1 Oracle Exadata Database MachineおよびOracle Exadata Storage拡張ラックの概要

Oracle Exadata Database Machineは、Oracle Databaseを実行するためのパフォーマンスと可用性が最も高いプラットフォームになるように設計されています。

Oracle Exadata Database MachineおよびOracle Exadata Storage拡張ラックは複数のコンポーネントで構成されるハードウェア・システムです。この章では、Exadataシステムの概要および使用方法について説明します。

注意:

読みやすさを考慮して、Oracle Exadata Database MachineOracle Exadata Storage拡張ラックの両方に言及する場合、「Oracle Exadataラック」という名前を使用します。

Oracle Exadata Database MachineおよびOracle Exadata Storage拡張ラックについて、次の各項で説明します。

1.1 Oracle Exadata Database Machineアーキテクチャ

Oracle Exadata Database Machineは、業界標準のスケールアウト・データベース・サーバー、インテリジェントなスケールアウト・ストレージ・サーバーおよびデータベースとストレージ・サーバーを接続する非常に高速なInfiniBand内部ファブリックを特長とする最新のアーキテクチャです。

Oracle Exadata Database Machineは、オンライン・トランザクション処理(OLTP)、データ・ウェアハウスおよび混合ワークロードの統合など、あらゆるタイプのデータベース・ワークロードを実行します。Oracle Exadata Database Machineは、最も重要なデータベースを稼働および保護し、統合されたデータベース・クラウドの理想的な基盤となります。

Oracle Exadata Database Machineには、Oracle Databaseの実行に必要なすべてのハードウェアが含まれています。データベース・サーバー、ストレージ・サーバーおよびネットワークは、オラクル社のエンジニアによって事前に構成、調整およびテストされているため、高パフォーマンスなシステムのデプロイに通常必要となる数週間の労力が不要になります。エンドツーエンドの広範なテストにより、すべてのコンポーネントが連携すること、およびシステム全体に影響する可能性があるパフォーマンス・ボトルネックや単一点障害がないことが保証されます。Oracle Exadata Database Machineには、データベース・サーバーとストレージ・サーバーの両方で実行するOracle Exadata System Softwareも含まれています。Oracle Exadata System Softwareのユニークなソフトウェア・アルゴリズムは、ストレージでのデータベース・インテリジェンス、PCIベースのフラッシュおよびInfiniBandネットワークを実装して、他のプラットフォームよりも低コストで高パフォーマンスと大容量を実現します。

1.2 Oracle Exadata Database Machine構成

Oracle Exadata Database Machineは、ハーフ・ラックなどの固有の構成になる場合や、任意の数のデータベース・サーバーとストレージ・サーバーによるエラスティック構成を使用する場合があります。

Oracle Exadata Database Machineは、データベース・サーバーとストレージ・サーバーの両方にスケールアウト・アーキテクチャを使用します。Oracle Exadata Database Machineが増大するのに伴い、データベースCPU、記憶域およびネットワーキングがバランスの取れた方法で追加され、ボトルネックのないスケーラビリティが実現されます。最初のOracle Exadata Database Machineモデル(X2およびX3)は、ハーフ・ラックまたはクオータ・ラックなどの構成を修正しました。

現在、Oracle Exadata Database Machineを"エラスティック構成"と呼ばれるカスタム構成にアップグレードできます。エラスティック構成では、必要に応じ任意の数のデータベース・サーバーとストレージ・サーバーを搭載してOracle Exadataシステムを構築できます。詳細は、「エラスティック構成」を参照してください。

ラック内のアップグレードに加えて、統合されたInfiniBandファブリックを使用して複数のラックを接続し、さらに大きな構成を形成できます。たとえば、4つのOracle Exadataフル・ラックで構成されたシステムは、単一ラック・システムよりも4倍強力です。4つのラックにより、I/Oスループット、記憶容量およびプロセッサが4倍になります。大規模な単一システムとして構成したり、複数データベースの統合のために論理的にパーティション化できます。Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)で処理能力を動的に追加したり、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)で記憶域を動的に追加できます。

より大きな記憶容量が必要な場合、Oracle Exadata Storage拡張ラックを使用できます。Oracle Exadata Storage拡張ラックを使用すると、Oracle Exadata Database Machineの記憶容量と帯域幅を増やすことができます。これは、履歴データまたはアーカイブ・データ、バックアップ、ドキュメント、イメージ、XML、ラージ・オブジェクト(LOB)などの膨大な量のデータを必要とするデータベース・デプロイメント用に設計されています。Oracle Exadata Storage拡張ラックは、クオータ・ラック・サイズから開始し、必要な数の追加ストレージ・サーバーを追加できます。Oracle Exadata Storage拡張ラックのサーバーは、統合されたInfiniBandファブリックを使用してOracle Exadata Database Machineに接続します。構成には、論理ユニット番号(LUN)またはマウント・ポイントの設定は必要ありません。コマンドライン・インタフェースを使用して、ストレージをデータベースにオンラインで構成および追加できます。

Oracle Exadata Database Machineを重要なアプリケーションにデプロイしている他のユーザーのエクスペリエンスから顧客が利点を得られるように、すべてのOracle Exadata Database Machineの構成は同一になっています。また、顧客のマシンは、Oracleサポートが問題の特定と解決に使用するマシンやOracleエンジニアリングがデータベース開発に使用するマシンとも同一です。

Oracle Exadata Database Machineでは、標準のOracle Databaseが実行されます。Oracle Databaseで実行されるアプリケーションは、アプリケーションに変更を加えることなくシームレスにOracle Exadata Database Machineに移行できます。

1.3 Oracle Exadata Database Machineのパフォーマンス機能

Oracle Exadata Database Machineは高いパフォーマンスとスケーラビリティを実現するだけでなく、独自のテクノロジも提供しています。

Exadataデータベース・サーバーは、データ中心のSQL操作をOracle Exadata Storage Serverにオフロードできます。SQL処理をOracle Exadata Storage Serverに移すと、ディスクからデータを読み取る際に、すべてのストレージ・サーバーで即時にパラレルでデータのフィルタリングおよび処理を行うことができます。Exadata記憶域のオフロードにより、データベース・サーバーのCPU使用量が低減され、ストレージ・サーバーとデータベース・サーバー間を移動するデータ量が大幅に減少します。

データ圧縮を使用すると、大規模データベースに消費される記憶域を大幅に削減できます。Oracle Exadata Storage Serverには、ハイブリッド列圧縮と呼ばれる非常に優れた圧縮機能があります。ハイブリッド列圧縮を使用すると最高レベルのデータ圧縮が可能になり、I/Oが削減されるためコストが大幅に節約されてパフォーマンスが向上します。従来のシステムでは、データの高圧縮を有効にするとパフォーマンスが低下する問題があります。Oracle Exadata Database Machineでは、圧縮解除オーバーヘッドをOracle Exadata Storage Serverの多数のプロセッサにオフロードできるため、ほとんどのワークロードはハイブリッド列圧縮を使用するとそれらを使用しない場合よりも速く実行されます。ハイブリッド列圧縮は、列格納の圧縮パフォーマンスと分析パフォーマンスの両方の利点を組み合せつつ、列格納でドリルダウン操作時に経験する大幅な速度低下を回避します。

Oracle Exadata Database Machineでは、フラッシュ・ディスクではなく最新のPCIeフラッシュ・テクノロジが使用されます。PCIeフラッシュでは、フラッシュが、遅いディスク・コントローラやディレクタの背後ではなく高速PCIeバス上に直接配置されるため、パフォーマンスが大幅に向上します。フラッシュ・カードの構成および容量の詳細は、「Oracle Exadata Database Machineのハードウェア・コンポーネント」を参照してください。

Exadataスマート・フラッシュ・キャッシュは、PCIeフラッシュにアクセス頻度の高いデータを自動的にキャッシュしつつ、アクセス頻度の低いデータをディスク・ドライブに維持します。これにより、フラッシュのパフォーマンスにディスクの容量とコストが提供されます。Exadataスマート・フラッシュ・キャッシュは、データベース・ワークロードと、再利用されなかったりキャッシュに収まらないデータのキャッシュを回避する状況を認識します。Oracle DatabaseおよびOracle Exadata System Softwareでは、データベース表、索引およびセグメントのレベルでディレクティブを提供し、特定のデータがフラッシュに保存されるようにできます。表はフラッシュに保持できますが、その際、従来のストレージおよびフラッシュ・ディスクで必要であった、異なる表領域、ファイルまたはLUNへの移動は必要ありません。

注意:

Oracle Exadata Database Machineには、Oracleソフトウェアのライセンスは付属していません。Oracle Exadata Database Machineをデータベース・サーバーとして使用する場合、次のソフトウェアの適切な使用許諾が必要となります。

  • Oracle Database

  • Oracle Exadata System Software

また、次のソフトウェアの使用許諾の取得をお薦めします。

  • Oracle RAC

  • Oracle Partitioning

1.4 Oracle Exadataラックの制約事項

Oracle Exadataラックのハードウェアおよびソフトウェアは、次の各項に記載がある場合を除き、変更またはカスタマイズできません。

1.4.1 Oracle Exadataラックのハードウェアの変更に関する制限事項

次の制限事項は、Oracle Exadataラックのハードウェアの変更に適用されます。これらの制限事項に違反すると、保証およびサポートを受けられなくなる場合があります。

  • Oracle Exadataラックのハードウェアは変更またはカスタマイズできません。これには、2つの例外があります。Oracle Exadata Database Machineに許可されているハードウェアの変更は、次のとおりです。

    • Oracle Exadata Database Machineに含まれている管理用の48ポートCiscoギガビット・イーサネット・スイッチに対する変更。お客様は、次の作業を選択できます。

      • ギガビット・イーサネット・スイッチを、内部データ・センターのネットワーク標準に準拠した同等の1U 48ポートのギガビット・イーサネット・スイッチと自費で交換します。Oracle Exadata Database Machineの到着後に、お客様が自費で交換する必要があります。お客様がこの変更を選択する場合、多くのシナリオが考えられるため、Oracleでは変更および変更のサポートを行うことができません。また、これは標準インストールに含まれていません。お客様が交換するハードウェアを調達し、他の手段でこの変更を行う必要があります。

      • Ciscoイーサネット・スイッチに接続されているCAT5ケーブルを取り外して、外部スイッチまたはパッチ・パネルでお客様のネットワークに接続します。お客様の作業および負担で、これらの変更を行う必要があります。この場合、ラックのCiscoイーサネット・スイッチの電源を切断して、データ・センター・ネットワークからの接続を解除します。

    • Oracle Exadata Database Machine X4-2以降でのクライアント・アクセス・ネットワーク・スイッチの追加。ネットワーク・スイッチに次の制限が適用されます。

      • 最大2台のクライアント・アクセス・ネットワーク・スイッチをラックに設置できます。

      • スイッチの高さは、1ラック・ユニット(RU)である必要があります。

      • 空気は、ラックの前面からラックの背面に流れるようにする必要があります。

      • スイッチは、ラック・スロットU41またはU42に設置する必要があります。

      • Oracle Exadata Configuration Assistant (OECA)では、追加機器の挿入を使用して電力消費量が正しくモデル化されています。OECAは、Oracle Technology Networkで入手可能です。

        http://www.oracle.com/technetwork/database/exadata/oeca-download-2817713.html

      • パワー・オーバー・イーサネット(PoE)機能(該当する場合)はこれらのスイッチで使用しないでください。

      注意:

      クライアント・アクセス・スイッチは、Oracle Exadata Database Machine X5-8Oracle Exadata Database Machine X4-8フル・ラックOracle Exadata Database Machine X3-8フル・ラック、または以前のシステム(Oracle Exadata Database Machine X2-2フル・ラックなどの)には設置できません。

1.4.2 Oracle Exadata Database Machineソフトウェア・コンポーネントの変更に関する制限事項

次の制限事項は、Oracle Exadataラックのソフトウェアの変更に適用されます。これらの制限事項に違反すると、保証およびサポートを受けられなくなる場合があります。

  • Oracle Exadata System Softwareおよびオペレーティング・システムは変更できません。また、追加のソフトウェアまたはエージェントはOracle Exadata Storage Serverにインストールできません。

  • Oracle Exadata Storage Server上でファームウェアを直接更新することはできません。ファームウェアはOracle Exadata Storage Serverパッチの一部として更新されます。

  • Oracle Exadataラックのその他のコンポーネントのファームウェアは更新できます。

    • Ciscoギガビット・イーサネット・スイッチ上でIOSおよびファームウェアのバージョンを更新し、データ・センターの要件を満たすことができます。

    • My Oracle Supportノート888828.1とその関連ノートに記載された制約に準拠している場合、データベース・サーバーのコンポーネントのファームウェアを更新できます。

    • My Oracle Supportノート888828.1とその関連ノートに記載された検証済バージョンに準拠している場合、InfiniBandスイッチのファームウェアを更新できます。

  • データベース・サーバー上に追加ソフトウェアをロードできます。ただし、最大のパフォーマンスを確保するため、データベース・サーバー上にバックアップ・エージェント、セキュリティ監視エージェントなどのエージェント以外のソフトウェアを追加することはお薦めしていません。

    データベース・サーバーのオペレーティング・システムへの非標準カーネル・モジュールのロードは可能ですが、お薦めしていません。非標準モジュールに関するご質問または問題はサポートしていません。サーバーがクラッシュし、そのクラッシュが非標準モジュールに起因する疑いがある場合、Oracleサポートでは、ユーザーに非標準モジュールのベンダーに問い合せていただくか、または非標準モジュールがない場合でも問題が再現するかを尋ねる場合があります。正式パッチおよびアップグレードの適用以外の方法によるデータベース・サーバーのオペレーティング・システムの変更はサポートされていません。

  • InfiniBand関連パッケージは、常に正式にサポートされているリリースで保守する必要があります。

  • Oracle Enterprise Manager Cloud Controlの管理エージェントまたはOracle Enterprise Manager Grid Controlの管理エージェントを、データベース・サーバーにインストールして、システムを監視できます。

  • システム監視のためにOracle Enterprise Manager Ops Centerのエージェントをインストールすることは許可されていません。

1.4.3 その他のハードウェア、システム、またはネットワークへのOracle Exadata Database Machineの接続に関する制限事項

次の制限事項は、Oracle Exadataラックのハードウェアおよびソフトウェアの変更に適用されます。これらの制限事項に違反すると、保証およびサポートを受けられなくなる場合があります。

  • Oracle Exadata Storage拡張ラックが接続できるのはOracle Exadata Database MachineまたはOracle SuperClusterのみで、サポートするのはOracle Exadata Database MachineまたはOracle SuperClusterのデータベース・サーバー上で実行中のデータベースのみです。

  • スタンドアロンのOracle Exadata Storage Serverが接続できるのはOracle Exadata Database MachineまたはOracle SuperClusterのみで、サポートするのはOracle Exadata Database MachineまたはOracle SuperClusterのデータベース・サーバー上で実行中のデータベースのみです。

  • 100mAを超える電力を使用するUSBデバイスをデータベース・サーバーに接続することはできません。

  • Oracle Exadata Database Machineドキュメントに記載されている場合を除き、USBデバイスはOracle Exadata Storage Serverに接続できません。ガイドに記載されている状況では、USBデバイスで100mAを超える電力を使用できません。

  • データベース・サーバーのネットワーク・ポートを使用すると、iSCSIまたはNFSによってOracle Exadata Storage Server以外の外部に接続できます。ただし、Fibre Channel Over Ethernet (FCoE)プロトコルはサポートされません。

  • Oracle ExadataラックInfiniBandネットワークに接続できるのは、Oracle Exalogic Elastic CloudOracle Big Data ApplianceおよびOracle SuperClusterでの使用に指定されているスイッチのみです。サード・パーティのスイッチを含むその他のInfiniBandスイッチからOracle ExadataラックInfiniBandネットワークへの接続はサポートされません。このガイドおよび『Oracle Exadata Database Machine拡張およびマルチラック・ケーブリング・ガイド』に指定されたInfiniBandネットワーク・トポロジのみがサポートされ、その他のInfiniBandネットワーク・トポロジはサポートされません。

    Oracleの設計したシステムの一部ではない外部サーバーを、Oracle Exadata Database MachineInfiniBandスイッチに接続できます。ただし、Oracle Exadata Database MachineInfiniBandソフトウェア・リリースを使用した、外部サーバーのInfiniBandソフトウェアの互換性の更新および保守は、ユーザーが行います。外部サーバー上のInfiniBandソフトウェアおよびオペレーティング・システムには、Oracle Exadata Database Machine上と同じリリースを使用することをお薦めします。InfiniBandファブリック障害が発生し、外部サーバーが接続されている場合は、外部サーバーを取り外して障害を再現するよう求められる場合があります。