21 Portable Object Formatの使用
.NETおよびC++拡張クライアントを構築する際のPOFの操作方法の詳細は、Oracle Coherenceリモート・クライアントの開発の.NETクライアントの統合オブジェクトの構築およびC++クライアントの統合オブジェクトの構築を参照してください。
この章の内容は次のとおりです。
- POFシリアライズの概要
POFは言語に依存しないバイナリ形式です。POFは領域と時間の両方において効率的であり、Coherenceの基礎となる技術です。 - オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
POFには、オブジェクトのシリアライズおよびデシリアライズの方法を知っているシリアライズ・ルーチンの実装が必要です。 - POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズ
POF注釈では、オブジェクトに対するシリアライズやデシリアライズ・ルーチンの実装を自動化する方法が提供されます。 - POFエクストラクタとPOFアップデータの使用
PofExtractor
およびPofUpdater
インタフェースは、POFの索引付けされた状態を利用して、シリアライズ・ルーチンまたはデシリアライズ・ルーチン全体を実行せずに値を抽出または更新します。 - POFを使用したキーのシリアライズ
値オブジェクトのようなキー・オブジェクトは、POFを使用してシリアライズできます。
親トピック: データ・グリッド操作の実行
POFシリアライズの概要
シリアライズで使用可能なオプションには、標準Javaシリアライズ、POF、独自のカスタム・シリアライズ・ルーチンなどいくつかあります。各オプションには、それぞれトレードオフがあります。標準Javaシリアライズは簡単に実装可能であり、循環オブジェクト・グラフをサポートし、オブジェクトIDを保持します。ただし、比較的動作が低速で、冗長なバイナリ形式が使用され、Javaオブジェクトのみが処理対象となります。
POFには、次の利点があります。
-
現在はJava、.NETおよびC++をサポートしており、言語に依存しません。
-
非常に効率的です。1つの
String
、1つのlong
および3つのint
を備えた簡単なテスト・クラスでは、標準のJavaシリアライズと比較して、シリアライズおよびデシリアライズが7倍高速化され、生成されるバイナリのサイズが1/6になります。 -
バージョニングが可能です。オブジェクトの向上を図ることが可能であり、上位および下位の互換性があります。
-
シリアライズ・ロジックを外部化できます。
-
索引付けされ、オブジェクト全体をデシリアライズせずに値を抽出できます。POFエクストラクタとPOFアップデータの使用を参照してください。
親トピック: Portable Object Formatの使用
オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
com.tangosol.io.pof.PortableObject
インタフェースとcom.tangosol.io.pof.PofSerializer
インタフェースという2つのインタフェースが使用可能です。POFは、PortableObject
またはPofSerializer
インタフェースを実装せずにシリアライズを自動的に実装する注釈もサポートしています。POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズを参照してください。
この項には次のトピックが含まれます:
- PortableObjectインタフェースの実装
- PofSerializerインタフェースの実装
- POF索引の割当てのガイドライン
- POFオブジェクト参照の使用
- POFオブジェクトの登録
- ConfigurablePofContextクラスを使用するためのCoherenceの構成
親トピック: Portable Object Formatの使用
PortableObjectインタフェースの実装
PortableObject
インタフェースは、次の2つのメソッドで構成されるインタフェースです。
-
public void readExternal(PofReader reader)
-
public void writeExternal(PofWriter writer)
POFストリームに対する書込みまたは読取りを行う各要素に数値を指定することで、POF要素に索引が付けられます。索引はPOFストリームにおいて書込みと読取りが実行される各要素に対して一意である必要があります。索引はスーパー・クラスと派生クラスの間で一意である必要があるため、派生タイプが存在する場合には特に注意が必要です。次の例では、PortableObject
インタフェースの実装を示します。
public void readExternal(PofReader in) throws IOException { m_symbol = (Symbol) in.readObject(0); m_ldtPlaced = in.readLong(1); m_fClosed = in.readBoolean(2); } public void writeExternal(PofWriter out) throws IOException { out.writeObject(0, m_symbol); out.writeLong(1, m_ldtPlaced); out.writeBoolean(2, m_fClosed); }
親トピック: オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
PofSerializerインタフェースの実装
PofSerializer
インタフェースには、シリアライズ・ロジックをシリアライズするクラスから外部化する手段が用意されています。これは、CoherenceでPOFを使用する場合に、クラスの構造を変更したくないときには特に役立ちます。PofSerializer
インタフェースは、次の2つのメソッドで構成されています。
-
public Object deserialize(PofReader in)
-
public void serialize(PofWriter out, Object o)
PortableObject
インタフェース同様、POFストリームに対して書込みまたは読取りが実行される要素はすべて一意に索引付けされている必要があります。PofSerializer
インタフェースの実装例を、次に示します。
public Object deserialize(PofReader in) throws IOException { Symbol symbol = (Symbol)in.readObject(0); long ldtPlaced = in.readLong(1); bool fClosed = in.readBoolean(2); // mark that reading the object is done in.readRemainder(); return new Trade(symbol, ldtPlaced, fClosed); } public void serialize(PofWriter out, Object o) throws IOException { Trade trade = (Trade) o; out.writeObject(0, trade.getSymbol()); out.writeLong(1, trade.getTimePlaced()); out.writeBoolean(2, trade.isClosed()); // mark that writing the object is done out.writeRemainder(null); }
親トピック: オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
POF索引の割当てのガイドライン
POFの索引をオブジェクトの属性に割り当てるときには、次のガイドラインに従ってください。
-
読取りと書込みの順序: シリアライズ・ルーチンの最低索引値から開始して、最高索引値で終了します。値をデシリアライズする場合には、書込みと同じ順序で読取りを実行します。
-
非連続の索引を指定することはできますが、読取りまたは書込みが連続して実行される必要があります。
-
サブクラス作成時に索引の範囲を予約する場合: 索引は派生タイプ間で累積されます。そのため、各派生タイプがそのスーパークラスで予約されたPOF索引範囲を認識する必要があります。
-
索引を他の目的に使用しない: 進化をサポートするためには、クラス・リビジョン全体で属性の索引を他の目的に使用しないようにすることが必須です。
-
ラベルの索引:
public static final int
でラベル付けされている索引は、さらに簡単に使用できます。特に、POFエクストラクタとPOFアップデータを使用する場合には簡単です。POFエクストラクタとPOFアップデータの使用を参照してください。ラベル付けされた索引の読取りおよび書込みも、上述の説明と同じ順序で実行される必要があります。
親トピック: オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
POFオブジェクト参照の使用
この項には次のトピックが含まれます:
親トピック: オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
POFオブジェクト参照の概要
POFでは、POFストリーム内で複数回出現するオブジェクトに、オブジェクトのIDや参照の使用がサポートされています。オブジェクトには、IDが付けられ、同じPOFストリーム内で2回目以降に出現するラベルが付いたオブジェクトは、そのIDで参照されます。
参照を使用することで、同じオブジェクトを複数回エンコーディングすることを防ぎ、データサイズを削減できます。一般に、参照を使用するのは、サイズの大きな多数のオブジェクトが複数回生成されるときや、オブジェクトでネストや循環データ構造が使用されるときです。ただし、大量のデータがあり、繰返しが少ないアプリケーションの場合、オブジェクト参照を使用してもオブジェクトのIDや参照の追跡によって生じるオーバーヘッドのために、最小限の利点しかありません。
オブジェクト・アイデンティティおよび参照の使用には次の制限があります。
-
オブジェクト参照には、ユーザー定義のオブジェクト型のみがサポートされています。
-
Evolvable
オブジェクトでは、オブジェクト参照はサポートされていません。 -
キーでは、オブジェクト参照はサポートされていません。
-
参照をサポートしていないPOFコンテキストによって記述されたオブジェクトは、参照をサポートするPOFコンテキストで読み込むことができません。また、この逆の場合も同様です。
-
POFエクストラクタを使用して、オブジェクト・アイデンティティおよび参照を使用するPOFオブジェクトを問い合せることはできません。かわりに、
ValueExtractor
APIを使用してオブジェクト値を問い合せるか、またはオブジェクト参照を無効にしてください。 -
PofNavigator
およびPofValue
APIには、オブジェクト参照を使用する際に次の制限があります:-
読取り操作のみ許可されます。書込み操作は
UnsupportedOperationException
となります。 -
ユーザー・オブジェクトは非共通コレクションでアクセスできますが、共通コレクションではアクセスできません。
-
読取り操作については、オブジェクトがデータ・ストリームで複数回出現する場合、オブジェクトが最初に出現した場所で読み取られてから、次のデータの部分で読み取られる必要があります。そうでない場合は、
IOException: missing identity:
<ID>
がスローされます。たとえば、リストが3つあり、そのすべてが同じPersonオブジェクトp
を含む場合。p
オブジェクトは、最初のリストで読み取られてから2番目または3番目のリストで読み取られる必要があります。
-
親トピック: POFオブジェクト参照の使用
POFオブジェクト参照の有効化
オブジェクト参照は、デフォルトでは無効になっており、SimplePofContext
クラスを使用するときにpof-config.xml
構成ファイル内か、プログラムによって有効にする必要があります。
POF構成ファイルでオブジェクト参照を有効にするには、<pof-config>
要素内に<enable-references>
要素を含めて、値をtrue
に設定します。たとえば:
<?xml version='1.0'?> <pof-config xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xmlns="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-pof-config" xsi:schemaLocation="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-pof-config coherence-pof-config.xsd"> ... <enable-references>true</enable-references> </pof-config>
SimplePofContext
クラスの使用時にオブジェクト参照を有効にするには、プロパティをtrue
に設定してsetReferenceEnabled
メソッドをコールします。たとえば:
SimplePofContext ctx = new SimplePofContext(); ctx.setReferenceEnabled(true);
親トピック: POFオブジェクト参照の使用
循環構造のオブジェクトやネストされたオブジェクトへのPOFオブジェクトIDの登録
循環構造のオブジェクトやネストされたオブジェクトは、オブジェクトの作成時に手動でIDを登録する必要があります。そうしないと、親オブジェクトを参照する子オブジェクトは、参照マップ内で親のIDを見つけることができません。オブジェクトIDは、com.tangosol.io.pof.PofReader.registerIdentity
メソッドを使用して、デシリアライズ・ルーチン中にシリアライザから登録できます。
次の例では、循環参照を含んだ2つのオブジェクト(Customer
およびProduct
)と、Customer
オブジェクトのIDを登録するシリアライザ実装を示しています。
Customer
オブジェクトの定義は次のとおりです。
public class Customer { private String m_sName; private Product m_product; public Customer(String sName) { m_sName = sName; } public Customer(String sName, Product product) { m_sName = sName; m_product = product; } public String getName() { return m_sName; } public Product getProduct() { return m_product; } public void setProduct(Product product) { m_product = product; } }
Product
オブジェクトの定義は次のとおりです。
public class Product { private Customer m_customer; public Product(Customer customer) { m_customer = customer; } public Customer getCustomer() { return m_customer; } }
デシリアライズの間にIDを登録するシリアライザ実装の定義は次のとおりです。
public class CustomerSerializer implements PofSerializer
{
@Override
public void serialize(PofWriter pofWriter, Object o) throws IOException
{
Customer customer = (Customer) o;
pofWriter.writeString(0, customer.getName());
pofWriter.writeObject(1, customer.getProduct());
pofWriter.writeRemainder(null);
}
@Override
public Object deserialize(PofReader pofReader) throws IOException
{
String sName = pofReader.readString(0);
Customer customer = new Customer(sName);
pofReader.registerIdentity(customer);
customer.setProduct((Product) pofReader.readObject(1));
pofReader.readRemainder();
return customer;
}
}
親トピック: POFオブジェクト参照の使用
POFオブジェクトの登録
Coherenceには、com.tangosol.io.pof.ConfigurablePofContext
シリアライザ・クラスが用意されていて、それによりPOFのシリアライズ・オブジェクトが適切なシリアライズ・ルーチン(PofSerializer
実装、またはPortableObject
インタフェースを介した呼び出しによる)にマップされます。
クラスにシリアライズ・ルーチンが指定されると、そのクラスはpof-config.xml
構成ファイルを使用してConfigurablePofContext
クラスに登録されます。POF構成ファイルには<user-type-list>
要素があり、それにはPortableObject
を実装するクラスまたはそれらに関連付けられているPofSerializer
を持つクラスのリストが記載されています。各クラスに対する<type-id>
は一意である必要があり、すべてのクラスタ・インスタンス(拡張クライアントを含む)で一致している必要があります。POFユーザー定義型の構成要素を参照してください。
POF構成ファイルの例を次に示します。
<?xml version='1.0'?> <pof-config xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xmlns="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-pof-config" xsi:schemaLocation="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-pof-config coherence-pof-config.xsd"> <user-type-list> <include>coherence-pof-config.xml</include> <!-- User types must be above 1000 --> <user-type> <type-id>1001</type-id> <class-name>com.examples.MyTrade</class-name> <serializer> <class-name>com.examples.MyTradeSerializer</class-name> </serializer> </user-type> <user-type> <type-id>1002</type-id> <class-name>com.examples.MyPortableTrade</class-name> </user-type> </user-type-list> </pof-config>
ノート:
Coherenceでは、最初の1000個のtype-idは内部使用のために予約されています。上の例に示されているように、<user-type-list>
にはcoherence.jar
ファイルのルートにあるcoherence-pof-config.xml
ファイルが含まれます。このリストにはCoherence固有のユーザー型が定義されており、それらのユーザー型はすべてのPOF構成ファイルに含まれている必要があります。
親トピック: オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
ConfigurablePofContextクラスを使用するためのCoherenceの構成
この項には次のトピックが含まれます:
- ConfigurablePofContextクラスの使用の概要
- ConfigurablePofContextクラスのサービスごとの構成
- すべてのサービスに対するConfigurablePofContextクラスの構成
- JVMに対するConfigurablePofContextクラスの構成
親トピック: オブジェクトをシリアライズするためのPOF APIの使用
ConfigurablePofContextクラスの使用の概要
CoherenceでConfigurablePofContext
シリアライザ・クラスを使用する場合には、必要な精度のレベルに基づいた、次の3通りの構成が可能です。
-
サービスごと - 各サービスには、
ConfigurablePofContext
シリアライザ・クラスの完全な構成が用意されており、オペレーション構成ファイルにある事前定義済の構成が参照されます。 -
すべてのサービス - すべてのサービスでグローバル
ConfigurablePofContext
シリアライザ・クラスの構成が使用されます。独自の構成を提供するサービスによってグローバルな構成がオーバーライドされます。グローバル構成を完全構成にして、オペレーション構成ファイルに含まれる事前定義済の構成を参照することも可能です。 -
JVM -
ConfigurablePofContext
シリアライザ・クラスはJVM全体に対して有効化されます。
ConfigurablePofContextクラスのサービスごとの構成
ConfigurablePofContext
クラスを使用するようにサービスを構成するには、キャッシュ構成ファイルのキャッシュ・スキームに<serializer>
要素を追加します。serializerを参照してください。
次の例では、ConfigurablePofContext
クラスを使用するように構成された分散キャッシュを示しており、カスタムPOF構成ファイルを定義しています。
<distributed-scheme> <scheme-name>example-distributed</scheme-name> <service-name>DistributedCache</service-name> <serializer> <instance> <class-name>com.tangosol.io.pof.ConfigurablePofContext</class-name> <init-params> <init-param> <param-type>String</param-type> <param-value>my-pof-config.xml</param-value> </init-param> </init-params> </instance> </serializer> </distributed-scheme>
次の例では、オペレーション構成ファイルのデフォルトの定義を参照します。serializerを参照してください。
<distributed-scheme> <scheme-name>example-distributed</scheme-name> <service-name>DistributedCache</service-name> <serializer>pof</serializer> </distributed-scheme>
すべてのサービスに対するConfigurablePofContextクラスの構成
ConfigurablePofContext
クラスをすべてのサービスに対してグローバルに構成するには、キャッシュ構成ファイルの<defaults>
要素内に<serializer>
要素を追加します。次の例は両方とも、シリアライザをすべてのキャッシュ・スキームの定義に対してグローバルに構成するものであり、個々のキャッシュ・スキームの定義内にその他の構成を追加する必要はありません。defaultsを参照してください。
次の例では、ConfigurablePofContext
クラスに対するグローバルな構成を示しており、カスタムPOF構成ファイルを定義しています。
<?xml version='1.0'?> <cache-config xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xmlns="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-cache-config" xsi:schemaLocation="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-cache-config coherence-cache-config.xsd"> <defaults> <serializer> <instance> <class-name>com.tangosol.io.pof.ConfigurablePofContext</class-name> <init-params> <init-param> <param-type>String</param-type> <param-value>my-pof-config.xml</param-value> </init-param> </init-params> </instance> </serializer> </defaults> ...
次の例では、オペレーション構成ファイルのデフォルトの定義を参照します。serializerを参照してください。
<?xml version='1.0'?> <cache-config xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xmlns="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-cache-config" xsi:schemaLocation="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-cache-config coherence-cache-config.xsd"> <defaults> <serializer>pof</serializer> </defaults> ...
POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズ
PofSerializer
インタフェースの実装であるPofAnnotationSerializer
クラスを使用してシリアライズまたはデシリアライズします。注釈は、PortableObject
およびPofSerializer
インタフェースの使用に代わる手段を提供し、オブジェクトをシリアライズ可能なものにするために必要な時間とコードを削減します。
この項には次のトピックが含まれます:
親トピック: Portable Object Formatの使用
POFシリアライズでのオブジェクトへの注釈付け
クラスとクラスのプロパティがPOFシリアライズ可能であることを示すために利用できる注釈は2つあります。
-
@Portable
– クラスをPOFシリアライズ可能としてマークします。注釈は、クラス・レベルのみに使用でき、メンバーを含みません。 -
@PortableProperty
– メンバー変数またはメソッド・アクセッサをPOFシリアライズ可能属性としてマークします。注釈が付けられたメソッドは、アクセッサの表記法(get
、set
、is
)に従っている必要があります。メンバーを、POF索引や、シリアライズまたはデシリアライズの前後で実行するカスタム・コーデックの指定に使用できます。索引の値は省略可能で、自動的に割り当てられます。カスタム・コーデックを入力しない場合は、デフォルトのコーデックが使用されます。
次の例では、クラス、メソッドおよびプロパティの注釈付け、およびプロパティの索引値の明示的な割当てを示します。POF索引の割当てのガイドラインを参照してください。
@Portable public class Person { @PortableProperty(0) public String getFirstName() { return m_firstName; } private String m_firstName; @PortableProperty(1) private String m_lastName; @PortableProperty(2) private int m_age; }
親トピック: POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズ
POF注釈付きオブジェクトの登録
POF注釈付きオブジェクト(すべてのPOFオブジェクトなど)は、pof-config.xml
ファイルの<user-type>
要素内に登録されている必要があります。POFユーザー定義型の構成要素を参照してください。POF構成ファイルを手動で作成するかわりに、POF構成ジェネレータ・ツールを使用して、@Portable
注釈を使用するオブジェクトに基づいて自動的にPOF構成ファイルを作成できます。POF構成ファイルの生成を参照してください。
POF注釈付きオブジェクトは、オブジェクトがPortableObject
を実装しておらず、Portable
として注釈が付けられている場合は、PofAnnotationSerializer
シリアライザを使用します。ただし、オブジェクトに注釈が付けられており、ユーザー定義型の定義に含める必要がない場合は、自動的にシリアライザが使用されます。次の例では、注釈付きPerson
オブジェクトのユーザー定義型を登録します。
<?xml version='1.0'?> <pof-config xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xmlns="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-pof-config" xsi:schemaLocation="http://xmlns.oracle.com/coherence/coherence-pof-config coherence-pof-config.xsd"> <user-type-list> <include>coherence-pof-config.xml</include> <!-- User types must be above 1000 --> <user-type> <type-id>1001</type-id> <class-name>com.examples.Person</class-name> </user-type> </user-type-list> </pof-config>
親トピック: POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズ
POF構成ファイルの生成
POF構成ジェネレータ・コマンド行ツールは、@Portable
注釈が含まれるクラスのユーザー定義型エントリを含むPOF構成ファイルを自動的に作成します。このツールは、POF構成ファイルを手動で作成するかわりとなり、ビルド・プロセスの一部として最適です。
POF構成ジェネレータ・コマンド行ツールを起動するには、COHERENCE_HOME
/bin/pof-config-gen
スクリプト(.cmd
または.sh
)を使用するか、com.tangosol.io.pof.generator.Executor
クラスを直接実行します。詳細な使用方法を確認するには、-help
引数を使用します。使用方法を次に示します。
pof-config-gen [OPTIONS] -root
-root
引数は必須で、POF注釈付きのクラスをスキャンする場所(別々のディレクトリ、JARファイルまたはGARファイル)をリストします。見つかった注釈付きのクラスのそれぞれにつき、ユーザー定義型のエントリおよびIDが生成され、結果として生成されたpof-config.xml
ファイルが現在の作業ディレクトリに書き込まれます。たとえば:
pof-config-gen.cmd -root c:\src\myPofClasses.jar
ノート:
GARファイルをルートとして指定した場合、出力はカウント接尾辞の付いた新しいGARファイル(filename
-
n
.gar
)で、このファイルに生成されたPOF構成ファイルが含まれます。
次のオプションの引数を指定できます。
-
-out
:-out
引数を使用して、出力ディレクトリのパス、またはパスとファイル名を指定します。デフォルトの出力ディレクトリは作業ディレクトリです。ディレクトリのみを指定した場合のデフォルトのファイル名は、pof-config.xml
です。ディレクトリを指定した場合にpof-config.xml
ファイルがすでに存在する場合は、カウント接尾辞の付いた新しいファイルが作成されます(pof-config-
n
.xml
)。パスとファイル名を指定した場合にそのファイルが現在存在する場合は、ファイルが上書きされます。 -
-config
:-config
引数を使用して、既存のPOF構成ファイルのパスとファイル名を指定し、そのファイルに含まれる既存のユーザー定義型を生成されるPOF構成ファイルに追加します。既存のユーザー定義型のIDは、生成されたファイルで保持されます。POF構成ファイルを複数回生成する場合、この引数を使用して後方互換性をサポートできます。 -
-include
:-include
引数を使用して、生成されるPOF構成ファイル内で(-config
引数で指定された)既存のPOF構成ファイルの参照のみを行うかどうかを指定します。この引数を使用すると、既存のファイルを参照する<include>
要素が生成されます。既存のユーザー定義型およびIDは、生成されるファイルに再作成されません。実行時には、クラスパスに参照先のファイルを配置する必要があります。ノート:
既存のPOF構成ファイル内にCoherence固有のPOF構成ファイル(
coherence-pof-config.xml
)への参照が見つからない場合は、-include
引数の使用によって、生成されるPOF構成ファイルにこの参照を追加する必要がなくても、この参照は自動的に追加されます。 -
-packages
:-packages
引数を使用して、クラスのスキャンを特定のパッケージに制限します。パッケージはカンマ区切りリストで入力します。 -
-startTypeId
:-startTypeId
引数を使用して、ユーザー定義型のIDの割当てを開始する際のID番号を指定します。1000までのIDは、Coherence固有のタイプ用に予約されているため、使用できません。
次の例では、c:\classes\pof
ディレクトリをスキャンし、新しいPOF構成ファイルをmy-pof-config.xml
という名前でc:\tmp
ディレクトリに作成しますが、このファイルには(参照によって)既存のc:\tmp\pof-config.xml
ファイルがインクルードされます。
pof-config-gen.cmd -out c:\tmp\my-pof-config.xml -config c:\tmp\pof-config.xml -include -root c:\classes\pof
親トピック: POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズ
自動索引付けの有効化
POF注釈では、自動索引付けがサポートされており、明示的な索引値の割当てや管理の必要性を軽減されます。@PortableProperty
注釈を定義する場合は、索引値を省略します。索引の割当てはプロパティ名によって決定されます。明示的に索引値を割り当てるプロパティによって、自動索引値が割り当てられることはありません。次の表は、自動索引アルゴリズムの命令セマンティクスを示しています。自動索引付けは、明示的に定義された索引を維持し(プロパティc
参照)、索引が省略されている場合は、索引を割り当てます。
プロパティ名 | 明示的な索引 | 決定された索引 |
---|---|---|
c |
1 |
1 |
a |
omitted |
0 |
b |
omitted |
2 |
ノート:
自動索引では、現在、進化可能なクラスがサポートされていません。
自動索引付けを有効にするには、POF構成ファイルでユーザー定義型としてオブジェクトを登録するときにPofAnnotationSerializer
シリアライザ・クラスを明示的に定義する必要があります。コンストラクタ内のfAutoIndex
ブール・パラメータは、自動索引付けを有効にするもので、true
に設定する必要があります。たとえば:
<user-type>
<type-id>1001</type-id>
<class-name>com.examples.Person</class-name>
<serializer>
<class-name>com.tangosol.io.pof.PofAnnotationSerializer</class-name>
<init-params>
<init-param>
<param-type>int</param-type>
<param-value>{type-id}</param-value>
</init-param>
<init-param>
<param-type>class</param-type>
<param-value>{class}</param-value>
</init-param>
<init-param>
<param-type>boolean</param-type>
<param-value>true</param-value>
</init-param>
</init-params>
</serializer>
</user-type>
親トピック: POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズ
カスタム・コーデックの提供
コーデックによって、シリアライズまたはデシリアライズの前後でコードを実行できます。コーデックでは、PofWriter
およびPofReader
インタフェースを使用して、移植可能なプロパティをエンコードおよびデコードする方法を定義できます。コーデックは、一般に、デシリアライズ中に消失する可能性がある実用的な実装に使用します。または、オブジェクトをシリアライズする前にPofWriter
インタフェースで特定のメソッドを明示的にコールするために使用します。
コーディックを作成するには、com.tangosol.io.pof.reflect.Codec
インタフェースを実装するクラスを作成します。次の例は、リンクされたリスト型の実用的な実装を定義するコーデックを示しています。
public static class LinkedListCodec implements Codec { public Object decode(PofReader in, int index) throws IOException { return (List<String>) in.readCollection(index, new LinkedList<String>()); } public void encode(PofWriter out, int index, Object value) throws IOException { out.writeCollection(index, (Collection) value); { }
プロパティにコーディックを割り当てるには、コーディックを@PortableProperty
注釈のメンバーとして入力します。コーデックを指定しない場合は、デフォルトのコーデック(DefaultCodec
)が使用されます。次の例は、前述のLinkedListCodec
コーデックの割当て方法を示しています。
@PortableProperty(codec = LinkedListCodec.class) private List<String> m_aliases;
親トピック: POF注釈を使用したオブジェクトのシリアライズ
POFエクストラクタとPOFアップデータの使用
ValueExtractor
インスタンスとValueUpdater
インスタンスを使用して、キャッシュに格納されたオブジェクトの値が抽出および更新されます。PofExtractor
およびPofUpdater
インタフェースは、POFの索引付けされた状態を利用して、シリアライズ・ルーチンまたはデシリアライズ・ルーチン全体を実行せずに値を抽出または更新します。PofExtractor
とPofUpdater
により、Coherenceの非プリミティブ・タイプを使用するときの柔軟性が向上します。多くの拡張クライアントの場合、グリッド内に対応するJavaクラスは不要です。POFエクストラクタとPOFアップデータはバイナリをナビゲートできるため、キーと値全体をオブジェクト形式にデシリアライズしなくても済みます。これは、索引付けする値をPOFエクストラクタを使用してプルするだけで索引付けできることを意味します。ただし、キャッシュ・ストアを使用している場合は、対応するJavaクラスが必要です。この場合、キーと値のデシリアライズ・バージョンがキャッシュ・ストアに渡され、バックエンドに書き込まれます。
この項には次のトピックが含まれます:
POFオブジェクトの移動
POFは索引付けされているため、バイナリを抽出用または更新用の特定の要素まで迅速に横断できます。POF値オブジェクトを横断し、目的のPOF値オブジェクトを返すのは、PofNavigator
インタフェースの役目です。Coherenceには、初期状態で、整数索引に基づいてPOF値を移動できるSimplePofPath
クラスが用意されています。最も簡単な形式では、抽出または更新する属性の索引を提供します。次に例を示します。
public class Contact implements PortableObject { ... // ----- PortableObject interface --------------------------------------- public void readExternal(PofReader reader) throws IOException { m_sFirstName = reader.readString(FIRSTNAME); m_sLastName = reader.readString(LASTNAME); m_addrHome = (Address) reader.readObject(HOME_ADDRESS); m_addrWork = (Address) reader.readObject(WORK_ADDRESS); m_mapPhoneNumber = reader.readMap(PHONE_NUMBERS, null); } public void writeExternal(PofWriter writer) throws IOException { writer.writeString(FIRSTNAME, m_sFirstName); writer.writeString(LASTNAME, m_sLastName); writer.writeObject(HOME_ADDRESS, m_addrHome); writer.writeObject(WORK_ADDRESS, m_addrWork); writer.writeMap(PHONE_NUMBERS, m_mapPhoneNumber); } .... // ----- constants ------------------------------------------------------- public static final int FIRSTNAME = 0; public static final int LASTNAME = 1; public static final int HOME_ADDRESS = 2; public static final int WORK_ADDRESS = 3; public static final int PHONE_NUMBERS = 4; ... }
POFストリームへの書込みまたはPOFストリームからの書込みを実行中の各データ・メンバーに対する定数が存在することに注意してください。この方法に従えば、POFエクストラクタとPOFアップデータを容易に使用できてシリアライズ・ルーチンの書込みも簡素化されるという、優れた利点が得られます。各索引にラベルを付けることで、索引の操作はさらに容易になります。前述のように、最も簡単な場合では、WORK_ADDRESS
索引を使用して連絡先から勤務先のアドレスを抽出できます。SimplePofPath
により、ints
のArray
を使用してPofValues
を横断できるようになります。たとえば、勤務先のアドレスの郵便番号を取得するには、[WORK_ADDRESS, ZIP]
を使用します。次の例で、詳細を示します。
親トピック: POFエクストラクタとPOFアップデータの使用
POFエクストラクタの使用
POFエクストラクタは通常、キャッシュに問い合せる場合に使用され、問合せのパフォーマンスを向上させます。たとえば、上記で示したクラスを使用して、姓がJones
であるすべての連絡先のキャッシュに問い合せる場合、問合せは次のとおりです。
ValueExtractor veName = new PofExtractor(String.class, Contact.LASTNAME); Filter filter = new EqualsFilter(veName, "Jones"); // find all entries that have a last name of Jones Set setEntries = cache.entrySet(filter);
この例では、PofExtractor
には便利なコンストラクタがあり、SimplePofPath
を使用して1つの索引(この例ではContact.LASTNAME
の索引)を取得します。地域コードが01803
であるすべての連絡先を検索する場合、問合せは次のとおりです。
ValueExtractor veZip = new PofExtractor( String.class, new SimplePofPath(new int[] {Contact.WORK_ADDRESS, Address.ZIP})); Filter filter = new EqualsFilter(veZip, "01803"); // find all entries that have a work address in the 01803 zip code Set setEntries = cache.entrySet(filter);
前述の例では、PofExtractor
コンストラクタには抽出された値またはnull
のクラスを持つ最初の引数があります。型情報を渡すのは、POFがシリアライズされた値で圧縮形式を使用するからです(使用可能な場合)。たとえば、一部の数値は、型が値を暗示する特殊なPOF固有型として示されています。その結果、POFの値を受け取る側では、その型を暗黙的に認識できることが必要になります。PofExtractor
は、コンストラクタで提供されたクラスを型情報のソースとして使用します。このクラスがnull
の場合、PofExtractor
はシリアライズされた状態から型を推測しますが、抽出される型は予想した型と異なることがあります。実際には、String
型はPOFストリームから適切に推測されるので、前述の例ではnull
を使用すれば十分です。ただし、通常はnull
を使用しないでください。
親トピック: POFエクストラクタとPOFアップデータの使用
POFアップデータの使用
POFアップデータは、オブジェクトの値を抽出するのではなく、更新するという点を除いて、POFエクストラクタと同じ方法で動作します。姓がJones
であるすべてのエントリをSmith
に変更するには、次のようにUpdaterProcessor
クラスを使用します。
ValueExtractor veName = new PofExtractor(String.class, Contact.LASTNAME); Filter filter = new EqualsFilter(veName, "Jones"); ValueUpdater updater = new PofUpdater(Contact.LASTNAME); // find all Contacts with the last name Jones and change them to have the last // name "Smith" cache.invokeAll(filter, new UpdaterProcessor(updater, "Smith"));
ノート:
この機能は、これらの例ではString
ベースの値で動作していますが、POFのエンコードされた値でも動作します。
親トピック: POFエクストラクタとPOFアップデータの使用
POFを使用したキーのシリアライズ
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POFではクロス・プラットフォームのオブジェクト形式を定義しますが、必ずしも対称的な変換を提供できるわけではありません。すなわち、シリアライズ・オブジェクトをデシリアライズすると、オブジェクトの型は元の型と異なります。これは、Javaの一部のデータ型は、.NETおよびC++プラットフォームに相当するものが存在しないために発生します。結果として、非対称のPOF変換を持つ可能性があるクラスは、キャッシュおよび他のJavaコレクションのキー(またはキーの一部)として使用しないでください。
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java.util.Date
型は使用しないようにしてください。POFは、(java.util.Date
を拡張した)java.sql.Timestamp
にシリアライズするように設計されています。それらの2つのクラスのワイヤ・フォーマットは同一であり、それらのワイヤ表現をデシリアライズすると、必ずjava.sql.Timestamp
インスタンスになります。残念ながら、それらの2つのベース・クラスのequals
メソッドでは、Javaコレクションのキーの対称要件は破壊されます。つまり、D
(java.util.Date
)とT
(java.sql.Timestamp
)という2つのオブジェクトがあり、これらのオブジェクトがPOFワイヤ・フォーマットの観点から等しい場合に、D.equals(T)
はtrueになりますが、T.equals(D)
はfalseになります。そのため、java.util.Date
は使用しないでください。キーの対称要件を破壊しないようにするには、日付のLong
表現かjava.sql.Timestamp
型を使用します。 -
POFオブジェクト参照を使用しているキーはシリアライズできません。また、POFオブジェクト参照では循環参照がサポートされます。そのため、キー・クラスに循環参照が含まれないようにする必要があります。
親トピック: Portable Object Formatの使用