1 Oracle Database Gatewayのインストールの概要

Oracle Database Gatewayをインストールする前に、次の点を考慮する必要があります。

1.1 ゲートウェイのインストール構成

Oracle Database Gatewayは、次のいずれかの構成でインストールできます。

  • 既存のOracle Databaseと同じコンピュータの異なるOracleホームにインストール。

  • Oracle Databaseの存在しないシステムにインストール。

  • Oracle Databaseと同じコンピュータの同じOracleホーム・ディレクトリにインストール。この場合、Oracleデータベースとゲートウェイのリリース・レベルが同一である必要があります。

1.2 ゲートウェイのインストール方法

Oracle Database Gatewayのインストール方法は、次のとおりです。

1.2.1 対話型のインストール方法

Oracle Database Gatewayをインストールする際に対話型の方法を使用する場合、Oracle Universal Installerにより表示される一連の画面を使用して、必要な情報をすべて指定できます。

1.2.2 レスポンス・ファイルを使用した自動インストールによる方法

レスポンス・ファイルを作成してOracle Universal Installerの起動時にそのファイルを指定することで、Oracle Database Gatewayのインストール作業の一部または全部を自動化できます。自動インストールは、構成が類似している複数のシステムにインストールを実行する必要がある場合、またはソフトウェアをインストールするシステムにX Window Systemソフトウェアがインストールされていない場合に役立ちます。

レスポンス・ファイルを使用すると、必要な情報をすべて指定したかどうかによって、次のいずれかのモードでOracle Universal Installerを実行できます。

  • サイレント・モード

    必要なすべての情報が指定されたレスポンス・ファイルを使用すると、Oracle Universal Installerはサイレント・モードで実行されます。Oracle Universal Installerの画面は表示されません。

  • 抑止モード

    レスポンス・ファイルに必要な情報をすべて指定しない場合、Oracle Universal Installerは抑止モードで実行されます。Oracle Universal Installerにより、指定しなかった情報を求める画面のみが表示されます。

これらのモード、およびレスポンス・ファイルを使用したインストールの実行方法の詳細は、非対話型インストールでのレスポンス・ファイルの使用方法を参照してください。

1.3 インストールに関する考慮事項

次の各トピックで、この製品のインストール前に考慮する必要がある情報を参照してください。内容は次のとおりです。

1.3.1 リリース・ノート

製品をインストールする前に、その製品に関するリリース・ノートを参照してください。リリース・ノートは、Oracle Database 12cリリース2 (12.2)のインストール・メディアに収録されています。最新版のリリース・ノートは、次の場所にあるOracle Technology Network(OTN)のWebサイトから入手できます。

http://docs.oracle.com

1.3.2 ハードウェアおよびソフトウェアの動作保証

このマニュアルに記載されているプラットフォーム固有のハードウェア要件とソフトウェア要件は、このマニュアルの発行時点での最新情報です。このマニュアルの発行後に、新バージョンのプラットフォームおよびオペレーティング・システム・ソフトウェアが動作保証される可能性があります。このため、最新の動作保証されたハードウェア・プラットフォームおよびオペレーティング・システム・バージョンのリストは、My Oracle Support Webサイトの動作保証マトリクスを参照してください。My Oracle SupportのWebサイトは次のWebサイトで参照できます。

https://support.oracle.com/

1.3.3 複数のOracleホームのサポート

この製品では複数のOracleホームがサポートされています。つまり、このソフトウェアの今回のリリースまたは以前のリリースを、同じシステムの異なるOracleホーム・ディレクトリに複数回インストールできます。

1.3.3.1 既存のOracleインストール環境を含むシステムに対するソフトウェアのインストール

この製品は、新規のOracleホーム・ディレクトリにインストールする必要があります。あるリリースのOracle Database Gatewayの製品を別のリリースのOracleホーム・ディレクトリにインストールすることはできません。たとえば、既存のOracle 11gリリース2 (11.2)のOracleホーム・ディレクトリに12cリリース1 (12.1)のソフトウェアをインストールすることはできません。以前のOracleリリースのソフトウェアを含むOracleホーム・ディレクトリに今回のリリースをインストールしようとすると、インストールに失敗します。

このリリースは、別のOracleホーム・ディレクトリにインストールするかぎり、同じシステムに複数回インストールできます。

1.4 Oracle Database Gatewayのアップグレード

Oracle Database Gatewayではアップグレードはサポートされません。

1.5 インストール・ソフトウェアへのアクセス

Oracle Database Gatewayソフトウェアにアクセスするには、次のいずれかの方法を使用します。

1.5.1 OTN WebサイトからのOracleソフトウェアのダウンロード

インストール用アーカイブ・ファイルをダウンロードし、システムに解凍する手順は、次のとおりです。

1.5.1.1 OTNからのインストール用アーカイブ・ファイルのダウンロード

Oracle Technology Networkからインストール用アーカイブ・ファイルをダウンロードする手順は、次のとおりです。

  1. 任意のブラウザを使用して、Oracle Technology Networkのソフトウェア・ダウンロード・ページにアクセスします。
  2. インストールする製品のダウンロード・ページにナビゲートします。
  3. アーカイブ・ファイルの格納および展開用に、十分な空き領域のあるファイル・システムを選択します。

    一般的に、使用可能なドライブ領域の容量として、アーカイブ・ファイルのサイズの2倍以上が必要です。

  4. 手順3で選択したファイル・システムに、インストール・アーカイブ・ファイルを保存するためのディレクトリ(たとえば、gatewayなど)を作成します。
  5. 手順4で作成したディレクトリにインストール・アーカイブ・ファイルをダウンロードします。
  6. ダウンロードしたファイルのサイズが、Oracle Technology Network上の対応するファイルと一致することを確認します。
1.5.1.2 インストール・ファイルの解凍

インストール用アーカイブ・ファイルを解凍する手順は、次のとおりです。

  1. 必要に応じて、ダウンロードしたインストール・アーカイブ・ファイルを含むディレクトリに移動します。
  2. ダウンロードしたファイルの拡張子がzipの場合は、次のコマンドを使用してファイルの内容を解凍します。
    unzip file_name.zip
    

    ダウンロードしたファイルの拡張子がcpio.gzの場合は、次のコマンドを使用します。

    $ gunzip filename.cpio.gz
    

    このコマンドによって、次のような名前のファイルが作成されます。

    filename.cpio
    
  3. インストール・ファイルを解凍するには、次のようなコマンドを入力します。
    $ cpio -idmv < filename.cpio

    注意:

    cpioコマンドで使用する正しいオプションの詳細は、ダウンロード・ページを参照してください。

    一部のブラウザでは、ファイルのダウンロード中に解凍が行われますが、.gzファイル拡張子は残されます。前述の手順で不具合が生じた場合は、ファイルの.gz拡張子を削除して手順3を繰り返してください。

    このコマンドを使用すると、各ファイルに対してgatewaysという名前のサブディレクトリが作成されます。

1.5.2 Oracleソフトウェアのコピー

Oracle Database Gatewayをインストールする前に、ローカル・ディレクトリにソフトウェアをコピーできます。これにより、インストール・プロセスの実行が高速化します。

ローカル・ディレクトリにインストール・メディアの内容をコピーする手順は、次のとおりです。

  1. Oracle Database Gatewayソフトウェアを格納するディレクトリを作成します。
    $ mkdir gateway
    
  2. 手順1で作成したディレクトリに移動します。
    $ cd gateway
    
  3. 次の方法で内容を新しいディレクトリにコピーします。
    $ cp -R /directory_path gateway
    

    この例では、/directory_pathがインストール・メディアのマウント・ポイント・ディレクトリです。マウント・ポイント・ディレクトリは、/cdromです。

1.6 Oracle Universal Installerの実行

通常は、Oracle Universal Installerにより提供されるグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)を使用してゲートウェイをインストールします。ただし、GUIを使用せずに、Oracle Universal Installerを使用して非対話型インストールを実行することも可能です。

関連項目:

非対話型インストールとその他の拡張インストールの詳細は、非対話型インストールでのレスポンス・ファイルの使用方法を参照してください

次のようにインストーラを起動して、ソフトウェアをインストールします。

  1. Oracleソフトウェア所有者ユーザー(oracle)としてログインし、DISPLAY環境変数を設定します。
  2. インストーラを起動するには、次のコマンドを入力します。ここで、directory_pathはソフトウェアのディレクトリ・パスです。
    $ /directory_path/runInstaller
    
  3. 次のガイドラインに従ってインストールを完了します。
    • インストーラ・ウィンドウに表示される指示に従います。追加情報が必要な場合は、「ヘルプ」をクリックします。

    • root権限でスクリプトを実行するよう求めるプロンプトが表示されたら、rootユーザーとしてログインしている端末で次のようなコマンドを入力し、「続行」または「OK」をクリックします。

      # /script_path/script_name
      
    • ソフトウェアのインストール中またはリンク中にエラーが発生した場合、Oracle Database Gatewayのトラブルシューティングでトラブルシューティング情報を参照してください。

  4. インストールが完了したら、「終了」「はい」の順にクリックしてインストーラを終了します。

1.7 クラスタ環境でのインストールおよび構成

Oracle Database Gatewayは、既存のOracle Databaseホームにインストールすることも、すべてのノード上の別個のゲートウェイ・ホームにインストールすることもできます。Oracle OUIでは、Oracle Database Gatewayをすべてのノードか、選択したノードのいずれかにインストールできます。

Oracle Database Gatewayホームからリスナーを使用することはお薦めできません。かわりに、グリッド・ホームにリスナーを構成してください。クラスタの構成時には、グリッド・インフラストラクチャ・ホームから実行され、ノードの仮想IP (VIP)の指定ポート(デフォルトは1521)をリスニングするローカル・リスナーがデフォルトで作成されます。

1.7.1 単一クライアント・アクセス名(SCAN)のサポート

Oracle Database 11gリリース2以上のクライアントは、単一クライアント・アクセス名(SCAN)のサポートを利用してデータベースに接続されます。Oracle RACに接続しているクライアントには、クラスタのノードを追加または削除しても、クラスタの存続期間中は変更されない単一の名前が提供されます。SCANによって接続しているクライアントでは、Thin JDBC URLやEZConnectなどの単一の接続文字列を使用でき、ロード・バランシングおよびクライアントの接続フェイルオーバーが実現されます。

3つのSCANリスナー(仮想IPアドレスごとに1つ)に加え、データベース・インスタンスをホストするノードごとにノード・リスナーが存在します。2層のリスナー(SCANリスナーとノード・リスナー)を使用する目的は、Oracle RACでリスナーの役割を2つに分けて、一方を接続のロード・バランシングに使用し、もう一方をセッションの生成および継承に使用することです。SCANリスナーは、GNS (グリッド・ネーミング・サービス)によってランダムに分散されたクライアントからの接続リクエストを受け取ります。その後、SCANリスナーは、ロード・バランシング・メトリックを使用して、リクエストされたサービスを提供するのに最も適したノード上のノード・リスナーにリクエストをインテリジェントにリダイレクトします。データベース・インスタンスは、SCANリスナーにリモート・リスナーとして登録され、ノード・リスナーにローカル・リスナーとして登録されます。

Oracle Database Gatewayは、データベースがゲートウエイに接続するための単一名であるSCANを使用して構成できません。この理由は2つあります。ゲートウェイはリモート・リスナーとは連携しません。REMOTE_LISTENERを指定してSCANリスナーに設定できるデータベースとは異なり、ゲートウェイにはそのサポートがありません。このことは、SCANリスナーが接続をノード・リスナーにルーティングするために不可欠です。2つ目に、ゲートウェイは、クラスタに登録されず、クラスタ・リソースとして管理できないためです。

ゲートウェイにとって、Oracle DatabaseとOracle Database Gatewayが同じクラスタで実行されている場合、SCANはそれほど有用ではありません。Oracle Database Gatewayは、データベースがインストールされている各ノードにインストールして構成できます。また、同じノード上で実行されているゲートウェイに各インスタンスが接続されるようにデータベースを構成することもできます。

1.7.2 ローカル・リスナー

Oracle Database Gatewayサービスは、ローカル・リスナーを使用して構成する必要があります。ローカル・リスナーはゲートウェイ・プロセスを生成するリスナーです。つまり、生成対象のゲートウェイ・プロセスがリスナーに認識されている必要があります。グリッド・インフラストラクチャ・ホームでlistener.oraを使用して、ゲートウェイSIDを追加します。そのノード上でデータベース用のSCANリスナーがすでに実行されている場合は、同じlistener.oraファイルを使用してローカル・リスナーを構成できます。

1.7.3 ロード・バランシングおよび透過的アプリケーション・フェイルオーバー(TAF)

Oracle Database Gateway自体では、クライアント側(データベース・ホームのtnsnamesを使用)とサーバー側(SCANを使用)のいずれのロード・バランシングもサポートされていません。現時点ではゲートウェイ・プロセスは単一セッション専用となっているため、ロード・バランシングをゲートウェイ・レベルで適用することはできません。ただし、各データベース・インスタンスにそれぞれ異なるOracle Database Gatewayインスタンスを関連付けることによって、ノード・レベルのロード・バランシングを実現できます。つまり、データベースでのロード・バランシングで、ロード量が最も少ないノードが選択されることになります。

Oracle Database Gatewayでは接続フェイルオーバー機能がサポートされています。ゲートウェイに対してクライアント側接続ロード・バランシングを構成した場合、フェイルオーバーと同じように機能します。

データベース・フェイルオーバーが発生するたびに、つまり、あるデータベース・インスタンスから(新しいノード上の)別のデータベース・インスタンスにセッションが移行されるたびに、移行されたセッションでは、新しいノードのゲートウェイ・インスタンスが使用されます。

デフォルトでは、Oracle Call Interface(OCI)アプリケーションに対して、3種類のOracle Netフェイルオーバー機能を利用できます。

  • session: セッションをフェイルオーバーに設定します。ユーザーの接続が消失した場合、バックアップ上にそのユーザーの新規セッションが自動的に作成されます。このフェイルオーバーでは、検索操作はリカバリされません。

  • select: 障害発生後もユーザーはカーソルを継続してオープンし、フェッチできるようにします。ただしこのモードでは、通常の検索操作を行うクライアント側にオーバーヘッドが生じます。

  • none: これがデフォルトです。フェイルオーバー機能は使用されません。フェイルオーバーが実行されないように、明示的に指定することもできます。

フェイルオーバーを機能させるためには、データベース・ホームのtnsnames.oraに複数のリスナー・アドレスを構成する必要があります。

接続後にインスタンスに障害が発生した場合は、TAFアプリケーションが他のノードのリスナーにフェイルオーバーし、実行中のSELECT文があればその文を保持します。

次のtnsnames.oraの例では、ロード・バランシングをフェイルオーバーの目的でのみ使用しており、データベースは、gateway1-server上のゲートウェイが使用不可になった場合にのみ、ホストgateway2-server上のゲートウェイに接続されます。

dg4sybs.us.example.com=
 (DESCRIPTION=
  (LOAD_BALANCE=on) 
  (FAILOVER=on) 
  (ADDRESS=
       (PROTOCOL=tcp)  
       (HOST=gateway1-server)  
       (PORT=1521)) 
  (ADDRESS=
       (PROTOCOL=tcp)  
       (HOST=gateway2-server)  
       (PORT=1521)) 
  (CONNECT_DATA=
     (SERVICE_NAME=dg4sybs.us.example.com) (HS=OK)
     (FAILOVER_MODE=
       (TYPE=select) 
       (METHOD=basic))))