2 Oracle HTTP Serverのアップグレードの準備

アップグレードは、サーバーがダウンしている間に実行されます。アップグレード前タスクには、時間を要するものが多くあります。少ないダウンタイムでアップグレードを成功させるため、これらのアップグレード前タスクを実行して、アップグレード向けに環境の計画と準備を行うことをお薦めします。

ノート:

動作保証済のWindowsオペレーティング・システムにOracle HTTP Serverをインストールする場合は、そのシステムにmsvcr90.dllライブラリ・ファイルとlinkinfo.dllライブラリ・ファイルが存在していることを確認してください。Oracle HTTP Serverには、これらのファイルが必要です。『Oracle HTTP Serverリリース・ノート』通知なしでHTTPDが終了する可能性のあるライブラリの欠落に関する項を参照してください。必須のライブラリが目的のシステムで取得できない場合は、Microsoft社のサポートに連絡して支援を求めてください。

次のチェックリストを使用して、アップグレード前タスクを確実に完了します。

アップグレード前チェックリスト

アップグレード前のチェックリストは、アップグレードを成功させて停止時間を少なくするために、アップグレードを開始する前に実行できるタスクを識別します。

アップグレードは、サーバーがダウンしている間に実行されます。このチェックリストは、ダウンタイムを少なくするため、時間がかかることが多い重要なアップグレード前タスクのうち、アップグレード前に実行できるものを識別することを目的としています。アップグレード・プロセスの開始前により多くの準備を実施できると、オフラインの時間が短くなります。

ノート:

実行するアップグレード前の手順は、既存のシステムの構成、アップグレードするコンポーネントおよびアップグレードと構成プロセスの結果として作成される環境によって異なります。各自の構成またはユースケースに当てはまるタスクのみを完了してください。

表2-1 Oracle Fusion Middleware 12cにアップグレードする前に実行するタスク

タスク 説明

必須

既存の環境の完全なバックアップを作成します。

アップグレード対象のスキーマが含まれているシステムに不可欠なファイルとデータベースをすべてバックアップします。アップグレードに失敗した場合は、アップグレード前の環境をリストアして、アップグレードを再開する必要があります。

「完全なバックアップの作成」を参照してください。

  • スキーマ・バージョン・レジストリ表がバックアップに含まれていることを確認します。「スキーマ・バージョン・レジストリ表のバックアップ」を参照してください。

  • 既存のドメインに含まれる起動スクリプトを変更した場合は、アップグレードの間そのファイルを一時的なディレクトリの場所(既存のドメインの外部)にコピーし、アップグレード後に再デプロイする必要があります。

オプション

使用する本番環境を、アップグレードのテスト用プラットフォームとしてクローンします。

システム・ファイルの完全なバックアップを作成することに加え、本番環境のクローンを作成することをお薦めします。この環境は、アップグレードをテストするために使用されます。

「本番環境のクローニング」を参照してください。

必須

サポートされているハードウェアおよびソフトウェア構成上で、製品をインストールおよびアップグレードしていることを確認します。

サポートされている最新のオペレーティング・システムを使用できない場合はアップグレードしないでください。サポート対象のすべての構成と同様、こうした要件を守れない場合は、アップグレードが失敗する可能性があります。

ハードウェアとソフトウェア(オペレーティング・システムも含む)の構成が最新の動作保証および要件のドキュメントでサポートされていることを確認してください。また、12c製品のディストリビューションをインストールする前に、サポート対象バージョンのJDKを使用していることを確認してください。

動作保証要件は頻繁に更新されるため、この情報は、アップグレードの開始直前に確認することをお薦めします。

アップグレードの前に、コンポーネントに最新のパッチが適用されていることを確認します。

動作保証とシステム要件の確認に関する項を参照してください。

32ビット・オペレーティング・システムの場合にのみ必須

アップグレードする前に、64ビット・オペレーティング・システムに移行します。

これは、現在サポート対象外の32ビット・オペレーティング・システムを実行している場合にのみ必要になります。

オプション

強化された暗号化(AES 256)を使用している場合は、セキュリティ・ポリシー・ファイルを更新します。

Fusion Middleware 12cで使用されているセキュリティ・アルゴリズムには、JDK用の追加のポリシー・ファイルが必要になるものがあります。

強化された暗号化(AES 256など)を使用する予定がある場合は、アップグレードの前に、必要な最新のファイルをJDKに適用することをお薦めします。

「強化された暗号化(AES 256)を使用する場合のポリシー・ファイルの更新」を参照してください。

オプション

アップグレードする前に期限切れまたは未使用のデータをパージします。

パフォーマンスを最適化するために、アップグレードした環境では使用されないデータとオブジェクトはパージすることをお薦めします。

「未使用データのパージ」を参照してください。

Oracle Databaseユーザーの場合にのみ必須

エディション・ベースの再定義(EBR)に対応したスキーマをアップグレードする前に、まず、データベース・サーバーに接続して、12c (12.2.1.3.0)のデータベース・サーバーにエディションを作成する必要があります。
エディション・ベースの再定義(EBR)データベースを使用している場合は、アップグレードを開始する前にエディションを作成する必要があります。

「エディション・ベースの再定義のためのサーバー上でのエディションの作成」を参照してください。

オプション

Upgrade Assistantを実行するために非SYSDBAユーザーを作成します。

Upgrade Assistantを実行するには、FMWユーザーを作成することをお薦めします。ユーザーFMWは、システムの管理者権限がなくてもUpgrade Assistantを実行できます。

「Upgrade Assistantを実行するための非SYSDBAユーザーの作成」を参照してください。

オプション

開始前に、現在ドメインで使用されているスキーマを特定します。

アップグレードの開始前に、アップグレード前のドメインに存在しているスキーマを把握しておくことが重要です。スキーマ所有者の名前とパスワード、および各スキーマのバージョンを知る必要があります。

完全なバックアップの作成

アップグレードを開始する前に、Oracle Fusion Middlewareスキーマをホストするデータベースを含め、システムに重要なファイルをすべてバックアップします。

バックアップには、SYSTEM.SCHEMA_VERSION_REGISTRY$表を含める必要があります。これにより、アップグレードが失敗したときに、コンテンツをアップグレード前の状態にリストアできるようになります。

Upgrade Assistantの「前提条件」画面では、アップグレードを実際に進める前に、バックアップが実行されていることについての確認を求められます。ただし、Upgrade Assistantは、バックアップが作成されていることを検証しない点に注意してください。

関連項目:

スキーマ・バージョン・レジストリ表のバックアップ

システム・バックアップには、SYSTEM.SCHEMA_VERSION_REGISTRY$表またはFMWREGISTRY.SCHEMA_VERSION_REGISTRY$表を含める必要があります。

Fusion Middlewareの各スキーマは、SYSTEM.SCHEMA_VERSION_REGISTRY$表内に1つの行を持ちます。Upgrade Assistantを実行して既存のスキーマを更新する際、正常に更新できなかった場合は、元のスキーマをリストアしてからやりなおす必要があります。Upgrade Assistantを実行する前に、既存のデータベース・スキーマおよびスキーマ・バージョン・レジストリをバックアップしてください。

ノート:

Upgrade Assistantを使用してスキーマをアップグレードする前に、完全なデータベース・バックアップを実行する必要があります。アップグレード中、バックアップが実行されていることを確認する必要があります。

カスタマイズされたドメインおよび環境設定のメンテナンス

アップグレード前の環境でドメイン生成スクリプト、サーバー起動スクリプトまたは構成ファイルを変更した場合、こうした変更はインストール、ドメイン更新および再構成操作の際に上書きされることに注意する必要があります。アップグレード後に引き続き使用できるように、カスタマイズされたファイルを共有ライブラリの場所に保存します。

どのドメインのインストールにも、動的に生成されたドメインおよびサーバーの起動スクリプト(setDomainEnvなど)が含まれています。これらのファイルは、インストールとアップグレードのプロセスで新しいバージョンに置き換えられます。カスタムのドメインレベルの環境設定を維持する場合は、スクリプトを直接変更するのではなく、アップグレード前に、カスタムのドメイン情報を保存しておく個別のファイルを作成することをお薦めします。

たとえば、ドメインのすべてのサーバーに適用されるサーバー起動パラメータをカスタマイズする場合は、setUserOverrides.cmd (Windows)またはsetUserOverrides.sh (UNIX)という名前のファイルを作成して、WebLogic Serverクラスパスにカスタム・ライブラリを追加する、サーバー実行用の追加のコマンドライン・オプションを指定する、または追加の環境変数を指定するように構成します。packおよびunpackコマンドを使用する際に、このファイルに追加されたカスタム設定はドメインのアップグレード操作中に保存され、リモート・サーバーに継承されます。

次の例は、setUserOverridesファイルでの起動のカスタマイズを示しています。
# add custom libraries to the WebLogic Server system claspath
  if [ "${POST_CLASSPATH}" != "" ] ; then
    POST_CLASSPATH="${POST_CLASSPATH}${CLASSPATHSEP}${HOME}/foo/fooBar.jar"
    export POST_CLASSPATH
  else
    POST_CLASSPATH="${HOME}/foo/fooBar.jar"
    export POST_CLASSPATH
  fi
 
# specify additional java command-line options for servers
JAVA_OPTIONS="${JAVA_OPTIONS}  -Dcustom.property.key=custom.value"

サーバーの起動中にsetUserOverridesファイルが存在する場合、このファイルが起動シーケンスに含まれ、このファイルにオーバーライドがあれば、有効になります。setUserOverridesファイルは、EXISTING_DOMAIN_HOME/binディレクトリに格納する必要があります。

ノート:

アップグレード前に、setUserOverridesスクリプトを作成できない場合は、Oracle WebLogic Serverのアップグレード起動スクリプトへのカスタマイズの再適用の説明に従って、設定を再適用する必要があります。

テストのための本番環境のクローニング

実際の本番環境の完全な作業用コピーを作成し、クローン環境をアップグレードし、アップグレードされたコンポーネントが期待どおりに動作することを確認してから(必ず確認した後で)、本番環境をアップグレードします。

テストのために本番環境のクローンを作成することをお薦めします。ただし、必須ではありません。

アップグレードは元に戻せません。ほとんどの場合、エラーが発生したときには、アップグレードを中止してバックアップから環境全体をリストアし、アップグレード・プロセスを最初からやり直す必要があります。潜在的なアップグレードの問題を開発環境で特定しておくと、無駄な停止時間を排除できます。

ノート:

このドキュメントでは、すべてのコンポーネントとオペレーティング・システムのクローニングについては扱いません。クローニング手順は、コンポーネントやオペレーティング・システムに固有です。概要としては、テスト・マシンにコンポーネント・ドメインのアップグレード前バージョンをインストールし、リポジトリ作成ユーティリティ(RCU)を使用して必要なスキーマを作成して、アップグレードを実行します。
本番環境のクローンでアップグレードを実行すると、次のようなメリットもあります。
  • アップグレードに関する問題を明らかにし、修正します。

  • エンドツーエンドのアップグレードを完了させる練習をします。

  • アップグレードのパフォーマンスおよびパージ・スクリプトがどのように役立つかを理解します。

  • アップグレードの完了までに必要な時間を理解します。

  • データベース・リソースの使用(一時表領域やPGAなど)について理解します。

ノート:

クローニングした本番環境でアップグレード前の準備状況チェックを実行すれば、データで発生しうるアップグレード時の問題は特定できますが、正常なアップグレードの万全を期すためには、クローニングした環境で完全なテスト・アップグレードを実行する必要があります。

動作保証およびシステム要件の確認

ご使用の環境がインストールに必要な要件を満たしていることを確認するには、動作保証マトリックスおよびシステム要件のドキュメントをレビューする必要があります。

ノート:

動作保証、システム要件および相互運用性情報を確認する場合、特に32ビットまたは64ビットのシステム要件を確認するようにしてください。32ビットまたは64ビットの環境専用として設計されているソフトウェアを明示的にダウンロードすることが重要です。

警告:

アップグレードを開始するに、現在の環境に最新のパッチが適用されていることを確認してください。動作保証は、特に明記がないかぎり、パッチが完全に適用された環境に基づいています。

環境が動作保証要件を満たしていることの確認

Oracleでは、動作保証済のすべてのシステムおよび環境で製品のパフォーマンスをテストおよび検証しています。製品をインストールする場合、サポートされているハードウェアまたはソフトウェア構成を使用します。

新しい動作保証要件が確認されると、その要件はすぐに該当する動作保証に関するドキュメントに追加されます。新しい動作保証要件は随時確認される場合があるため、動作保証に関するドキュメントはドキュメント・ライブラリの外部に置かれ、Oracle Technology Networkで提供されています。12c (12.2.1.3.0)の動作保証マトリックスに関する説明を参照してください。

システム要件と仕様の確認

ディスク領域、使用可能なメモリー、特定のプラットフォーム・パッケージおよびパッチ、その他のオペレーティング・システム固有の項目などのシステム要件が満たされていることを確認することが重要です。

Oracle Fusion Middlewareのシステム要件と仕様に関するドキュメントを使用して、動作保証の要件が満たされていることを確認してください。たとえば、12c (12.2.1.3.0)の動作保証マトリックスに、目的の製品が64ビットのOracle Linux 7上にインストールすることで動作保証されると示されている場合は、システム要件と仕様に関するドキュメントを使用して、そのOracle Linux 7システムが最低限必要な仕様(ディスク領域、使用可能なメモリー、特定のプラットフォーム・パッケージとパッチおよびその他のオペレーティング・システム固有のアイテムなど)を満たしていることを確認する必要があります。このドキュメントはOracle Technology Network (OTN)のドキュメント・ライブラリとは別の場所にあり、必要に応じて更新されます。

ノート:

アップグレード準備の一環としてOracle Fusion Middlewareリリース12cソフトウェアをインストールする際は、アップグレード前の既存のOracle Fusion Middlewareソフトウェアのインストールおよび構成に使用したものと同じユーザー・アカウントを使用する必要があります。UNIXオペレーティング・システムでは、これにより適切な所有者とグループが新しいOracle Fusion Middleware 12cのファイルとディレクトリに確実に適用されます。

32ビット環境を実行している場合は、追加のステップのセットを実行する必要があります。

32ビットから64ビット・オペレーティング・システムへの移行

オペレーティング・システムが32ビットの場合は、アップグレード前に、32ビット環境を64ビット・ソフトウェア環境に移行する必要があります。

Oracle Fusion Middleware 12c (12.2.1.2.0)ソフトウェアがすべて適切に64ビット・マシンで動作することを確認してから、Oracle Fusion Middleware 12c (12.2.1.3.0)へのアップグレードを実行してください。

次のタスクでは、ホストは、32ビット・ソース・マシンを指し、ターゲットは、新しい64ビット・ターゲット・マシンを指します。

ノート:

これらのステップは、データベースが別のホスト上にあり、移動されないことを前提としています。
オペレーティング・システムのアップグレードには、通常、次の内容が含まれます。

注意:

これらのステップは、オペレーティング・システム・アップグレード・プロセスの例として説明されているため、特定のオペレーティング・システムを更新する場合に実行する必要がある手順がすべて含まれている場合と含まれていない場合があります。詳細は、使用しているオペレーティング・システムのアップグレード・ドキュメントを参照してください。
アップグレードの64ビット・ソフトウェア要件をサポートするハードウェアを調達する

アップグレード・プロセスを開始する前に、サポートされている適切なターゲット・ハードウェアが存在することを確認してください。

すべてのプロセスを停止する

アップグレードの前に、すべてのプロセスを停止する必要があります。ホスト上で管理対象サーバー、管理サーバーおよびノード・マネージャが起動されている場合は、これらも含めて停止する必要があります。

管理対象サーバーを停止します

WebLogic Server管理対象サーバーを停止するには、stopManagedWebLogicスクリプトを使用します。

  • (UNIX) EXISTING_DOMAIN_HOME/bin/stopManagedWebLogic.sh managed_server_name admin_url

  • (Windows) EXISTING_DOMAIN_HOME\bin\stopManagedWebLogic.cmd managed_server_name admin_url

プロンプトが表示されたらユーザー名とパスワードを入力します。

管理サーバーを停止します

管理サーバーを停止するときに、管理サーバーで稼働しているプロセス(WebLogic Server管理コンソールやFusion Middleware Controlなど)も停止します。

管理サーバーを停止するには、stopWebLogicスクリプトを使用します。

  • (UNIX) EXISTING_DOMAIN_HOME/bin/stopWebLogic.sh

  • (Windows) EXISTING_DOMAIN_HOME\bin\stopWebLogic.cmd

プロンプトが表示されたら、管理サーバーのユーザー名とパスワード、およびURLを入力します。

ノード・マネージャの停止

ノード・マネージャを停止するには、それが実行されているコマンド・シェルを閉じます。

またはnodemanager.propertiesQuitEnabledの属性をtrueに設定した後(デフォルトはfalseです)、WLSTを使用して、ノード・マネージャに接続して停止できます。WebLogic Server WLSTコマンド・リファレンスstopNodeManagerを参照してください。

32ビット・ホスト・マシンからすべてのファイルをバックアップする

12c (12.2.1.2.0)デプロイメント全体の完全バックアップを作成したことを確認してから、アップグレード・プロセスを開始する必要があります。移行中に問題が発生した場合、これらのファイルを使用してプロセスを再度開始する必要があります。

ノート:

同一のマシンで32ビットから64ビットへアップグレードする場合、アップグレードが失敗した場合、ソース環境が破損するリスクがあります。

『Oracle Fusion Middlewareの管理』「環境のバックアップ」を参照してください。

アップグレード時に、次のコンテンツにアクセスする必要があります。

  • 12c_DOMAIN_HOME

  • 12c_ORACLE_HOME/wlserver/common/にある12c/nodemanagerディレクトリ

『Oracle Fusion Middlewareの管理』「環境のバックアップ」で説明されている一部のバックアップおよびリカバリ手順は、製品に固有です。完全バックアップを作成するまでアップグレードを続行しないでください。

12c (12.2.1.2.0)のホスト名およびIPアドレスを使用してターゲットの64ビット・マシンを設定する

ターゲット・マシンのホスト名およびIPアドレスはホストと同一にする必要があります。そのため、ソース・マシンのIPアドレスおよび名前を変更するか、ソース・マシンを停止してネットワークの干渉を回避する必要があります。

IPアドレスおよびホスト名を変更するプロセスは、オペレーティング・システムによって異なります。詳細は、オペレーティング・システムの管理ドキュメントを参照してください。

12c (12.2.1.2.0)のバックアップを32ビット・ホストから64ビット・ホストにリストアする

12c (12.2.1.2.0)で使用したものと同じディレクトリ構造を使用して、32ビット・ホストからバックアップしたファイルをリストアします。ターゲット・マシンのディレクトリ構造は、ホスト・マシンのディレクトリ構造と同じである必要があります。

詳細は、『Oracle Fusion Middleware管理者ガイド』環境のリカバリに関する項を参照してください。

12c (12.2.1.3.0)製品ディストリビューションをターゲット・マシンにインストールする

アップグレードには、ホーム外のアプローチをお薦めします。したがって、12c (12.2.1.3.0)製品ディストリビューションは、ターゲット・マシン上の新しいOracleホームでインストールする必要があります。

インストールするコンポーネントの詳細は、コンポーネント固有のインストール・ガイドを参照してください。

標準的なアップグレード手順を使用してターゲットの64ビット環境をアップグレードする

ターゲット・マシンに製品をインストールしたら、コンポーネント固有のアップグレード・ガイドで指定されたアップグレード・ユーティリティを使用して各製品コンポーネントを個々にアップグレードし、アップグレード後のタスクを実行する必要があります。

追加のコンポーネントをアップグレードする場合、コンポーネント固有のアップグレード・ガイドを参照してください。

ノート:

ノード・マネージャ・アップグレード手順では、元のノード・マネージャ・ファイルにアクセスする必要があります。32ビット・ホスト・マシンからすべてのファイルをバックアップする手順の一部として、32ビット・ソース・マシンからバックアップされた12c (12.2.1.2.0)ノード・マネージャ・ファイルを使用します。

Oracle Fusion Middlewareをホストしているデータベースがサポートされていることの確認

Oracle Fusion Middleware 12c (12.2.1.3.0)を実行する前に、サポートされるOracle Databaseを必須のスキーマで構成しておく必要があります。

アップグレードの開始前に、Fusion Middlewareのデータベース要件を確認して、Oracle Fusion Middlewareをホストするデータベースがサポート対象であることと、アップグレードの実行に十分な領域が用意されていることを確認します。12c (12.2.1.3.0)の動作保証マトリックスに関する説明を参照してください。

ノート:

サポート対象外になったデータベース・バージョンを使用している場合は、アップグレードの開始前に、サポート対象バージョンにアップグレードする必要があります。『Oracle Fusion Middlewareのアップグレードのプランニング』12c (12.2.1.3.0)のためのOracle Databaseのアップグレードおよび準備」を参照してください。

このリリースのOracle Fusion MiddlewareでJDKが動作保証されていることの確認

このマニュアルの発行時点で、12c (12.2.1.3.0)の動作保証済JDKは、1.8.0_131です。

Oracle Technology Network (OTN)で、Oracle Fusion Middlewareのサポート対象システム構成 に関する情報を参照して、現在使用しているJDKがサポートされていることを確認します。

サポート対象外のJDKを使用している場合やJDKをインストールしていない場合は、次に示すWebサイトから必須のJava SE JDKをダウンロードする必要があります。
http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/downloads/index.html

JDKは、Oracleホームの外部にインストールしてください。Oracle Universal Installerにより指定されたOracleホーム・ディレクトリが空であることが検証され、空のディレクトリが指定されていなければインストールは行われません。JDKをOracleホームにインストールした場合、今後の操作で問題が発生することがあります。このため、/home/oracle/products/jdkディレクトリにJDKをインストールすることをお薦めします。

汎用インストーラとプラットフォーム固有のインストーラの相違点の詳細は、Oracle Fusion Middlewareのダウンロード、インストールおよび構成のREADMEファイルの汎用とプラットフォーム固有のディストリビューションとの相違点の理解に関する項を参照してください。

強化された暗号化(AES 256)を使用する場合のポリシー・ファイルの更新

アップグレードされた環境で、Advanced Encryption Standard (AES 256),など強化された暗号化を使用する予定がある場合は、アップグレードする前に、最新の必要なポリシー・ファイルをJDKに適用することをお薦めします。

Javaプラットフォームでは、暗号化、公開キーインフラストラクチャ、認証、安全な通信、アクセス制御など、主要なセキュリティ分野に渡る一連のAPIが定義されています。これらのAPIによって、開発者はアプリケーション・コードにセキュリティ・メカニズムを簡単に統合できます。

Fusion Middleware 12c (12.2.1.3.0)で使用されているセキュリティ・アルゴリズムには、JDK用の追加のポリシー・ファイルが必要になるものがあります。「Java暗号化アーキテクチャOracleプロバイダのドキュメント」を参照してください。

ノート:

アップグレードの開始前に、これらのポリシー・ファイルをJDKに適用せずに強化された暗号化の使用を試みると、アップグレードに失敗することがあります。その場合は、アップグレード前環境全体をリストアして、アップグレードを最初からやり直す必要があります。

未使用データのパージ

アップグレード前に未使用データをパージし、パージの手法を維持することで、アップグレード・プロセスを最適化できます。

一部のコンポーネントには、自動化されたパージ・スクリプトがあります。パージ・スクリプトを使用する場合、パージが完了するまで待ってから、アップグレード・プロセスを開始してください。アップグレード・アシスタントを使用してスキーマをアップグレードするときに、パージ・スクリプトを実行していると、アップグレードは失敗する可能性があります。

エディション・ベースの再定義のためのサーバー上でのエディションの作成

エディション・ベースの再定義(EBR)に対応したスキーマをアップグレードする前に、まず、データベース・サーバーに接続して、12c (12.2.1.3.0)のデータベース・サーバーにエディションを作成する必要があります。

エディションベースの再定義を使用すると、アプリケーションの使用中にアプリケーションのデータベース・オブジェクトをアップグレードできるため、停止時間を最小限に抑えることや解消することが可能です。これは、エディションと呼ばれるプライベート環境でデータベース・オブジェクトを変更(再定義)することにより実行します。すべての変更が実行およびテストされている場合のみ、アプリケーションの新バージョンをユーザーが使用できるようにしてください。

ノート:

このタスクは、DBA権限を持つOracle Databaseユーザーが実行する必要があります。

エディション・ベースの再定義(EBR)に対応したスキーマをアップグレードする前に、まず、データベース・サーバーに接続して、12c (12.2.1.3.0)のデータベース・サーバーにエディションを作成する必要があります。12c (12.2.1.2.0)の新しいエディションは、既存の12cまたは12c (12.2.1.3.0)エディションの子である必要があります。

データベース・サーバーにエディションを作成するには、SYSユーザー(またはDBA権限のある別のOracleユーザー)としてサインインし、次のコマンドを入力します。

create edition Oracle_FMW_12_2_1_4_0 as child of Oracle_FMW_12_2_1_3_0;

ここで、Oracle_FMW_12_2_1_3_0は、12.2.1.3スキーマを作成したときにRCU 12.2.1.3で指定するエディション名の例です。エディションを作成する際は、実際に使用する名前を入力してください。

次に示すメッセージは、エディションの作成が成功したことを示しています。

エディションが作成されました。

アップグレードの間、再構成ウィザードを実行して既存のドメインを再構成するよう要求されます。再構成ウィザードの実行前に、データベースのデフォルト・エディションを指定する必要があります。次に示すようなSQLコマンドを使用して、データベースのデフォルト・エディション名を手動で設定します。

ALTER DATABASE DEFAULT EDITION = Oracle_FMW_12_2_1_4_0;

Upgrade Assistantを実行するための非SYSDBAユーザーの作成

Upgrade Assistantを実行するために、FMWという非SYSDBAユーザーを作成することをお薦めします。このユーザーには、スキーマを変更するために必要な権限を付与しますが、完全な管理者権限は付与しません。

SYSDBAはデータベースの作成、起動、停止、バックアップまたはリカバリなどの高度な管理操作を実行するために必要な管理権限です。SYSDBAシステム権限は、完全な権限を持つデータベース管理者が使用します。SYSDBA権限で接続すると、通常はユーザー名に関連付けられているスキーマではなく、デフォルトのスキーマで接続が確立されます。SYSDBAの場合、このスキーマはSYSです。デフォルト・スキーマへのアクセスは非常に強力な権限となる場合があります。たとえば、ユーザーSYSとして接続する場合、データ・ディクショナリの表における権限は無制限となります。このため、SYSDBA以外のユーザーを作成してスキーマをアップグレードすることをお薦めします。次に示す権限は、Upgrade Assistantを起動する前にユーザーFMWに付与する必要があります。

ノート:

SYSDBAではないユーザーFMWは、アップグレード・アシスタントを実行するためにのみ作成されます。このステップが完了したら、このFMWユーザーを削除してください。アップグレード・アシスタントを実行するために必要な権限は、リリースごとに異なる可能性があります。
デフォルトでは、v$xatrans$表は存在しません。この表を作成するには、このユーザーを作成する前にXAVIEW.SQLスクリプトを実行する必要があります。さらに、v$xatrans$表のgrant select権限は、Oracle Identity Governanceでのみ必要です。構成にOracle Identity Governanceが必要ない場合、またはv$xatrans$表が存在しない場合は、次の行をスクリプトから削除します。
   grant select on v$xatrans$ to FMW with grant option;
次の例では、passwordはFMWユーザーに対して設定されたパスワードです。権限を付与する際に、実際のパスワードを指定していることを確認します。
create user FMW identified by password;
grant dba to FMW;
grant execute on DBMS_LOB to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_OUTPUT to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_STATS to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aqadm to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aqin to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aqjms to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_aq to FMW with grant option;
grant execute on utl_file to FMW with grant option;
grant execute on dbms_lock to FMW with grant option;
grant select on sys.V_$INSTANCE to FMW with grant option;
grant select on sys.GV_$INSTANCE to FMW with grant option;
grant select on sys.V_$SESSION to FMW with grant option;
grant select on sys.GV_$SESSION to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_jobs to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_job_run_details to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_running_jobs to FMW with grant option;
grant select on dba_aq_agents to FMW with grant option;
grant execute on sys.DBMS_SHARED_POOL to FMW with grant option;
grant select on dba_2pc_pending to FMW with grant option;
grant select on dba_pending_transactions to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_FLASHBACK to FMW with grant option;
grant execute on dbms_crypto to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_REPUTIL to FMW with grant option;
grant execute on dbms_job to FMW with grant option;
grant select on pending_trans$ to FMW with grant option;
grant select on dba_scheduler_job_classes to FMW with grant option;
grant select on sys.DBA_TABLESPACE_USAGE_METRICS to FMW with grant option;
grant select on SYS.DBA_DATA_FILES to FMW with grant option;
grant select on SYS.V_$ASM_DISKGROUP to FMW with grant option;
grant select on v$xatrans$ to FMW with grant option;
grant execute on sys.dbms_system to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_SCHEDULER to FMW with grant option;
grant select on dba_data_files to FMW with grant option;
grant execute on UTL_RAW to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_XMLDOM to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_APPLICATION_INFO to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_UTILITY to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_SESSION to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_METADATA to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_XMLGEN to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_DATAPUMP to FMW with grant option;
grant execute on DBMS_MVIEW to FMW with grant option;
grant select on ALL_ENCRYPTED_COLUMNS to FMW with grant option;
grant select on dba_queue_subscribers to FMW with grant option; 
grant execute on SYS.DBMS_ASSERT to FMW with grant option;
grant select on dba_subscr_registrations to FMW with grant option;
grant manage scheduler to FMW;

Oracle Identity Manager (OIM)スキーマをアップグレードする場合は、FMWユーザーに次の追加の権限が付与されていることを確認します。

grant execute on SYS.DBMS_FLASHBACK to fmw with grant option;
grant execute on sys.DBMS_SHARED_POOL to fmw with grant option;
grant execute on SYS.DBMS_XMLGEN to FMW with grant option;
grant execute on SYS.DBMS_DB_VERSION to FMW with grant option;
grant execute on SYS.DBMS_SCHEDULER to FMW with grant option;
grant execute on SYS.DBMS_SQL to FMW with grant option;
grant execute on SYS.DBMS_UTILITY to FMW with grant option;
grant ctxapp to FMW with admin option;
grant execute on SYS.DBMS_FLASHBACK TO FMW with grant option;
grant create MATERIALIZED VIEW to FMW with admin option;
grant all on SCHEMA_VERSION_REGISTRY TO FMW with grant option;
grant create SYNONYM to FMW with admin option;
grant execute on CTXSYS.CTX_ADM to FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_CLS TO FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_DDL TO FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_DOC TO FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_OUTPUT TO FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_QUERY TO FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_REPORT TO FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_THES TO FMW with grant option;
grant execute on CTXSYS.CTX_ULEXER TO FMW with grant option;
grant create JOB to FMW with admin option;