8 エンタープライズ・デプロイメント用のホスト・コンピュータの準備
エンタープライズ・デプロイメント・トポロジを構成する前に、各コンピュータまたはサーバー上で一連のタスクを実行することが重要です。ここで必要なのは、各ホストについてハードウェアおよびオペレーティング・システムの必要最小限の要件を確認すること、オペレーティング・システムでユーザーとグループを構成すること、Unicodeサポートを有効にすること、必要な共有記憶域システムをホストにマウントすること、および各ホストで必要な仮想IPアドレスを有効化することです。
この章では、エンタープライズ・デプロイメントをホストする各コンピュータまたはサーバーから実行する必要があるタスクについて説明します。
- 各ホストの最小ハードウェア要件の検証
エンタープライズ・デプロイメントに必要なハードウェアを取得したら、各ホスト・コンピュータが最小限のシステム要件を満たしているかどうかを確認することが重要です。 - Linuxオペレーティング・システムの要件の検証
この項で、エンタープライズ・デプロイメント用の標準的なLinuxオペレーティング・システムの設定を確認できます。 - オペレーティング・システムのユーザーおよびグループの構成
エンタープライズ・デプロイメントをホストする各コンピュータで定義するユーザーおよびグループを、この項でリストします。 - Unicodeサポートの有効化
Unicodeの文字を処理できるように、オペレーティング・システムでUnicodeのサポートを有効化することをお薦めします。 - DNSオプションの設定
- ユーザーおよびグループの構成
- NTP (時間)サーバーを使用するためのホストの構成
- NIS/YPホストを使用するためのホストの構成
- 各ホストへの必要な共有ファイル・システムのマウント
共有記憶域を、アクセスが必要なすべてのサーバーにマウントする方法を理解することが重要です。 - 各ホストでの必要な仮想IPアドレスの有効化
エンタープライズ・デプロイメント用にホストを準備するには、各ホストで必要な仮想IPアドレスを有効化する必要があります。
親トピック: エンタープライズ・デプロイメントの準備
各ホストの最小ハードウェア要件の検証
エンタープライズ・デプロイメントに必要なハードウェアを取得したら、各ホスト・コンピュータが最小限のシステム要件を満たしているかどうかを確認することが重要です。
エンタープライズ・デプロイメントに必要なハードウェアを取得したら、各ホスト・コンピュータにログインし、「エンタープライズ・デプロイメント・トポロジ用のハードウェアおよびソフトウェアの要件」に示すシステム要件を確認します。
Oracle Exalogicなどの仮想サーバー環境にデプロイしている場合、仮想サーバーそれぞれが最小要件を満たしていることを確認します。
十分なローカル・ディスク記憶域があり、共有記憶域が「エンタープライズ・デプロイメント用のファイル・システムの準備」で説明されているように構成されていることを確認します。
十分なスワップ領域および一時領域を確保します。具体的には、次のとおりです。
-
スワップ領域: システムに500 MB以上ある必要があります。
-
一時領域:
/tmp
ディレクトリに500 MB以上の空き領域が必要です。
Linuxオペレーティング・システムの要件の検証
この項では、エンタープライズ・デプロイメント用の標準的なLinuxオペレーティング・システムの設定を確認できます。
ホスト・コンピュータが最小オペレーティング・システム要件を満たしていることを確認するには、動作保証済のオペレーティング・システムがインストールされていることと、そのオペレーティング・システムに必要なパッチがすべて適用されていることを確認してください。
さらに、エンタープライズ・デプロイメント用の一般的なLinuxオペレーティング・システムの設定について、次の項を確認してください。
Linuxのカーネル・パラメータの設定
表8-1に示すカーネル・パラメータおよびシェル制限の値は、単なる推奨値です。これらの値をチューニングしてシステムのパフォーマンスを最適化することをお薦めします。カーネル・パラメータの調整については、ご使用のオペレーティング・システムのマニュアルを参照してください。
カーネル・パラメータは、トポロジのすべてのノードで表8-1の最小値以上の値に設定する必要があります。
次の表の値は、現行のLinuxの推奨値です。Linuxおよびその他のオペレーティング・システムの最新の推奨値は、Oracle Fusion Middlewareのシステム要件と仕様を参照してください。
データベースをホストにデプロイしている場合、追加のカーネル・パラメータを変更する必要がある場合があります。Oracle Grid Infrastructureインストレーション・ガイドfor Linuxで、12c (12.2.1.3.0)カーネル・パラメータの構成を参照してください。
表8-1 UNIXのカーネル・パラメータ
パラメータ | 値 |
---|---|
kernel.sem |
256 32000 100 142 |
kernel.shmmax |
4294967295 |
これらのパラメータを設定するには:
親トピック: Linuxオペレーティング・システム要件の確認
UNIXシステムでのオープン・ファイル制限とプロセス数の設定
UNIXオペレーティング・システムでは、オープン・ファイル制限
は重要なシステム設定です。ホスト・コンピュータ上で動作するソフトウェアのパフォーマンス全体に影響を及ぼす可能性があります。
Oracle Fusion Middlewareエンタープライズ・デプロイメントに適したオープン・ファイル制限
の設定のための指針として、「 ホスト・コンピュータのハードウェア要件」を参照してください。
注意:
次の例はLinuxオペレーティング・システム用です。オペレーティング・システムのドキュメントを確認して、システムで使用するコマンドを判別します。
詳細は、次の項を参照してください。
現在開いているファイル数の表示
次のコマンドでオープンになっているファイル数を確認できます。
/usr/sbin/lsof | wc -l
オープン・ファイル制限を確認するには、次のコマンドを使用します。
Cシェル:
limit descriptors
Bash:
ulimit -n
DNSまたはホスト・ファイルでのIPアドレスとホスト名の確認
Oracleソフトウェアのインストールを開始する前に、ホストのIPアドレス、完全修飾ホスト名および短縮名がすべてDNSサーバーに登録されていることを確認します。または、ローカルhosts
ファイルを使用して、次のようなエントリを追加することもできます。
IP_Address Fully_Qualified_Name Short_Name
例:
10.229.188.205 host1.example.com host1
障害リカバリに備えて、別のデータ・センターの別のIPにマップする別名を使用することをお薦めします。これらの別名を使用して、一部のコンポーネントのリスニング・アドレスも構成できます。
このガイドでは、ワークブックのハードウェア - ホスト・コンピュータタブで指定される抽象ホスト名(SOAHOSTnとADMINVHN)をこの別名として使用します。したがって、/etc/hosts
は次の例のようになります。
10.229.188.204 host1-vip.example.com host1-vip ADMINVHN 10.229.188.205 host1.example.com host1 SOAHOST1 10.229.188.206 host2.example.com host2 SOAHOST2 10.229.188.207 host3.example.com host3 WEBHOST1 10.229.188.208 host4.example.com host4 WEBHOST2
親トピック: Linuxオペレーティング・システム要件の確認
オペレーティング・システム・ユーザーおよびグループの構成
エンタープライズ・デプロイメントをホストする各コンピュータで定義するユーザーおよびグループを、この項でリストします。
グループ
各ノードに次のグループを作成する必要があります。
-
oinstall
-
dba
ユーザー
各ノードに次のユーザーを作成する必要があります。
-
nobody
: 権限のないユーザー。 -
oracle
: Oracleソフトウェアの所有者。別の名前も使用できます。このアカウントのプライマリ・グループはoinstall
にする必要があります。このアカウントは、dba
グループにも属している必要があります。
注意:
-
グループ
oinstall
は、Oracleソフトウェアが使用する共有記憶域およびローカル記憶域のすべてのファイル・システムに対する書込み権限を持っている必要があります。 -
各グループは、ノードごとに同じグループIDを持っている必要があります。
-
各ユーザーは、ノードごとに同じユーザーIDを持っている必要があります。
Unicodeサポートの有効化
Unicodeの文字を処理できるように、オペレーティング・システムでUnicodeのサポートを有効化することをお薦めします。
オペレーティング・システムの構成がOracle Fusion Middleware製品でサポートされる文字の動作に影響を与えることがあります。
UNIXオペレーティング・システムでは、LANG
とLC_ALL
の各環境変数をUTF-8文字セットを使用したロケールに設定し、Unicodeサポートを有効化することを強くお薦めします。これにより、Unicodeのすべての文字が処理できるようになります。たとえば、Oracle SOA SuiteテクノロジはUnicodeに基づいています。
オペレーティング・システムがUTF-8以外のエンコードを使用するように構成されている場合、Oracle SOA Suiteコンポーネントが予期しない動作をする可能性があります。たとえば、ASCII以外のファイル名の場合は、ファイルにアクセスできず、エラーが発生する可能性があります。オペレーティング・システムの制約によって発生する問題はサポート対象外となります。
ユーザーおよびグループの構成
次のグループおよびユーザーをローカルに作成するか、NISまたはLDAPサーバーに作成します。このユーザーはOracleソフトウェア所有者です。
次の手順は、ユーザーをローカルで作成する場合を対象にしています。グループおよびユーザーをNISサーバーに作成する方法の詳細は、NISドキュメントを参照してください。
グループ
各ノードに次のグループを作成する必要があります。
-
oinstall
-
dba
グループを作成し、次のコマンドをrootとして使用する手順:
groupadd groupname
次に例を示します
groupadd -g 500 oinstall groupadd -g 501 dba
ユーザー
各ノードに次のユーザーを作成する必要があります。
-
oracle
: Oracleソフトウェアの所有者。別の名前も使用できます。このアカウントのプライマリ・グループはoinstall
にする必要があります。このアカウントは、dba
グループにも属している必要があります。
注意:
-
グループ
oinstall
は、Oracleソフトウェアが使用する共有記憶域およびローカル記憶域のすべてのファイル・システムに対する書込み権限を持っている必要があります。 -
各グループは、ノードごとに同じグループIDを持っている必要があります。
-
各ユーザーは、ノードごとに同じユーザーIDを持っている必要があります。
-
NFSv4マウント要件のため、ユーザーおよびグループはNISサーバーに存在する必要があります。
ローカル・ユーザーを作成するには、次のコマンドをroot
として使用します。
useradd -g primary group -G optional groups -u userid username
例:
useradd -g oinstall -G dba -u 500 oracle
注意:
このユーザーをNISに作成する場合は、NISドキュメントを参照してください。
NTP (時間)サーバーを使用するためのホストの構成
デプロイメント内のすべてのサーバーは同じ時間である必要があります。これを実現する最適な方法はNTPサーバーを使用することです。NTPサーバーを使用するようにホストを構成する手順は、次のとおりです。
NIS/YPホストを使用するためのホストの構成
NFSバージョン4を使用する場合は、ディレクトリ・サービスまたはNIS (ネットワーク・インフォメーション・サーバー)を構成します。まだ組織に用意されていない場合は、ZFSストレージ・アプライアンスのビルトインを使用します。Oracle Fusion Middleware Exalogicマシン・オーナーズ・ガイドのExalogicでのNFSバージョン4 (NFSv4)の構成に関する項を参照してください。
NISホストを構成した後、このサーバーを使用するように各計算ノードを構成します。開始する前に、使用するNISサーバーのホスト名を特定します。
各ホストへの必要な共有ファイル・システムのマウント
共有記憶域を、アクセスが必要なすべてのサーバーにマウントする方法を理解することが重要です。
「エンタープライズ・デプロイメントをインストールおよび構成する場合の共有記憶域の推奨事項」の説明に従って構成された共有記憶域が、それを使用するホスト上で使用可能になっている必要があります。
エンタープライズ・デプロイメントでは、ハードウェア記憶域ファイラが存在することと、それがデプロイメント用に取得した各ホスト・コンピュータに接続されて使用可能になっていることが前提となっています。
共有記憶域を、アクセスが必要なすべてのサーバーにマウントする必要があります。
各ホストでは、適切な権限をNetwork Attached Storage (NAS)またはStorage Area Network (SAN)内で設定し、共有記憶域への書込みを可能にする必要があります。
共有記憶域のマウントについては、組織のベスト・プラクティスに従ってください。この項では、NFS記憶域を使用してLinuxでこれを行う方法の例を示します。
共有記憶域の場所を作成してマウントし、SOAHOST1とSOAHOST2が2つの別々のボリュームへのバイナリ・インストールである場合に、それらが同じ場所を参照できるようにする必要があります。
「エンタープライズ・デプロイメントをインストールおよび構成する場合の共有記憶域の推奨事項」を参照してください。
次のコマンドを使用して、共有記憶域をNAS記憶域デバイスからLinuxホストにマウントします。別のタイプの記憶域デバイスまたはオペレーティング・システムを使用している場合、これを行う方法の詳細は製造元のドキュメントを参照してください。
注意:
共有記憶域のファイル・システムの作成に使用されるユーザー・アカウントは、これらのファイルに対する読取り、書込みおよび実行権限を持ちます。オペレーティング・システム・グループにおける他のユーザーは、ファイルの読取りや実行は可能ですが、書込み権限はありません。
『Oracle Fusion Middlewareインストレーション・プランニング・ガイド』で、インストール・ユーザーの選択に関する項を参照してください。
次の例では、nasfiler
は共有記憶域ファイラを表します。これらは単なる例であることに注意してください。通常、これらの共有記憶域場所のマウントは、UNIXシステム上の/etc/fstabs
ファイルを使用して行う必要があります。これにより、再起動しても、これらのデバイスのマウントが維持されます。詳細は、オペレーティング・システムのドキュメントを参照してください。
Linux上で共有記憶域をマウントする手順は、次のとおりです。
-
「エンタープライズ・デプロイメントの共有記憶域ボリュームの概要」に説明されているとおりにSOAHOST1にマウント・ディレクトリを作成してから、共有記憶域をマウントします。例:
mount -t nfs nasfiler:VOL1/oracle/products/ /u01/oracle/products/
-
VOL2を使用してSOAHOST2で手順を繰り返します。
共有記憶域の構成の検証
先ほど構成した共有記憶域の場所にテスト・ファイルを作成し、新しくマウントしたディレクトリでファイルの読取りおよび書込みができることを確認します。
例:
$ cd newly mounted directory
$ touch testfile
所有者と権限が正しいことを確認します。
$ ls -l testfile
ファイルを削除します。
$ rm testfile
注意:
共有記憶域には、NASデバイスまたはSANデバイスを使用できます。次は、NASデバイスの記憶域をSOAHOST1から作成する例を示しています。オプションは、具体的な記憶域デバイスに応じて異なる場合があります。
mount -t nfs -o rw,bg,hard,nointr,tcp,vers=3,timeo=300,rsize=32768,wsize=32768 nasfiler:VOL1/Oracle/u01/oracle
使用する環境に適切なオプションについては、ストレージ・ベンダーとマシン管理者と相談してください。
各ホストでの必要な仮想IPアドレスの有効化
エンタープライズ・デプロイメント用にホストを準備するには、各ホストで必要な仮想IPアドレスを有効化する必要があります。
エンタープライズ・デプロイメント用に各ホストを準備するには、「エンタープライズ・デプロイメント用の必須IPアドレスの予約」で説明されている仮想IP (VIP)アドレスを有効化する必要があります。
すでにVIPアドレスおよびホスト名を予約済であり、ネットワーク管理者がそれらを有効化していることを前提とします。その後、適切なホストでVIPを有効化できます。
エンタープライズ・トポロジで使用する仮想IPアドレスは、サーバー全体の移行(選択した管理対象サーバーおよびクラスタの場合)または手動フェイルオーバー(管理サーバーの場合)によって管理されるため、永続化されません。
Oracle Enterprise Linux 6以降では、"ifconfig
"コマンドが廃止され、"ip
"コマンドに置き換えられました。
root
として実行します。