6.5 メトリックの概要

Oracle Database QoS Managementは、システム内のすべてのサーバーによって収集される標準化されたメトリックのセットを使用します。

Oracle Database QoS Managementは、作業リクエストがリソースの待機に費やす時間の長さの観察データに基づいて決定を行います。作業リクエストが待機するリソースの例として、CPUサイクル、ディスクI/Oキュー、グローバル・キャッシュ・ブロックなどのハードウェア・リソースがあります。ラッチ、ロック、ピンなど、データベース内で発生する待機もあります。データベース内でのリソース待機はOracle Database QoS Managementメトリックで考慮されますが、タイプ別には管理または指定されません。

作業リクエストのレスポンス時間は、実行時間と様々な待機時間で構成されます。実行時間を変更または改善するには、一般にアプリケーション・ソース・コードの変更が必要です。このため、Oracle Database QoS Managementでは待機時間のみを監視および管理します。

作業リクエストのレスポンス時間の測定に使用されるメトリックには、パフォーマンス・メトリックとリソース・メトリックの2種類があります。作業リクエストはシステムを構成するサーバー、ネットワークおよびストレージ・デバイスを通過するため、これらのメトリックにより、各パフォーマンス・クラスの作業リクエストで発生する待機時間を、リクエストされたリソースごとに直接観察できます。別のタイプのメトリックであるパフォーマンス満足度メトリックは、パフォーマンス・クラスのパフォーマンス目標がどの程度満たされているかを測定します。

6.5.1 パフォーマンス・メトリック

パフォーマンス・メトリックは、システムのどこで時間が費やされているかの概要を示し、システム全体で待機時間を比較できます。

パフォーマンス・メトリックは、システムの各サーバーへのエントリ・ポイントで収集されます。データは定期的に収集され、分析、意思決定および履歴格納のために中央ポイントに転送されます。システム・データの収集方法の図は、図6-6を参照してください。

パフォーマンス・メトリックは、レスポンス時間(リクエストを受信した時刻とレスポンスを送信した時刻の差)を測定します。パフォーマンス・クラス内のすべてのデータベース・クライアント・リクエストのレスポンス時間は、秒単位のデータベース・リクエスト数として測定された平均レスポンス時間として平均および提示されます。

6.5.2 リソース・メトリック

リソース・メトリックは、リクエストされたリソースごとにシステムのどこで時間が費やされているかの概要を示します。

システムの各対象リソースには2つのリソース・メトリックがあります。

  • リソース使用時間: 各作業リクエストでリソースの使用に費やした時間を測定します。

  • リソース待機時間: リソース取得の待機に費やした時間を測定します。

リソースは、CPU、ストレージI/O、グローバル・キャッシュおよびその他(データベース待機)に分類されます。データは、Oracle RACデータベース、Oracle Clusterwareおよびオペレーティング・システムから収集されます。

6.5.3 パフォーマンス満足度メトリック

ワークロード・パフォーマンスの分析に役立つメトリックは、パフォーマンス・クラスの作業リクエストがそのパフォーマンス・クラスの現在のパフォーマンス目標をどの程度満たしているかに関する共通および一貫した数値メジャーです。

この数値メジャーをパフォーマンス満足度メトリックと呼びます。

次の表に示すように、様々なパフォーマンス目標を使用してワークロードのパフォーマンスを測定します。

ワークロード・タイプ パフォーマンス目標

OLTP

レスポンス時間、1秒当たりのトランザクション

バッチ

速度、スループット

DSS

読取りまたはキャッシュ・ヒット率、期間、スループット

現在、Oracle Database QoS ManagementではOLTPワークロードのみサポートされます。OLTPワークロードについては、レスポンス時間パフォーマンス目標のみ構成できます。

6.5.4 パフォーマンスの問題を識別するためのメトリックの使用方法

Oracle Database QoS Managementは、収集するメトリックを使用してパフォーマンス・ボトルネックを識別します。

Oracle Database QoS管理メトリックは、システムのパフォーマンス・クラスのボトルネックを体系的に特定するために必要な情報を提供します。パフォーマンス・クラスがそのパフォーマンス目標に違反している場合、そのパフォーマンス・クラスのボトルネックは、そのパフォーマンス・クラスの各作業リクエストの最大平均待機時間に寄与するリソースです。

Oracle Database QoS Managementメトリックを使用して、次の手順でパフォーマンス・クラスのボトルネックを探します。

  1. Oracle Database QoS Managementは、パフォーマンス目標を満たしていない、最もランクの高いパフォーマンス・クラスを選択します。

  2. そのパフォーマンス・クラスについて、収集されたメトリックから各リソースの待機時間が判断されます。

  3. リクエスト当たりの待機時間が最も長いリソースが、ボトルネック・リソースとして判断されます。

各データベース・リクエストの平気待機時間と各パフォーマンス・クラスの合計リクエスト数を分析すると、各パフォーマンス・クラスのレスポンス時間のリソース待機時間コンポーネントが提供されます。このような貢献度が最大のリソース(CPU、ストレージI/O、グローバル・キャッシュまたはその他)がパフォーマンス・クラスの現在のボトルネックです。