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Oracle® Fusion Middleware Oracle WebLogic Server診断フレームワークの構成と使用
12c (12.2.1)
E69998-01
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1 概要とロードマップ

この章では、このガイド(『Oracle WebLogic Server診断フレームワークの構成と使用』)の内容と対象読者について説明します。このガイドでは、WebLogic Serverプロセス内で実行する一連のサービスの定義および実装を行い、標準サーバー・ライフサイクルに参加する監視および診断フレームワークである、WebLogic診断フレームワーク(WLDF)について説明します。WLDFを使用すると、実行中のサーバーおよびそのコンテナ内にデプロイされているアプリケーションによって生成された、診断データを作成、収集、分析、アーカイブし、それらのデータに対するアクセスを行うことができます。このデータを基に、サーバーおよびアプリケーションの実行時パフォーマンスを把握できます。また、フォルト発生時に、このデータを使用して、フォルトを隔離および診断できます。

この章の内容は次のとおりです。

WebLogic診断フレームワークとは

WebLogic診断フレームワーク(WLDF)は、サーバーとアプリケーションのパフォーマンスの可視化を実現するメトリックを収集および表示する機能を提供する一連のサービスおよびAPIです。独立系ソフトウェア・ベンダー(ISV)は、これらのAPIと、WLST、REST、JMXなどの標準インタフェースを使用して、WLDFと統合するためのカスタムの監視および診断ツールを開発できます。

データの収集と分析を行うためにWLDFで提供される一連のサービス、コンポーネントおよびAPIは、次のとおりです。

  • Oracle HotSpotとの統合: WebLogic ServerがOracle HotSpotとともに構成されている場合、Javaフライト・レコーダ・ファイルにキャプチャされているWebLogic Serverに関して、WLDFによる診断情報の生成が可能です。

  • 組込み診断システム・モジュール: そのまま使用できる一連の診断モジュールです。これにより、JVM、WebLogic Serverの実行時間およびWebLogic Serverの主要サブシステム(JDBCデータ・ソース、メッセージング、Java EEコンテナ(サーブレット、EJB、リソース・アダプタなど)を含む)の基本的なパフォーマンス・データを動的に取得できます。組込み診断モジュールは複製や変更も可能なため、簡単にカスタム診断システム・モジュールを作成する方法として使用できます。

  • 監視ダッシュボード: WebLogic Serverおよびホストされたアプリケーションの現在の動作状態および動作状態の履歴をグラフィカルに表示します。これには組込み診断システム・モジュールにより収集された情報も含まれます。WebLogic Server管理コンソールからアクセスされた監視ダッシュボードは、重要性の高いランタイムWebLogic Serverのパフォーマンス・メトリックおよびそれらのメトリックの一定時間での変化を表示するビューに診断データを編成し表示するための一連のツールを提供します。

  • 診断イメージ・キャプチャ - 障害発生後の分析に使用できる診断スナップショットをサーバーから作成します。診断イメージ・キャプチャには、Javaフライト・レコーダ・データが含まれていて、それが使用可能である場合、Java Mission Controlで表示できます。

  • アーカイバ - サーバー・インスタンスおよびアプリケーションから、データ・イベント、ログ・レコード、およびメトリックをキャプチャし、永続化します。

  • インストゥルメンテーション - WebLogic Serverインスタンスおよびその上で実行されているアプリケーションに診断コードを追加し、コード内の指定された場所で診断アクションを実行します。インストゥルメンテーション・コンポーネントは、システム内のリクエストの流れを追跡できるように、診断コンテキストをリクエストに関連付けるための手段を提供します。WebLogic Server管理コンソールには、アプリケーションにおけるパフォーマンスの問題の識別に役に立つツールとして機能しているWLDFインストゥルメンテーション機能から取得したメソッド・パフォーマンス情報のリアルタイムおよび履歴ビューを表示する「リクエスト・パフォーマンス」ページが含まれています。

  • ハーベスタ - WebLogic Server MBeanやカスタムMBeanなどのランタイムMBeanからメトリックをキャプチャします。メトリックはアーカイブして、履歴データを参照するために後でアクセスできます。

  • ポリシーおよびアクション - サーバーとアプリケーションの状態を監視し、ポリシーに設定された基準に基づいて通知を送信するための手段を提供します。

  • ロギング・サービス - サーバー、サブシステムおよびアプリケーション・イベントを監視するためのログを管理します。WebLogic Serverロギング・サービスは、WebLogic診断フレームワークの他の部分とは別個のドキュメントで説明されています。『Oracle WebLogic Serverログ・ファイルの構成とログ・メッセージのフィルタ処理』を参照してください。

ドキュメントのスコープと対象読者

このドキュメントでは、WLDFによるモニター・サービスと診断サービスを構成および使用する方法について説明します。

WLDFは、WebLogic Serverインスタンスおよびクラスタを実行する際の問題点や、それらにデプロイされているアプリケーションにおける問題点をモニターし、診断するための機能を提供します。したがって、このドキュメント内の情報は、システム管理者とアプリケーション開発者の双方を対象としています。また、WLDFをサポートおよび拡張するツールを構築するサード・パーティのツール開発者向けの情報も記載しています。

読者は、Webテクノロジ、およびWebLogic Serverがインストールされているオペレーティング・システムとプラットフォームに精通していることが前提となっています。

このドキュメントの手引き

このドキュメントの構成は次のとおりです。

関連ドキュメント

  • 『Oracle WebLogic Serverログ・ファイルの構成とログ・メッセージのフィルタ処理』では、WLDFロギング・サービスを使用してサーバー、サブシステムおよびアプリケーション・イベントをモニターする方法を説明します。

  • Oracle WebLogic Server管理コンソール・オンライン・ヘルプWebLogic診断フレームワークの構成に関する項では、WebLogic Server管理コンソールのビジュアル・ツールを使用してWLDFを構成する方法を説明します。

  • 『WebLogic Server MTの使用』のパーティションのモニターに関する項では、WebLogic Serverマルチテナントのパーティションをモニターする方法を説明します。

  • WLDFシステム・リソース記述子はweblogic-diagnostics.xsdスキーマに準拠しています。このスキーマは、http://xmlns.oracle.com/weblogic/weblogic-diagnostics/1.0/weblogic-diagnostics.xsdで参照できます。

サンプルとチュートリアル

このドキュメントの他にも、WLDFの構成や使い方を示す様々なサンプルとチュートリアルが用意されています。

Avitek Medical Recordsアプリケーション(MedRec)とチュートリアル

MedRecはWebLogic Serverに付属したエンドツーエンドのサンプルJava EEアプリケーションであり、一元的で独立した医療記録管理システムをシミュレートします。MedRecアプリケーションには、患者、医師、および管理者に対して、様々なクライアントを使用して患者のデータを管理するフレームワークが用意されています。

MedRecはWebLogic ServerとJava EEの機能を例示し、推奨されるベスト・プラクティスを重要点として示します。MedRecはWebLogic Serverのディストリビューションにオプションでインストールされ、完全インストール・タイプを選択すると使用できます。Medrecは、デフォルトではインストール後にORACLE_HOME/user_projects/domains/medrecディレクトリに構成されます。ここでORACLE_HOMEは、使用するマシンのOracleホーム・ディレクトリを表します。詳細は、Oracle WebLogic Serverの理解のサンプル・アプリケーションおよびサンプル・コードに関する項を参照してください。

ダウンロード可能なWLDFサンプル

その他のWLDFサンプルは、http://www.oracle.com/technetwork/indexes/samplecode/index.htmlからダウンロードできます。これらのサンプルは、既存WebLogic Serverサンプル・ディレクトリ構成に展開できる.zipファイルとして配布されています。これらのサンプルには、Oracleが認定したもののほかに、開発協力者から提示されたサンプルもあります。

このガイドの新機能

WebLogic Server 12c (12.2.1)のこのドキュメントには、次の新機能と変更された機能が含まれます。

  • 監視および通知という用語は、それぞれポリシーおよびアクションに置き換えられています。その結果、監視および通知システムは、ポリシーおよびアクション・システムと名前が変更されました。次のリスト項目に示すとおり、このシステムには新しい変更点がいくつか導入されていますが、これらの用語の基本定義は変更されていません。

  • ポリシーおよびアクション・システムは、次の新機能を含むように更新されています。

    • ポリシー式で使用する推奨言語として、Java式言語(EL)がサポートされるようになりました。WLDF問合せ言語は、非推奨です。

    • ハーベスタ・ルール・タイプおよびJava EL式言語によって構成されるポリシーで、WLDFScheduleBeanを使用できるようになりました。これらのポリシー(スケジュール済ポリシーと呼ばれる)は、すべてのメトリック収集のスケジューリングにWLDFScheduleBeanを使用します。これらのポリシーは、ハーベスタ・ルール・タイプとして構成されていても、メトリック収集またはスケジューリングにハーベスタを使用しません。

    • スケジュール済ポリシー式で使用するための事前パッケージ済のスマート・ルール、Beanおよび関数の新しいライブラリが提供されています。スマート・ルールでは、入力パラメータを指定するだけで、複雑なポリシー式の作成タスクが大幅に簡略化されます。

      より複雑なポリシー式の場合、WLDFでは、共通のWebLogic Server JMXデータ・ソースへのアクセスを取得できるBeanおよび関数のライブラリも提供されています。

      これらの事前パッケージ済のスマート・ルール、Beanおよび関数は、動的クラスタの拡張度をサポートするために使用できるポリシーを作成するためのヘルパー・ツールです。

    • 新しいアクション・タイプが提供されています(動的クラスタでの拡張度をサポートするスケール・アップおよびスケール・ダウン・アクション、WLSTスクリプトを実行するスクリプト・アクション、メッセージ本文をカスタマイズできる電子メール・アクションの拡張機能など)。

      詳細は、第10章「ポリシーの構成」および「アクションの構成」を参照してください。

      動的クラスタの拡張度の構成の詳細は、『Oracle WebLogic Server動的クラスタの拡張度の構成』を参照してください。

  • WLDFは、Oracle WebLogic Server Multitenantの機能をサポートするために拡張されています(パーティション・スコープ・メトリックのモニター、パーティション・スコープ診断システム・モジュール、デバッグおよび診断イメージ・キャプチャの構成、パーティション・スコープ・アプリケーションのインストゥルメントなど)。詳細は、『WebLogic Server MTの使用』のパーティションのモニターに関する項を参照してください。

  • Javaフライト・レコーダとWLDFの統合は、次のように拡張されています。

    • サーブレットJFRイベントおよびSOAP JFRイベントの実行コンテキストID (ECID)トレースおよび相関の機能向上

    • 関係ID (RID)トレースのサポート(スタンドアロンWebLogic Server環境内を含む)

    • スタンドアロンWebLogic Server内の診断コンテキストのログ・レベル伝播のサポート

    詳細は、第4章「Javaフライト・レコーダと連携したWLDFの使用」を参照してください。

  • 動的デバッグ・パッチのサポート。動的デバッグ・パッチにより、サーバーの再起動をせずにアクティブ化および非アクティブ化されるパッチを使用して診断情報を取得できます。詳細は、第18章「デバッグ・パッチの使用」を参照してください。