この章の内容は次のとおりです。
Oracle SOA Suiteは、サービス指向アーキテクチャ(SOA)を使用して統合を構築、デプロイ、管理できる包括的でホットプラグ可能なソフトウェア・スイートです。Oracle SOA Suiteには次の機能があります。
一貫したツール
シングル・デプロイメント・モデルと管理モデル
エンドツーエンド・セキュリティ
統合されたメタデータ管理
Oracle SOA Suiteにより、複雑なアプリケーションの統合を機動的で再利用可能なサービスベースのアプリケーションに変換することで、市場に出すための時間の短縮、ビジネス要件へのより迅速な対応、およびコスト削減を実現できます。以前はパッケージ・アプリケーション・ユーザー・インタフェースでのみアクセス可能であった顧客、金融、注文情報などの重要なビジネス・サービスは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器に迅速にモデル化できるようになりました。
図1-1に、Oracle SOA Suiteのアーキテクチャの概要を示します。
Oracle SOA Suiteのホットプラグ可能なアーキテクチャにより、実行するオペレーティング・システムや基盤となるテクノロジにかかわらず、既存のIT投資や資産を再利用してコストを削減できます。また、Oracle SOA Suiteは、使用しやすく、再利用可能な、統合アプリケーション開発ツールとライフ・サイクル管理により、開発コスト、メンテナンス・コストおよび複雑性のさらなる削減を実現します。企業は、Oracle SOA Suiteによるルール駆動型ビジネス・プロセスの自動化により、効率性と機動性を改善できます。Oracle SOA Suiteが提供するリアルタイムの傾向分析、視覚化およびライフ・サイクル可視性の機能により、企業は重要な変化を予測して、それに対応できるようになります。Oracle SOA Suiteには次の機能があります。
オンプレミス・アプリケーションとクラウド・アプリケーションの統合による、複雑性の軽減。
Representational State Transfer (REST)のサポートが可能にする、高速モバイルでの既存の機能の活用。
異なるサービスおよびアプリケーションからのSOAコンポジット・アプリケーションの設計。
統合された接続フレームワーク(アダプタ、B2Bゲートウェイ、およびOracle Data Integration Suiteとの事前統合を含む)を介したほとんどすべてのデータ・ソース・テクノロジ(メッセージング、データベースなど)、アプリケーションまたは取引パートナへの接続。
スケーラビリティの高いOracle Service Busによるサービスのルーティング、変換および仮想化。
Oracle BPEL Process Managerによるプロセス自動化のオーケストレーションおよび構築。
Oracle Business Rulesを使用して個々のロジック・ブロックを外部化することによる機動性の構築。
Oracle Event Processingによる複数のデータ・ストリームと時間枠にわたる特定のパターンのリアルタイム検出の実行。
Oracle Business Activity Monitoringによる、ビジネス・プロセスの操作およびパフォーマンスに対するリアルタイム可視性の実現(特定の状況への対応機能も含まれる)。
Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlでポリシー駆動型の統合セキュリティ・フレームワークおよびグローバル・ポリシー・マネージャを使用することによる、すべてのサービスの一貫した簡単な保護。
統合され、最適化されたインフラストラクチャによるSOA・コンポジット・アプリケーションの実行。SOAサービス・インフラストラクチャは、Oracle WebLogic Server、JRockitおよびOracle Coherence上に構築されています。
Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlでネイティブに統合された単一コンソールによる、前述のコンポーネントの管理とモニター。
Oracle SOA Suiteの主要コンポーネントは次のとおりです。
Oracle Service Bus
Oracle Service Busは、SOAライフ・サイクル管理用に設計された構成ベースでポリシー駆動型のEnterprise Service Busです。Oracle Service Busには次の機能があります。
サービスの検出と仲介
迅速なサービスのプロビジョニングとデプロイメント
スケーラビリティと信頼性の高いサービス指向の統合、サービス管理、異なるIT環境での従来のメッセージ・ブローカリング
統合ソフトウェア製品でのインテリジェントなメッセージ・ブローカリング、メッセージのルーティングと変換、およびサービス・モニタリングと管理
詳細は、『Oracle Service Busでのサービスの開発』およびOracle Service Busの管理を参照してください。
Oracle Business Process Execution Language (BPEL) Process Manager
Oracle BPEL Process Managerは、エンドツーエンドのプロセス・フローに個別のサービスのセットを統合するための包括的な、標準ベースの使用しやすいソリューションを提供し、プロセス統合のコストと複雑性を削減します。BPELプロセス・サービス・エンジンは、成熟した、スケーラブルで堅牢なBPELサーバーです。これは標準のBPELプロセスを実行し、デハイドレーション機能を提供します。これにより、長時間実行されているビジネス・フロー・インスタンスの状態が自動的にデータベースで保持され、フェイルオーバーとスケーラビリティの両方を目的としたクラスタリングが可能になります。タスク管理、通知管理、ワークリスト管理などの組込みのヒューマン・ワークフロー・サービスも備わっているため、人と手動タスクをBPELビジネス・フロー・インスタンスに統合できます。Oracle BPEL Process Managerでは、アプリケーションやレガシー・システムの統合、詳細なサービスからの疎粒度のサービスの構成、プロセス中心のコンポジット・アプリケーションの構築、およびルーティングやエスカレーションを含む、ビジネス・プロセスやワークフロー・アプリケーションの自動化が可能になります。
詳細は、『Oracle SOA SuiteでのSOAアプリケーションの開発』および『Oracle SOA SuiteおよびOracle Business Process Management Suiteの管理』を参照してください。
Oracle Event Processing
Oracle Event Processingは、リアルタイムでイベントのフィルタリング、関連付けおよび処理を行うアプリケーションを構築するための完全なソリューションです。柔軟なデプロイメント・オプション(スタンドアロン、SOAスタックに統合、埋込みJavaで軽量化)により、高パフォーマンスなイベント処理エンジンを提供します。Oracle Event Processingにより、高速データから実行可能な洞察が得られ、様々なデータ・ソースからの大量の高速データの価値をリアルタイムに最大化できます。また、高速データをネットワーク・エッジにプッシュすることにより、ホスト間の応答が可能になります。
ANSI SQL、Java, Spring Dynamic Modules (DM)、Open Service Gateway initiative (OSGI)などの業界標準に基づいて構築されたOracle Event Processingは、企業全体に複合イベントを供給、処理および公開するためのオープン・アーキテクチャを提供します。Oracle Event Processingは、ビジュアル開発環境と標準Javaベースのツールの両方を備えているため、ITチームは、専門トレーニングや固有のスキル・セットへの投資を必要とせずに、イベント駆動型アプリケーションを開発できます。
詳細は、『Oracle Event Processingアプリケーションの開発』および『Oracle Event Processingの管理』を参照してください。
Oracle Business Activity Monitoring
Oracle Business Activity Monitoringは、ビジネス・プロセスをリアルタイムでモニターし、情報に基づく戦略的なビジネスの意思決定を可能にします。従来のレポート・システムとは異なり、Oracle Business Activity Monitoringでは、基幹ビジネス・プロセスに対して適時のオペレーショナル・インテリジェンスを実現します。Oracle Business Activity Monitoringは、ビジネス・イベントの発生中およびその前後のデータを分析します。
詳細は、『Oracle BAMでのビジネス・アクティビティのモニタリング』を参照してください。
Oracle Business Rules
Oracle Business Rulesにより、実行時の動的なビジネスの意思決定が可能になり、ルールのロジックを基礎となるアプリケーション・コードから分離しながらポリシー、計算および判断を自動化できます。これにより、より迅速なルール・メンテナンスが可能になり、ビジネス・アナリストは、プログラマによる支援を受けたりビジネス・プロセスを中断させることなく、ルール・ロジックを変更できるようになります。
詳細は、『Oracle Business Process Managementによるビジネス・ルールの設計』を参照してください。
Oracle Java EE Connector Architecture (JCA)アダプタ
Oracle JCAアダプタにより、企業内のほとんどすべてのデータ・ソースに接続できます。Oracle JCAアダプタは標準ベースで、WebサービスとJCAテクノロジの両方をサポートしています。Oracle JCAアダプタは、次のものに使用できます。
パッケージ・アプリケーション
Tuxedo、Virtual Storage Access Method (VSAM)、Customer Information Control System (CICS)などのレガシーおよびメインフレーム・アプリケーション
クラウド・アプリケーション
FTP、ファイル、データベース、AQ、JMS、MQSeries、コヒーレンス、LDAP、ユーザー・メッセージング・サービス、Oracle E-Business Suiteなどのテクノロジおよびプロトコル
詳細は、『テクノロジ・アダプタの理解』を参照してください。
Oracle B2B
Oracle B2Bは、企業と取引パートナとの電子的な情報交換を可能にします。Oracle B2Bは、Electronic Data Interchange (EDI)、UCCnet、RosettaNet、Chemical Industry Data Exchange (CIDX)、Petroleum Industry Data Exchange (PIDX)、Voluntary Interindustry Commerce Solutions (VICS)、ebXML、Universal Business Language (UBL)など、業界標準のセットをサポートします。
詳細は、『Oracle B2Bユーザーズ・ガイド』を参照してください。
Oracle SOA for Healthcare
Oracle SOA Suite for Healthcareでは、ヘルスケア・データを処理するアプリケーションを設計、作成および管理できます。Oracle SOA Suite for healthcare integrationは、ヘルスケア統合アプリケーションを作成および構成し、それらのアプリケーションにより処理されたメッセージをモニターおよび管理するWebベースのユーザー・インタフェースを提供します。また、Oracle Document Editorを使用して、メッセージ構造を定義するドキュメント定義を作成および構成することもできます。
詳細は、Oracle SOA Suite Healthcare Integrationユーザーズ・ガイドを参照してください。
Oracle SOA Suiteは、次の追加コンポーネントと統合できます。
Oracle Enterprise Scheduler
エンタープライズ・アプリケーションには、将来実行される大規模なトランザクションの負荷を軽減したり、定義されたスケジュールに基づいたアプリケーション・メンテナンス作業の実行を自動化したりする機能が必要です。Oracle Enterprise Schedulerにより、Oracle WebLogic Serverクラスタのノード全体に分散された、Java、PL/SQL、バイナリ・スクリプト、Webサービス、Enterprise JavaBeans (EJBs)などの、様々なジョブ・タイプを実行できるようになります。Oracle Enterprise Schedulerは、これらのジョブを安全に実行すると同時に、高可用性とスケーラビリティを実現し、ロード・バランシングを行います。Oracle Enterprise Schedulerの実行は、Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlを使用してモニターおよび管理されます。
詳細は、Oracle Enterprise Schedulerでのアプリケーション開発およびOracle Enterprise Schedulerの管理を参照してください。
Oracle Managed File Transfer。
Oracle Managed File Transferは、高パフォーマンスで、標準ベースのエンドツーエンド管理対象ファイル・ゲートウェイです。これは、ファイル暗号化、スケジューリング、埋込みFTPおよびsFTPサーバーを含む軽量でWebベースの設計時コンソールを使用した設計、デプロイメント、およびファイル転送のモニタリングを特徴とします。
詳細は、『Oracle Managed File Transferの使用』を参照してください。
Oracle SOA Suiteでは、多数の開発ツール、モニタリング・ツールおよび管理ツールを提供しています。
Oracle JDeveloperは、最新の業界標準のJava、XML、Webサービス、SQL、REST、SCAを使用するサービス指向アプリケーションを構築するためのOracle SOA Suiteで使用される統合開発環境です。Oracle JDeveloperではアプリケーションのモデリング、コーディング、デバッグ、テスト、プロファイリング、チューニングおよびデプロイの各機能を統合して、開発ライフ・サイクル全体をサポートします。Oracle JDeveloperには、SOAプロジェクトで使用される様々なコンポーネントおよびテクノロジを迅速かつグラフィカルに組み立てるためのSOA Composite Editorが搭載されています。ユーザー・フレンドリなウィザードは、ITシステムへの接続など、多くの共通タスクを簡素化するために提供されます。
Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlは、SOAコンポジット・アプリケーションを実行時に管理およびモニターするためのWebペースのツールです。管理者は、ビジネス・フロー・インスタンスの追跡、セキュリティ・ポリシーのアタッチ、特定のデータの検索による特定のメッセージの識別、エラー・ホスピタルでのエラーの識別と修正などのタスクを実行します。Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlは、プロセスの実行に可視性を提供し、ビジネス・フローの完全にエンドツーエンドのグラフィカルな表示も可能にします。また、それに続いてすべてのコンポーネントを横断的に網羅する特定のメッセージが表示されます。
Oracle SOA Suiteでは、表1-1で説明するように、一部のコンポーネントに対する追加の設計およびランタイム・ツールが用意されています。
表1-1 追加の設計およびランタイム・ツール
ランタイム・ツール | 説明 |
---|---|
Oracle BAM Composer |
ダッシュボード、アラート、ビジネス・ビュー、キー・パフォーマンス・インディケータ(KPI)、アラートおよびパラメータを作成するためのユーザー・インタフェースを提供します。 |
Oracle B2Bコンソール |
取引パートナおよび取引パートナ・アグリーメントを含む、B2Bトランザクションを作成するためのユーザー・インタフェースを提供します。 |
Oracle Managed File転送コンソール |
次のアーティファクトを定義するための軽量で、Webベースの設計時コンソールを提供します。
|
Oracle Service Busコンソール |
サービス・レベル・アグリーメント・アラート、パイプライン・アラート、メッセージング・レポート・アクション、アラート宛先、ビジネス・サービス・エンドポイントのスロットル・グループを作成するための構成ツールを提供します。個別に、または一括して、環境値を更新することもできます。 |
Oracle SOA Composer |
ドメイン値マップ、承認管理の拡張、ビジネス・ルール、デプロイ済コンポジットのコンポジット・センサーを作成するためのランタイム環境を提供します。 |
Oracle Healthcare for Healthcare Integrationコンソール |
プロトコルのメッセージング、エンドポイントの作成と管理、ドキュメントの管理、マップ・セットの作成、Javaコールアウトの作成を行うためのサポートを提供します。 |
このガイドの残りの章では、企業が直面するビジネス課題に対処するため、設計時から実行時にわたってプロセス・フローでOracle SOA Suiteコンポーネントを連携する方法の概要を示します。
詳細は、「会社Xのビジネス課題」を参照してください。