6 VTCS スタンドアロンユーティリティー

この章では、VTCS スタンドアロンユーティリティーについて説明します。これらのユーティリティーは、共通のユーティリティー管理者プログラム (SLUADMIN) を使用して発行されません。

RTV ユーティリティー

RTV ユーティリティーは、MVC に含まれる VTV をボリューム (実テープボリューム) のデータセットに変換します。このユーティリティーは、SWSRTV プログラムを使用して実行するスタンドアロンユーティリティーです。

このユーティリティーを使用する場合の詳細は、『HSC および VTCS の管理』を参照してください。

構文

図6-1は、RTV ユーティリティーの構文を示しています。

図6-1 RTV ユーティリティーの構文

図6-1 については、周囲のテキストで説明しています。

パラメータ

図6-1に示すように、RTV ユーティリティーには次のパラメータが含まれます。

MVCid

VTV の実テープバージョンになるボリュームに RTV が変換する VTV を含む MVC を指定します。

volser は MVC volser を示します。

INUNIT

入力テープユニットの割り当てに使用する名前を指定します。MSP ユニットアドレス、エソテリック名、または汎用名を指定できます。有効な値はUNIT= JCL パラメータの場合と同じです。

name はユニット名を示します。

VTVid

オプションで、変換する 1 つ以上の VTV を指定します。

volservol-range、または vol-list は 1 つ以上の VTV の volser を示します。

ALLVTVS

オプションで、指定した MVC 上のすべての VTV の最新のコピーを変換します。つまり、指定した MVC に VTV のコピーが複数ある場合、RTV は VTV の最新のコピーだけを変換します。

注:

VTVidALLVTVS は相互に排他的です。
CPYVOLID

オプションで、VTV から出力ボリューム VOL1 レコードに VTV 内部 volser をコピーします。デフォルトでは内部 volser をコピーしません。

注意:

CPYVOLID パラメータは慎重に使用してください。出力テープの volser は、VTV の volser に変更されます。出力テープに外部ラベルがある場合、または出力が別の VTV に送信される場合は、ラベルの不一致が発生し、予測できず望ましくない結果をもたらす可能性があります。

注:

  • 出力テープにラベルがない場合、または非標準のテープラベルが付いている場合は、この VTV の圧縮解除に CPYVOLID が自動的に指定され、出力デバイス上に標準ラベルテープが作成されます。

  • RTV は、標準または ANSI ラベルで作成された VTV をサポートします。CPYVOLID を指定しない場合、RTV はこれらのラベルタイプを、表6-1 で説明されているように処理します。これは、VOL1 レコードにのみ適用されます。HDR1/HDR2 ラベルは常に、VTV が処理されるごとに、RTV によって VTV からコピーされます。

次の表に、RTV ラベルタイプを一覧表示します。

表6-1 RTV ラベルタイプ

VTV ラベルタイプ 標準ラベル出力
ANSI ラベル出力 ラベルなし出力

標準ラベル

VOL1 ラベルはコピーされません

WTOR が発行されます

VOL1 ラベルがコピーされます

ANSI ラベル

WTOR が発行されます

VOL1 ラベルはコピーされません

VOL1 ラベルがコピーされます


表6-1 で WTOR は次のとおりです。

SWSRTV - Label mismatch - Reply RELABEL, RETRY, or CANCEL

オペレータの応答により次の結果が生じます。

  • RELABEL は、RTV を圧縮解除し、出力ボリュームの volser を上書きするよう指定します。

  • RETRY は、別の出力ボリュームをマウントし、操作を再試行するよう指定します。

  • CANCEL は、RTV を圧縮解除するよう指定します。

LISTONLY

オプションで、指定した MVC 上の VTV を一覧表示します (ただし変換はしません)。詳細は、RTV LISTONLY の一覧表示を参照してください。

BLOCKID

オプションで、MVC 上での VTV の開始位置である論理ブロック ID を指定します。

block-id は、論理ブロック ID (8 桁の 16 進数) です。

注:

  • BLOCKIDLISTONLY は相互に排他的です。さらに、ALLVTVs パラメータを指定する場合や、VTV のリストまたは範囲を指定した場合は、BLOCKid パラメータは無視されます。

  • BLOCKid 値を指定しない場合、大容量のメディアでは実行時間が非常に長くなる可能性があります。BLOCKid は、MVC 上の VTV への高速な位置指定に使用されます。

  • 777 ページの「RTV LISTONLY の一覧表示」に示された LISTONLY パラメータは、VTV をボリュームに変換する場合の RTV ユーティリティーへの入力として使用できるブロック ID の値を提供します。

PRTID

オプションで、パーティション分割した MVC から回復される VTV のパーティション ID を指定します。

partition-id は、16 進数のパーティション ID です。

注:

  • PRTID を指定した場合、BLOCKid も指定する必要があります。

  • PRTIDLISTONLY は相互に排他的です。さらに、ALLVTVs パラメータを指定する場合や、VTV のリストまたは範囲を指定した場合は、BLOCKid パラメータは無視されます。

DUMP

RTV が VTV を圧縮解除できない場合に、S0C3 異常終了ダンプを生成します。DUMP を指定した場合、ダンプを取得する SYSMDUMP DD JCL 文を作成します。

OUTUNIT

出力テープユニットを割り当てるために使用する名前。MSP ユニットアドレス、エソテリック名、または汎用名を指定できます。有効な値は UNIT= JCL パラメータの場合と同じです。このパラメータは、LISTONLY を指定していない場合に必須です。

name はユニット名です。

VALIDATE

RTV ユーティリティーが、出力テープを作成せずに指定した VTV を正しく処理できるか検証します。

JCL の要件

次に、RTV ユーティリティー JCL の必須またはオプション文を示します。

STEPLIB

RTV モジュールを含むリンクライブラリ (SEALINK) を指定します。

SLSPRINT

RTV ユーティリティーレポートの出力先を指定します。

SLSIN

SWSRTV プログラムへの入力 (RTV ユーティリティー名およびパラメータ) を指定します。

SYSMDUMP

ダンプを取得するオプションの DD。

注:

RTV ユーティリティーは、出力ユニットでテープ標準ラベルを書き換え、入力ユニットでラベル情報の位置を指定できる必要があるため、動的割り当ては、テープボリューム上にラベル処理のバイパス機能 (BLP) を呼び出します。この操作を行うには、SWSRTV 実行可能コードを含むライブラリが APF 許可されていなければなりません。

RTV ユーティリティーレポートメッセージ

RTV レポートには、次のメッセージが表示されます。

Block number too large in compressed data

説明: VTV の処理中、圧縮されたデータレコードでエラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Chunked record logic error

説明: VTV のチャンクデータレコードの処理中にエラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Decompress invalid length parameter

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Decompress invalid parameter list

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Decompress logic error

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Decompress pointer to work area is zero

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Dynamic allocation error.Reason Code = xxxx-xxxx

説明: INUNIT または OUTUNIT デバイスの動的な割り当てを試行しているときに、エラーが発生しました。動的割り当て理由コードの説明については、富士通 MSP 承認アセンブラサービスガイドを参照してください。

I/O error on input MVC

説明: MVC の読み取り中に I/O エラーが発生しました。以降の処理は停止します。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

I/O error on output volume

説明: 出力 VTV の書き込み中に、I/O エラーが発生しました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます

Invalid compressed data block read

説明: これは、この VTV の処理中に、無効なデータレコードが見つかったことを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Invalid VTV page number encountered

説明: VTV の処理中、圧縮されたデータレコードでレコードシーケンスエラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Invalid VTV record encountered

説明: VTV の処理中、圧縮されたデータレコードでエラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

MVC volser # does not match requested volser #

説明: 入力 MVC としてマウントされたボリュームが、MVCid() パラメータで要求されたものと一致しませんでした。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

MVC record length error

説明: VTV の処理中、圧縮されたデータレコードで長さエラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Incorrect algo byte

説明: VTV の処理中、圧縮されたデータレコードでエラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

No HDR1 record found for requested VTV

説明: BLOCKid() 文による位置指定に従っても、目的の位置に HDR1 レコードがありませんでした。BLOCKid 文を削除して、ユーティリティーを再実行してください。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

No HDR1 record found on input MVC

説明: MVC としてマウントされたボリュームに HDR1 レコードがありませんでした。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

No UHL1 record found on input MVC

説明: MVC としてマウントされたボリュームに UHL1 レコードがありませんでした。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

No VOL1 record found on input MVC

説明: MVC としてマウントされたボリュームに VOL1 レコードがありませんでした。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

NULL input buffer pointer

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

NULL output buffer pointer

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Requested VTV not found on MVC

説明: VTVid() パラメータで要求された volser が MVC で見つかりませんでした。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

Spanned length final error

説明: VTV のスパンデータレコードの処理中に、エラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Spanned length intermediate error

説明: VTV のスパンデータレコードの処理中に、エラーが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Unexpected request on input I/O

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。以降の処理は停止します。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

Unexpected end of tape on output volume

説明: 出力 VTV の書き込み中に、テープ終了通知が発生しました。VTV は、単一の出力ボリュームに完全に収める必要があります。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Unexpected request on output I/O

説明: これはプログラムの論理エラーを示します。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

Unexpected tape mark on input MVC

説明: MVC で予想外のテープマークが見つかりました。以降の処理は停止します。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

VTVid range parameter is invalid

説明: VTVid() の指定で無効な範囲の値が見つかりました。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。

VTV logical data check encountered

説明: VTV の処理中、圧縮データレコードでデータチェックインジケータが見つかりました。この VTV の以降の処理は停止します。VTV は、RTV 圧縮解除レポートの出力でマークが付けられます。ユーティリティーは、必要に応じてほかの VTV の処理を続けます。

VTV volser # does not match requested volser #

説明: BLOCKid 文による位置指定に従っても、VTV volser は VTVid() パラメータで要求されたものと一致しませんでした。ユーティリティーは、リターンコード 12 を返して終了します。BLOCKid 文を削除して、ユーティリティーを再実行してください。

RTV LISTONLY の一覧表示

次の例は、LISTONLY パラメータを指定した場合に RTV が生成する一覧表示を示します。

例6-1 RTV LISTONLY の一覧表示

SWSRTV             (1.0.0)         StorageTek VTCS RTV Utility                            PAGE 0001
TIME 14:28:33                   Control Card Image Listing                            DATE 12/01/15
RTV MVC(C83107) LISTONLY

SWSRTV             (1.0.0)         StorageTek VTCS RTV Utility                            PAGE 0002
TIME 14:28:33                   MVC C83107 Contents Report                            DATE 12/01/15

VTV      File   Block            <---Created--->            <---Migrated--->       VTVPAGE   VTV
volser   #      ID          Date            Time       Date             Time       Size      Status
VV6825   1      00000000    20150Nov30      12:07:56   2015Nov30        12:15:56   Large
VV6863   2      92005F0F    2015Sep27       12:57:54   2015Sep27        12:59:54   Large
VV6893   3      92005F18    2015Aug18       08:57:26   2015Aug18        08:59:26   Large
VV0403   4      92005F21    2015Aug18       08:57:26   2015Aug18        08:59:26   Large

このレポートには、VTV に関する次の情報が一覧表示されます。

  • Volser

  • MVC 上の論理ファイル番号

  • MVC 上のブロック ID

  • 作成および移行した時間

  • VTVPAGE サイズ - STANDARD または LARGE

  • ステータス - Not Current、または空白の場合は VTV は最新です

RTV 圧縮解除の一覧表示

次の例は、LISTONLY パラメータを指定しない (つまり、RTV を実行して VTV をボリュームに変換する) 場合に RTV が生成する一覧表示を示しています。

例6-2 RTV 圧縮解除の一覧表示

SWSRTV             (1.0.0)         StorageTek VTCS RTV Utility                            PAGE 0001
TIME 14:28:33                   Control Card Image Listing                            DATE 12/01/15
RTV MVC(C8228) VTV(VV6800-VV6900) CPYVOLID

SWSRTV             (1.0.0)         StorageTek VTCS RTV Utility                            PAGE 0002
TIME 14:28:33                   MVC C83223 Contents Report                            DATE 12/01/15

VTV      File   Block            <---Created--->         <---Migrated--->    VTVPAGE   VTV
volser   #      ID          Date         Time       Date             Time    Size      Status
VV6070   1      00000000    20150Nov30   12:07:56   2015Nov30     12:15:56   Large
VV0874   2      2B001384    2015Sep27    12:57:54   2015Sep27     12:59:54   Large
VV0772   3      A3002707    2015Aug18    08:57:26   2015Aug18     08:59:26   Large
VV6828   4      9B002AB9    2015Aug18    08:57:26   2015Aug18     08:59:26   Large     Not current
VV6828   5      9B002AC2    2015Aug18    08:57:26   2015Aug18     08:59:26   Large
VV6826   6      9B002ACB    2015Aug18    08:57:26   2015Aug18     08:59:26   Large
SWSRTV


SWSRTV             (1.0.0)         StorageTek VTCS RTV Utility                            PAGE 0003
TIME 14:28:33                   MVC C83223 Contents Report                            DATE 12/01/15

VTV             Mounted                                Final                 Decompress
volser          Volser                                 Volser                Status
VV6826          XX0772                                 VV6826                Successful
VV6828          XX0773                                 VV6828                Successful

136 ページの図 67 に示された内容フィールドに加え、137 ページの図 68 に示された圧縮解除のリストに VTV が一覧表示されます。

  • 最初にマウントされた出力ボリュームの volser

  • 出力ボリュームの最終的な volser。CPYVOLID を指定した場合は、最終的な volser は VTV volser と同一で、それ以外の場合、最終的な volser は最初にマウントしたときの出力ボリュームの volser と同一になります。

  • 圧縮解除のステータス