プライマリ・コンテンツに移動
Oracle® Fusion Middleware高可用性ガイド
12c (12.2.1.0.0)
E69925-01
  目次へ移動
目次

前
 
次
 

8 管理サーバーの高可用性

この項では、管理サーバーの高可用性について説明します。

この項には次のトピックが含まれます:

管理サーバーおよびノード・マネージャの詳細は、次の各項目を参照してください。

表8-1 管理サーバーおよびノード・マネージャに関する項目

情報 参照先

管理サーバーの起動と停止

『Oracle Fusion Middleware Oracle Fusion Middlewareの管理』の管理サーバーの起動と停止に関する項

仮想ホスティングの構成

『Oracle WebLogic Serverサーバー環境の管理』の仮想ホスティングの構成に関する項

ノード・マネージャの使用方法

『Oracle WebLogic Serverノード・マネージャの管理』の次の項:

  • 「ノード・マネージャおよびシステム・クラッシュ・リカバリ」

  • 「WLS環境でのノード・マネージャの動作」

  • 「ノード・マネージャの構成およびログ・ファイル」


8.1 管理サーバーの役割

管理サーバーは、ドメイン全体を構成するための集中管理エンティティで、すべてのドメイン・リソースを管理およびモニターします。ドメインの構成ドキュメントを保持し、これらのドキュメント内の変更を管理対象サーバーに配布します。各ドメインには、管理サーバーとして機能する1つのサーバーが必要です。

8.1.1 管理サーバーの障害と再起動

ドメインの管理サーバーで発生する障害は、ドメイン内の管理対象サーバーの動作には影響しません。管理サーバーのホスト・コンピュータ上のハードウェアまたはソフトウェアの障害が原因で管理サーバーに障害が発生した場合は、同じコンピュータ上のその他のサーバー・インスタンスが影響を受けることがあります。

管理サーバーの障害の詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Fusion Middlewareの管理』の管理対象サーバーの障害の影響に関する項を参照してください。

管理サーバーを再起動する方法は、Oracle Fusion Middleware Oracle Serverクラスタの使用を参照してください。

8.1.2 共有記憶域と管理サーバーの高可用性

共有記憶域を使用すると、バックアップ・ホストは、アクティブ・ホストがアクセスできる同じアーティファクト(Oracleバイナリ、構成ファイル、ドメイン・ディレクトリおよびデータ)にアクセスできます。高可用性管理サーバーの構成において、アーティファクトをすべてのホストがアクセス可能な記憶域に配置することにより、このアクセスを構成できます。共有記憶域は、ネットワーク接続ストレージ(NAS)またはストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)のいずれかのデバイスを使用します。第4章「共有記憶域の使用」を参照してください。

8.2 ノード・マネージャの役割

作成するWebLogic Serverドメインのそれぞれについて、ドメインごとのノード・マネージャ・インスタンスがデフォルトで作成されます。ノード・マネージャには、セキュリティ資格証明書、プロパティ・ファイル、ドメイン登録および起動スクリプトが付属しています

ノード・マネージャの範囲は構成可能です。

  • ドメインごとのノード・マネージャは、ドメインと関連付けられ、マシン上のドメインのすべてのサーバーを制御します。デフォルトの構成です。

  • ホストごとのノード・マネージャは、ドメインではなく、特定のマシンに関連付けられます。サーバー・インスタンスがノード・マネージャ・プロセスと同じマシン上に存在しているかぎり、ノード・マネージャ・プロセスを使用して任意のドメインのサーバー・インスタンスを制御できます。ホストごとのノード・マネージャは、ノード・マネージャで制御するWebLogic Serverインスタンスをホストするそれぞれのコンピュータ上で、WebLogic Serverインスタンスが管理サーバーか管理対象サーバーであるかにかかわらず、実行する必要があります。


注意:

ホスト・マシンが再起動した場合に、ノード・マネージャが自動的に再起動するよう、ノード・マネージャはオペレーティング・システムのサービスとして実行することをお薦めします。

ノード・マネージャに障害が発生しても、マシン上で実行しているサーバーには影響しません。

詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Fusion Middlewareコンセプトの理解』のノード・マネージャの概要に関する項を参照してください。

8.3 管理サーバーの高可用性トポロジ

管理サーバーは、1つのホスト上でいつでもアクティブ化できます。高可用性を設定するには、管理サーバーを仮想ホスト上に構成して、それを実行しているマシンに障害が発生した場合に、ドメイン内の別のホストにフェイルオーバーします。管理サーバーは、仮想IPを使用して、バックアップ・ホストとオーバーラップするように構成されます。この仮想IPをリスニングするように、管理サーバーを構成します。仮想ホストおよび仮想IPを使用する利点は第3のマシンを追加する必要がない点にあり、フェイルオーバーが発生した場合は仮想IPを移動することで、ドメイン内の障害の発生していないマシンに仮想ホストをマップできます。

2つのホストで、仮想ホスト名および仮想IPを共有します。ただし、この仮想IPを使用できるのは、常に1つのアクティブ・ホストに限定されます。アクティブ・ホストに障害が発生した場合はバックアップ・ホストがアクティブ化され、仮想IPを新しいアクティブ・ホストに(手動で)移動します。すべてのリクエストは、仮想IPを通じて、新しいアクティブ・ホストで処理されます。(この仮想IPをリスニングするように、高可用性デプロイメントを構成します。)

高可用性管理サーバーの障害を、次の図に示します。このトポロジでは、管理サーバーは仮想ホストAPPHOST0上で実行されます。APPHOST0は、仮想IPによってAPPHOST1またはAPPHOST2にオーバーラップされます。最初、APPHOST0APPHOST1にマップされますが、APPHOST1が原因で管理サーバーに障害が発生した場合は、仮想IPを移動することによって、APPHOST0APPHOST2にフェイルオーバーします。

図8-1 管理サーバーの高可用性トポロジ

図8-1の説明が続きます
「図8-1 管理サーバーの高可用性トポロジ」の説明

8.4 管理サーバーの高可用性の構成

この項の内容は次のとおりです。

高可用性の管理サーバー環境では、両方のホストから共有記憶域にアクセスできる必要があります。ドメイン・ディレクトリは、共有記憶域に保持されます。通常の運用時は、アクティブ・ホスト上の管理サーバーによってドメイン・ディレクトリが所有されます。アクティブ・ホストに障害が発生した場合は、バックアップ・ホストによって引き継がれ、管理サーバーは共有ドメイン・ディレクトリから再起動されます。

8.4.1 管理サーバーの高可用性の要件

高可用性の管理サーバーを構成するには、ご使用の環境が次の要件を満たす必要があります。

  • 標準インストール・トポロジに準拠すること。第1.6項「Oracle Fusion Middlewareの標準的なHAトポロジの理解」および図1-1「Oracle Fusion Middlewareの高可用性デプロイメント・トポロジ(一般的な企業)」を参照してください。

  • 2つのホスト、APPHOST1およびAPPHOST2を組み込んで、WebLogic Serverクラスタ(cluster_1)を実装すること。第8.4.2項「高可用性の管理サーバーの構成」では、APPHOST1およびAPPHOST2のIPアドレスは、それぞれip1およびip2です。

  • APPHOST1およびAPPHOST2に、共有記憶域から共通のディレクトリがマウントされ、そのディレクトリの読取り/書込み権限が与えられること。このディレクトリは、製品のインストールおよびドメイン・ディレクトリの格納に使用されます。

  • 予約済仮想IPアドレス(vip0)によって管理サーバーを実行しているホストを指し示すこと。この仮想サーバーを示す浮動IPアドレスが、管理サーバーを実行しているホスト上で動的に構成されること。

  • 管理サーバーは、ノード・マネージャ・インスタンスによって管理され、障害の発生したホストから指定されたスタンバイ・ホストに移行されること。

8.4.2 高可用性の管理サーバーの構成

高可用性の管理サーバーを構成するには、まず1つのクラスタ(cluster_1)を持つ標準高可用性トポロジを作成する必要があります。第1.6項「Oracle Fusion Middlewareの標準的なHAトポロジの理解」を参照してください。

高可用性の管理サーバーを設定するには、管理サーバーを別の仮想ホスト(APPHOST0)上で実行します。APPHOST0が、クラスタ内の既存のホストのうちの1つ(APPHOST1またはAPPHOST2)にマップされるように、APPHOST0用の(仮想)サーバーIPをそのホストに設定します。フェイルオーバーが発生した場合は、障害が発生していないホストにこの仮想IPが移行されることで、APPHOST0がフェイルオーバーされます。ドメイン設定は、障害の発生していないホストからアクセスできるように、共有記憶域に置かれます。


注意:

管理サーバーのサービスで構成タスクを完了するには、複数の方法があります。いずれの方法を使用するにしても、構成を変更する際はクラスタの管理サーバーが稼働している必要があります。

表8-2 ホストおよびノード・マネージャの用語

用語 説明

APPHOST0machine_0

管理サーバーが実行される仮想マシン

APPHOST1APPHOST2

アプリケーション層がホストされるマシン

vip0

管理サーバーによってリスリングされる仮想サーバーのIPアドレス

NMa

APPHOST0で実行される管理サーバーを管理する、ドメインごとのノード・マネージャ

NM1NM2

APPHOST1およびAPPHOST2でそれぞれ実行されるノード・マネージャのインスタンス

ip1ip2

それぞれ、APPHOST1およびAPPHOST2のIPアドレス


高可用性の管理サーバーを設定するには、次の手順を実行します。

  1. 仮想ホストAPPHOST0を表す仮想サーバーIPアドレス(vip0)をAPPHOST1に構成します。

    詳細は、『Oracle WebLogic Serverサーバー環境の管理』の仮想ホスティングの構成に関する項を参照してください。

  2. Oracle Fusion Middleware拡張インストール手順を使用して、Oracle Fusion Middlewareバイナリをインストールし、共有記憶域のディレクトリ内にドメインを構成します。vip0を管理サーバーのリスニング・アドレスに使用します。

  3. 仮想マシンmachine_0を作成し、そこに管理サーバーを追加します。このマシンmachine_0は、IPアドレスvip0の仮想サーバー・ホストAPPHOST0を表します。

  4. machine_1 and machine_2にそれぞれ割り当てられた2つの管理対象サーバーserver_1およびserver_2,を持つクラスタ(cluster_1)を作成します。

    • machine_1APPHOST1を表し、machine_2APPHOST2を表します。

    • server_1およびserver_2を、それぞれip1およびip2をリスニングするよう設定します。

  5. 仮想サーバーを、APPHOST1およびAPPHOST2にスケール・アウトします。第6.2項「トポロジのスケール・アウト手順.」を参照してください。スケール・アウトするには、共有記憶域でドメインをパックし、APPHOST1およびAPPHOST2のローカル・ディレクトリにアンパックします。

  6. APPHOST1でドメインごとのノード・マネージャ(NMa)を起動し、構成済の仮想サーバーIPアドレスvip0APPHOST1でリスニングする管理サーバーを管理します。ノード・マネージャのこのインスタンスを、共有記憶域のドメイン・ディレクトリで起動します。

  7. APPHOST1で、ドメインごとのノード・マネージャ(NM1)を起動し、ip1をリスニングするserver_1を管理します。このノード・マネージャ(NM1)を、手順5APPHOST1のローカル記憶域にアンパックしたドメイン・ディレクトリで起動します。

  8. APPHOST2で、ドメインごとのノード・マネージャ(NM2)を起動し、ip2をリスニングするserver_2を管理します。このノード・マネージャ(NM2)を、手順5APPHOST2のローカル記憶域にアンパックしたドメイン・ディレクトリで起動します。

  9. ノード・マネージャ(NMa)を使用して、APPHOST1で管理サーバーを起動します。

  10. 管理サーバーserver_1およびserver_2を、それぞれNM1およびNM2を使用して起動します。

  11. 管理サーバーおよび管理対象サーバーが適切に機能していることを確認します。仮想IPアドレスvip0を使用して、管理サーバーに接続します。

8.5 管理サーバーのフェイルオーバーまたはフェイルバック

ホストの障害の発生後、管理サーバーをフェイルオーバーまたはフェイルバックするには、次の各項目を参照してください。

8.5.1 元のホストに障害が発生した場合の管理サーバーのフェイルオーバー

APPHOST1に障害が発生した場合に、管理サーバーをAPPHOST2にフェイルオーバーには、次のようにします。

  1. vip0APPHOST2に構成します。

  2. APPHOST2の共有記憶域のドメイン・ディレクトリで、ノード・マネージャNMaを起動します。

  3. APPHOST2NMaを使用して、管理サーバーを起動します。

  4. 管理コンソールを起動して、管理サーバーが実行されていることを確認します。

8.5.2 元のホストへの管理サーバーのフェイルバック

管理サーバーが再起動した後、元のホストにフェイルバックします。

APPHOST1がオンラインに復帰してから、管理サーバーをAPPHOST1にフェイルバックするには、次のようにします。

  1. ノード・マネージャNMaを使用して、APPHOST2の管理サーバーを停止します。

  2. vip0を、APPHOST2から削除します。

  3. APPHOST2で、ノード・マネージャNMaを停止します。

  4. vip0をAPPHOST1に構成します。

  5. 共有記憶域のドメイン・ディレクトリを使用して、APPHOST1でノード・マネージャNMaを起動します。

  6. ノード・マネージャNMaを使用して、APPHOST1で管理サーバーを起動します。

  7. 管理コンソールを起動して、管理サーバーが実行されていることを確認します。