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Oracle® Enterprise Manager Cloud Control Oracle Fusion Middleware管理ガイド
13cリリース1
E72552-02
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20 JVM診断の概要

ここでは、JVM診断の概要について説明します。

次の項目が含まれます。

20.1 概要

ミッション・クリティカルなJavaアプリケーションは、可用性とパフォーマンスの問題にしばしば直面します。開発者とIT管理者は多くの時間を費やして、これらの問題の根本的原因を診断します。本稼働環境で発生する問題は、他の環境では再現できないか、時間がかかりすぎて再現できないことがほとんどです。これはビジネスに重大な影響を及ぼすことがあります。

Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13cのJVM診断では、管理者が本番環境でのJavaアプリケーションのパフォーマンスに関する問題を診断できます。問題を再現する必要がないため、問題の解決に要する時間を削減できます。このため、アプリケーションの可用性とパフォーマンスが向上します。JVM診断を使用すると、管理者は、パフォーマンスの問題をテスト環境または開発環境で再現することなく、本番環境でその根本原因を特定できます。アプリケーションの詳細を把握するためにアプリケーションの複雑なインスツルメンテーションや再起動は必要ありません。アプリケーション管理者は、アプリケーションの詳細な知識がなくても、アプリケーションの停止時間の原因となるJavaおよびデータベースの問題を特定できます。JVM診断の主な機能は、次のとおりです。

20.1.1 負荷を抑えたJavaアクティビティのモニタリングおよび診断

JVM診断を使用すると、Javaアプリケーションの処理速度を低下させずに、細部にわたってモニタリングできます。処理に時間のかかっているリクエストやメソッド、I/Oを待機中のリクエスト、CPUサイクルを大量に消費しているリクエスト、そしてデータベース・コールを待機しているリクエストを特定するのに役立ちます。また、リソースのボトルネックの影響を受けているエンドユーザー・リクエストも特定できます。さらに、パフォーマンスのボトルネックを引き起こしているアプリケーション・リソースも表示できます。

20.1.2 JVMアクティビティの深層部の可視性

JVM診断ではJavaスタックを迅速に可視化できます。スレッドの状態とJavaメソッド/行番号をリアルタイムでモニターし、アプリケーション・クラッシュ、メモリー・リークおよびアプリケーションのハングなどの問題を、発生後に診断するのではなく発生前に特定することができます。

20.1.3 リアルタイム・トランザクション・トレース

特定のリクエストがハングしている場合や、アプリケーション全体の処理が遅い場合、管理者はリアルタイム・トランザクション・トレースを実行して、現在のJavaアプリケーション・アクティビティを表示できます。障害が発生しているスレッドや、その実行コール・スタックを参照できます。また、スレッドがデータベース・ロックの待機に費やした時間などの、様々なボトルネック・リソースも分析できます。あるスレッド(またはリクエスト)のアクティビティが他のスレッドのアクティビティや残りのJVMに影響する場合などの複雑な問題を、迅速に発見することができます。

時折、使用されているモニタリング間隔(デフォルトは2秒)が不正確になる場合があります。対象のJavaスレッドのライブが短すぎるか、収集されたモニタリング・データの量が不十分である可能性があります。このようなケースでは、JVMトレースを実行して、JVMアクティビティの正確な詳細を取得できます。この機能では、短期間に非常に高い頻度(デフォルトの頻度は200ミリ秒に1回)でJavaアプリケーションをモニターできます。これによって、スレッド、ボトルネック・リソース(DB、I/O、CPU、ロック、ネットワーク、RMI)およびトップ・メソッドの相互依存性を識別できます。

20.1.4 Oracleデータベースとの多層間の相互関係

JVM診断を使用すると、関連付けられたデータベース・セッションへのJavaリクエストをトレースしやすくなり、その逆の場合も同様で、様々な層にまたがる問題の迅速な解決が可能になります。管理者は、DB待機状態のJVMスレッドから、関連付けられたOracleデータベース・セッションにドリルダウンできます。また、SQL問合せから、関連付けられたJVMターゲットおよびWebLogic Serverターゲットにドリルアップできるようになりました(データベースとJVMがEnterprise Managerの管理対象になっている場合にのみ有効)。

この機能では処理に時間のかかっているSQL問合せが明らかになるため、管理者はSQLおよびデータベースをチューニングしてアプリケーションのパフォーマンスを改善できます。このように、データベース層またはアプリケーション層に問題を切り分けることで、データベース管理者とアプリケーション管理者のコミュニケーションがスムーズになります。

20.1.5 メモリー・リークの検出および分析

メモリー・リークはアプリケーションの処理速度の低下につながり、最終的にはアプリケーションのクラッシュを引き起こします。JVM診断では、Javaメモリーの異常な消費量について管理者にアラートが送られます。管理者はJVM Diagnosticsを使用して、アプリケーションを停止せずに本稼働アプリケーションのヒープ・ダンプを取得できます。その他のヒープ分析が、「メモリー・リーク・レポート」および「アンチパターン・レポート」で利用できます。管理者は、複数のヒープ・ダンプを一定期間で取得し、ヒープ・ダンプ間の差異を分析して、メモリー・リークを引き起こしているオブジェクトを識別できます。ヒープ分析は、バージョンが異なるアプリケーションに対しても実行できます。複数のヒープ・ダンプによる様々なヒープ分析によって、メモリー・リークの識別が容易になります。

20.1.6 JVMプーリング

JVM診断では、管理者がJVMのセットをJVMプール内にグループ化できます。これによって、すべての関連するJVMに対する単一のビューがコンソール・ユーザーに提供されます。したがって、単一のアプリケーションまたは単一のクラスタを構成するすべてのJVMを、アプリケーション内でグループ化できます。このため、管理者が問題を自然かつ直観的にビジュアル化できるようになります。

20.1.7 リアルタイムおよび履歴の診断

JVM診断では、Javaアプリケーションでリアルタイムおよび履歴の診断を実行できます。これによって、本稼働の問題の根本的原因について、同じ問題をテストまたはQA環境で再現しなくても詳細に見通すことができます。トランザクションはブラウザからインタラクティブに再生して、ネットワークおよびサーバーでの消費時間を表示できます。

リアルタイム・データ以外に、履歴データを分析して過去に起こった問題を診断することもできます。エンドユーザー・リクエストにかかった時間と、サーブレット、JSP、EJB、JDBCおよびSQLレイヤーによるブレークダウンを示す履歴データを表示できます。

20.2 このリリースの新機能

この項では、Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13cリリース1におけるJVM診断の新機能の一部を一覧で示します。

  • JVM診断エンジンの即時利用可能デプロイメント

  • RUEIからJVMDへのドリルダウン(DMSがアクティブでないとき)

  • 実行中アプリケーションの情報取得のためのバイト・コード・インジェクション(BCI)

  • Javaワークロード・エクスプローラ

    • 新しいUI (直観的で柔軟性の高い容易なナビゲート)

    • スナップショットおよびメタデータ・セット

    • 使用可能なスナップショットの比較

    • リクエストおよびインスタンス当たりのCPUとメモリーの割当て

    • Javaワークロード・レポート(JWR)

    • 複数のJVMおよびドメイン全体のデータの集計と比較

  • BCIを使用したJavaフライト・レコーダ(JFR)なしでのインスタンス・レベルの可視性

  • JVMDサーバーのデプロイメントと診断能力

  • Hybrid Cloudの向上(ハイブリッド・ゲートウェイおよびJVMDマネージャ間のSSL通信のサポート)

  • JFR統合の拡張

20.3 サポートされているプラットフォームおよびJVM

最新の動作確認情報は、My Oracle Supportのノート1415144.1を参照してください。My Oracle Supportには、次のURLでアクセスできます。

https://support.oracle.com/CSP/ui/flash.html

20.4 ユーザー・ロール

JVM診断を使用するには、次のJVM診断リソース権限のどちらかを保持している必要があります。

  • JVM診断ユーザー: JVM診断データを表示できます。

  • JVM診断管理者: ヒープやスレッドのスナップショットの作成および分析、スレッドのトレースなどのJVM診断操作を管理できます。

これらの権限は「設定」ページで定義できます。これらの権限の定義の詳細は、『Enterprise Manager Cloud Control管理者ガイド』の「Enterprise Managerのセキュリティ」の章を参照してください。