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Oracle® Fusion Middleware Upgrade Assistantによるアップグレード
12c (12.2.1.1)
E77370-01
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3 アップグレードのトラブルシューティング

この項では、Upgrade Assistantを使用してOracle Fusion Middlewareデプロイメントをこのリリースにアップグレードする際に発生する可能性のある一般的な問題を解決する方法について説明します。

この項の内容は次のとおりです。

3.1 アップグレードのトラブルシューティング

Upgrade Assistantの実行時にエラーが発生した場合は、次の手順を実行して問題のトラブルシューティングを行ってください。

調査フェーズ中にエラーが発生し、まだコンポーネントやスキーマがアップグレードされていない場合は、次のコマンドを実行して準備状況チェックを完全に実行してください。準備状況チェックによって実行されるチェックのタイプの方が、アップグレードの調査フェーズよりも徹底したチェックが行われます。調査フェーズは読取り専用であり、再実行できます。

UNIXオペレーティング・マシンの場合: ./ua -readiness

Windowsオペレーティング・マシンの場合: ua.bat -readiness

ただし、アップグレード・フェーズでエラーが発生した場合、バックアップ・コピーから環境をリストアし、エラーを修正して、アップグレード・プロセスを最初から再開する必要があります。

修正処理は、エラーがどのフェーズで発生したかによって異なります。

  1. Upgrade Assistantログ・ファイルを検索し、テキスト・エディタで開きます。

    ログ・ファイルの場所については、「ログ・ファイルの確認」を参照してください。

  2. Upgrade Assistant jarファイルの正しいバージョンを確認するには、次のコマンドを実行します。

    unzip -p ua.jar META-INF/MANIFEST.MF

    このコマンドを実行できるのは、ディレクトリをjlibディレクトリに変更した後のみです。

    cd ORACLE_HOME/oracle_common/upgrade/jlib

    注意:

    unzip -p ua.jar META-INF/MANIFEST.MFコマンドの出力により、Upgrade Assistantの構築に使用された開発ラベルが識別され、この情報により、実行されたUpgrade Assistantソフトウェアの日付とバージョンが識別されます。サービス・リクエストを発行する場合、この情報をOracleに提供する必要があります。
  3. UPGAST-00091などの番号で識別されるエラー・メッセージを検索します。
  4. Oracle Fusion Middlewareのエラー・メッセージ・ガイドでそのエラーを参照します。

    エラーについての説明には、エラーの原因およびそのエラーを解決するために実行する必要がある処置についての説明が含まれています。

  5. エラー・メッセージおよびエラー・メッセージの説明を検索できるかどうかに応じて、次の操作を実行します。
    • ログ・ファイルおよびエラー・メッセージに関する説明を確認することによってアップグレード時に発生した障害の解決方法を識別できる場合は、その解決方法を実行した後、Upgrade Assistantを再起動し、アップグレードを再度実行します。

      Upgrade Assistantを再実行しても、前回のアップグレード時に正常にアップグレードされたコンポーネントは影響を受けません。ただし、前回ユーティリティを実行した際に正常にアップグレードされなかったコンポーネントに対しては、Upgrade Assistantによってアップグレードが試行されます。

    • 説明されていないエラーまたはエラーの後に説明されている処置によって解決できないエラーについては、Oracleサポート・サービスに連絡してください。一部のエラーでは、バックアップからリポジトリをリストアし、問題を解決してアップグレードを再実行する必要があります。Oracleサポートでは、トラブルシューティングの目的で、UA.logファイルと、(存在する場合は)UA.outファイルの両方を必要とします。これらのファイルの抜粋ではなく、完全なログを提供してください。

3.2 ログ・ファイルの確認

Upgrade Assistantの実行時に障害が発生した場合、問題を診断して修正するためにログ・ファイルが必要になるため、ログ・ファイルは削除しないでください。Upgrade Assistantを実行中、ログ・ファイルの内容は、コマンドラインから別の-logLevelを指定することで変更できます。デフォルト値は-logLevel NOTIFICATIONです。-logDirパラメータを使用して、ログ・ファイルの場所を変更できます。-logLevel TRACEパラメータを使用してUpgrade Assistantを実行することにより、より詳細なロギング情報を取得できます。ただし、場合によっては、これによってログ・ファイルのサイズが非常に大きくなる可能性があります。

注意:

TRACEメッセージは、Upgrade Assistantログ・ファイル・ビューアに含まれていません。TRACEメッセージを表示するには、別のツールを選択して使用する必要があります

ヒント:

確認プロセスを容易にするには、「エラー」という語句を検索します。

ログ・ファイルのエラー・メッセージを理解するには、「Upgrade Assistantの一般的なエラーの解決方法」を参照してください。

ログ・ファイルは、次のデフォルトのディレクトリに格納されます。

UNIXオペレーティング・システムの場合:

ORACLE_HOME/oracle_common/upgrade/logs/ua<timestamp>.log

Windowsオペレーティング・システムの場合:

ORACLE_HOME\oracle_common\upgrade\logs\ua<timestamp>.log

一部のコンポーネントでは、ua<timestamp>.outという2番目のログ・ファイルが、同じ場所に作成されます。

timestampには、Upgrade Assistantが実行された実際の日時が反映されます。

特定のコンポーネントのデータベース・スキーマのアップグレードでは、シェル・プロセスで実行されたコマンドやPL/SQLスクリプトとして実行されたコマンドの画面出力を含む出力(.out)ファイルが存在することもあります。これらの出力ファイルは、同じデフォルトのディレクトリ内にあります。

このガイドの情報で解決できない、アップグレード時に発生した障害に関する質問や問題がある場合、ログ・ファイルを保存しておくことが重要です。サービス・リクエストを発行する必要がある場合、Upgrade Assistantの.logファイルおよび.outファイル(使用可能な場合)全体をサービス・リクエストとともにアップロードする必要があります。

3.3 調査時に発生した障害の調査

調査時の障害の原因を判別するには、次の手順を実行します。

  1. Upgrade Assistantダイアログ・ボックスまたはコマンドライン出力内の障害が発生したコンポーネントの名前を書き留めます。
  2. Upgrade Assistantログ・ファイルを開きます。

    ログ・ファイルの場所については、「ログ・ファイルの確認」を参照してください。

  3. ログ・ファイルで、Starting to examine component_name. というメッセージを検索します。

アップグレードを完了するには、問題を解決し、Upgrade Assistantを再度起動します。または、可能であれば、「戻る」をクリックして前の画面に戻り、必要な変更を加えます。

注意:

準備状況チェック機能を使用すると、調査フェーズよりはるかに詳細なレベルのチェックが実行されます。調査時に障害が発生した場合は、-readinessパラメータを使用してUpgrade Assistantを実行し、テストの障害がレポートに表示されないことを確認してください。

調査フェーズ中に検出された問題は、バックアップからリストアしなくても解決できます。ただし、システムの状態が変更されるような方法で調査エラーを解決しようとする場合は、別の時点のバックアップを作成し、このようなバックアップをすべて保持する必要があります。また、変更を行ったりアップグレード操作を試みる前に、システム全体をこの時点にリストアすることも必要です。ただし、アップグレード・フェーズ中に検出された問題を解決することはできません。アップグレード操作を試みる前に、アップグレード前の環境をバックアップから、ある時点までリストアする必要があります。部分的なアップグレード・システムでアップグレードの問題が後で発生した場合は、システム全体をリストアする必要があります。

3.4 アップグレード時に発生した障害の調査

アップグレード時の障害の原因を判別するには、次の手順を実行します。

  1. Upgrade Assistantダイアログ・ボックスまたはコマンドライン出力内の障害が発生したコンポーネントの名前を書き留めます。
  2. Upgradeログ・ファイルを開きます。

    ログ・ファイルの場所については、「ログ・ファイルの確認」を参照してください。

  3. Starting to upgrade component_name. というメッセージを検索します。

アップグレードを完了するには、アップグレード前のバックアップを使用して、アップグレード操作が試行されていない時点まで環境全体をリストアし、問題を解決して、Upgrade Assistantを再起動します。アップグレードを正常に(完全に)行うには、アップグレード・プロセスを最初から始める必要があります。

注意:

RMANを使用してすべてのデータベースをバックアップし、これらのバックアップからPoint-in-Timeリカバリを実行できる必要があります。ドメインのFusion Middlewareリポジトリが複数のOracle Databaseサーバーにわたる場合、これらの各バックアップからリストアする必要があります。

3.5 Upgrade Assistantの一般的なエラーの解決方法

Upgrade Assistantの実行時にエラーが発生した場合は、それらの原因となる状況を修正してから、アップグレードを再試行する必要があります。次の項では、発生する可能性のある一般的なエラーについて説明します。

この項では、最も一般的なアップグレード・エラーについて説明します。すべてのFusion Middlewareエラーのリストについては、『エラー・メッセージ』を参照してください。

3.5.1 ディスク領域が十分であるかどうかの確認

ディスク領域不足が原因でアップグレードに障害が発生した場合、バックアップからデータベース・サーバー環境を復元し、十分なディスク領域を追加するか、データベース・サーバーから不要なファイル(一時ファイルまたはトレース・ファイル)を削除して、アップグレードを再試行する必要があります。

注意: このクラスのエラーが原因でデータベース・スキーマのアップグレードに障害が発生すると、ディスク領域を追加するだけではアップグレードを再試行できません。スキーマが不整合な状態になり、「INVALID」としてマークされた可能性があります。バックアップから元のデータベースの状態を復元しないと、このエラーから復元できません。

次の例は、発生する可能性のあるディスク領域不足によるエラーを示しています。

ORA-01658: 表領域にセグメント用のINITIALエクステントを作成できません

原因: 既存のスキーマ表領域に、アップグレードを完了するための十分な領域がありません。

処置: 表領域に、アップグレードを正常に実行するための十分な空き(領域)を確保してください。既存のデータベース表領域に、より多くのデータファイルを追加することをお薦めします。そうしないと、アップグレードは失敗します。

ORA-01114: ファイル<ブロック番号>にブロックを書込み中にIOエラーが発生しました

原因: ファイルが保存されているデバイスが、オフラインになっている可能性があります。そのファイルが一時ファイルの場合、そのデバイスは領域不足である可能性があります。これは、一時ファイルのディスク領域が、ファイル作成時に割り当てられるとはかぎらないために発生する場合があります。

処置: デバイスへのアクセス権限を正しく設定するか、または不要なファイルを削除して、領域を解放してください。

ORA-09945: 監査証跡ファイルの初期化ができません。

原因: システムが、監査証跡として使用されるファイルへのヘッダー情報の書込みに失敗しました。監査ファイルを生成するためのaudit_trail_dest(監査証跡の生成先)のディスク領域が一杯です。

処置: 領域を解放してから操作を再試行してください。

3.5.2 スキーマのアップグレード時に発生するデータベース接続の問題の解決方法

Upgrade Assistantを使用してコンポーネント・スキーマをアップグレードするときに、データベースへの接続障害が発生した場合、SQL*Plusなどの別のツールを使用して、データベースへの接続を試行してください。これにより、データベースが稼働中でネットワークから使用できることを検証することで、問題のトラブルシューティングが可能になります。

3.5.3 DISPLAY環境変数の設定

GUIモードでUpgrade Assistantを実行する場合、DISPLAY変数を適切に設定しないと、次のようなエラーが発生する場合があります。

Xlib: connection to ":1.0" refused by server

Xlib: No protocol specified

原因: これらのエラーは、画面にGUIの表示を許可するDISPLAY変数が適切に設定されていないことを示しています。

措置: 使用するローカル・ワークステーションのシステム名またはIPアドレスにDISPLAY環境変数を設定して、Upgrade Assistantを再実行します。

DISPLAY変数を設定してもこれらのエラーが発生し続ける場合は、vncconfigなどの他のGUIツールの起動を試みてください。同じエラーが表示される場合は、DISPLAY環境変数が正しく設定されていない場合があります。

3.6 サポートされていないドメインのアップグレード試行

指定されたドメインをアップグレードできないことを示すエラーを受け取ったら、最初にドメインをサポート対象バージョンにアップグレードする必要があります。サポートされていないドメインでスキーマまたはドメイン構成をアップグレードしないでください。

3.7 障害が発生した後のUpgrade Assistantの再起動

Upgrade Assistantがアップグレード・フェーズで失敗するか、コンポーネントが部分的にしかアップグレードされない場合、それらの解決を試みてから次の手順を実行します。

  1. バックアップした11gまたは12c環境をリストアします。
  2. Upgrade AssistantをGUIモードまたはコマンドラインモードで起動します。

アップグレードに障害が繰り返し発生する場合は、より多くの情報がロギングされるよう、-logLevelTRACEに設定することを検討してください。これは、障害が発生したアップグレードのトラブルシューティングに役立ちますが、パフォーマンスの問題を避けるために、問題が解決された後は、必ず-logLevelNOTIFICATIONに再設定してください。