この章では、2つのOracle Secure Backupテープ管理エディションとそれらの機能、およびOracle Secure Backup Cloud Moduleを説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Oracle Secure Backupは、UNIX、Linux、WindowsおよびNetwork Attached Storage(NAS)の分散環境において、高いパフォーマンスで異機種環境のデータ保護を実現する、集中管理されたテープ・バックアップ管理ソリューションです。Oracle Secure BackupではファイルシステムおよびOracle Databaseデータを保護して、IT環境向けの完全なテープ・バックアップ・ソリューションを提供します。テープ・バックアップやディスク・プール・バックアップ、Oracle Cloud Infrastructureへのバックアップに加えて、Oracle Secure Backupでは、Oracle Secure Backup Cloud Moduleを使用して、統合されたOracle Databaseのバックアップをサード・パーティのクラウド(インターネット)記憶域に配信します。
Oracle Secure Backupにはデータ・センター用に次の2つの集中バックアップ管理エディションが用意されており、それぞれ異なる開発シナリオおよびデプロイ・シナリオに適しています。
Oracle Secure Backupは、暗号化、複数の場所間の自動化されたテープ・ローテーション、NASデバイスの保護などの高度なデータ保護要件を持つ複数の異機種環境のサーバーで構成される分散環境に、理想的に適合しています。このエディションでは、テープ・デバイス、ディスク・プール・デバイスおよびクラウド記憶域デバイスをバックアップ先として使用できます。
Oracle Secure Backup Expressエディションは、テープにバックアップする単一サーバーOracle Database環境向けに信頼性のあるデータ保護を提供します。Oracle Secure Backup Expressは、Oracle Databaseで無償で利用でき、Oracle Secure Backupと同じコア製品です。Expressエディションは、テープ・ドライブ1台を直接接続した単一ホストに限定され、表1-1に示すように、高度な機能においていくつかの制限があります。
Oracle Secure Backupは、Oracle Secure Backupディスク・プール、構成済テープ・ドライブおよびクラウドに対する同時バックアップまたはリストア操作ごとにライセンス供与されています。Oracle Secure Backup集中バックアップ管理ソリューションを使用する場合、バックアップまたはリストア操作には、Oracle System Backup Tape (SBT) APIとの統合を介したOracle DatabaseまたはMySQLジョブ、およびファイルシステム・ジョブが含まれる場合があります。1度に1つのバックアップまたはリストア・ストリームが処理中の場合、構成済テープ・ドライブごとにOracle Secure Backupライセンスが必要です。Oracle Secure Backupディスク・プールおよびクラウド・デバイスは同時バックアップおよびリストア・ストリームに適応しており、そのため、ディスク・プールとクラウド・デバイスのそれぞれの同時ジョブ(ユーザー定義の同時ジョブ最大数)に対してライセンスが必要です。たとえば、Oracle Secure Backupドメインに4つのテープ・ドライブと、10個の同時ジョブを許可するように構成された1つのディスク・プール、および10個の同時ジョブを許可するように構成された1つのクラウド・デバイスが含まれている場合、合計24個のライセンスが必要です。
Oracle Secure Backup Cloud Moduleは、Recovery Manager(RMAN)を使用してOracle Databaseのバックアップをクラウド記憶域に提供し、データ・センターのOracle Secure Backupデータ保護管理エディションには依存しません。Oracle Secure Backup Cloud Moduleは、Oracle Secure Backup集中管理ソリューションまたは他のサード・パーティのメディア管理製品の補完または代替として使用できます。
表1-1に、Oracle Secure BackupおよびOracle Secure Backup Expressで使用可能な機能を示します。この表には、Oracle Secure BackupとOracle Secure Backup Expressの相違点が示されているため、ビジネスに適したデプロイを選択する際に参考にすることができます。
表1-1 Oracle Secure BackupおよびOracle Secure Backup Expressの機能
機能 | Oracle Secure Backup Express | Oracle Secure Backup |
---|---|---|
Oracle Databaseのオンライン・テープ・バックアップおよびリストアにおけるRMANとの統合 |
あり |
あり |
データベース以外のファイルシステム・データのテープへのバックアップおよびリストア |
あり |
あり |
ディスクへのバックアップおよびディスクからのリストア |
なし |
あり |
クラウドへのバックアップおよびクラウドからのリストア | なし | あり |
Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)環境のバックアップ |
なし |
あり |
Oracle Enterprise Manager Cloud Controlとの統合(Oracle Database 10gリリース2以上) |
あり |
あり |
バックアップ環境内の複数テープ・ドライブの使用 |
なし |
あり |
ファイバ接続型デバイスのサポート |
なし |
あり |
テープへのバックアップの暗号化 |
なし |
あり |
RMAN拡張バックアップ圧縮レベル |
なし |
あり |
ACSLSのサポート |
なし |
あり |
ボールティングのサポート(複数の場所間におけるテープ・ローテーションの自動化) |
なし |
あり |
分散サーバーまたはテープ・デバイス(あるいは両方)のネットワーク・バックアップ |
なし |
あり |
Oracle Cloud Infrastructure Object Storage Classicへのバックアップのサポート | なし | あり |
Oracle Secure Backup Cloud Moduleでは、Amazon S3固有のSBTライブラリを使用して、Oracle RMANとAmazon S3を統合します。
Oracle Secure Backup Cloud Moduleは、Amazon S3のバックアップ先へのバックアップ・ドメインによって同時に使用される各RMANチャネルに対してライセンス供与されます。Oracle Secure Backup Cloud Moduleのライセンスは、クラウドへのバックアップ用のRMANチャネルの数がOracle Secure Backup Cloud Moduleのライセンス数を超えないかぎり、複数のOracle Databaseのバックアップ間で共有できます。たとえば、Oracle Secure Backup Cloud Moduleのライセンスが12個ある環境の場合、3つのOracle Databaseのバックアップは、それぞれ4つのRMANチャネルを同時に使用することができます。また、他のRMANチャネルが使用されないかぎりは、1つのOracle Databaseのバックアップが一度に12個のRMANチャネルをすべて使用することもできます。
Oracle Databaseのバックアップに関連するクラウド記憶域のコストはAmazon S3により設定され、Oracleには依存しません。Oracle Secure Backup Cloud Moduleを使用してAmazon S3へのOracle RMANバックアップを直接実行する前に、Amazon S3のユーザー・アカウントを設定する必要があります。
注意:
Oracle Secure Backup Expressエディションでは、Oracle Secure Backup Cloud Moduleは使用できません。
Oracle Database Enterprise Edition(EE)では、高度なデータベース管理技術に関するライセンス付きオプションが提供されています。Oracle Secure Backupには、追加コストがかからない最適化の使用方法が2つあります。これらの最適化は、通常、Oracle Advanced Security OptionまたはOracle Advanced Compression Optionを購入した場合のみ使用できます。このOracle Secure Backupの特殊用途のライセンスは、次のとおりです。
RMANのバックアップの暗号化(Oracle Database 10gリリース2以上)
Oracle Secure Backupを使用した場合のみ、テープへの直接バックアップが可能です。サード・パーティのメディア管理製品を使用した場合は、直接バックアップはできません。
Oracle Secure Backup Cloud Moduleを使用した場合、Amazon S3を使用してクラウド記憶域への直接バックアップが可能です。
Oracle Secure Backupを使用した場合、Oracle Cloud Infrastructureを使用してクラウド記憶域への直接バックアップが可能です。
通常は必要なOracle Advanced Compressionオプションを必要としない、RMANバックアップ圧縮アルゴリズム。
Oracle Secure Backup ExpressエディションでOracle Secure Backup Cloud ModuleまたはOracle Secure Backup管理ソリューションを使用できない場合、RMANバックアップ圧縮の特殊用途のライセンスを使用できます。
Oracle Secure Backupの特殊用途のライセンスは、Oracle Advanced Security OptionのコンポーネントであるRMANのバックアップの暗号化、およびOracle Advanced Compression OptionのコンポーネントであるRMANバックアップ圧縮レベルに適用されます。Oracle Advanced Security OptionまたはOracle Advanced Compression Optionの追加機能を使用するには、これらのオプションのライセンスを別々に取得する必要があります。
Oracle Secure BackupでOracle Databaseのすべてのエディションをサポートしている場合、Oracle Database Enterprise Editionのバックアップ時のみ、特殊用途のライセンスが使用できます。
Oracle Secure Backup Expressは、Oracle Databaseにバンドルされています。Oracle Secure Backup Expressのサポートは、オラクルの従業員とコミュニティ専門家が監修する無償のOracleディスカッション・フォーラムを通じてのみ提供されます。
アップデートおよびテクニカル・サポートは、Oracleライセンスに対するテクニカル・サポートを継続する顧客に対してのみ、オラクル社のテクニカル・サポート・ポリシーに従って提供されます。Oracle Secure Backupはライセンスが個別に提供される製品のため、オラクル社のテクニカル・サポート・ポリシーに従ってサポートが提供されます。