ここでは、ミドルウェア診断アドバイザ(MDA)について説明します。Manager Cloud Controlの一部であるMDAは、スタック全体を分析して、問題の根本原因を特定することにより、診断結果を提示します。
ミドルウェア診断アドバイザでは、スタック全体を分析して、問題の根本原因を特定することにより、診断結果を提示します。情報の関連付けと分析を行い、問題の解決方法についてアドバイスを提供します。たとえば、パフォーマンスのボトルネックの原因があるJDBC接続プールを特定する際に役立ちます。
サーバーでミドルウェア診断アドバイザが有効になっていれば、WebLogicドメイン内の1つ以上のサーバーについて診断結果を表示できます。
この項の内容は次のとおりです。
Oracle WebLogic Server (WLS)は、高いパフォーマンスおよびスケーラビリティを提供するアプリケーション・サーバーです。WebLogic Serverは、デプロイメントおよび管理も簡略化して、現在の軽量開発プラットフォームを市場に投入するまでの時間を短縮します。
WLSのパフォーマンスおよびスケーラビリティを維持するには、違反を検出して違反の原因を把握することをお薦めします。これにより、迅速な対処が可能になります。パフォーマンス関連の問題は、サーバーの構成および負荷に基づいて検出されます。最も一般的なパフォーマンスの問題には、遅いレスポンス時間およびアプリケーションのクラッシュが含まれます。ミドルウェア診断アドバイザ(MDA)を使用して、値をWebLogic Management Packに追加します。WebLogicサーバーのMDAの使用の詳細を確認するには、第23.2項「ミドルウェア診断アドバイザを使用したパフォーマンスの問題の診断」を参照してください。
ミドルウェア診断アドバイザまたはMDAは、Enterprise Manager (EM) Cloud Controlでモニターされるミドルウェア・ターゲットとともにパフォーマンスの問題を診断するEnterprise Manager Cloud Control内で統合された診断モジュールです。現在、MDAは、Oracle WebLogic Server 10gリリース3 (10.3)以上でサポートされています。MDAは、JDBCデータソースおよびJMSキューをモニターします。
MDAでは、パフォーマンスの低下の原因であるアプリケーション・サーバー環境の基礎となる状態を簡単に識別できます。これらの基礎となる状態は、リクエストの遅いレスポンス、ハングしているサーバー、遅いサーバー、高いメモリー使用率、高いディスクI/Oなどのパフォーマンスの低下で表すことができます。
MDAは、ランタイム環境のJMSメッセージ消費時間などの要素のパフォーマンスを分析します。その要素のパフォーマンスが特定の制限を超えて低下すると、MDAは問題を診断して、根本的な原因を検出します。MDAによって検出された問題は「診断の結果」として提示されます。ただし、パフォーマンス全体に影響しない個々の問題は、MDAによって分離されません。
MDAは次に示す分野でパフォーマンスの問題を診断します。これらはそれぞれ、「ミドルウェア診断アドバイザの構成」ページに「結果のタイプ」として示されます(図23-1を参照)。
JDBCデータソース待機(JVMD必須)
JDBCデータソース接続の過剰な待機を調べます。
メッセージの配信が遅延しています(JVMD必須)
処理するメッセージの選択に要する時間が、指定した時間を超えているかどうかを調べます。これをチェックしないと、メッセージは予想より長い時間キューにとどまる可能性があります。
メッセージの処理に時間がかかっています(JVMD必須)
メッセージを受信するペースより処理するペースの方がずっと遅くなっているため、キューの処理に時間がかかっているかどうかを調べます。これをチェックしないと、キューが増大し、最終的にはメモリー不足エラーが発生する可能性があります。
ミドルウェア診断アドバイザは、次のように動作します。
MDAエンジンは、Oracle Management Service (OMS)の起動時に起動します。
MDAエンジンは、MDA分析タスクの実行を行います。
Enterprise Managerコマンドライン・インタフェースで次のコマンドを実行して、MDAを有効にします。
emcli update_mda_properties -props="MDA_AUTO_ENABLE:1"
注意: MDAはデフォルトではEnterprise Manager Cloud Controlで有効になっていません。この手順はMDAを有効にするために必要です。この手順を実行する前にターゲットがMDAに追加されていた場合、このコマンドを実行してそれらを明示的に有効にすることができます。
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Enterprise Manager収集対象メトリック・リポジトリ・データおよびJVMDエージェント収集対象リポジトリ・データは、MDAによってアクセスされます。
MDAエンジンは、適用可能なすべてのターゲットでスケジュールどおりに各結果タイプの分析を実行します。たとえば、「JDBCデータソース待機結果」について1時間に1回。
注意: ミドルウェア・ターゲットの状態が「ブラックアウト」または「ブラウンアウト」の場合、データはそのターゲットについて処理されません。したがって、そのようなターゲットについてスケジュール設定されているすべての分析はスキップされます。 |
分析時に、問題が発生しているかどうか、および結果がリポジトリに格納されているかどうかを確認するためのルールが適用されます。
結果は、ミドルウェア診断アドバイザ・ページに表示されます。
ミドルウェア診断アドバイザ(MDA)を使用したパフォーマンスの問題の診断を開始する前に、次の前提条件を満たしていることを確認します。
WebLogic ServerがEnterprise Managerでターゲットとして検出されます。
JVMDマネージャが構成されており、JVMDエージェントがターゲット・サーバーにデプロイされています。
ターゲットの構成収集を強制することをお薦めします。
ターゲットの構成収集を強制するには、次の手順を実行します。
ターゲットのメニューから、「構成」、「最新収集」の順に選択します。
「リフレッシュ」をクリックします。
ミドルウェア診断アドバイザ(MDA)には、新規ターゲットをチェックするために1時間ごとに実行される自動有効化ジョブがあります。ただし、コマンドemcli update_mda_properties -props="MDA_AUTO_ENABLE:1"
を実行しないかぎり、デフォルトではこれらのジョブにとってMDA分析は有効になりません。コマンドが正常に実行され、前提条件(第23.4項「ミドルウェア診断アドバイザの構成の前提条件」)が満たされる場合、ジョブを次に実行する際に、ターゲットに対してMDA分析が自動的に有効になります。ただし、新しく検出されたミドルウェア・ターゲットのMDA分析をただちに有効にするには、次の手順に従います。
Enterprise Managerのホームページで、「ターゲット」メニューから「ミドルウェア」を選択します。
ミドルウェア・ターゲットのリストから、新しく検出されたターゲット・ドメイン・リンクをクリックします。
ターゲット・ドメインのホームページで、ターゲット・メニューから、「診断」、「ミドルウェア診断アドバイザの構成」の順に選択します。
「登録済結果タイプ」セクションで、「ヘルス・チェック」をクリックします。
ヘルス・チェックが実行されます。この場合、MDAのヘルス・チェックの実行に加えて、Enterprise Managerで追加された新しいミドルウェア・ターゲットがMDAによって検出され、適用可能なすべての結果タイプについて有効化されます。
EM CLI動詞emcli update_mda_properties -props="MDA_AUTO_ENABLE:1"
を使用してMDA_AUTO_ENABLE
プロパティが1 (有効)に設定された後では、EMで検出される新しいWLSターゲットはデフォルトで有効です。ただし、EMインスタンスによって管理されるすべてのWLSサーバーについて有効にしたくない場合、MDA_AUTO_ENABLE
を0 (無効)に設定し、UI(この後の手順を実行)またはEM CLIのコマンドemcli enable_mda_finding_types_for_targets -finding_types="finding_type_name"-targets="target_name:target_type"を使用して、特定のターゲットについて個別に有効化することができます。
MDAを手動で有効化または無効化するには、次の手順に従います。
Enterprise Managerのホームページで、「ターゲット」メニューから「ミドルウェア」を選択します。
「ミドルウェアの機能」メニューから、「ミドルウェア診断アドバイザの構成」を選択します。
ミドルウェア診断アドバイザの構成ページの「登録済結果タイプ」セクションで、「結果のタイプ」の1つを選択します。
「ターゲット」セクションで、MDAを有効にするターゲットを選択し、「有効化」をクリックします。図23-1を参照してください。
注意: ターゲットはMDAによって検出されないかぎり、ターゲット・リストに表示されません。ターゲットをMDAで検出して有効化するには、第23.5項「ミドルウェア診断アドバイザの構成」を参照してください。 |
MDAは使用状況に応じて設定できます。MDAを設定するには、次の手順に従います。
「設定」メニューから、ミドルウェア管理、「ミドルウェア診断アドバイザ」の順に選択します。
ミドルウェア診断アドバイザ設定ページで、次のことを行うことができます。
すべてのMDA分析ジョブをスキップする場合は、「分析ジョブの構成」セクションで、「MDAを有効化したすべてのサーバーで分析の実行をスキップ」を選択します。
「パージ・ポリシー」セクションで、「より古いデータをパージ」チェック・ボックスを選択して、パージの有効化を選択できます。
データをパージする際に優先される頻度を設定するには、データを保持しておく日数をテキスト・ボックスに入力します。リポジトリからデータをパージする、24時間ごとに実行されるMDAジョブが存在します。
注意: これはグローバル設定であるため、すべてのターゲットおよびすべてのユーザーに適用されます。 |
「検出しきい値の構成」セクションでは、「違反割合」を調整して、この値を超えると違反として検出されるというしきい値または制限(%)を設定します。デフォルト値は10%です。
注意: この設定はJMSとJDBCの結果にのみ適用できます。 |
この値を超えると取得したすべてのメッセージが違反とみなされる待機時間(分)を設定するには、「JMS待機時間」を調整します。デフォルト値は1分です。
注意: この設定はJMS待機時間の検出にのみ適用できます。 |
「適用」をクリックします。
図23-2はミドルウェア診断アドバイザ設定ページです。
注意: また、EM CLIコマンドを使用してMDAを構成することもできます。詳細は、Oracle Enterprise Managerコマンドライン・インタフェースを参照してください。 |
一部またはすべてのターゲットでミドルウェア診断アドバイザ(MDA)を無効にすることによって、MDAの範囲を制限できます。無効にすると、無効にしたターゲットの分析の実行はスケジュールされません。ターゲットは必要なときに有効にすることもできます。
ターゲットのMDA分析を無効にするには、次の手順に従います。
Enterprise Managerのホームページで、「ターゲット」メニューから「ミドルウェア」を選択します。
「ミドルウェアの機能」メニューから、「ミドルウェア診断アドバイザの構成」を選択します。
ミドルウェア診断アドバイザの構成ページの「登録済結果タイプ」セクションで、「結果のタイプ」の1つを選択します。
「ターゲット」セクションで、MDAを無効にするターゲットを選択し、「無効化」をクリックします。
ターゲットのMDA分析を再度有効にするには、第23.6項「ターゲットのミドルウェア診断アドバイザの有効化」を参照してください。
MDAの範囲を制限する方法の詳細は、『Oracle Enterprise Managerコマンドライン・インタフェース』ガイドを参照してください。
MDAを使用したパフォーマンスの問題を表示および診断するには、次の手順に従います。
ターゲットのホームページにナビゲートします。
注意: ターゲットは、Oracle WebLogicドメイン、Oracle WebLogicクラスタまたはOracle WebLogic Serverのいずれかになります。サーバーのみの結果を表示するには、Oracle WebLogic Serverホームページに移動します。それらのすべてのターゲットの結果を表示するには、ドメインまたはクラスタのホームページに移動します。 |
ターゲット固有のメニューから、「診断」、「ミドルウェア診断アドバイザ」の順に選択します。
ミドルウェア診断アドバイザ・ページで、結果が記録された時間に対してマークされた結果の「時系列」セクションを表示します。
ミドルウェア診断アドバイザのページの例は、図23-3を参照してください。
注意: 履歴データを表示するには、「データの表示」ドロップダウン・ボックスで設定を調整します。 |
結果のリンクの横にある「クイック・ビュー」アイコンをクリックすると、結果の詳細をすぐに確認できます。
結果の詳細(ある場合)を表示するには、「時系列」セクションの結果リンクをクリックします。
「ミドルウェア診断アドバイザ結果詳細」ページでは、結果の詳細、および推奨される回避策が提供されます。次の詳細が表示されます。
結果
ミドルウェア・ドメインの診断結果。
For example: High number of messages reprocessed due to Transaction timeout.
説明 - ターゲット・タイプ、ターゲットおよび分析時間
結果に関する説明および詳細です。
分析
ルール
結果があるかどうかを判断するために、収集値に適用されるルール。
実行データ
分析中に収集された値。
推奨
アクション
検出された問題に関する解決策またはヒント。
論理
推奨アクションに適用される理由。
グラフ
「グラフ」セクションには、結果に関連するグラフがあります。
MDAエンジンは、適用可能なすべてのターゲットでスケジュールどおりに各結果タイプの分析を実行します。スケジュールされていないオンデマンドMDA分析をターゲットに対して実行することもできます。これを行うには、次の手順を実行します。
Enterprise Managerのホームページで、「ターゲット」メニューから「ミドルウェア」を選択します。
ミドルウェア・ターゲットのリストでターゲット・ドメイン・リンクをクリックします。
ターゲット・ドメインのホームページで、ターゲット・メニューから、「診断」、「ミドルウェア診断アドバイザの構成」の順に選択します。
「ミドルウェア診断アドバイザの構成」ページで、「登録済結果タイプ」セクションから結果タイプを選択すると、「ターゲット」セクションに該当するターゲットがリスト表示されます。
いずれか1つのターゲットを選択すると、そのターゲットに対して実行された直前の10件の分析が「分析実行」に表示されます。
注意: 10個の分析実行をすべて表示するには、結果のある分析実行のみ表示チェック・ボックスの選択が解除されていることを確認します。 |
「MDA分析の実行」をクリックすると、すぐにMDA分析が実行されます。
注意: MDAでは、ターゲットがブラックアウトまたはブラウンアウトの状態の場合でも分析を実行します。 |
MDAに関連する問題を解決するには、次の表に記載されている手順に従います。
表23-1 ミドルウェア診断アドバイザのトラブルシューティングのヒント
ヒント | 手順 |
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ターゲットで指定した結果タイプでMDAが有効になっていることを確認します。 |
ステータスが無効の場合、ターゲットに指定した結果タイプでMDAを有効にします。その他のオプションは、Oracle Enterprise Managerコマンドライン・インタフェースを参照してください。 |
MDA自動有効化ジョブが適切に実行されていることを確認します。 |
表に表示されるすべてのジョブを表示します。スキップされたジョブまたは失敗したジョブがない場合、自動有効化ジョブは想定どおりに実行されていることを示します。 |
MDA分析ジョブが適切に実行されていることを確認します。 |
表に表示されるすべてのジョブを表示します。スキップされたジョブまたは失敗したジョブがない場合、分析ジョブは想定どおりに実行されていることを示します。 |
MDAエンジンが正常に実行されていることを確認します。 |
MDAエンジンのステータスをチェックするコマンドについては、『Oracle Enterprise Managerコマンドライン・インタフェース』を参照してください。 |