『Oracle Spatial and Graph開発者ガイド』のこのリリースでの変更点

この章の内容は次のとおりです。

トピック:

Oracle Database 12cリリース2 (12.2)での変更点

次に、Oracle Database 12cリリース2 (12.2)の『Oracle Spatial and Graph開発者ガイド』での変更点を示します。

トピック:

GeoJSONのサポート

Spatial and Graphでは、GeoJSONオブジェクトを使用したJSON (JavaScript Object Notation)形式の地理データの格納、索引付けおよび管理がサポートされます。JSONオブジェクトからOracle Spatial SDO_GEOMETRYオブジェクトに、SDO_GEOMETRYオブジェクトからJSONオブジェクトにデータを変換できます。空間演算子、ファンクションおよび特別なSDO_GEOMETRYメソッドを使用してGeoJSONデータを扱うことができます。

JSON_VALUE Oracle SQLファンクションに、RETURNINGキーワードのオプションとしてSDO_GEOMETRYを使用できるようになりました(JSON_VALUE( ... RETURNING SDO_GEOMETRY))。

詳細は、「Oracle Spatial and GraphでのGeoJSONのサポート」を参照してください。

Web Coverage Service (WCS) 2.0.1のサポート

Spatial and Graphには、"カバレージ"の取得をサポートするWeb Coverage Service Interface Standard (WCS)のOpen GIS Consortium (OGC)標準が実装されています。(OGCによると、"カバレージ"とは地理空間データの電子的エンコーディング、つまり、空間および時間で変化する現象を表すデジタル地理空間情報のことです)。WCSバージョン2.0.1とその拡張の多くがサポートされます。

詳細は、次を参照してください。

Catalog Services for the Web (CSW) 2.0.2のサポート

Catalog Services for the Webバージョン2.0.2がサポートされるようになりました。DCMIレコード・タイプがこのリリースでサポートされます。CSWの古い実装は非推奨になりました。

詳細は、次を参照してください。

WFS、WCSおよびCSW用の新しい空間Webサービス管理コンソール

WFSコンソール、WCSコンソールおよびCSWコンソールで構成されるこの空間Webサービス管理コンソールでは、WFS、WCSおよびCSW Webサービス・エンジンの構成、リクエストの作成と送信、およびレスポンスの表示による各サービスのテスト、サービスを診断するためのエラー・ログの表示を行えます。詳細は、「空間Webサービスの管理コンソール」を参照してください。

WFS、WCSおよびCSWの統一されたフレームワークとアーキテクチャ

統一された管理コンソールに加え、WFS、WCSおよびCSWが一緒にパッケージされ、簡単にデプロイできるようになっています。データ・ソースの数が、サービスごとに1つに減らされています。各サービスには独自の構成ファイルとログ・ファイルがありますが、簡単に使用および診断できるよう形式は同じです。

ログ・ファイルは複数のファイルに分かれ、ローテーションをして新しいエラー・メッセージを格納します。ログ・ファイルの数とサイズを構成できます。

WebサービスHTTPリクエストは同じ形式に簡略化され、構成可能です。

詳細は、「空間Webサービスのデプロイと構成」およびWFS、WCSおよびCSWの章の関連する項を参照してください。

位置追跡サーバーの追加

Oracle Spatial and Graphの新しい位置追跡サーバーを使用すると、対象の地域を定義し、オブジェクトのその地域への移動またはその地域からの移動を追跡して、特定の移動があると通知を受信できます。

概念および使用方法については、「位置追跡サーバー」を参照してください。PL/SQL APIのリファレンス情報については、「SDO_TRKRパッケージ(位置追跡)」を参照してください。

位置データ・エンリッチメントのサポート

Oracle Spatial and Graphには、データベースにロードし、新しいSDO_UTIL.GEO_SEARCHファンクションを使用して検索できる、現地点からの階層型の地理データを伴った場所名のデータ・セットが含まれるようになりました。データ・セットには、場所名や住所、住所の一部などの一般的に使用されるテキストの位置データおよび緯度と経度の情報が含まれます。

詳細は、「位置データ・エンリッチメント」を参照してください。

ルーティング・エンジンによる計算への出発日時の組込み

ルーティング・エンジンで、その計算に出発日時を組み込めるようになりました。たとえば、都市圏では、平日に自宅から空港まで自動車で行く場合の推定所要時間は、午前8時と午後7時で大きく異なります。時間の計算は、リアルタイムの収集データではなく、過去のトラフィック・パターンに基づきます。(たとえば、現在の事故や悪天候は考慮されません)。

このオプションの機能を含めるには、ルート・リクエストにstart_timeと(現在の日付以外の場合のオプションである)start_date値を指定し、return_route_timetrueに設定して(つまり、レスポンスに合計推定ルート時間を含める)、タイム・ゾーン・ユーザー・データを使用可能にします。return_route_timetrueで、出発日時が指定されない場合、ルート・リクエストが発行された日時が出発日時とみなされます。

この機能は、一括ルート・リクエストやバッチ・モード・リクエストには適用されません。

この機能の詳細は、「ルーティング・エンジン」および「ルーティング・エンジン管理」に含まれています。

システム管理空間索引のサポート

空間索引は、索引の作成時にINDEXTYPE=MDSYS.SPATIAL_INDEX_V2を指定してシステム管理できます。空間表または空間索引をパーティション化するかどうかに関係なく、新たに作成するすべての空間索引にこの索引タイプを使用することを強くお薦めします。レガシー空間索引を作成しなおす場合もこの使用をお薦めします。

主な利点は、空間索引の管理が簡単になることです。最も有益なのはパーティション化の場合で、この新しい索引タイプによって、索引のパーティション化管理操作の(すべてではないにしても)ほとんどが必要なくなります。Oracle Database実表パーティション化モデルのほぼすべてがフル・サポートされます。

詳細は、「システム管理空間索引の使用」を参照してください。

点に対するコンポジットBツリー空間索引

CREATE INDEX文のPARAMETERS句にcbtree_index=trueキーワードを指定して、点データに対してRツリー空間索引ではなく、コンポジットBツリー索引を作成できます。この機能を使用すると、空間索引の作成のパフォーマンスは向上しますが、索引を使用する空間問合せのパフォーマンスは低下します。

詳細は、「点に対するコンポジットBツリー空間索引の作成」を参照してください。

すべての測地データに楕円体距離を使用するオプション

以前のリリースで測地データを使用する場合、Spatial and Graphは常に点および複数点には楕円体の距離を使用し、他のジオメトリ・タイプには球体の距離を使用していました。しかし、ジオメトリ間の距離、最も近くにあるジオメトリ、またはジオメトリが指定した距離内にあるかどうかを決定する空間演算子およびファンクションに、ジオメトリ・タイプに関係なく楕円体の距離を指定できるようになりました。

詳細は、「距離: 測地データでの球体対楕円体」を参照してください。

Oracle Database 12cリリース1 (12.1.0.2)での変更点

次に、Oracle Database 12cリリース1 (12.1.0.2)の『Oracle Spatial and Graph開発者ガイド』での変更点を示します。

トピック:

ルーティング・エンジン情報の改訂

Spatial and Graphルーティング・エンジン(ルーティング・エンジンと呼ばれることもあります)に関する情報は、大幅に更新および再編成されました。これは次の場所にあります。

SDO_GEOM.SDO_CLOSEST_POINTSの動作変更

SDO_GEOM.SDO_CLOSEST_POINTSでは、2つの点の間の距離が0 (ゼロ)の場合、以前のリリースでは出力ジオメトリ(geomaおよびgeomb)がnullでした。現在は、その手順の「使用上の注意」で説明されているように、出力ジオメトリは入力ジオメトリが2次元と3次元のどちらであるかに依存します。

追加および変更されたSDO_GEOMサブプログラム

Oracle Databaseリリース12.1.0.2では、次の新しいサブプログラムがSDO_GEOMパッケージに追加されました(「SDO_GEOMパッケージ(ジオメトリ)」を参照)。

GeoRasterをデフォルトで有効にしない

Oracle Spatial and Graphの最初のインストール後、デフォルトではGeoRaster機能が無効になっています。GeoRasterを有効にするには、次の手順に従います。

  1. SYS AS SYSDBAとしてデータベースに接続します。

  2. 次の文を入力します。

    EXECUTE MDSYS.enableGeoRaster;
    

詳細は、「インストールまたはアップグレード後にGeoRasterが正しく動作するための確認事項」を参照してください

Oracle Database 12cリリース1 (12.1.0.1)での変更点

次に、Oracle Database 12cリリース1 (12.1.0.1)の『Oracle Spatial and Graph開発者ガイド』での変更点を示します。

トピック:

新機能

このリリースの新機能は次のとおりです。

トピック:

NURBS曲線のサポート

このリリースでは、Non-Uniform Rational B-Spline (NURBS)曲線ジオメトリをサポートしています。NURBS曲線を使用すると、任意の形状で自由形式の形状の表現が可能になります。NURBS表現では、制御点とノットにより曲線の形状が決定され、わずかなデータで複雑な形状の表現が可能になるため、曲線の形状を制御することができます。

詳細は、「Oracle Spatial and GraphでのNURBS曲線のサポート」を参照してください。

特定の3D測地操作での高さ情報の近似処理

以前のリリースでは、3次元測地ジオメトリでの特定の操作の高さ情報は無視されていました。このリリースでは、高さは近似処理され、これらの操作の計算に含まれます。

詳細は、「3次元の空間オブジェクト」(表1-2を含む)を参照してください。

新機能のSpatialメタデータ・ビュー(3Dテーマ、3Dシーン、3Dビューフレーム)

ALL_SDO_xxxおよびUSER_SDO_xxxメタデータ・ビューが3Dテーマ、3Dシーン、3Dビューフレームの用に追加されました。これらのビューの詳細は、「その他の空間メタデータ・ビュー」を参照してください。

これらのビューは、追加および変更されたSDO_UTILサブプログラムにリストされているいくつかの新しいファンクションと関連しています。

追加および変更された集計ファンクション

次の新しい空間集計ファンクションが追加されました(「空間集計ファンクション」を参照)。

追加および変更されたSDO_CSサブプログラム

次の新しいサブプログラムがSDO_CSパッケージに追加されました(「SDO_CSパッケージ(座標系変換)」を参照)。

追加および変更されたSDO_GEOMサブプログラム

次の新しいサブプログラムがSDO_GEOMパッケージに追加されました(「SDO_GEOMパッケージ(ジオメトリ)」を参照)。

追加および変更されたSDO_PC_PKGサブプログラム

次の新しいサブプログラムがSDO_PC_PKGパッケージに追加されました(「SDO_PC_PKGパッケージ(点群)」を参照)。

次の大きな変更が行われました。

  • SDO_PC_PKG.CLIP_PCでは、include_custom_dimsパラメータは、通常の次元に加えてカスタム次元を含む点群ブロックを戻すために使用できます。

  • SDO_PC_PKG.INITでは、pc_other_attrsパラメータは、点群のピラミッド化のメタデータを指定するために使用できます。

追加および変更されたSDO_TIN_PKGサブプログラム

次の新しいサブプログラムがSDO_TIN_PKGパッケージに追加されました(「SDO_TIN_PKGパッケージ(TIN)」を参照)。

次の大きな変更が行われました。

  • SDO_TIN_PKG.INITでは、tin_other_attrsパラメータは、TINのピラミッド化のメタデータを指定するために使用できます。

追加および変更されたSDO_UTILサブプログラム

次の新しいサブプログラムがSDO_UTILパッケージに追加されました(「SDO_UTILパッケージ(ユーティリティ)」を参照)。

次の大きな変更が行われました。

  • SDO_UTIL.AFFINETRANSFORMSは、1つ目(geometry)以外のすべてのパラメータでデフォルト値を持ちます。これにより、ほんの一部のパラメータのみにデフォルト以外の値を指定する必要がある場合にコーディングが簡略化できます。

  • SDO_UTIL.CIRCLE_POLYGONに、start_azimuthパラメータおよびend_azimuthパラメータを含む構文が追加されました。

  • SDO_UTIL.SIMPLIFYに新しいオプションのパラメータremove_loopsが追加され、簡略化された線ストリング・ジオメトリに途中で自己交差するループが含まれないようにできます。(SDO_UTIL.SIMPLIFYVWにもremove_loopsパラメータを使用できます。)

追加されたSDO_GEOM_MBR演算子

SDO_GEOM_MBRは、SDO_GEOM.SDO_MBRファンクションと機能的に同じSQL演算子ですが、より優れたパフォーマンスが提供されます。

SDO_GEOM_MBR演算子の使用方法と例の詳細は、SDO_GEOM.SDO_MBRファンクションの参照の項を参照してください。

追加されたSDO_POINTINPOLYGON演算子

追加されたSDO_POINTINPOLYGON演算子(厳密にはテーブル・ファンクション)は、1番目の列が点のx座標の値で、2番目の列が点のy座標の値である一連の行を使用して、指定したポリゴン・ジオメトリ内のこれらの行を戻します。

SPATIAL_VECTOR_ACCELERATIONシステム・パラメータ(VPA)

空間演算子のパフォーマンスを向上させるために、SPATIAL_VECTOR_ACCELERATIONデータベース・システム・パラメータの値をTRUEに設定し、ベクトル・パフォーマンス・アクセラレータ(VPA)機能を有効化することをお薦めします。(この機能と関連するシステム・パラメータは、ライセンスを付与されたOracle Spatial and Graphユーザーによる使用のみが許可されており、そのパラメータのデフォルト値はFALSEです。)このパラメータは、システム全体または単一のセッションに対して設定できます。

詳細は、「SPATIAL_VECTOR_ACCELERATIONシステム・パラメータ」を参照してください。

その他の変更点

その他、このマニュアルでは、次のような変更があります。

  • 製品名がOracle SpatialからOracle Spatial and Graph (Spatial and Graphともいう)に変更されました。

  • 以前に「複雑な空間問合せの例」にあった「SDO_AGGR_UNIONの例」という項は削除されました。この項では、「多くの行を集計する際により良いパフォーマンスを得るには、集計をグループに分割し、各グループのジオメトリ数が常に50以下になるようにします」とお薦めしていました。しかし、リリース12.1で導入されたSDO_AGGR_UNIONの機能強化により、Spatial and GraphでSPATIAL_VECTOR_ACCELERATION=TRUE(「SPATIAL_VECTOR_ACCELERATIONシステム・パラメータ」を参照)を使用する場合、ネストされた集計を使用するその文および例はお薦めできなくなりました。ネストされた集計は、単一の集計よりも実際に遅くなる可能性があります。

    ただし、Oracle Locatorを使用する場合、ネストした集計またはSDO_AGGR_SET_UNIONをお薦めします。詳細は、リリース11.2のOracle Spatialの開発者ガイドにあるC.4項 (「SDO_AGGR_UNIONの例」)を参照してください。