを含めた)Oracle Fusion Middlewareコンポーネントのうち、アップグレード対象のスキーマを使用したコンポーネントがあれば、パッチ・セット・アシスタントの実行前に停止します。スキーマのアップグレード中にデータベースに接続しているOracle Fusion Middlewareコンポーネントがないようにします。

4.4.7 Oracle Portalのaq_tm_processes値の確認

OracleデータベースでOracle Portalスキーマのパッチ・セット・アシスタントを実行する場合、データベースのaq_tm_processes値が0を超えていることを確認します。確認するには、データベースに接続した後、次のコマンドを使用します。

show parameter aq_tm_processes;

返された値が0の場合は、次のコマンドを使用して値を1に変更してください。

alter system set aq_tm_processes=1 scope=both;

4.4.8 ORACLE_HOMEおよびJAVA_HOME環境変数の設定

次のシナリオでは、環境変数を設定または変更する必要が生じることがあります。

  • パッチ・セット・アシスタントをOracle WebLogic Serverで実行する際、環境変数ORACLE_HOMEまたはJAVA_HOMEをUNIXまたはWindowsオペレーティング・システムに設定してある場合、パッチ・セット・アシスタントを実行する前にこれらの変数を削除する必要があります。状況によっては、これらの変数を設定したままパッチ・セット・アシスタントを実行すると、PSAが正しく実行されない場合があります。

  • パッチ・セット・アシスタントを実行する際にOracle WebLogic Server (スタンドアロン)またはJavaファイルがインストールされていない場合は、JAVA_HOME環境変数を設定する必要があります。この変数が設定されていない場合、PSAでは必要なJavaファイルの場所が検出されないことがあります。

4.5 パッチ・セット・アシスタントの実行

次の各項では、Oracle Fusion Middleware 11g リリース1 (11.1.1.9.0)のパッチ・セットをインストールする際のパッチ・セット・アシスタントの実行方法について説明します。

4.5.1 パッチ・セット・アシスタントのグラフィカル・インタフェースの使用

パッチ・セット・アシスタントは、製品またはパッチ・セット・インストーラによってOracleホームのbinディレクトリにインストールされます。

パッチ・セット・アシスタントを使用すると、パッチ・セット・アシスタントが起動されたMiddlewareホーム内のコンポーネント・スキーマにパッチを適用できます。

パッチ・セット・アシスタントを起動するには、Oracleホーム内にあるbinディレクトリに移動して、次のコマンドを実行します。

UNIXオペレーティング・システムの場合:

cd Oracle_Home/bin

./psa [-logLevel <log_level>] [-logDir <log_directory>]

Windowsオペレーティング・システムの場合:

CD Oracle_Home\bin

psa.bat [-logLevel <log_level>] [-logDir <log_directory>]

表4-2の手順に従って、パッチ・セット・アシスタントを使用し、スキーマをアップグレードします。


ノート:

表4-2では、共通のパッチ・セット・アシスタントの画面(すべてのコンポーネントに表示される標準画面)について説明します。追加のコンポーネント固有の画面が必要になるコンポーネントが環境に含まれる場合があります。コンポーネント固有の画面の詳細は、画面の「ヘルプ」をクリックして、オンライン・ヘルプにアクセスしてください。

画面に関して詳細情報が必要な場合は、付録B「パッチ・セット・アシスタントの画面」を参照してください。


表4-2 パッチ・セット・アシスタントの画面

画面 説明

ようこそ


このページがパッチ・セット・アシスタントの最初の画面です。

コンポーネントの選択


アップグレードする単一の最上位レベルのコンポーネントを選択します。一度にアップグレードできるコンポーネントは1つのみです。

ノート: リリース11.1.1.2.0または11.1.1.3.0からアップグレードする場合、prefix_ACTIVITIESスキーマはリリース11.1.1.4.0まで導入されないため、ご使用の環境では使用可能になりません。WebCenter Portalコンポーネントからこのスキーマを必ず選択解除してください。そうしないと、パッチ・セット・アシスタントでこのスキーマの資格証明を要求されます。

前提条件


データベースの前提条件を満たしていることを確認します。

スキーマ・データベース資格証明


この画面を使用して、データベース接続の資格証明、およびアップデートするスキーマの情報を指定します。使用可能なスキーマのドロップダウン・リストから、スキーマ名を選択します。

調査


このページには、各コンポーネント・スキーマを調査する際のパッチ・セット・アシスタントのステータスが表示されます。スキーマの「ステータス」列に「成功」または「アップグレード済」インジケータが表示されていることを確認します。

アップグレード・サマリー


アップグレード対象としてリストされているスキーマが、目的のものであることを確認します。

アップグレードの進行状況


この画面には、スキーマの更新の進行状況が表示されます。

アップグレード成功


この画面には、アップグレードの最終ステータスとログ・ファイルの場所が表示されます。


4.5.2 コマンドラインからのパッチ・セット・インストーラの使用

コマンドライン・インタフェース(CLI)で次の構文を使用して、アップグレードを実行します。

cd Oracle_Home/bin
  psa -response <response_file> [-logLevel <log_level>] [-logDir <log_directory>]

これらのパラメータの説明は、表4-3を参照してください。

表4-3 パッチ・セット・アシスタントのコマンドライン・パラメータ

パラメータ 必須パラメータ/オプション・パラメータ 説明

-response

必須。

アップグレードの実行に必要な入力を含むファイルのフルパスおよびファイル名。

-responseパラメータとともに使用するレスポンス・ファイルを生成するには、パッチ・セット・アシスタントGUI (第4.5.1項「パッチ・セット・アシスタントのグラフィカル・インタフェースの使用」)を実行する必要があります。

ノート: パッチ・セット・アシスタントが-reponseファイル・モードで実行されている場合、どのスキーマもアップグレードされず、スキーマ・データベース資格証明フェーズ中に「アップグレード済」が返されます。これらのスキーマは、アップグレード・フェーズをすべてスキップします。これはパッチ・セット・アシスタントを-responseファイル・モードで実行した場合にのみ適用されます。

-logLevel

オプション。

ロギング・レベル。次のいずれかを選択します。

  • TRACE

  • NOTIFICATION

  • WARNING

  • ERROR

  • INCIDENT_ERROR

デフォルトのロギング・レベルはNOTIFICATIONです。

-logDir

オプション。

PSAによってログ・ファイルおよび一時ファイルが作成される、既存の書込み可能なディレクトリの名前。

デフォルトの場所はMW_HOME/oracle_common/upgrade/logsです。

-help

オプション。

すべてのコマンドライン・オプションを表示します。


4.5.3 アップグレード後のスキーマ・バージョン番号の検証

次のSQLコマンドを使用して、schema_version_registryのスキーマ・バージョンが正しくアップグレードされていることを検証できます。

SELECT OWNER, VERSION, STATUS, UPGRADED FROM SCHEMA_VERSION_REGISTRY;

VERSION列の数値が、そのスキーマの最新のバージョン番号に一致していることを確認します。スキーマに対してアップグレード・バージョン番号が正しいかどうかを検証するには、表4-1を参照してください。

ステータスが「INVALID」と表示された場合は、ステータスのアップグレードが失敗しています。ログ・ファイルを調べて、失敗した理由を判定する必要があります。詳細は、第4.6項「パッチ・セット・アシスタントのログ・ファイル」を参照してください。

4.5.4 無効なデータベース・オブジェクトの確認

Oracleデータベースを使用している場合は、パッチ・セット・アシスタントを実行した後、データベース・オブジェクトを再コンパイルしてください。そのためには、SYSとしてデータベースに接続し、SQL*Plusから次のコマンドを実行します。

SQL> /rdbms/admin/utlrp.sql

この結果、パッチ・セット・アシスタントによってアップグレードされたデータベース・オブジェクトがコンパイルされます。

その後、次の問合せを発行して、無効なデータベース・オブジェクトがなくなったことを確認します。

SELECT owner, object_name FROM all_objects WHERE status='INVALID';

この時点で、アップグレードしたスキーマに無効なデータベース・オブジェクトがあってはなりません。もしあった場合は、utlrp.sqlコマンドをもう一度実行して再確認します。問題が続く場合は、サービス・リクエストを提出します。

4.6 パッチ・セット・アシスタントのログ・ファイル

パッチ・セット・アシスタントでは、次の場所にログ・ファイルが書き込まれます。

UNIXオペレーティング・システムの場合:

MW_HOME/oracle_common/upgrade/logs/psatimestamp.log

Windowsオペレーティング・システムの場合:

MW_HOME\oracle_common\upgrade\logs\psatimestamp.log

一部のコンポーネントでは、psatimestamp.outという2番目のログ・ファイルが、同じ場所に作成されます。

timestampには、パッチ・セット・アシスタントが実行された実際の日時が反映されます。

パッチ・セット・アシスタントの実行時に障害が発生した場合、問題を診断して修正するために、これらのログ・ファイルが必要になります。そのため、ログ・ファイルは削除しないでください。ログ・ファイルの内容は、コマンドラインから別の-logLevelを指定することで変更できます。

パッチ・セット・アシスタントで実行される処理のいくつかは、他の処理より時間がかかる場合があります。時間のかかるこれらの処理の進行状況を確認するには、ログ・ファイルでこの情報を確認するか、次の問合せを使用できます。

SELECT VERSION, STATUS, UPGRADED FROM SCHEMA_VERSION_REGISTRY WHERE OWNER='schema_name';

問合せ結果のSTATUSフィールドは、スキーマへのパッチ適用処理中は「UPGRADING」または「UPGRADED」に、処理が終了すると「VALID」になります。