次の項では、Oracle SNMPエージェント・インテグレータのコンポーネントを、他のSNMPエージェントとともに使用する方法について説明します。
複数のSNMPエージェントで使用するOracle SNMPエージェント・インテグレータの構成
SNMPエージェントとして開始(つまり
-sオプションを指定して開始)し、Oracle SNMPエージェント・インテグレータの管理下で実行するOracle SNMPエージェントのことを
非SMUXピア・エージェントと呼びます。非SMUXピア・エージェントは、Oracle SNMPエージェント・インテグレータよりも前に開始する必要があります。
管理対象ノードで実行する各非SMUXピア・エージェントのOracle SNMPエージェント
beamgr.conf構成ファイルには、1つまたは複数の
NON_SMUX_PEERエントリが含まれていなければなりません。
NON_SMUX_PEERエントリの構文については、
8-1ページの「構成ファイル」を参照してください。
注意:
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「非SMUXピア・エージェント」と「ピアSNMPエージェント」はまったく同じ意味です。非SMUXピア・エージェント(ピアSNMPエージェント)は、Oracle SNMPエージェント・インテグレータの管理下で動作するSNMPエージェントです。
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各
NON_SMUX_PEERエントリには、Oracle SNMPエージェント・インテグレータが非SMUXピア・エージェントとの通信に使用するポートのリストを記述します。エージェントを開始する際には、
beamgr.confファイルの
NON_SMUX_PEERエントリで割り当てられているポートをリスニングするようにエージェントを構成しておく必要があります。
インテグレータによる管理対象オブジェクトへのアクセス
非SMUXピア・エージェントの各
NON_SMUX_PEERエントリには、そのエージェントが担当するOIDツリーのブランチのリストを記述します。OIDツリーの特定のブランチをエージェントAが担当するように記述した場合、そのブランチ内のオブジェクトに対する管理リクエストは、Oracle SNMPエージェント・インテグレータからエージェントAに渡されます。
NON_SMUX_PEER 2001 snmp .1.3.6.1.2.1.1,ro
NON_SMUX_PEER 2002 squid .1.3.6.1.4.1.141 .1.3.6.1.4.1.145
NON_SMUX_PEER 161 * .1.3.6.1.4.1.140 .1.3.6.1.4.1.145
1つ目のエントリでは、Oracle SNMPエージェント・インテグレータがSNMPエージェントをポート2001で探すように指定されています。このSNMPエージェントに対するOracle SNMPエージェント・インテグレータからのすべてのリクエストでは、コミュニティとして
snmpが使用されます。このエージェントは、サブツリー
.1.3.6.1.2.1.1をサポートし、読取り専用コマンドに使用できます。
2つ目のエントリでは、Oracle SNMPエージェント・インテグレータがSNMPエージェントをUDPポート2002で探すように指定されています。このSNMPエージェントに対するOracle SNMPエージェント・インテグレータからのすべてのリクエストでは、コミュニティとして
squidが使用されます。このエージェントは、サブツリー
.1.3.6.1.4.1.141および
.1.3.6.1.4.1.145をサポートします。アクセス・オプションは指定されていないので、どちらのサブツリーもデフォルトの「読取り/書込み」に設定されます。
3つ目のエントリには、UDPポート161のエージェントが記述されています。アスタリスクは、Oracle SNMPエージェント・インテグレータが管理ステーションから提供されるコミュニティ文字列を使用することを示します。このエージェントは、2つのサブツリー
.1.3.6.1.4.1.140および
.1.3.6.1.4.1.145をサポートします。サブツリーのエントリにはアクセス情報が記述されていないので、デフォルトの「読取り/書込み」に設定されます。
注意:
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SMUXプロトコルでは、SMUXサブエージェントがマスター・エージェントでサポートするOIDツリーのセクションが自動的に登録されます。したがって、SMUXサブエージェントからアクセス可能なOIDツリーのセクションを指定するために、特定の構成ファイル・エントリを追加する必要はありません。ただし、このデフォルト動作は、構成ファイルの OID_CLASSエントリを使用してオーバーライドできます。 OID_CLASSエントリの詳細は、 8-1ページの「構成ファイル」を参照してください。
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2つのエージェントAとBが、担当するOIDツリーの一部分で競合している場合は、それらの担当を定義する
NON_SMUX_PEERエントリで2つのエージェントに明確な優先度を割り当てる必要があります。これにより、Oracle SNMPエージェント・インテグレータは、担当が重複する領域内のオブジェクトに対するリクエストを、優先度番号が最も小さいエージェントに転送します。番号が小さいほど、優先度は高くなります。例:
NON_SMUX_PEER 2008 * .1.3.6.1.2.1.4,rw,8
NON_SMUX_PEER 2009 * .1.3.6.1.2.1.4,ro,5
この例では、UDPポート2008とUDPポート2009のエージェントが、どちらもMIB-II
ipグループをサポートしています。つまり、両方のエージェントが、
ipAddrTable (オブジェクト
.1.3.6.1.2.1.4.20)をサポートしていることになります。ポート2009のエージェントの方が優先度が高い(5は8よりも優先度が高い)ため、Oracle SNMPエージェント・インテグレータは
ipAddrTableに対する管理リクエストを処理するためにポート2009のエージェントを呼び出します。ここで、このエントリに読取り専用アクセスが指定されている点に注意してください。もう1つのエントリには読取り/書込みアクセスが指定されていますが、優先度が低いため、
ipAddrTableに対するリクエストにおいてこのエントリは完全に無視されます。
Oracle SNMPエージェント・インテグレータは、管理ステーションのプロキシ・エージェントとして使用できます。プロキシ・エージェントの役割としては、複数のマシン上のSNMPエージェントのポーリング、ユーザー定義の条件に応じたエンタープライズ固有のトラップの送信、などがあります。これは、単一の分散システムのリソースが多数のマシンに分散している場合に便利です。
Oracle SNMPエージェント・インテグレータからは、これら複数のエージェントで管理されるリソースが単一のマシン上にあるかのように認識されます。Oracle SNMPエージェント・インテグレータのポーリング機能については、
7-1ページの「Oracle SNMPエージェント・インテグレータを使用したポーリング」を参照してください。複数のマシン上のエージェントのポーリングでは、Oracle SNMPエージェントの
beamgr.conf構成ファイルで、それらのSNMPエージェントの
NON_SMUX_PEERエントリが定義されていることが前提となります。次に示す例では、単一のサブネット内のSNMPエージェントとの通信において、Oracle SNMPエージェント・インテグレータがプロキシ・エージェントとして使用されています。
NON_SMUX_PEER 206.189.39.86.161 seahorse .1.3.6.1.2.1.4,rw,8
NON_SMUX_PEER 206.189.39.204.161 * \
.1.3.6.1.2.1.4.20,ro,5 .1.3.6.1.2.1.2
この例では、マシン
206.189.39.86上のSNMPエージェントが、ポート161でOracle SNMPエージェント・インテグレータと通信します。このエージェントは、コミュニティ文字列
seahorseを使用し、MIB-II
ipグループを担当します。マシン
206.189.39.204上のSNMPエージェントも、ポート161でOracle SNMPエージェント・インテグレータと通信します。このエージェントは、SNMPマネージャから渡されたコミュニティ文字列を使用します。
IPアドレス
206.189.39.204のマシンは、SNMPインタフェース・グループ(
.1.3.6.1.2.1.2)と
ipAddrTable (
.1.3.6.1.2.1.4.20)を担当します。IPアドレス
206.189.39.86のマシンは、
ipAddrTableを含むMIB-II
ipグループを担当します。これらのエージェントは物理的に別々のネットワーク・ノード上にあっても、インテグレータから見ると2つのエージェントの担当はなお競合しており、これは、インテグレータの構成ファイルに指定されているエージェントが管理するすべてのリソースは、インテグレータから見ると単一のマシン上にあるかのように認識されるためです。したがって、このOracle SNMPエージェント・インテグレータは、
ipAddrTableに対するリクエストを、
206.189.39.86のマシンよりも優先順位番号が小さい
206.189.39.204のマシンにのみ転送します。ただし、
ipグループとインタフェース・グループに対するその他のリクエストは、すべて
206.189.39.86に転送されます。
Oracle SNMPエージェント・インテグレータのこの機能は、分散システムの様々な機能が、それぞれ独自のSNMPエージェントが設定された複数のマシンに分かれている場合には特に便利です。様々な管理対象リソースが個別のノードに配置されていれば、OIDツリーのブランチの重複に関する制約はそれほど重大な問題ではありません。同じタイプの管理対象リソースが複数のマシンに配置されている場合は、複数のOracle SNMPエージェント・インテグレータを使用してそれらのリソースを管理できます。