32 Oracle Secure Backup Cloud Module for Amazon S3
Oracle Secure Backup(OSB)Cloud Moduleを使用すると、Amazon Simple Storage Service(S3)が提供するインターネットベースのデータ・ストレージ・サービスを、RMANのバックアップ・タスクとリカバリ・タスクで利用できます。
32.1 Oracle Secure Backup Cloud Moduleを使用したクラウドでのバックアップについて
Oracle Secure Backup Cloud Moduleは、Oracle Secure Backup製品ファミリの一部であり、Oracle DatabaseをAmazon S3 Cloudおよびテープにバックアップする柔軟性があります。このクラウド製品により、Recovery Manager (RMAN)機能と完全に統合され、ローカル・ディスク・バックアップをオフサイト・ストレージとして直接Amazon S3に送信できます。
Oracle Secure Backup Cloud Moduleは、Oracle DatabaseのS3ストレージへのバックアップを効率的に処理します。また、Oracle Secure Backup Cloud Moduleで作成したバックアップは、Oracle Enterprise ManagerなどのツールやカスタマイズしたRMANスクリプトで使用できます。Oracle Secure Backup Cloud Moduleは、オペレーティング・システム・ファイルをバックアップしません。
Oracle Secure Backup Cloud Moduleでは、RMAN SBT(テープへのシステム・バックアップ)インタフェースによりOracleバックアップ操作を実行できるようにAmazon S3機能を拡張することができます。Oracle Secure Backup Cloud Moduleは、社内データ・ストレージの保持や詳細に構成されたローカル・バックアップ・インフラストラクチャの管理に適した、管理しやすくコスト効率の高いスケーラブルな代替手段を提供します。
従来のテープベースのオフサイト・バックアップと比較すると、Oracle Secure Backup Cloud Moduleにはいくつかのメリットがあります。
-
継続的にアクセス可能
Amazon S3ストレージに格納されるOracle Secure Backup Cloud Moduleバックアップには、常にアクセス可能です。クラウド・ストレージ・サービスの可用性とアクセスのモデルによって、組織はリカバリ操作を効率化できます。たとえば、リストアを実行する前にテープを発送してロードする必要はありません。Enterprise Managerのような使い慣れた標準的なツールを使い続けることもでき、組織で現在使用しているスクリプトを引き続き使用してバックアップ・タスクおよびリストア・タスクを実行できます。継続的かつ簡単にバックアップにアクセスできるため、バックアップのリストアに費やされる時間が大幅に削減される可能性があります。
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向上した信頼性
S3ストレージはディスク・ベースであるため、テープ・メディアよりも本質的に信頼性があります。インターネット・ストレージ・サービスでは、可用性とスケーラビリティを確保するために、データの複数の冗長コピーが保持されるため、信頼性の向上というメリットが組織とデータにもたらされます。
ノート:
Oracle Secure Backup Cloud Moduleに関するよくある質問(FAQ)は、My Oracle Supportのノート740226.1を参照してください。32.2 Amazon S3へのサインアップ - AWSアカウント
Oracle Secure Backup Cloud Backup Moduleを使用してAmazon S3にアクセスする前に、AWSアカウントを作成する必要があります。アカウントを作成するには、AWS S3利用分の請求に関してAmazonへの支払い方法を指定する必要があります。
32.3 Oracle Secure Backup Cloud Moduleのインストール
Amazon S3 Cloudにバックアップする前に、ターゲット・データベース・サーバーにOracle Secure Backup (OSB) Cloud Moduleをインストールする必要があります。Oracle Databaseをインストールすると、バックアップ・モジュール・インストーラ・ファイル(osbws_installer.zip
)がOracleホーム・ディレクトリに配置されます。
表32-1 OSB Cloud Moduleインストーラのファイル名と場所
OSB Cloud Moduleインストーラのファイル名 | UNIXおよびLinuxシステム上の場所 | Windowsシステム上の場所 |
---|---|---|
|
|
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32.3.1 Oracle Secure Backup Cloud Moduleの前提条件
Oracle Database 9iリリース2以上をAmazon S3 Cloudにバックアップできます。
次の表は、サポートされているデータベース・バージョン、オペレーティング・システムおよびOracle Secure Backup Cloud Moduleを使用するための前提条件を示しています。
表32-2 Oracle Secure Backup Cloud Moduleのソフトウェアの前提条件
ハードウェア/ソフトウェア | バージョン |
---|---|
Java SE Development Kit (JDK) |
ターゲットのOracle DatabaseリリースでサポートされているデフォルトのJDKバージョン。 |
Oracle Database |
Oracle Database 9 ノート: オペレーティング・システム・ファイルは、RMANまたはRMAN SBTインタフェースではバックアップできません。 |
S3 Backupインストーラ・ファイル |
インストーラによって、AWS資格証明を格納するための構成ファイルおよびOracleウォレットが作成されます。 Oracle Database 23aiのインストール後、Oracleホーム・ディレクトリからOSB Cloud Moduleインストーラ・ファイル( ただし、オラクル社が提供するAmazon Machine Image(AMI)を使用してAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)でOracle Databaseを実行する場合、このインストーラは、 ユーザーは、すべてのコマンドライン・オプションをファイルに含め、適切なオペレーティング・システム権限でファイルを保護することをお薦めします。こうすることで、S3 Backupインストーラはファイルを読み取り、オプションを起動し、さらに、権限のないユーザーがファイルを読み取るのを防ぐことができます。 |
Oracleウォレット・ディレクトリ |
S3 Backupインストーラを実行する前に、AWS IDが格納されるOracleウォレット・ディレクトリを用意しておく必要があります。ウォレット・ディレクトリをまだ設定していない場合は作成する必要があります。 各プラットフォームの推奨ウォレット・ディレクトリ:
|
システム時間 |
Amazon S3で使用される認証方式では、クライアントのシステム時間がAmazon S3の時間とほぼ同じである必要があります。この場合、クライアントとは、OSB Cloud Moduleを実行しているコンピュータです。S3の時間は協定世界時(UTC)に設定されています。このため、UTCとクライアントのシステム時間との誤差が数分以内であることを確認してください。 |
32.3.2 Oracle Secure Backup Cloud Moduleをインストールするためのパラメータ
Oracle Secure Backup Cloud Moduleをインストールする前に、必須パラメータを確認し、それらの値を編集します。
Oracle Databaseをインストールすると、OSB Cloud Moduleインストーラのzipファイル(osbws_installer.zip
)がOracleホーム・ディレクトリに配置されます(表32-1を参照)。
osbws_installer.zip
ファイルを任意のサブディレクトリに解凍し、インストール・パラメータをプレビューします。
例32-1 OSB Cloud Moduleインストーラ・ファイルの解凍およびインストール・パラメータのプレビュー(UNIXおよびLinuxシステムの場合)
この例では、osbws_installer.zip
ファイルの内容を任意のサブディレクトリに解凍します。
$ mkdir -p $ORACLE_HOME/lib/osbws_1
$ cd $ORACLE_HOME/lib/osbws_1
unzip -q $ORACLE_HOME/lib/osbws_installer.zip
インストール・パラメータをプレビューするには、解凍したインストーラ・ファイルを含むサブディレクトリから次のコマンドを実行します。
% java -jar osbws_install.jar
表32-3 OSB Cloud Moduleライブラリのインストール時に使用されるパラメータ
パラメータ名 | 説明 | 必須かどうか |
---|---|---|
AWSID |
RMANバックアップの格納に使用するAmazon Web Servicesアカウントのアクセス・キーID。 |
はい(AWS識別子を使用してAmazon S3の認証を行う場合)。 |
AWSKey |
ノート: Amazon S3での認証を行うには、次のいずれかの値を指定する必要があります:
|
はい(AWS識別子を使用してAmazon S3の認証を行う場合)。 |
IAMRole |
RMANによるバックアップやリカバリ操作に使用される一時資格証明を有するAWS IAM (Identity and Access Management)ロールの名前。このロールには、S3アカウントにアクセスするための適切な権限が割り当てられている必要があります。 ノート: Amazon S3での認証を行うには、次のいずれかを指定する必要があります。
OSBクラウド・モジュールは、インスタンス・メタデータ・サービス(IMDS)を使用して、Amazon EC2インスタンスからインスタンス・メタデータにアクセスします。IMDSは、 詳細は、Amazon EC2のIAMロールを参照してください。 |
はい(AWSロールを使用してAmazon S3の認証を行う場合)。 |
IAMRoleMetaURI |
指定されたIAMロールの一時資格証明を格納するメタデータURI。Amazon EC2ユーザーの場合、メタデータURIの指定はオプションです。このパラメータを省略した場合、一時資格証明はインスタンス・メタデータから取得されます。 |
いいえ |
awsEndpoint |
バックアップの送信先のホスト名。このパラメータを省略すると、バックアップはデフォルトのホストに格納されます。 |
いいえ |
awsPort |
デフォルト以外のHTTP/HTTPS接続ポート番号。デフォルトのポート番号は、HTTPは80、HTTPSは443です。 |
いいえ |
location |
RMANバックアップの格納先にするAmazon S3の場所。指定する場合、この値を 有効な場所のリストは、Amazon S3のドキュメントを参照してください。 |
いいえ |
walletDir |
S3の資格証明とプロキシの情報が含まれるOracleウォレットの格納場所。 Oracleウォレット・ディレクトリは、S3 Backupインストーラを実行する前に用意しておく必要があります。 詳細は、「Oracle Secure Backup Cloud Moduleの前提条件」を参照してください。 |
はい |
configFile |
インストーラにより作成される構成ファイルの名前(完全なパスを含む)。RMANジョブの実行中に使用されるパラメータは、この構成ファイルから取得されます。 このパラメータを省略した場合、インストーラにより作成された構成ファイルがシステム固有のデフォルトの場所に配置されます。 デフォルトのLinuxの場所: デフォルトのWindowsの場所: |
いいえ |
proxyHost |
HTTPプロキシ・サーバーの名前(必要な場合)。 |
いいえ |
proxyPort |
HTTPプロキシ・サーバーのポート番号。 |
いいえ |
proxyID |
HTTPプロキシ・サーバーのユーザー名。 |
いいえ |
proxyPass |
HTTPプロキシ・サーバー・ユーザーのパスワード |
いいえ |
trustedCerts |
OracleウォレットにインポートするSSL証明書のリスト。 |
いいえ |
argFile |
インストール中に引数を読み取る必要があるファイルの名前。標準の入力から引数を読み取る場合は、“-”を指定します。 |
いいえ |
useHttps |
HTTPS接続を設定します。省略すると、HTTP接続が使用されます。 |
いいえ |
useSigV2 |
認証スキームを設定します。このパラメータを指定すると、署名バージョン2の認証が設定され、指定しない場合は、署名バージョン4が設定されます。推奨のスキームは署名バージョン4です。 |
いいえ |
32.4 Oracle Secure Backup Cloud Moduleの構成パラメータ
Oracle Secure Backup Cloud Moduleを使用してバックアップを行う際の設定を指定するには、構成パラメータを使用します。
構成パラメータは、次のいずれかの場所から設定できます。
-
Oracle Secure Backup Cloud Moduleの構成ファイル
構成ファイルの名前は、
OSB_WS_PFILE
パラメータに指定されています -
SBTチャネルを構成する際の
ENV
変数ノート:
Windowsでは、ENV
パラメータではなく、SBT_PARMS
パラメータを使用して環境変数を指定することをお薦めします。
次の表では、Oracle Secure Backup Cloud Moduleの使用時に設定できる構成パラメータを説明します。
パラメータ名 | 必須かどうか | 説明 |
---|---|---|
OSB_WS_PFILE |
いいえ |
SBTライブラリの構成ファイルを示します。構成ファイルのデフォルトの場所は次のとおりです。 Linux: Windows:
|
OSB_WS_HOST |
はい |
バックアップの送信先となるホストの名前を指定します。 |
OSB_WS_PROXY |
いいえ |
ターゲット・データベースがファイアウォールの内側にある場合は、プロキシ・サーバーとポートを指定します。これは、<host>:<port>という形式で指定します。 |
OSB_WS_BUCKET |
いいえ |
SBTライブラリがバックアップを格納するバケットを指定します。このパラメータを指定しない場合、SBTライブラリはまず、名前に |
OSB_WS_LOCATION |
いいえ |
バックアップの格納先にするAmazon S3の場所を指定します。この値は、指定された エンドポイントと場所の有効な組合せのリストは、Amazon S3のドキュメントを参照してください。 |
OSB_WS_CHUNK_SIZE |
いいえ |
Amazon S3へのバックアップの格納時に使用されるオブジェクト・サイズをバイト単位で指定します。デフォルトのサイズは100MBです。 |
OSB_WS_WALLET |
はい |
SBTライブラリが資格証明を読み取るウォレットの場所、別名およびプロキシ認証の別名を定義します。 このパラメータの形式は次のとおりです。
|
OSB_WS_VIRTUAL_HOST |
いいえ |
ホストの形式を指定します。デフォルト値はTRUE。 TRUEに設定した場合の形式は、http[s]://<bucket>.<host>です。FALSEに設定した場合の形式は、http[s]://<host>/<bucket>です。ストレージ・プロバイダはAmazon S3ではないが、S3との互換性がある場合はFALSEを使用します。 |
OSB_WS_IAM_ROLE |
はい(メタデータ・サービスを使用している場合。) |
Amazon S3へのバックアップに使用するIAMロールの名前を指定します。指定したIAMロールを使用してAmazon Elastic Cloud Compute (EC2)インスタンスを構成する必要があります。 OSBクラウド・モジュールは、インスタンス・メタデータ・サービス(IMDS)を使用して、Amazon EC2インスタンスからインスタンス・メタデータにアクセスします。IMDSは、 デフォルトでは、OSBクラウド・モジュールは 詳細は、Amazon EC2のIAMロールを参照してください。 |
OSB_WS_IAM_ROLE_META_URI |
いいえ |
IAMロールの一時資格証明を格納するメタデータURIの名前を指定します。 |
32.5 Amazon S3用のSBTチャネルの構成
RMANの自動SBT (テープ)チャネルを構成し、Amazon Web Servicesに対応するSBTライブラリへのパスを指定します。オプションで、SBTチャネルをデフォルト・チャネルとして構成して、RMANがAmazon S3ストレージにすべてのバックアップを直接作成できるようにします。
32.6 Amazon S3 Cloudを使用したバックアップおよびリカバリ
RMANをターゲット・データベースに接続し、Amazon S3 Cloudを使用してバックアップおよびリストアを実行します。
32.7 OSB Cloud Moduleのトラブルシューティング
この項では、Oracle Secure Backup Cloud Moduleのインストールまたは動作に影響を与える可能性がある問題を示します。
現象 | エラー・メッセージ | 解決方法 |
---|---|---|
S3 Backupのインストール時にライセンス・ファイルをAmazon S3に作成できない。 |
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一連のAWS IDを使用してS3 Backupインストーラを最初に実行するときには、インストーラによってライセンス・ファイルがAmazon S3上に作成されます。なんらかの問題により作成できなかった場合、インストールの出力にタイムアウトのエラー・メッセージが表示されます。 問題を解決するには、Oracleサポート・サービスに連絡してください。 |