Oracle Application Serverインストレーション・ガイド 10g (10.1.4.0.1) for Linux Itanium B31745-02 |
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この章では、Oracle Application Serverでサポートされている高可用性構成の概要を説明します。詳細は、後続の章で説明します。また、この章では共通の要件についても説明します。
この章の内容は次のとおりです。
この章では、Oracle Application Serverでの高可用性構成の概要のみを説明します。構成の詳細は、『Oracle Application Server高可用性ガイド』を参照してください。
Oracle Application Serverがインストール時にサポートする高可用性構成のタイプは次のとおりです。それぞれのタイプには複数のバリエーションがあることに注意してください。
高可用性構成の比較一覧は、7.1.4項「相違の概要」を参照してください。
Oracle Application Serverでは、OracleAS Cold Failover Clusterを使用して、そのコンポーネントに対してアクティブ-パッシブ・モデルを提供します。OracleAS Cold Failover Clusterトポロジでは、2つ以上のOracle Application Serverインスタンスが同じアプリケーションのワークロードを処理するように構成されますが、常に一方のインスタンスのみがアクティブになります。これらのインスタンスは、ハードウェア・クラスタ内の異なる2つのノードで実行されます。また、これらの2つのノードは、Oracle Application ServerインスタンスのOracleホームをインストールする共有記憶域にアクセスすることもできます。
ハードウェア・クラスタ内のいずれかのノードは、アクティブ・ノードです。これによって、共有記憶域がマウントされ、Oracle Application Serverインスタンスが実行されます。もう1つのノードはパッシブ(スタンバイ)ノードになります。これは、アクティブ・ノードに障害が発生した場合にのみ実行されます。フェイルオーバー・イベント中、パッシブ・ノードは共有記憶域をマウントし、Oracle Application Serverインスタンスを実行します。
OracleAS Cold Failover Cluster構成の最も一般的なプロパティは次のとおりです。
通常、Oracle Application ServerインスタンスのOracleホームは、OracleAS Cold Failover Clusterトポロジのノードで共有される記憶域にインストールされます。パッシブなOracle Application Serverインスタンスは、アクティブ・インスタンスと同じOracleバイナリ、構成ファイルおよびデータにアクセスすることができます。
OracleAS Infrastructureのインストール中、「仮想ホストの指定」画面で仮想ホスト名を指定できます。このOracleAS Infrastructureの仮想ホスト名は、ハードウェア・クラスタまたはロード・バランサで管理できます。また、OracleAS Infrastructureにアクセスするために中間層およびOracleAS Infrastructureコンポーネントで使用されます。これは、OracleAS Infrastructureがシングル・ノード・インストール、OracleAS Cold Failover Clusterソリューション、またはOracleAS Clusterソリューションのいずれに含まれるかは関係ありません。
仮想ホスト名は、仮想IPに関連付けられています。これは、ハードウェア・クラスタまたはロード・バランサのヘルプとともに、Oracle Application Server中間層でOracleAS Infrastructureの単一のシステム・ビューを表示できる名前です。この名前とIPのエントリは、サイトで使用するDNSに追加する必要があります。これによって、このエントリを中間層ノードのローカルの/etc/hosts
(または同等の)ファイルに追加しなくても、それらの中間層ノードをOracleAS Infrastructureに関連付けられるようになります。たとえば、ハードウェア・クラスタの2つの物理的なホスト名がnode1.mycompany.com
とnode2.mycompany.com
である場合は、selfservice.mycompany.com
という名前でこのクラスタの単一のビューが提供されます。DNSでは、selfservice
は、OracleAS Infrastructureの仮想IPアドレスにマップします。この仮想IPアドレスは、ハードウェア・クラスタを経由してnode1
とnode2
の間で移動するか、または、ロード・バランサによってnode1およびnode2
にマップします。いずれの場合も、中間層はどの物理ノードがアクティブであるかを認識することも、実際に特定のリクエストを処理することもありません。
Oracle Application Server中間層のインストール中に仮想ホスト名を指定することはできませんが、Cold Failover Cluster中間層のインストール後の構成手順に従うと、ハードウェア・クラスタまたはロード・バランサを経由して、仮想ホスト名を引き続き使用できます。
アクティブ-パッシブ構成には、アクティブなインスタンスの障害を検出し、パッシブなインスタンスにフェイルオーバーしてダウンタイムを最小にする、一連のスクリプトと手順も含まれています。
OracleAS Cold Failover Cluster構成の利点は次のとおりです。
アクティブなインスタンスになんらかの理由で障害が発生するか、オフラインにしなければならない場合、同一の構成を持つパッシブのインスタンスがアクティブなインスタンスを引き継ぐために常に待機しています。
アクティブ-パッシブ構成では、1つのセットのプロセスのみが稼働してリクエストを処理します。通常、1つのアクティブなインスタンスの管理の方が、多くのアクティブなインスタンスの管理より低コストです。
アプリケーションによっては、アクティブ-アクティブ構成が適切でないものもあります。このようなアプリケーションには、アプリケーションの状態やローカルに保存されている情報に大きく依存するものがあります。アクティブ-パッシブ構成では、常に1つのインスタンスのみがリクエストを処理します。
通常、OracleAS Cold Failover Clusterという用語は、Oracle Application Serverインスタンス・レベルでのクラスタリングを表します。ただし、クラスタ化されている特定のタイプのインスタンスをコールアウトする必要がある場合、このマニュアルではOracleAS Cold Failover Cluster(タイプ)という表記で、クラスタ・ソリューションを表します。たとえば、次のようになります。
Oracle Application Serverシステム(コンテンツ・キャッシュ)のエントリ・ポイントからバックエンド・レイヤー(データソース)まで、クライアント・リクエストが通過するすべての層は、OracleAS Clusterを使用したアクティブ-アクティブ構成またはOracleAS Cold Failover Clusterを使用したアクティブ-パッシブ構成のいずれかで、冗長に構成できます。
インストールの詳細は、第8章「高可用性環境へのインストール: OracleAS Cold Failover Cluster」を参照してください。
Oracle Application Serverは、OracleAS Clusterを使用したそのすべてのコンポーネントに対してアクティブ-アクティブなモデルを用意しています。OracleAS Clusterでは、2つ以上のOracle Application Serverインスタンスが同じアプリケーションのワークロードを処理するように構成されます。通常、これらのインスタンスは異なるノードで実行されます。
ノードの前面には、外部のロード・バランサが必要です。クライアントは、ロード・バランサを介してこれらのノードにリクエストを送信します。その後、ロード・バランサは、いずれかのノードにそのリクエストを送信して処理します。ロード・バランサは、独自のアルゴリズムを使用して、リクエストを送信するノードを決定します。
OracleAS Cluster構成の最も一般的なプロパティは次のとおりです。
インスタンスは、同じワークロードまたはアプリケーションを処理することを目的としています。これらの同じ構成により、同じリクエストには同じのレスポンスが配信されることが保証されます。ローカル・ホスト名情報など、一部の構成プロパティではインスタンス固有の値を使用できることに注意してください。
通常、アクティブ-アクティブ・トポロジでは、1つのインスタンスで行われる構成の変更は、他のインスタンスに伝播される必要があります。
アクティブ-アクティブ・トポロジでは、1つのOracle Application Serverインスタンスで障害が発生しても、その他のインスタンスの機能に影響を与えることはなく、リクエストの処理を続行できます。
OracleAS Cluster構成の利点は次のとおりです。
アクティブ-アクティブ・トポロジには、冗長性(複数のOracle Application Serverインスタンスが同じコンポーネントを実行する)が組み込まれています。1つのインスタンスを失っても、他のインスタンスが同じリクエストを継続して処理できます。
同じ構成を持つ複数のインスタンスは、異なるマシンおよびプロセス間で共有される分散ワークロードを備えています。また、アプリケーションの増加に応じて新しいインスタンスを追加できます。
通常、OracleAS Clusterという用語は、Oracle Application Serverインスタンス・レベルでのクラスタリングを表します。ただし、クラスタ化されている特定のタイプのインスタンスをコールアウトする必要がある場合、このマニュアルではOracleAS Cluster(タイプ)という表記で、クラスタ・ソリューションを表します。たとえば、次のようになります。
OracleAS Cluster(Identity Management)の詳細は、第9章「高可用性環境へのインストール: OracleAS Cluster(Identity Management)」を参照してください。
OracleAS Disaster Recovery構成には、次の特性があります。
OracleAS Disaster Recoveryには、OracleAS Infrastructureおよび中間層が含まれます。詳細は、第10章「高可用性環境へのインストール: OracleAS Disaster Recovery」を参照してください。
表7-1に、高可用性構成間の相違の概要を示します。
OracleAS Cold Failover Cluster | OracleAS Cluster | OracleAS Disaster Recovery | |
---|---|---|---|
ノード構成 |
アクティブ-パッシブ |
アクティブ-アクティブ |
アクティブ-パッシブ |
ハードウェア・クラスタ |
あり |
なし |
オプション(OracleAS InfrastructureをOracleAS Cold Failover Cluster構成にインストールする場合にのみハードウェア・クラスタが必要です) |
仮想ホスト名 |
あり |
なし |
あり |
ロード・バランサ |
なし |
あり |
なし1 |
共有記憶域 |
あり |
なし |
なし |
1
地理ロード・バランサは、サイト名のスイッチオーバーを実行するために使用できます。 |
高可用性構成では、コンポーネントは次の順序でインストールします。
Oracle Identity Managementのコンポーネントを分散する場合は、それらのコンポーネントを次の順序でインストールします。
他のコンポーネントをインストールする前に中間層をインストールし、他のコンポーネントをインストールした後に、中間層を高可用性構成に再関連付けることができることに注意してください。
この項では、すべての高可用性構成に共通の要件を説明します。これらの共通の要件に加えて、各構成には固有の要件があります。詳細は、それぞれの章を参照してください。
共通の要件は次のとおりです。
高可用性構成には、2つ以上のノードが必要です。なんらかの理由でノードに障害が発生した場合、2番目のノードが引き継ぎます。
クラスタ内のすべてのノードの/etc/group
ファイルに、使用するオペレーティング・システム・グループが含まれていることを確認します。oraInventoryディレクトリ用に1つのグループ、データベース管理用に1つまたは2つのグループが必要です。グループ名およびグループIDは、すべてのノードで同じである必要があります。
詳細は、2.7項「オペレーティング・システム・グループ」を参照してください。
Oracle Application Serverをインストールするためのログインに使用するoracle
オペレーティング・システム・ユーザーに次のプロパティがあることを確認します。
oinstall
グループおよびosdba
グループに属している。oinstall
グループはoraInventoryディレクトリ用で、osdba
グループはデータベース管理グループです。詳細は、2.7項「オペレーティング・システム・グループ」を参照してください。
高可用性構成でインストールするすべてのノードに、既存のoraInventoryディレクトリがないことを確認します。
すべてのOracleソフトウェアのインストールの詳細は、Oracle Installer Inventoryディレクトリに記録されます。通常、このディレクトリはノードに対して一意であり、oraInventory
という名前が付けられています。Oracle Installer Inventoryディレクトリのディレクトリ・パスは、oraInst.loc
ファイルに格納されています。
このファイルがノードに存在することにより、ノードになんらかのOracleソフトウェアのインストールが含まれることが確認できます。高可用性構成では、他のノードではアクセスできない可能性のあるファイル・システムのOracle Installer Inventoryディレクトリを含む複数のノードへのインストールが必要であるため、この章以降のインストール手順では、この高可用性構成で使用されるすべてのノードに、Oracleソフトウェアの以前のインストールはまったくなかったものとします。oraInst.loc
ファイルとOracle Installer Inventoryディレクトリは、高可用性環境をインストールする前にこれらのノードに存在していてはいけません。
インストーラによって検出される可能性があるoraInventoryディレクトリがノードにあるかどうかを確認するには、次の手順を実行します。
oraInst.loc
ファイルが存在するかどうかを確認します。このファイルは/etc
ディレクトリにあります。ノードにこのファイルがない場合、インストーラによって使用されるoraInventoryディレクトリはありません。次のノードを確認できます。
oraInst.loc
ファイルが存在する場合は、このファイルおよびoraInventoryディレクトリの名前を変更します。その結果、インストーラによって新しいoraInventoryディレクトリの場所を入力するように要求されます。たとえば、rootとして次のコマンドを入力します。
# cat /etc/oraInst.loc inventory_loc=/localfs/app/oracle/oraInventory inst_group=dba # mv /etc/oraInst.loc /etc/oraInst.loc.orig # mv /localfs/app/oracle/oraInventory /localfs/app/oracle/oraInventory.orig
oraInst.loc
ファイルとOracle Installer InventoryディレクトリはOracleソフトウェアのインストール時にのみ必要であり、実行時には必要ないため、後でこれらの名前の変更やリストアを実行しても、ノードにインストールされたOracleソフトウェアの動作には影響はありません。Oracle Universal Installerを開始する前に、適切なoraInst.loc
ファイルとOracle Installer Inventoryディレクトリが正しく配置されていることを確認してください。
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