1 概要

このドキュメントでは、ハードウェア障害や不適切な構成、人為的ミス、施設や機材の物理的な損傷などが原因で、Oracle Hierarchical Storage Manager and StorageTek QFS Software、ファイル、およびファイルシステムが消失または破損したときに実施すべき回復ステップについて概説します。適切に構成された Oracle HSM ファイルシステムは堅牢です。しかし、回復作業で必要になるステップと作業の成功率は、どれだけの準備を行なってきたかに左右されます。そのため、ここではまず回復プロセスの概要から説明します。次に、Oracle がお勧めしているデータおよびファイルシステムの保護方法について考察します。最後に、準備状況と現在使用可能なリソースに基づいて、お客様が利用できる回復ステップの概略を示します。

障害および回復のシナリオ

ファイルシステムの障害範囲とどのような回復アクションが必要になるかは、根底にある問題の性質によって決まります。例:

  • サーバーホストで障害が発生した場合、Oracle HSM ソフトウェアとファイルシステム構成が消失することがあり、ファイルシステムのデータやメタデータが完全な状態で残っていても、構成情報が復元されるまでそれらにアクセスできません。

    根底にあるハードウェア問題を解決しオペレーティングシステムを復元したら、ソフトウェアを再インストールしてバックアップコピーから構成ファイルを復元します。このような状況では、第3章 Oracle HSM 構成の復元の手順に従います。

  • 管理者が 1 つ以上の構成ファイル、ライブラリカタログ、スクリプト、または crontab エントリを誤って削除したり、破損させたりした場合、1 つ以上のファイルシステムが一部またはすべてのソフトウェア機能とともに失われる可能性があります。

    構成ファイルをバックアップコピーから復元します。第3章 Oracle HSM 構成の復元に示す手順に従います。

  • スタンドアロン (非アーカイブ) QFS ファイルシステム内のデータ用にディスクキャッシュを提供するディスクまたは RAID グループで障害が発生した場合、ディスクキャッシュ内のファイルがすべて失われます。

    ハードウェアの問題に対処したら、失われたファイルを QFS バックアップコピーから復元します。回復ポイントファイルを使用したファイルの回復を参照してください。

  • アーカイブファイルシステム内のデータ用にディスクキャッシュを提供するディスクまたは RAID グループで障害が発生した場合、ディスクキャッシュ内のファイルがすべて失われます。

    ハードウェアの問題に対処したら、アーカイブコピーまたは Oracle HSM バックアップファイルからファイルを復元します。回復ポイントファイルを使用したファイルの回復および ログエントリを使用したファイルの回復を参照してください。

  • ファイルシステムのメタデータを格納するディスクに障害が発生した場合、ファイルシステムは失われ、データにすぐにアクセスできる状態でなくなります。

    ハードウェアの問題に対処したら、バックアップファイルからメタデータを復元します。アーカイブファイルシステムのメタデータがバックアップされなかった場合は、そのメタデータをアーカイバログファイルおよびメディア移行ログファイル (存在する場合) のバックアップコピーから再構築できます。第5章 紛失および破損したファイルの回復を参照してください。

  • 管理者が誤って Oracle HSM ファイルシステムをホストしているディスクパーティションをフォーマットしたり、既存の Oracle HSM パーティションに対して sammkfs コマンドを発行したりした場合、ファイルおよびメタデータはすべて失われます。

    メタデータはバックアップファイルから復元するか、またはアーカイブファイルシステムのアーカイバログおよびメディア移行ログファイル (存在する場合) から再構築します。データはアーカイブメディアまたはバックアップファイルから復元できます。第5章 紛失および破損したファイルの回復を参照してください。

推奨される準備

『Oracle Hierarchical Storage Manager and StorageTek QFS インストールおよび構成ガイド』で、Oracle は次に示す構成、ファイルシステム、およびデータのバックアップ手順を初期構成中に行うように推奨しています。

  • 重要なデータを Oracle HSM アーカイブファイルシステムに格納します。

    ファイルデータのコピーを少なくとも 2 つアーカイブします。少なくとも 1 つのコピーを、磁気テープなどのリムーバブルメディアにアーカイブします。

    可能であれば、アーカイブファイルシステムのディスクキャッシュと物理的なデバイスを共有していない、独立したファイルシステムにディスクアーカイブを構成します。

  • 冗長性が高いミラー化されたストレージに、ファイルシステムのメタデータを格納します。

  • 回復ポイントファイルを含む Oracle HSM ファイルシステムを定期的にバックアップします。

    ファイルまたはファイルシステム全体を復元できるように、回復ポイントファイルには、ファイルシステムのメタデータおよびオプションでデータが格納されます。

    Oracle Hierarchical Storage Manager software がインストールされている場合は、samfsdump コマンドを実行して回復ポイントファイルを作成します。QFS ファイルシステムソフトウェアのみがインストールされている場合は、qfsdump コマンドを使用します。dump コマンドは、コマンド行または Oracle HSM Manager のグラフィカルユーザーインタフェースから実行できます。

    どちらかのコマンドを単独で使用すると、メタデータがバックアップされます。どちらかのコマンドを -U オプションを付けて使用すると、データおよびメタデータがバックアップされます。-U オプションは、主に、リムーバブルメディアにアーカイブされていないファイルシステムを保護する際に役立ちます。

  • Oracle HSM メタデータ回復ポイントファイルが自動保存されるようホストを構成します。Solaris crontab ファイルにエントリを作成するか、Oracle HSM Manager のスケジューリング機能を使用します。

  • Oracle HSM アーカイバログファイルおよびメディア移行ログファイル (存在する場合) を自動的に保存するようにホストを構成します。Solaris crontab ファイルにエントリを作成します。

    ログファイルには、Oracle Hierarchical Storage Manager ソフトウェアによってアーカイブされるか、または新しいメディアに移行されるファイルごとに、ファイルシステム内のファイルの名前と場所 (パス)、コピーを保持するアーカイブ (tar) ファイルの名前、アーカイブファイルを保持するリムーバブルメディアボリューム、およびメディア上のアーカイブファイルの位置が記録されます。

  • 構成ファイル、crontab エントリ、およびカスタムファイルシステム管理スクリプト (存在する場合) のバックアップコピーを保存します。

  • Oracle HSM 回復情報用にセキュアなストレージ場所を選択します。

    Oracle HSM ファイルシステムのホストにマウントできる独立したファイルシステムを選択します。

    選択したファイルシステムが、物理デバイス、論理ボリューム、パーティション、または LUN をアーカイブファイルシステムと共有しないようにしてください。保護対象のファイルシステムに障害回復リソースを格納しないでください。