4.4 モデルへの変換の組込み

独自の変換を指定してモデルに組み込むには、変換リストを作成してDBMS_DATA_MINING.CREATE_MODELに渡します。

PROCEDURE create_model(
                  model_name           IN VARCHAR2,
                  mining_function      IN VARCHAR2,
                  data_table_name      IN VARCHAR2,
                  case_id_column_name  IN VARCHAR2,
                  target_column_name   IN VARCHAR2 DEFAULT NULL,
                  settings_table_name  IN VARCHAR2 DEFAULT NULL,
                  data_schema_name     IN VARCHAR2 DEFAULT NULL,
                  settings_schema_name IN VARCHAR2 DEFAULT NULL,
                  xform_list           IN TRANSFORM_LIST DEFAULT NULL);

4.4.1 属性の変換指示の指定

属性の変換指示とは何か、および変換レコード内のフィールドについて説明します。

変換リストは、変換レコードの表として定義されます。各レコード(transform_rec)は、属性の変換指示を指定します。

TYPE transform_rec IS RECORD (
    attribute_name      VARCHAR2(30),
    attribute_subname   VARCHAR2(4000),
    expression          EXPRESSION_REC,
    reverse_expression  EXPRESSION_REC,
    attribute_spec      VARCHAR2(4000));

変換レコードのフィールドについては、この表で説明します。

表4-2 属性の変換レコードのフィールド

フィールド 説明

attribute_nameおよびattribute_subname

これらのフィールドは属性を特定します(「モデル属性の名前の詳細」を参照)。

expression

属性を変換するためのSQL式。たとえば、次の式では、age属性をchildとadultという2つのカテゴリに変換します(0から19までが子供で、19を超えると大人)。

CASE WHEN age < 19 THEN 'child' ELSE 'adult'

式および逆変換式は、expression_recオブジェクトに格納されます。詳細は、「式のレコード」を参照してください。

reverse_expression

変換を元に戻すためのSQL式。たとえば、次の式では、age属性の変換を元に戻します。

DECODE(age,'child','(-Inf,19)','[19,Inf)')

attribute_spec

属性の特別な処理を指定します。attribute_specフィールドは、NULLを設定するか、または次の値うちの1つ以上を設定できます。

  • FORCE_IN: GLMで、ftr_selection_enable設定が有効な場合、モデル作成に属性を強制的に含めます(ftr_selection_enableはデフォルトで無効です)。モデルがGLMではない場合は、この値の効果はありません。FORCE_INは、ネストした属性またはテキストに指定できません。

  • NOPREP: ADPが有効な場合、属性の自動変換を阻止します。ADPが有効になっていない場合は、この値による影響はありません。NOPREPは、ネストした属性に対しては指定できますが、ネストした属性の個別のサブ名(行)に対しては指定できません。

  • TEXT: 属性に非構造化テキストが含まれていることを示します。ADPはこの設定に対して効果がありません。TEXTには、必要に応じてPOLICY_NAMETOKEN_TYPEおよびMAX_FEATURESのサブ設定が含まれます。

例4-1例4-2を参照してください。

4.4.1.1 式のレコード

変換レコードの変換式は、expression_recオブジェクトです。

TYPE expression_rec IS RECORD (
     lstmt       DBMS_SQL.VARCHAR2A,
     lb          BINARY_INTEGER DEFAULT 1,
     ub          BINARY_INTEGER DEFAULT 0);

TYPE varchar2a IS TABLE OF VARCHAR2(32767)
INDEX BY BINARY_INTEGER;

lstmtフィールドには、VARCHAR2A (変換式をVARCHAR2の複数の行に分割できるため、非常に長い変換式を使用可能)が格納されます。expression_recを作成するには、DBMS_DATA_MINING_TRANSFORM.SET_EXPRESSIONを使用します。

4.4.1.2 属性指定

属性指定を通じて属性に固有の特性を定義する方法を説明します。

変換レコードの属性指定は、この属性に固有の特性を定義します。NULLである場合を除き、属性指定にはFORCE_INNOPREPまたはTEXTの値を含めることができます(表4-2を参照)。

例4-1 複数のキーワードを使用した属性指定

複数の属性指定キーワードが適用可能な場合、カンマ区切りリストで指定できます。次の式は、GLMモデルでの属性の指定です。ftr_selection_enable設定が有効な場合、この式によって、属性がモデルに強制的に含まれます。ADPが有効な場合、属性の自動変換は実行されません。

"FORCE_IN,NOPREP"

例4-2 テキスト属性指定

テキスト属性の場合、必要に応じてPOLICY_NAMETOKEN_TYPEおよびMAX_FEATURESのサブ設定を指定できます。サブ設定は、テキスト変換に固有の構成情報を提供します。次の例では、テキスト内容に対する変換指示がmy_policyというテキスト・ポリシーで定義され、トークン・タイプとしてTHEMEが指定されます。抽出した特徴の最大数は3000です。

"TEXT(POLICY_NAME:my_policy)(TOKEN_TYPE:THEME)(MAX_FEATURES:3000)"

関連トピック

4.4.2 変換リストの作成

変換リストは、変換レコードの集合です。新しい変換レコードを追加すると、変換リストの一番上に追加されます。変換リストを作成する場合は、次の手法のいずれかを使用できます。

  • DBMS_DATA_MINING_TRANSFORMSET_TRANFORMプロシージャ

  • DBMS_DATA_MINING_TRANSFORMSTACKインタフェース

  • DBMS_DATA_MININGGET_MODEL_TRANSFORMATIONSファンクションおよびGET_TRANSFORM_LISTファンクション

4.4.2.1 SET_TRANSFORM

SET_TRANSFORMプロシージャは、1つの変換レコードを変換リストに追加します。

DBMS_DATA_MINING_TRANSFORM.SET_TRANSFORM (
          xform_list               IN OUT NOCOPY TRANSFORM_LIST,
          attribute_name           VARCHAR2,
          attribute_subname        VARCHAR2,
          expression               VARCHAR2,
          reverse_expression       VARCHAR2,
          attribute_spec           VARCHAR2 DEFAULT NULL);

SET_TRANSFORMを使用して指定するSQL式は、VARCHAR2に収まる必要があります。より長い式を指定するには、VARCHAR2配列に行を追加することにより式を作成するSET_EXPRESSIONを使用します。

4.4.2.2 STACKインタフェース

STACKインタフェースは、変換指示の表から変換レコードを作成し、変換リストに追加します。

STACKインタフェースは、指定したタイプの属性のすべてまたは一部を同じ方法で変換する必要があることを指定します。たとえば、STACK_BIN_CATは、質的属性のビニング指示を変換リストに追加します。STACKインタフェースは、次の3つのステップで構成されます。

  1. CREATEプロシージャにより、変換定義表を作成します。たとえば、CREATE_BIN_CATは、質的ビニングの指示を保持する表を作成します。この表には、属性の名前、属性の値および値のビン割当てを格納するための列があります。

  2. INSERTプロシージャにより、1つ以上の属性のビン境界を計算し、定義表を移入します。たとえば、INSERT_BIN_CAT_FREQは、データ・ソースの一部またはすべての質的属性に対して頻度ベースのビニングを実行し、CREATE_BIN_CATにより作成された表を移入します。

  3. STACKプロシージャにより、定義表の情報から変換レコードを作成し、その変換レコードを変換リストに追加します。たとえば、STACK_BIN_CATは、質的ビニングの定義表に格納されている情報に対する変換レコードを作成し、その変換レコードを変換リストに追加します。

4.4.2.3 GET_MODEL_TRANSFORMATIONSおよびGET_TRANSFORM_LIST

ファンクションを使用して、新しい変換リストを作成します。

これら2つのファンクションは、既存のモデルに組み込まれている変換から新しい変換リストを作成する場合に使用できます。

GET_MODEL_TRANSFORMATIONSファンクションは、組み込まれた変換のリストを戻します。

DBMS_DATA_MINING.GET_MODEL_TRANSFORMATIONS (
      model_name     IN VARCHAR2)
RETURN DM_TRANSFORMS PIPELINED;

GET_MODEL_TRANSFORMATIONSは、dm_transformオブジェクトの表を戻します。各dm_transformは、次のフィールドを持ちます。

attribute_name       VARCHAR2(4000)
attribute_subname    VARCHAR2(4000)
expression           CLOB
reverse_expression   CLOB

変換リストの構成要素は、dm_transformではなく、transform_recです。transform_recのフィールドについては、表4-2で説明しています。GET_MODEL_TRANSFORMATIONSをコールして、dm_transformオブジェクトのリストをtransform_recオブジェクトに変換し、各transform_recを変換リストに追加することができます。

DBMS_DATA_MINING.GET_TRANSFORM_LIST (
      xform_list           OUT NOCOPY TRANSFORM_LIST,
      model_xforms         IN  DM_TRANSFORMS);

4.4.3 変換リストおよび自動データ準備

ADPを有効化し、変換リストを指定すると、その変換リストがシステムによって生成された自動の変換とともに組み込まれます。変換リストは、自動変換の前に実行されます。

ADPを有効化し、変換リストを指定しないと、自動変換のみがモデルに組み込まれます。

ADPを無効化し(デフォルト)、変換リストを指定すると、カスタム変換がモデルに組み込まれます。自動変換は実行されません。

ADPを無効化し(デフォルト)、変換リストを指定しないと、モデルには変換が組み込まれません。この場合、必要に応じてトレーニング・データセット、テスト・データセットおよびスコアリング・データセットを独自に変換する必要があります。各データセットには同じ変換を適用してください。

4.4.4 Oracle Data Miningの変換ルーチン

変換ルーチンについて説明します。

Oracle Data Miningには、DBMS_DATA_MINING_TRANSFORMパッケージの様々な変換手法を実装するルーチンが用意されています。

4.4.4.1 ビニング・ルーチン

Oracle Data Miningにおけるビニング手法について説明します。

ビニング計画の決定には、多数の要因が関与します。通常、値の数を少なくするとモデルがコンパクトになり、短時間でモデルを作成できるようになりますが、精度が低下する可能性もあります。

ビンの境界を適切に選択すると、モデルの質が大幅に向上する場合があります。たとえば、年齢をビンに分ける適切な手段としては、0から13は子供、13から19は10代、19から24は青年、24から35は社会人、などのように、対象とするグループに分割する方法があります。

次の表に、Oracle Data Miningで提供されているビニングの手法を示します。

表4-3 DBMS_DATA_MINING_TRANSFORMのビニング手法

ビニング方法 説明

上位N個の最頻出項目

この手法は、質的属性のビニングに使用できます。ユーザーはビンの数を指定します。発生頻度が最も高い値が最初のビンとしてラベル付けされ、発生頻度が2番目に高い値が2番目のビンとしてラベル付けされる、などとなります。残りの値はすべて追加のビンに含まれます。

教師ありビニング

教師ありビニングは高い知能を備える形式のビニングであり、ビンの境界はデータの重要な特性から導かれる。教師ありビニングでは、単一予測子のディシジョン・ツリーが作成され、ターゲットに関して特徴的なビンの境界が検出される。これは、量的属性または質的属性に使用できる。

等幅ビニング

等幅ビニングは、量的属性に使用できます。最大値から最小値を差し引いて値の範囲を計算し、その値の範囲が等間隔に分割されます。ビンの数は、ユーザーが指定することも、自動的に計算することもできます。等幅ビニングは通常、外れ値の処理とともに使用する必要があります。

分位ビニング

分位ビニングは量的なビニングの手法です。分位の計算には、SQL分析関数のNTILEが使用されます。ビンの境界は、各分位の最小値に基づいて計算されます。左右の境界が等しいビンはビンとして形成されないため、必要な数よりも少ないビン数となる可能性があります。

4.4.4.2 正規化ルーチン

Oracle Data Miningにおける正規化ルーチンについて説明します。

正規化のほとんどの手法では、1つの属性の範囲を別の範囲(通常は0から1または-1から+1)にマップします。

正規化は外れ値に対して非常に敏感です。外れ値の処理をしない場合、値の多くがきわめて小さな範囲にマップされ、情報の多くが失われてしまいます。

表4-4 DBMS_DATA_MINING_TRANSFORMの正規化手法

変換 説明

最小値と最大値による正規化

この手法では、最小値と最大値を使用して属性の正規化が計算される。シフト量には最小値が、スケールには最大値と最小値の差が使用される。

スケールによる正規化

この正規化手法でも、最小値と最大値が使用される。スケール正規化の場合、シフト量が0で、スケールがmax{abs(max), abs(min)}となる。

Zスコアによる正規化

この手法では、平均値と標準偏差を使用して属性の正規化が計算される。シフト量には平均値が、スケールには標準偏差が使用される。

4.4.4.3 外れ値の処理

列内の他の値から大幅に外れている値は、外れ値とみなされます。外れ値が存在すると、データに歪効果が現れ、正規化やビニングなどの変換の有効性が抑制される場合があります。

トリミングやクリッピングなど外れ値の処理手法を行うと、外れ値の影響を最小限に抑えることができます。

外れ値は、機器の異常に起因する不正確な読取りなど、問題のあるデータを表します。ただし、特にビジネス分野などの一部のケースでは、外れ値が完全に有効となることがあります。たとえば、人口調査のデータにおいて、富裕層に属する一部の個人の収入が一般層とは大きく異なる場合があります。この情報はデータの重要な部分であるため、外れ値として処理しないでください。外れ値の処理を決定するには専門知識が必要です。

4.4.4.4 外れ値の処理のルーチン

外れ値は極端な値であり、通常は平均値から標準偏差の数倍離れた値のことを指します。外れ値の影響を最小限に抑えるには、データをウィンザライズするかトリミングします。

ウィンザライズでは、属性の両端の値を特定の指定値に設定します。たとえば、ウィンザライズを90%とする場合、値の下位5%は5パーセンタイルの最小値と同じ値に設定され、値の上位5%は95パーセンタイルの最大値に一致する値に設定されます。

トリミングでは、末端値をNULLに設定します。これらの値はアルゴリズムで欠損値として処理されます。

外れ値が及ぼす影響はアルゴリズムによって異なります。通常、外れ値は、等幅ビニングおよびmin-max正規化において歪みを生じさせます。

表4-5 DBMS_DATA_MINING_TRANSFORMの外れ値の処理手法

変換 説明

トリミング

この手法では、非NULL値をソートし、一定の割合に基づいて末端値を計算し、その末端値をNULLに置き換えることによって数値列の外れ値を取り除く。

ウィンザライズ

この手法では、非NULL値をソートし、一定の割合に基づいて末端値を計算し、その末端値を指定値に置き換えることによって数値列の外れ値を取り除く。