8 一定期間にわたるデータベース・パフォーマンスの比較

この章では、自動ワークロード・リポジトリ(AWR)の期間比較レポートを使用して、一定期間にわたるデータベース・パフォーマンスを比較する方法を説明しており、内容は次のとおりです。

8.1 自動ワークロード・リポジトリの期間比較レポートについて

データベースのパフォーマンスの低下は、それまで最適に稼働していたデータベースが、長い期間をかけてユーザーが気付くところまで徐々にパフォーマンスが低下した場合に発生します。AWRの期間比較レポートによって、一定期間のデータベース・パフォーマンスを比較できます。

AWRレポートは、2つのスナップショット(または2つの時点)の間の期間のAWRデータを示します。一方、AWRの期間比較レポートは、2つの期間の差(つまり、4つのスナップショットに相当する2つのAWRレポート)を示します。AWRの期間比較レポートを使用すると、2つの期間で異なる詳細なパフォーマンス属性および構成設定を識別できます。

たとえば、午後10:00から午前0:00のメンテナンス期間中に毎日実行されるバッチ・ワークロードのパフォーマンスが低下しており、現在では完了が午前2:00になっているとします。パフォーマンスが良好であった日の午後10:00から午前0:00までの期間のAWRの期間比較レポートと、パフォーマンスが低下していた日の午前10:00から午前2:00までの期間の別のレポートを生成できます。これらのレポートを比較すると、構成の設定、ワークロード・プロファイルおよびこれらの2つの期間で異なる統計を識別できます。それらの相違点に基づいて、パフォーマンス低下の原因をより簡単に診断できます。

このレポートでは、各期間にデータベースで費やされた時間によって統計が正規化され、期間ごとの差異が大きい順に統計データが表示されるため、AWRの期間比較レポートには、異なる2つの期間を選択することができます。

注意:

プラガブル・データベース(PDB)とともにAWR機能を使用している場合には、データ可視性および権限の要件が異なります。AWR機能を含む管理性の機能がマルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)で機能する仕組みの詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。

関連項目:

8.2 自動ワークロード・リポジトリ期間比較レポートの生成

一定期間にわたりデータベースのパフォーマンスが低下する場合は、AWRの期間比較レポートを使用すると、2つの期間を比較して、パフォーマンス低下の原因の診断に役立つ主な違いを特定できます。

AWRの期間比較レポートは複数のセクションに分かれています。HTMLレポートには、セクション間ですばやくナビゲートできるようにリンクが組み込まれています。レポートの内容には、選択した範囲のスナップショットに関するシステムのワークロード・プロファイルが含まれます。

8.2.1 AWRの期間比較レポートを生成するためのユーザー・インタフェース

AWRの期間比較レポートを生成するためのプライマリ・インタフェースは、Oracle Enterprise Manager Cloud Control (Cloud Control)です。可能な場合は、Cloud Controlを使用してAWRの期間比較レポートを生成してください。

Cloud Controlを使用できない場合は、SQLスクリプトを実行してAWRの期間比較レポートを生成します。これらのスクリプトを実行するには、DBAロールが必要です。

関連項目:

Cloud Controlを使用したAWRの期間比較レポートの生成の詳細は、『Oracle Database 2日でパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください

8.2.2 コマンドライン・インタフェースを使用したAWRの期間比較レポートの生成

このトピックでは、コマンドライン・インタフェースでSQLスクリプトを実行し、AWRの期間比較レポートを生成する方法を説明します。

8.2.2.1 ローカル・データベースのAWRの期間比較レポートの生成

awrddrpt.sql SQLスクリプトでは、ローカル・データベース・インスタンスにおける選択された2つの期間の詳細なパフォーマンス属性および構成設定を比較する、HTMLまたはテキストのレポートが生成されます。

コマンドライン・インタフェースを使用して、ローカル・データベース・インスタンスにAWRの期間比較レポートを生成するには、次のようにします。

  1. SQLプロンプトで次のように入力します。

    @$ORACLE_HOME/rdbms/admin/awrddrpt.sql
    
  2. レポートの形式としてHTMLまたはテキストのいずれかを指定します。

    Enter value for report_type: html
    

    この例では、HTML形式のレポートが選択されます。

  3. 第1期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days: 2
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、最近2日間に取得されたスナップショットが表示されます。

  4. 第1期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap: 102
    Enter value for end_snap: 103
    

    この例では、第1期間において、スナップショットIDが102のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが103のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  5. 第2期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days2: 1
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、前日に取得されたスナップショットが表示されます。

  6. 第2期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap2: 126
    Enter value for end_snap2: 127
    

    この例では、第2期間において、スナップショットIDが126のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが127のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  7. レポート名を入力するか、デフォルトのレポート名を受け入れます。

    Enter value for report_name: 
    Using the report name awrdiff_1_102_1_126.txt
    

    この例では、デフォルト名が使用され、awrdiff_1_102_126というAWRレポートが生成されます。

8.2.2.2 特定データベースのAWRの期間比較レポートの生成

awrddrpi.sql SQLスクリプトでは、特定のデータベースおよびインスタンスにおける選択された2つの期間の詳細なパフォーマンス属性および構成設定を比較する、HTMLまたはテキストのレポートが生成されます。このスクリプトでは、AWRの期間比較レポートの生成に使用されるデータベース識別子およびインスタンスを指定できます。

コマンドライン・インタフェースを使用して、特定のデータベース・インスタンスにAWRの期間比較レポートを生成するには、次のようにします。

  1. SQLプロンプトで次のように入力します。

    @$ORACLE_HOME/rdbms/admin/awrddrpi.sql
    
  2. レポートの形式としてHTMLまたはテキストのいずれかを指定します。

    Enter value for report_type: text
    

    この例では、テキスト形式のレポートが選択されます。

  3. 使用可能なデータベース識別子およびインスタンス番号のリストが表示されます。

    Instances in this Workload Repository schema
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       DB Id    Inst Num DB Name      Instance     Host
    ----------- -------- ------------ ------------ ------------
     3309173529        1 MAIN         main         examp1690
     3309173529        1 TINT251      tint251      samp251
    

    次のように、第1期間に対するデータベース識別子(dbid)およびインスタンス番号(inst_num)の値を入力します。

    Enter value for dbid: 3309173529
    Using 3309173529 for Database Id for the first pair of snapshots
    Enter value for inst_num: 1
    Using 1 for Instance Number for the first pair of snapshots
    
  4. 第1期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days: 2
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、最近2日間に取得されたスナップショットが表示されます。

  5. 第1期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap: 102
    Enter value for end_snap: 103
    

    この例では、第1期間において、スナップショットIDが102のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが103のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  6. 次のように、第2期間に対するデータベース識別子(dbid)およびインスタンス番号(inst_num)の値を入力します。

    Enter value for dbid2: 3309173529
    Using 3309173529 for Database Id for the second pair of snapshots
    Enter value for inst_num2: 1
    Using 1 for Instance Number for the second pair of snapshots
    
  7. 第2期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days2: 1
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、前日に取得されたスナップショットが表示されます。

  8. 第2期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap2: 126
    Enter value for end_snap2: 127
    

    この例では、第2期間において、スナップショットIDが126のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが127のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  9. レポート名を入力するか、デフォルトのレポート名を受け入れます。

    Enter value for report_name: 
    Using the report name awrdiff_1_102_1_126.txt
    

    この例では、デフォルト名が使用され、3309173529というデータベースIDを持つデータベース・インスタンスでawrdiff_1_102_126というAWRレポートが生成されます。

8.2.2.3 ローカル・データベースのOracle RAC AWRの期間比較レポートの生成

awrgdrpt.sql SQLスクリプトでは、現在のデータベース識別子およびOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)環境のすべての使用可能なデータベース・インスタンスを使用して、選択された2つの期間の詳細なパフォーマンス属性および構成設定を比較する、HTMLまたはテキストのレポートが生成されます。

注意:

HTMLのレポートは、テキストのレポートよりも読みやすいため、Oracle RAC環境では、テキストではなく、HTMLレポートを生成してください。

コマンドライン・インタフェースを使用して、ローカル・データベース・インスタンスにOracle RAC AWRの期間比較レポートを生成するには、次のようにします。

  1. SQLプロンプトで次のように入力します。

    @$ORACLE_HOME/rdbms/admin/awrgdrpt.sql
    
  2. レポートの形式としてHTMLまたはテキストのいずれかを指定します。

    Enter value for report_type: html
    

    この例では、HTML形式のレポートが選択されます。

  3. 第1期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days: 2
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、最近2日間に取得されたスナップショットが表示されます。

  4. 第1期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap: 102
    Enter value for end_snap: 103
    

    この例では、第1期間において、スナップショットIDが102のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが103のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  5. 第2期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days2: 1
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、前日に取得されたスナップショットが表示されます。

  6. 第2期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap2: 126
    Enter value for end_snap2: 127
    

    この例では、第2期間において、スナップショットIDが126のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが127のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  7. レポート名を入力するか、デフォルトのレポート名を受け入れます。

    Enter value for report_name: 
    Using the report name awrracdiff_1st_1_2nd_1.html
    

    この例では、デフォルト名が使用され、awrrac_1st_1_2nd_1.htmlというAWRレポートが生成されます。

8.2.2.4 特定データベースのOracle RAC AWRの期間比較レポートの生成

awrgdrpi.sql SQLスクリプトでは、Oracle RAC環境の特定のデータベースおよびインスタンスを使用して、選択された2つの期間の詳細なパフォーマンス属性および構成設定を比較する、HTMLまたはテキストのレポートが生成されます。このスクリプトでは、AWRの期間比較レポートの生成に使用されるデータベース識別子およびデータベース・インスタンスのカンマ区切りのリストを指定できます。

注意:

HTMLのレポートは、テキストのレポートよりも読みやすいため、Oracle RAC環境では、テキストではなく、常にHTMLレポートを生成してください。

コマンドライン・インタフェースを使用して、特定データベースにOracle RAC AWRの期間比較レポートを生成するには、次のようにします。

  1. SQLプロンプトで次のように入力します。

    @$ORACLE_HOME/rdbms/admin/awrgdrpi.sql
    
  2. レポートの形式としてHTMLまたはテキストのいずれかを指定します。

    Enter value for report_type: html
    

    この例では、HTML形式のレポートが選択されます。

  3. 使用可能なデータベース識別子およびインスタンス番号のリストが表示されます。

    Instances in this Workload Repository schema
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       DB Id    Inst Num DB Name      Instance     Host
    ----------- -------- ------------ ------------ ------------
     3309173529        1 MAIN         main         examp1690
     3309173529        1 TINT251      tint251      samp251
     3309173529        2 TINT251      tint252      samp252
     3309173529        3 TINT251      tint253      samp253
     3309173529        4 TINT251      tint254      samp254
    

    次のように、第1期間のデータベース識別子(dbid)およびインスタンス番号(instance_numbers_or_all)の値を入力します。

    Enter value for dbid: 3309173529
    Using 3309173529 for Database Id for the first pair of snapshots
    Enter value for inst_num: 1,2
    Using instances 1 for the first pair of snapshots
    
  4. 第1期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days: 2
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、最近2日間に取得されたスナップショットが表示されます。

  5. 第1期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap: 102
    Enter value for end_snap: 103
    

    この例では、第1期間において、スナップショットIDが102のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが103のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  6. 使用可能なデータベース識別子およびインスタンス番号のリストが表示されます。

    Instances in this Workload Repository schema
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       DB Id    Inst Num DB Name      Instance     Host
    ----------- -------- ------------ ------------ ------------
     3309173529        1 MAIN         main         examp1690
     3309173529        1 TINT251      tint251      samp251
     3309173529        2 TINT251      tint252      samp252
     3309173529        3 TINT251      tint253      samp253
     3309173529        4 TINT251      tint254      samp254
    INSTNUM1
    -----------------------------------------------------
    1,2
    

    次のように、第2期間のデータベース識別子(dbid2)およびインスタンス番号(instance_numbers_or_all2)の値を入力します。

    Enter value for dbid2: 3309173529
    Using 3309173529 for Database Id for the second pair of snapshots
    Enter value for instance_numbers_or_all2: 3,4
    
  7. 第2期間のスナップショットIDをリストする日数を指定します。

    Enter value for num_days2: 1
    

    指定した時間範囲に対応する既存のスナップショットのリストが表示されます。この例では、前日に取得されたスナップショットが表示されます。

  8. 第2期間の最初と最後のスナップショットIDを指定します。

    Enter value for begin_snap2: 126
    Enter value for end_snap2: 127
    

    この例では、第2期間において、スナップショットIDが126のスナップショットが最初のスナップショットとして選択され、スナップショットIDが127のスナップショットが最後のスナップショットとして選択されます。

  9. レポート名を入力するか、デフォルトのレポート名を受け入れます。

    Enter value for report_name: 
    Using the report name awrracdiff_1st_1_2nd_1.html
    

    この例では、デフォルト名が使用され、awrrac_1st_1_2nd_1.htmlというAWRレポートが生成されます。

8.3 自動ワークロード・リポジトリの期間比較レポートの解釈

比較する期間のAWRの期間比較レポートが生成されたら、その内容を確認し、一定期間にわたるパフォーマンス低下の可能性のある原因を特定します。

AWRの期間比較レポートのコンテンツは次の項に分割して示しています。

8.3.1 AWRの期間比較レポートのサマリー

レポート・サマリーはAWRの期間比較レポートの一部で、スナップショット・セットおよびレポートで使用されるワークロードに関する情報を示します。

レポート・サマリーは次のセクションで構成されています。

8.3.1.1 スナップショット・セット

スナップショット・セットに関するセクションに、インスタンス、ホストおよびスナップショットの詳細などのこのレポートに使用されたスナップショット・セットに関連する情報が表示されます。

8.3.1.2 ホスト構成の比較

「ホスト構成の比較」セクションでは2つのスナップショット・セットで使用したホスト構成を比較します。たとえば、前述のレポートでは物理メモリーとCPUの数を比較します。構成の差は、「%Diff」列に割合として数値化されます。

8.3.1.3 システム構成の比較

「システム構成の比較」セクションでは、2つのスナップショット・セットで使用したデータベース構成を比較します。たとえば、レポートでは、システム・グローバル領域(SGA)とログ・バッファのサイズを比較します。構成の差は、「%Diff」列に割合として数値化されます。

8.3.1.4 ロード・プロファイル

「ロード・プロファイル」セクションでは、2つのスナップショット・セットで使用されたワークロードが比較されます。ワークロードの差は、「%Diff」列に割合として数値化されます。

8.3.1.5 上位5位の時間消費イベント

上位5位の時間消費イベント・セクションに、各スナップショット・セットで総データベース時間(DB時間)の最も高い割合を消費する5つの時間イベントまたは操作が表示されます。

8.3.2 AWRの期間比較レポートの詳細

「詳細」セクションはAWRの期間比較レポートのレポート・サマリーに続いて表示され、レポートで使用したスナップショット・セットおよびワークロードの詳細情報が表示されます。

レポートの詳細は次のセクションで構成されています。

8.3.2.1 時間モデル統計

「時間モデル統計」セクションでは、2つのスナップショット・セットの時間モデル統計を比較します。時間モデル統計は2つのスナップショット・セットの操作の特定のタイプに費やされるDB時間の合計の差に基づいて並び替えられ、降順でリストされます。このセクション上部の時間モデル統計には2つのスナップショット・セット間で最も大きな差、および時間の経過によるパフォーマンスの低下の原因になっていた可能性のある関連操作が含まれます。

関連項目:

時間モデル統計の詳細は、「時間モデル統計」を参照してください

8.3.2.2 オペレーティング・システム統計

「Operating System Statistics」セクションでは、2つのスナップショット・セットでオペレーティング・システム統計を比較します。このセクションでは、比較するそれぞれの2つの期間におけるオペレーティング・システムの全体の状態が表示されます。

8.3.2.3 待機イベント

「待機イベント」セクションでは、2つのスナップショット・セットの待機イベントを比較します。

最初のセクションではユーザーI/OおよびシステムI/Oなどの待機イベントのクラスをリストします。このクラスはDB時間の割合の列の絶対値に応じてリストされます。

2番目のセクションでは、待機イベントをリストします。待機イベントは2つのスナップショット・セット間の待機イベントに費やされる総DB時間に基づいて並べ替えられ、降順にリストされます。このセクション上部の待機イベントには2つのスナップショット・セット間で最も大きな差が含まれ、時間の経過によるパフォーマンスの低下の原因である可能性があります。

関連項目:

待機イベントおよび待機クラスの詳細は、「待機イベント統計」を参照してください

8.3.2.4 サービス統計

「Service Statistics」セクションは2つのスナップショット・セットのサービスを比較します。サービスは2つのスナップショット・セット間で特定のサービスに費やされるDB時間の合計の差に基づいて並び替えられ、降順でリストされます。

8.3.2.5 SQLの統計

「SQL Statistics」セクションでは、2つのスナップショット・セットの上位SQL文が比較されます。SQL文はあらゆる比較方法に基づいて並べられますが、すべての場合で2つのスナップショット・セット間で最も差が大きい上位10セグメントが表示されます。

このセクションに記載されているSQL文は、時間の経過によるパフォーマンスの低下の原因になる可能性があり、次のカテゴリに基づいて並べられています。

8.3.2.5.1 上位10 SQLの実行時間ごとの比較

このサブセクションのSQL文は、2つのスナップショット・セット間で、SQL文の処理に使用される合計DB時間の差に基づいて、降順でリストされます。

このサブセクションのSQL文は、ある期間においてDB時間の高い割合を占めていましたが、他の期間ではそのようなことはなく、パフォーマンス低下の原因となっている高負荷SQL文である可能性が高いため、調査が必要です。レポートのSQLテキストの完全なリスト・サブセクションのSQL文を確認して、必要に応じてチューニングを行います。

関連項目:

SQL文のチューニングの詳細は、Oracle Database SQLチューニング・ガイドを参照してください

8.3.2.5.2 上位10 SQLのCPU時間ごとの比較

このサブセクションのSQL文は、2つのスナップショット・セット間で、SQL文の処理に使用されるCPU時間の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.5.3 上位10 SQLのバッファ読取りごとの比較

このサブセクションのSQL文は、2つのスナップショット・セット間で、SQL文を処理するときに行われるバッファ・キャッシュ読取りまたはバッファ読取りの合計回数の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.5.4 上位10 SQLの物理読取りごとの比較

このサブセクションのSQL文は、2つのスナップショット・セット間で、SQL文を処理する際に行われる物理読取り回数の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.5.5 上位10 SQLの実行ごとの比較

このサブセクションのSQL文は、2つのスナップショット・セット間で、SQL文を処理するときの(DB時間での) 1秒間の実行回数の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.5.6 上位10 SQLの解析コールごとの比較

このサブセクションのSQL文は、2つのスナップショット・セット間で、SQL文を処理する際に行われる解析の合計数の差に基づいて、降順でリストされます。解析はSQL文の処理に含まれます。

アプリケーションでSQL文が発行されるとき、アプリケーションによりOracle Databaseに解析応答が実行されます。解析応答を実行するとデータベースのパフォーマンスに大きく影響する可能性があるため、可能なかぎり最小限にする必要があります。

関連項目:

索引の詳細は、Oracle Database概要を参照

8.3.2.5.7 SQLテキストの完全なリスト(Complete List of SQL Text)

このサブセクションでは「SQLの統計」セクションにリストされたすべてのSQL文のSQLテキストを表示します。

8.3.2.6 インスタンス・アクティビティ統計

インスタンス・アクティビティの統計セクションでは、2つのスナップショット・セット間でインスタンス・アクティビティ統計値が比較されます。各統計には、DB時間、経過時間およびトランザクションごとに測定された差で統計の値が表示されます。

インスタンス・アクティビティ統計は次のサブセクションに分類されます。

8.3.2.6.1 主要なインスタンス・アクティビティの統計

このサブセクションには、2つのスナップショット・セット間の主要なインスタンス・アクティビティ統計値の差が表示されます。

8.3.2.6.2 他のインスタンス・アクティビティの統計

このサブセクションには、2つのスナップショット・セット間におけるその他すべての統計のインスタンス・アクティビティの差が表示されます。

8.3.2.7 I/O統計

「I/O統計」セクションでは、2つのスナップショット・セット間の表領域およびデータベースで実行されたI/O操作が比較されます。2つのスナップショット・セット間のI/O操作の大幅な増加は時間の経過によるパフォーマンスの低下の原因である可能性があります。

各表領域またはデータベース・ファイルでは読取り、書込みおよびバッファ・キャッシュ待機(バッファ読取り)の数の差が割合として定量化されます。データベース・ファイルはあらゆる比較方法に基づいてリストされますが、すべての場合で2つのスナップショット・セット間で最も差が大きい上位10個のデータベース・ファイルが表示されます。

I/O統計は次のカテゴリに分類されます。

8.3.2.7.1 表領域I/O統計

このサブセクションに表示される表領域は、2つのスナップショット・セット間において、表領域で実行された正規化されたI/Oの数の差に基づいて、降順でリストされます。正規化されたI/Oは1秒当たりの読取り回数および書込み回数の平均の合計です。

8.3.2.7.2 上位10ファイルのI/Oごとの比較

このサブセクションに表示されるデータベース・ファイルは、2つのスナップショット・セット間において、データベース・ファイルで実行された正規化されたI/Oの数の差に基づいて、降順でリストされます。正規化されたI/Oは1秒当たりの読取り回数および書込み回数の平均の合計です。

8.3.2.7.3 上位10ファイルの読取り時間ごとの比較

このサブセクションに表示されるデータベース・ファイルは、2つのスナップショット間で、データベース・ファイルからのデータの読取りに使用したDB時間の割合の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.7.4 上位10ファイルのバッファ待機ごとの比較

このサブセクションに表示されるデータベース・ファイルは、2つのスナップショット・セット間において、データベース・ファイルで実行されるバッファ待機(バッファ・キャッシュの空きバッファ参照時に発生する待機)の数の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.8 アドバイザの統計

アドバイザの統計のセクションでは、2つのスナップショット・セット間でプログラム・グローバル領域(PGA)メモリー統計が比較され、次のカテゴリに分割されます。

8.3.2.8.1 PGA集計のサマリー

このサブセクションでは、2つのスナップショット・セット間でPGAキャッシュ・ヒット率が比較されます。

8.3.2.8.2 PGA集計ターゲットの統計

このサブセクションでは、2つのスナップショット・セット間で自動PGAメモリー管理に関連する主要統計が比較されます。

8.3.2.9 待機統計

待機統計のセクションでは、バッファ待機統計が比較され、2つのスナップショット・セット間でエンキューされます。

待機統計は次のカテゴリに分類されます。

8.3.2.9.1 バッファ待機統計

このサブセクションでは、2つのスナップショット・セット間でバッファ待機が比較されます。バッファ待機は、バッファ・キャッシュの空きバッファ参照中に発生します。

8.3.2.9.2 エンキュー・アクティビティ

このサブセクションでは、2つのスナップショット・セット間でエンキュー・アクティビティが比較されます。エンキューは、データベース・リソースへのアクセスをシリアライズした共有メモリー構造(またはロック)で、セッションまたはトランザクションに関連付けられます。

関連項目:

エンキューの詳細は、Oracle Databaseリファレンスを参照

8.3.2.10 UNDOセグメントのサマリー

UNDOセグメントのサマリーのセクションでは、2つの期間のUNDOセグメントの使用を比較します。グラフは2つの期間のUNDOブロックの数、それらのブロックを使用するトランザクションの数および最大長の問合せを比較します。STO/OOS列では、古すぎるスナップショットの数および不足領域の件数を示します。

8.3.2.11 ラッチ統計

ラッチ統計セクションでは、2つのスナップショット・セット間でラッチのスリープの合計回数が降順に比較されます。

ラッチは、単純で低レベルなシリアライズ・メカニズムで、SGAの共有データ構造を保護します。たとえば、ラッチにより、データベースに現在アクセスしているユーザーのリストと、バッファ・キャッシュのブロックを記述するデータ構造が保護されます。ラッチは、これらの構造の1つを操作または検索するときに、サーバー・プロセスまたはバックグラウンド・プロセスによって非常に短い時間のみ取得されます。ラッチの実装(特にプロセスがラッチを待機するかどうか、およびプロセスがラッチを待機する時間)はオペレーティング・システムに依存します。

8.3.2.12 セグメント統計

「セグメント統計」セクションでは、2つのスナップショット・セット間のセグメントまたはデータベース・オブジェクト(表や索引など)が比較されます。セグメントはあらゆる比較方法に基づいて並べられますが、どの場合でも、2つのスナップショット・セット間で最も差が大きい上位5セグメントが表示されます。

ここに表示されるセグメントは、時間の経過によるパフォーマンスの低下の原因になる可能性があり、次のカテゴリに基づいて並べられています。

8.3.2.12.1 上位5セグメントの論理読取りごとの比較

このサブセクションに表示されるセグメントは、2つのスナップショット・セット間において、セグメントで実行された論理読取り回数(ディスクまたはメモリーからの読取り回数の合計)の差に基づいて、降順にリストされます。

非常に高い割合の論理読取りがデータベース・オブジェクトで行われている場合は、関連付けられているSQL文を調査し、索引またはマテリアライズド・ビューを使用して、データベース・オブジェクトへのデータ・アクセスのチューニングが必要かどうかを判断してください。

関連項目:

データ・アクセス・パスの最適化の詳細は、Oracle Database SQLチューニング・ガイドを参照してください

8.3.2.12.1.1 上位5セグメントの物理読取りごとの比較

このサブセクションに表示されるセグメントは、2つのスナップショット・セット間において、セグメントで実行された物理読取り(ディスク読取りなど)の回数の差に基づいて、降順にリストされます。

8.3.2.12.1.2 上位5セグメントの行ロック待機ごとの比較

このサブセクションに表示されるセグメントは、2つのスナップショット・セット間のセグメントに対する行ロック待機数の差に基づいて、降順にリストされます。

行レベルのロックの使用の主な目的は、2つのトランザクションが同一の行を変更しないようにするためです。トランザクションが行を変更する必要がある場合は、行ロックが取得されます。

関連項目:

行ロックの詳細は、Oracle Database概要を参照

8.3.2.12.1.2.1 上位5セグメントのITL待機ごとの比較

このサブセクションに表示されるセグメントは、2つのスナップショット・セット間において、セグメントの関連トランザクション・リスト(ITL)待機数の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.12.1.2.2 上位5セグメントのバッファ・ビジー待機ごとの比較

このサブセクションに表示されるセグメントは、2つのスナップショット・セット間のセグメントに対するバッファ・ビジー待機数の差に基づいて、降順でリストされます。

8.3.2.13 インメモリー・セグメント統計

インメモリー・セグメント統計セクションでは、2つのスナップショット・セット間でインメモリー・セグメント統計を比較し、スキャン、データベース・ブロック変更、CU移入アクティビティおよびCU再移入アクティビティの数に基づいて上位インメモリー・セグメントをリストします。これらの統計で、インメモリー・セグメントがユーザー・ワークロードによってどのように利用されているかを把握できます。インメモリー・セグメント統計セクションは、Oracle Databaseにインメモリー・アクティビティがある場合のみ、AWRの期間比較レポートに表示されます。

8.3.2.14 ディクショナリ・キャッシュ統計

「ディクショナリ・キャッシュ統計」セクションでは、ディクショナリ・キャッシュで実行されたGETリクエストの数を、降順に表示された2つのスナップショット・セット間で比較されます。DB時間および経過時間の両方で、GETリクエストの数ごとに秒単位で測定されます。

ディクショナリ・キャッシュは、データベース、構造およびそのユーザーの情報を格納するSGAの一部です。また、ディクショナリ・キャッシュは、SQL文の解析中にOracle Databaseにアクセスされたスキーマ・オブジェクトの説明情報(メタデータ)が格納されます。

関連項目:

ディクショナリ・キャッシュの詳細は、「データ・ディクショナリ・キャッシュの概念」を参照してください

8.3.2.15 ライブラリ・キャッシュ統計

ライブラリ・キャッシュ統計のセクションでは、2つのスナップショット・セット間でライブラリ・キャッシュ上で実行されたGETリクエストの回数が降順に比較されます。DB時間および経過時間の両方で、GETリクエストの数ごとに秒単位で測定されます。

ライブラリ・キャッシュは、表情報、オブジェクト定義、SQL文およびPL/SQLプログラムを格納するSGAの一部です。

関連項目:

ライブラリ・キャッシュの詳細は、「ライブラリ・キャッシュの概念」を参照してください

8.3.2.16 メモリー統計

「メモリー統計」セクションでは、2つのスナップショット・セット間でプロセスおよびSGAメモリー統計が比較され、次のカテゴリに分類されます。

8.3.2.16.1 プロセス・メモリーのサマリー

このサブセクションでは、2つの期間におけるプロセスのメモリー使用の概要をまとめます。プロセスのカテゴリには、SQL、PL/SQLおよびその他が含まれます。

8.3.2.16.2 SGAメモリー・サマリー

このサブセクションでは、2つのスナップショット・セットのSGAメモリー構成をまとめます。

8.3.2.16.3 SGAブレークダウン差異

このサブセクションでは、2つのスナップショット・セット間で各サブコンポーネントのSGAメモリー使用率が比較されます。差は、2つのスナップショット・セット間のメモリー使用率の開始時と終了時の変化に基づいて測定されます。

8.3.2.17 ストリームの統計

ストリームの統計セクションでは、CPU時間、I/O時間、ストリーム取得および適用を比較し、Oracle Streamsに関連するその他の統計を比較します。

8.3.3 AWRの期間比較レポートの補足情報

補足情報は、AWRの期間比較レポートの最後にあり、有用ですがスナップショット・セットおよびレポートで使用したワークロードには必須ではない情報を提供します。

補足情報は次のセクションで構成されています。

8.3.3.1 init.oraパラメータ

「init.oraパラメータ」セクションには、最初のスナップショット・セットの初期化パラメータ値がリストされています。2つのスナップショット・セット間で初期化パラメータの値が変更されている場合は、2番目のスナップショット・セットに変更された値がリストされます。

8.3.3.2 SQLテキストの完全なリスト(Complete List of SQL Text)

SQLテキストの完全なリスト・セクションには、ワークロードに含まれる各文がSQL IDごとにリストされ、SQL文のテキストが表示されます。