この章では、Oracle Secure Backupの概要について説明し、管理ドメインの計画および構成に関するアドバイスを提供します。
この章の内容は次のとおりです。
関連項目: Oracle Secure Backupの概要の詳細は、『Oracle Secure Backup管理者ガイド』を参照してください。 |
Oracle Secure Backupでは、テープへのファイル・システム・バックアップによって信頼性の高いデータ保護を実現します。標準的なテープ形式を使用するストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)、ギガビット・イーサネット(GbE)およびSmall Computer System Interface(SCSI)環境において、主要なテープ・ドライブとテープ・ライブラリはすべてサポートされます。
ネットワーク上でOracle Secure Backupを使用すると、Oracle Secure Backupを実行しているネットワーク・ホストや、ネットワーク・データ管理プロトコル(NDMP)をサポートするネットワーク接続ストレージ(NAS)・デバイスからデータを取得し、そのデータをネットワークに接続したテープ・デバイスにバックアップできます。そのデータには、Recovery Manager(RMAN)でバックアップされた通常のファイル・システムのファイルおよびデータベースも含まれます。
Oracle Secure Backupは、Oracleストレージ・ソリューションの一部として、スケーラブルな分散型のバックアップおよびリカバリ機能を提供します。複雑なバックアップ・ソリューションが、次のようにして簡略化されます。
ディスクからテープにデータをバックアップする一元的なOracleソリューションの利便性を最大限に高めるため、Oracleスタックと統合されています。
データベースとファイル・システムをテープにバックアップおよびリカバリするため、単一ベンダーの技術サポートを採用しています。
テープ・ドライブの使用効率を最大化するため、SCSI、ギガビット・イーサネットおよびSAN環境のテープ・デバイスを動的テープ・ドライブ共有機能により広範にサポートすることで、既存ハードウェアまたは新規ハードウェアを使用します。
Oracle Secure Backupにより、単一ベンダーがサポートする搭載済のテープ管理ソフトウェアとの統合問題が解消されます。コストも削減されます。データベースとファイルをテープにバックアップしてリカバリする際に、Oracle Secure BackupとRMANを組み合せて使用すれば、サード・パーティのテープ管理ソフトウェアは必要ありません。Oracle Secure Backupには、テープ・ストレージをRMANとともに使用するために必要なメディア管理層が用意されています。
管理の一元化、異種ネットワークのサポート、および柔軟なスケジュール機能により、Oracleホームのコンテンツなどのデータベース・データやファイル・システム・データを含め、Oracle環境全体を容易にかつ自動的に保護します。
この項では、Oracle Secure Backupの概念について説明し、インストールのプロセスをより深く理解できるようにします。
この項の内容は次のとおりです。
Oracle Secure Backupでは、ホストとテープ・デバイスを1つの管理ドメインに編成します。これは、バックアップの対象となるデータが格納されているホスト、バックアップ・データを格納するテープ・デバイスが接続されているホスト、ホストに対する添付ファイルを持つ各テープ・デバイスのネットワークを意味します。1つのホストは1つの管理ドメインにのみ属することができます。
管理ドメイン内の各ホストには、次の1つ以上のロールを割り当てる必要があります。
管理サーバー
各管理ドメインには、管理サーバーが1つのみ必要です。管理サーバーは、インストール後の構成時に、管理ドメイン内の他のホスト、それらのロールおよびそれらに接続されたテープ・デバイスに関する完全なデータによって構成する必要があります。この構成情報は、管理サーバーに格納された一連の構成ファイルに保存されます。
管理サーバーは、スケジューラを実行して、各バックアップ・ジョブを起動し、監視します。スケジューラは、管理ドメインで実行されるすべてのバックアップおよびリストア操作のためのメタデータが記録されたバックアップ・カタログも保持します。
メディア・サーバー
メディア・サーバーは、1つ以上のテープ・デバイスが接続されているホストです。メディア・サーバーは、これらのテープ・デバイスの1つにロードされたボリュームをソースまたはターゲットとするデータの転送を行います。メディア・サーバーには、テープ・ドライブまたはテープ・ライブラリに対する1つ以上の添付ファイルがあります。メディア・サーバーは、複数のテープ・ライブラリに対する添付ファイルを持つ場合があります。
Oracle Secure Backupのインストール後の構成時に、メディア・サーバーとテープ・デバイスを接続する添付ファイルを指定します。
クライアント
クライアント・ロールは、Oracle Secure Backupによってバックアップまたはリストアできるファイル・システムまたはデータベースのデータにアクセスできるホストに割り当てられます。Oracle Secure Backupがインストールされているホストは、メディア・サーバーまたは管理サーバーでもあるホストを含め、クライアントとして機能します。Oracle Secure Backupがネットワーク・データ管理プロトコル(NDMP)によりアクセスできるネットワーク接続ストレージ・デバイスもクライアントの役割を果します。
注意: 管理ドメインでは、1つのホストに複数のロールを割り当てることができます。たとえば、テープ・ドライブが接続されているホストは、他のクライアントが複数含まれるネットワークの管理サーバーにもメディア・サーバーにもなります。管理ドメインの例については、「Oracle Secure Backupの管理ドメイン: 例」を参照してください。 |
管理ドメイン内の各ホストには、Oracle Secure Backup操作で使用される一意の名前を割り当てる必要があります。通常は、このホストのDNSでのホスト名をOracle Secure Backupホスト名に選択します。しかし、ホストに異なる名前を割り当ててもかまいません。
管理ドメイン内のホスト間の通信は、常にネットワーク・データ管理プロトコル(NDMP)に基づいていますが、NDMPの実装やバージョンにはバリエーションがあります。Oracle Secure Backupでは、プライマリ・アクセス・モードとNDMPアクセス・モードの2つのアクセス・モードがサポートされています。
プライマリ・アクセス・モードは、Oracle Secure Backupがインストールされているホスト間で使用します。Oracle Secure Backupのデーモンは、ホスト上のバックグラウンドで実行され、Oracle Secure BackupのNDMP実装を使用して管理サーバーと通信し、バックアップおよびリストアのタスクを実行します。データベースが存在するホストには通常、プライマリ・アクセス・モードを使用してアクセスします。
注意: Oracle Enterprise Managerでは、プライマリ・アクセス・モードはネイティブ・アクセス・モードと呼ばれます。Oracle Secure Backup Webツールやlshost などの一部のobtoolコマンドの出力では、プライマリ・モードはOBアクセス・モードと呼ばれます。 |
NDMPアクセス・モードは、Oracle Secure Backupを実行しないストレージ・アプライアンスなどのデバイスとの通信に使用します。たとえば、Network Appliance、Mirapoint、DinoStorなどのサード・パーティ・ベンダー製のデバイスは、NDMPアクセス・モードでのみサポートされます。各NDMPホストでは、ファイル・システムのバックアップおよびリストアに、ベンダー固有のNDMPプロトコルの実装を使用します。一部のデバイスでは、NDMPプロトコルの旧バージョンがサポートされています。そのようなデバイスを管理ドメインに追加する場合は、特別なパラメータが必要になる可能性があります。
Oracle Secure Backupでは、NDMPバージョン2、3、4と、バージョン4の様々な拡張版がサポートされます。Oracle Secure Backupは、他のOracle以外のNDMPコンポーネントと自動的にネゴシエーションを行い、相互にサポートするプロトコル・バージョンを選択します。Oracle Secure Backup独自のコンポーネント間では、NDMPバージョン4が使用されます。Oracle Secure Backupが実行されていないホストと通信する場合、Oracle Secure Backupでは通常、接続が確立されたときに、そのホストによって提案されるプロトコル・バージョンを選択します。Oracle Secure Backupが特定のホストとの通信に使用するNDMPプロトコルのバージョンは変更できます。このような変更は、テストやトラブルシューティングを行うときに実行します。
図1-1は、1つのホストが管理サーバー、メディア・サーバーおよびクライアントを兼ねる最小限の管理ドメインを示しています。Oracle Databaseサーバーも、同じホスト上で実行されています。
図1-2は、3つのクライアント・ホスト、1つの管理サーバー、および1つのメディア・サーバーで構成されるOracle Secure Backup管理ドメインの例を示しています。ネットワーク接続ストレージ(NAS)・アプライアンスには、通常のファイル・データが格納されています。UNIXベースの1つのクライアントとWindowsベースのもう1つのクライアントには、データベースおよびその他のファイル・データが格納されています。Oracle Secure Backupでは、クライアント・ホストでアクセス可能なファイル・システムのデータベース以外のファイルをテープにバックアップできます。Recovery Manager(RMAN)では、Oracle Secure Backup SBTインタフェースを介して、データベース・ファイルをテープにバックアップできます。
Oracle Secure Backupでは、各テープ・ライブラリとテープ・ドライブに関する情報が保存されるため、ローカルおよびネットワークのバックアップやリストアの操作に使用できます。テープ・デバイスはインストール時に構成することも、既存の管理ドメインに新しいテープ・デバイスを追加することもできます。テープ・デバイス構成時の基本的な作業は、Oracle Secure Backupにテープ・デバイスの存在について知らせ、このテープ・デバイスと通信できるメディア・サーバーを指定することです。
この項の内容は次のとおりです。
テープ・ドライブとは、精密に制御されたモーターを使用して、1つのリールから別のリールへテープを巻き取るテープ・デバイスです。テープは、巻き取り時に読取り/書込みヘッドを通過します。大部分の磁気テープ・システムでは、テープを保護し、扱いやすくするためのカートリッジ内に固定された小型リールが使用されます。
磁気カセットまたはテープは、順次アクセス・ストレージです。これには開始位置と終了位置があり、テープ内のデータにアクセスするには、テープ・デバイスでテープを最初から目的のデータのある場所まで読み取る必要があります。
通常の形式では、データはテープ・ドライブによりブロック単位でテープに書き込まれます。テープ・ドライブは、各ブロックを1回の操作で書き込み、ブロック間にはギャップがあります。書込み操作中は、テープは連続して動作します。
データ・ブロックのブロック・サイズは、テープに書き込まれたブロックのサイズ(バイト単位)と同じです。特定のバックアップまたはリストア操作中に読取りまたは書込みを行うブロックのサイズはすべて同じです。データ・ブロックのブロッキング・ファクタは、そのブロックに含まれる512バイトのレコード数を表します。たとえば、Oracle Secure Backupのデフォルトのブロッキング・ファクタ(128)では、テープのブロック・サイズは128*512バイト、つまり64KBになります。
最大ブロッキング・ファクタは、Oracle Secure Backupで使用されるブロッキング・ファクタの上限です。この制限値は、特にリストアの際、Oracle Secure Backupが実際のブロック・サイズの不明なテープで使用する最初のブロック・サイズを選択するときに役立ちます。最大ブロッキング・ファクタにより、この最初のブロック・サイズは、テープ・デバイスおよび基盤となるオペレーティング・システムの両方にとって受け入れ可能な値に制限されます。
Oracle Secure Backupはバックアップを開始するとき、いくつかの要素に基づいて使用するブロック・サイズを決定します。これらの要素を、優先度の高い要素から順に示すと次のようになります。
obtar
-b
オプションを使用して指定されたブロッキング・ファクタ。
このオプションは、operations/backupoptions
ポリシーの一部として指定することもできます。このオプションを指定すると、他のすべての要素に優先します。
関連項目: obtar -b オプションおよびoperations/backupoptions ポリシーの詳細は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
使用するテープ・ドライブの構成。
ドライブを構成する際に、Oracle Secure Backupが使用する特定のテープ・ドライブのブロッキング・ファクタまたは最大ブロッキング・ファクタ(あるいはその両方)を指定できます。ブロック・サイズの制限がテープ・ドライブごとに大きく異なる場合、この方法で指定することがあります。
media/blockingfactor
およびmedia/maxblockingfactor
ポリシーで設定された、ドメイン全体のブロッキング・ファクタまたは最大ブロッキング・ファクタ。
関連項目: media/blockingfactor およびmedia/maxblockingfactor ポリシーの詳細は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
デフォルトのブロッキング・ファクタ(128)と最大ブロッキング・ファクタ(128)による、64Kのブロック・サイズ。
これらの要素のいずれかによって候補となったブロッキング・ファクタは、次のテストに合格する必要があります。
ブロック・サイズは、適用するポリシーまたはテープ・ドライブ構成の属性によって有効となる最大ブロック・サイズ(ブロッキング・ファクタ)以下である必要があります。
ブロック・サイズは、使用するテープ・ドライブおよび接続ポイントでサポートされている必要があります。
テープ・ドライブ、デバイス・ドライバまたはカーネルOSの制限が、他のすべての事項に優先される場合があります。
Oracle Secure Backupはリストア操作を開始するとき、そのテープへの書込みに使用されたブロック・サイズを認識していません。読み取るブロックのサイズが小さすぎるとエラー状態になり、テープの位置変更が必要となるため、Oracle Secure Backupは常に、読取り可能な最大ブロック・サイズを使用してリストア操作を開始します。これは、現行のmedia/maxblockingfactor
ポリシーの設定またはテープ・ドライブの構成属性のいずれかです。したがって、最大ブロッキング・ファクタは、リストアする最大ブロック・サイズ以上の値に設定されている必要があります。
バックアップ・イメージからの最初の読取りの後、Oracle Secure Backupは、リクエストされたデータ量と実際のブロック・サイズを比較し、それ以降の読取りサイズをテープに合せて調整します。
各テープ・ドライブでは、特定のテープ形式がサポートされています。一般的なテープ形式は次のとおりです。
8mm
4mm(デジタル・オーディオ・テープ(DAT))
アドバンスト・インテリジェント・テープ(AIT)
デジタル・データ・ストレージ(DDS)
デジタル・リニア・テープ(DLT)およびスーパーDLT(SDLT)
リニア・テープオープン(LTO)、独自仕様のDLT形式に代わるオープンな形式
Oracle Secure Backupでサポートされているテープ・デバイスのテープ形式に関する情報は、次のURLで入手できます。
テープ・ライブラリとは、ロボティック・テープ・デバイスで、Small Computer System Interface(SCSI)コマンドを受け入れ、ボリュームを記憶域要素とテープ・ドライブの間で移動させます。テープ・ライブラリは、ロボティック・テープ・デバイス、オートチェンジャー、またはメディア・チェンジャーとも呼ばれています。
テープ・ライブラリは、1つ以上のテープ・ドライブ、テープ・カートリッジを格納する複数のスロット、およびテープの自動ロード方式で構成されます。図1-3は、4つのテープ・ドライブで構成されるテープ・ライブラリを示しています。
Oracle Secure Backupでは、テープ・ライブラリの管理を自動化することにより、この機能を効率的かつ確実に利用できます。テープ・ライブラリ・ロボティックを制御することで、テープを容易に管理できます。
Oracle Secure Backupでは、テープ・ライブラリの次の機能をサポートしています。
ボリュームの自動ロードおよびアンロード
テープ・ライブラリを管理ドメインに追加すると、デフォルトでは自動マウント・モードで構成されます。このモードの場合、Oracle Secure Backupでは、バックアップおよびリストア操作用にテープをマウントするためのコマンドがテープ・ライブラリのロボティック・アームに送られます。新しいボリュームが必要な場合は、適切なボリュームが見つかるまでテープ・ライブラリがスキャンされます。テープ・ライブラリの記憶域要素に適当なテープが十分にある場合は、完全なバックアップ・イメージの格納に必要なボリュームをロードするために、オペレータの介入は必要ありません。
バーコード・リーダー
バーコードは、識別の目的でボリュームに物理的に適用されるシンボル・コードです。一部のテープ・ライブラリには、自動バーコード・リーダーが用意されています。Oracle Secure Backupでは、バーコードを使用してテープ・ライブラリ内のテープを識別できます。
自動テープ・ドライブ・クリーンアップ
Oracle Secure Backupでは、テープ・ドライブでのテープのロードまたはアンロード時に、クリーンアップの必要があるかどうかをチェックします。クリーンアップが必要な場合、クリーニング・カートリッジをロードし、クリーンアップ・サイクルが完了するのを待機して、クリーニング・カートリッジを元の記憶域要素に戻し、リクエストされたロードまたはアンロードを続行します。クリーンアップの間隔をスケジュールすることもできます。
図1-3で示すように、テープ・ライブラリはアドレス可能な一連の要素で構成されており、それぞれの要素は、テープを入れることも、テープの移動に使用することもできます。テープ・ライブラリは、次のタイプの要素で構成できます。
この要素は、テープ・ライブラリの内部スロットで、ここにテープ・カートリッジを格納します。
この要素は、物理ボリュームの読取りまたは書込みができるテープ・デバイスです。通常、データ転送要素(DTE)は、テープ上のデータのバックアップまたはリストアに使用されるテープ・ドライブです。
この要素は、テープ・ライブラリ内の別の要素間でのテープの移動に使用されるロボティック・メカニズムです。通常、メディア・トランスポート要素は、テープ・カートリッジをテープ・ライブラリ・スロットからテープ・ドライブに移すロボット・アームです。
この要素により、メディアをテープ・ライブラリにインポートし、テープ・ライブラリからエクスポートできます。通常、インポート/エクスポート要素は、オペレータがテープをテープ・ライブラリの内部や外部に移すために使用するドアのようなメカニズムです。ドアを閉じると、ロボティック・アームがカートリッジをテープ・ライブラリの内部スロットに移します。この手順の間、テープ・ライブラリ自体は開かれないので、再インベントリは不要です。
Oracle Secure Backupテープ・ライブラリ・コマンドの多くでは、1つ以上のテープ・ライブラリ要素(特に記憶域要素とインポート/エクスポート要素)を指定する必要があります。インベントリ表示を除き、メディア・トランスポート要素が参照されることはありません。データ転送要素は、インベントリ表示でのみ、操作のために選択したテープ・ドライブ(ある場合)によって間接的に参照されます。
Oracle Secure Backupでは、要素をそれらの略語(mte
、se
、iee
またはdte
)に要素の番号を続けて(たとえば、se5
、iee2
、dte1
)参照します。特定のタイプの要素が複数ある場合は、要素の番号は1から始まります。1つのタイプの要素が1つしかない場合、番号は省略できます。つまり、iee1
とiee
はどちらも、最初で唯一のインポート/エクスポート要素を指します。略語を省略すると、記憶域要素とみなされます。たとえば、se4
と4
はどちらも、4番目の記憶域要素を指します。一部のコマンドでは、記憶域要素の範囲を1-5
のように指定できます。
Oracle Secure Backupでは、複数のテープ・ライブラリ操作をサポートします。次の操作は、最も基本的な操作です。
ボリュームの挿入および抽出
ボリュームのロードおよびアンロード
ボリュームの移動
ボリュームのインポートおよびエクスポート
仮想テープ・ライブラリは、仮想物理テープ・ボリュームにパーティション化された1つ以上の大容量ディスク・ドライブです。Oracle Secure Backupには、仮想テープ・ライブラリは1つ以上のボリュームと1つ以上のテープ・ドライブを持つ物理テープ・ライブラリのように見えます。仮想テープ・ライブラリ内のボリュームおよびテープ・ドライブは、一般的な物理テープおよびテープ・ドライブに対応するように構成できます。
仮想テープ・ライブラリに対して実行されたバックアップ操作は、基礎となるストレージ・デバイスが直接アクセス・メディアであるため、実際のテープ・ドライブに対するバックアップ操作より速く完了します。しかし、仮想テープ・ライブラリは、記憶容量が限られているため、長期保存には適していません。仮想テープ・ライブラリにバックアップすると、より高速なバックアップを利用し、Oracle Secure Backupのボリューム移動機能を使用して後からデータをテープに移すことができます。
Oracle Secure Backupではテープ・ドライブ操作を管理するため、テープ・ドライブを識別し、そのテープ・ドライブをテープ・ライブラリに格納するかどうかを決定する必要があります。さらに、記憶域要素がテープ・ドライブで使用されていない間、ボリュームの格納に利用できるかどうかも決定する必要があります。したがって、各テープ・ドライブは、Oracle Secure Backup内でユーザー定義の名前によって一意に識別されることが必要です。
Oracle Secure Backupでは、テープ・デバイスと、そのテープ・デバイスがホストに接続されている方法を識別します。Oracle Secure Backupで使用できるようにするために、各テープ・デバイスには、ホストとテープ・デバイス間のデータ・パスを定義する1つ以上の添付ファイルが必要です。添付ファイルには通常、ホストのアイデンティティの他、LinuxまたはUNIXでのデバイス特殊ファイル名、Windowsでのデバイス名、またはネットワーク接続ストレージ(NAS)・デバイス名が含まれます。まれに、添付ファイル定義に追加情報が必要になることがあります。
関連項目:
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Oracle Secure Backupの異なる要素にアクセスする場合、次の4つの異なるインタフェースがあります。
obtoolコマンドライン・ユーティリティは、構成、メディア処理、およびファイル・システムのファイルのバックアップとリストアを含むOracle Secure Backup機能の基本的なインタフェースです。
Oracle Enterprise Managerでは、Database ControlおよびGrid Controlインタフェースの一部であるobtoolを介して利用できるOracle Secure Backupの機能の大部分にアクセスできます。
Oracle Secure Backupには、Oracle Secure Backup Webツールと呼ばれる独自のWebベースのインタフェースがあり、obtoolのすべての機能を使用できます。Oracle Secure Backup Webツールは、主にOracle Secure BackupがOracle Databaseインスタンスと切り離して使用されている状況で使用するためのものです。データベースのバックアップおよびリカバリ機能にはアクセスできません。
Oracle Databaseインスタンスのバックアップおよびリストア操作とOracle Secure Backupメディア管理層の構成は、RMANコマンドライン・クライアントまたはOracle Enterprise Managerを介して実行されます。
注意: Oracle Secure Backupのドキュメントでは、可能なかぎりEnterprise Managerの使用に重点を置いており、ファイル・システム・バックアップの場合のように、Enterprise Managerに同等の機能がない場合のみOracle Secure Backup Webツールについて説明しています。 |
関連項目:
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Oracle Secure Backupでサポートされるオペレーティング・システム、Webブラウザおよびネットワーク接続ストレージ(NAS)・デバイスのリストは、次のURLにあるMetalinkの「Certify」を参照してください。
Oracle Secure Backupでサポートされているすべてのテープ・デバイスに関する情報は、次のURLで入手できます。
http://www.oracle.com/technology/products/secure-backup/
この項の内容は次のとおりです。
LinuxまたはUNIXにOracle Secure Backupをインストールする場合、特定のオペレーティング・システム用のインストール・パッケージをロードし、そのパッケージを使用してインストール作業を実行します。表1-1では、LinuxおよびUNIXで管理サーバー、メディア・サーバーまたはクライアントをインストールするためのディスク領域要件について示しています。
表1-1 LinuxおよびUNIXでのOracle Secure Backupのディスク領域要件
Oracle Secure Backupインストールおよびパッケージ | ディスク領域 |
---|---|
UNIXインストール用管理サーバー(メディア・サーバーとクライアントの一方または両方を含むことが可能) |
60MB |
Linuxインストール用管理サーバー(メディア・サーバーとクライアントの一方または両方を含むことが可能) |
40MB |
すべてのオペレーティング・システムに共通の管理サーバー・ファイル |
10MB |
メディア・サーバーとクライアントの一方または両方 |
50MB |
表1-2では、Windows上にOracle Secure Backupをインストールする際に必要なディスク領域を管理サーバーの有無で分けて示しています。
表1-2 WindowsでのOracle Secure Backupのディスク領域要件
Oracle Secure Backupインストール | ディスク領域 |
---|---|
管理サーバー(メディア・サーバーとクライアントの一方または両方を含むことが可能) |
20MB |
メディア・サーバーとクライアントの一方または両方(管理サーバーなし) |
15MB |
Oracle Secure Backupカタログに必要なディスク領域は、多くの要因によって決まります。しかし原則として、バックアップ後に作成された最大の索引の250%に相当するカタログ領域を計画する必要があります。
Oracle Secure Backupの管理ドメインに参加する各ホストではTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を実行する必要があります。Oracle Secure Backupでは、各コンポーネント内、および各コンポーネントと他のシステムのコンポーネント間におけるすべての通信にこのプロトコルを使用します。
ネットワーク接続ストレージ(NAS)とテープ・サーバーなど、閉じたオペレーティング・システムを使用する各アプライアンスでは、「Oracle Secure Backupホストのアクセス・モード」に記載されているネットワーク・データ管理プロトコル(NDMP)のバージョンの1つがサポートされている必要があります。
Oracle Secure Backupの管理ドメインに参加する各ホストでは、ホスト名をIPアドレスに解決するなんらかの方法が事前に構成されている必要があります。大部分のシステムは、これを行うために、DNS、NIS、WINSまたはローカル・ホスト・ファイルを使用します。Oracle Secure Backupは、特定のメカニズムを必要としません。Oracle Secure Backupで唯一必要となるのは、基礎となるシステム・ソフトウェアに構成済のIPアドレスを提供する際に、その名前に対応するIPアドレスを取得することです。
Oracle Secure Backupの管理ドメインに参加するホストでは、DHCPの使用によるIPアドレスの割当てがサポートされません。すべてのホストに静的IPアドレスを割り当てる必要があります。静的IPアドレスを使用できない場合は、DHCPサーバーにより所定のホストに常に同じIPアドレスが割り当てられるようにする必要があります。
Oracle Secure Backupのネットワーク・インストールでは、重複するホスト名が存在しないことが重要です。索引カタログ・データは、クライアント・ホスト名に基づくディレクトリに格納されます。重複するホスト名が存在すると、複数のクライアントからのバックアップ関連情報が結合され、バックアップ・ファイルからのリストア操作に失敗する可能性があります。
Oracle Secure Backupを構成して、UNIXホストからWINS(Microsoft Windowsの名前解決プロトコル)を使用できます。この構成は変則的ですが、UNIXホストからWINSの名前解決を使用することが現実的な解決策となる場合もあります。
サポートされる各プラットフォーム用のOracle Secure Backupインストール・メディアは、CD-ROMか、次のURLにあるOracle Technology Network(OTN)のOracle Secure BackupのWebサイトからダウンロードしたZIPファイルとして入手できます。
http://www.oracle.com/technology/products/secure-backup
CD-ROMの内容とダウンロード・アーカイブは同じものです。
OTNからソフトウェアをダウンロードする場合、ダウンロードしたファイルを一時ディレクトリに格納し、インストール・ファイルのコンテンツを抽出する必要があります。
注意: 複数のプラットフォームにOracle Secure Backupをインストールする場合は、プラットフォームごとにZIPファイルをダウンロードするか、CD-ROMを入手する必要があります。 |
Oracle Secure Backupは、管理ドメイン内の管理サーバーと、各メディア・サーバーおよびクライアント・ホストにインストールする必要があります。インストール時に、インストール・ソフトウェアの指示によりそれぞれのホストに割り当てるロールを指定します。通常、1つの管理ドメインには、1つの管理サーバー、1つ以上のメディア・サーバー、および1つ以上のクライアント・ホストが含まれます。
次の手順は、Oracle Secure Backupのインストールおよび構成の概要を示しています。
Oracle Secure Backup管理サーバーを作成します。
管理サーバーとなるホストを選択します。これは、バックアップ・ジョブおよびリストア・ジョブの起動と管理に使用するホストです。
このホストが、「管理サーバーおよびメディア・サーバー用のセキュアなホストの選択」で説明されている物理的およびネットワークのセキュリティ要件を満たしていることを確認します。
このホストが、「Oracle Secure Backupのディスク領域要件」で説明されているシステム要件を満たしていることを確認します。
このホストにOracle Secure Backupソフトウェアをインストールします。
この手順が完了したら、管理ドメインが初期化されます。しかし、この時点で管理ドメインに含まれているホストは、管理サーバーのみです。
Oracle Secure Backupメディア・サーバーを作成します。
メディア・サーバーになる1つ以上のホストを選択します。これらのホストには、1つのテープ・デバイスまたはその他のセカンダリ・ストレージ・デバイスが接続されている必要があります。
このホストが、「管理サーバーおよびメディア・サーバー用のセキュアなホストの選択」で説明されている物理的およびネットワークのセキュリティ要件を満たしていることを確認します。
このホストが、「Oracle Secure Backupのディスク領域要件」で説明されているシステム要件を満たしていることを確認します。
これらの各ホストに、Oracle Secure Backupデバイス・ドライバを含め、Oracle Secure Backupソフトウェアをインストールします。
UNIXおよびLinuxプラットフォームでは、この手順でSmall Computer System Interface(SCSI)デバイス情報の入力を要求されます。この情報は、オペレーティング・システム固有のユーティリティを使用して取得します。詳細は、付録C「LinuxおよびUNIXでのSCSIパラメータの確認」を参照してください。
Oracle Secure Backupクライアントを作成します。
データをバックアップする各ホストにOracle Secure Backupソフトウェアをインストールします。
Oracle Secure Backupの管理ドメインを構成します。
管理サーバーには、次の内容に関する完全な情報が必要です。
各メディア・サーバー
テープ・デバイスをメディア・サーバーと関連付ける各添付ファイル
ネットワーク接続ストレージ(NAS)・アプライアンスなどのネットワーク・データ管理プロトコル(NDMP)・クライアントを含むクライアント・ホスト
この手順は、第5章「管理ドメインの構成および管理」で説明しています。この手順が完了すると、Oracle Secure Backupでは管理ドメイン内のクライアントに格納されている任意のデータをバックアップする準備が完了します。
Oracle Secure Backupリリース10.1の既存インストールをリリース10.2.0.2にアップグレードする場合、Oracle Secure Backup管理ドメイン内のすべてのホストをアップグレードする必要があります。Oracle Secure Backupリリース10.2は、Oracle Secure Backupリリース10.1と互換性がありません。
Oracle Secure Backupリリース10.2.0.1の既存インストールをOracle Secure Backupリリース10.2.0.2にアップグレードする場合は、Oracle Secure Backup管理ドメインの管理サーバーおよびメディア・サーバーのホストをアップグレードする必要があります。また、ドメイン内のクライアントもOracle Secure Backupリリース10.2.0.2にアップデートすることをお薦めします。ただし、クライアントとしてのみ動作しているホストは、Oracle Secure Backupリリース10.2.0.1にとどまり、Oracle Secure Backupリリース10.2.0.2ドメインの一部として参加することができます。
アップグレード・インストールでは、adminディレクトリにあるOracle Secure Backupカタログは保持され、管理ドメインの構成情報およびバックアップ・メタデータは維持されます。この管理ドメインの状態の情報(バックアップ・カタログ、ホスト、ユーザーおよびデバイスの構成情報、バックアップ・ジョブのスケジュールなど)は、管理サーバーのOracle Secure Backupホームのadmin
ディレクトリに保存されています。
注意: アップグレードする前に、管理サーバーのバックアップをお薦めします。 |
既存の管理ドメインをOracle Secure Backupリリース10.2.0.2にアップグレードする前に、すべてのホストで、Oracle Secure Backupに関連するドライバおよびバックグラウンド・プロセスを停止する必要があります。最初に管理サーバー・ホストをアップグレードし、次にドメイン内のその他のホストをアップグレードします。
次の項に、手順の簡単な説明を示します。
アップグレード・インストールを実行する前に、管理ドメイン内のすべてのホストで、Oracle Secure Backupに関連するデーモンおよびサービスを停止する必要があります。Oracle Secure Backupデーモンを停止するための推奨される方法は次のとおりです。
Linuxの場合:
# /etc/init.d/observiced stop
Solarisの場合:
#/etc/init.d/OracleSecureBackup stop
LinuxおよびSolarisの管理サーバーで、Oracle Secure Backup Webツールのプロセスも停止する必要があります。Oracle Secure Backup httpdデーモン・プロセスを特定するには、ps
コマンドを使用します。
# /bin/ps -ef | grep ob
各プロセスの停止には、kill -9
コマンドを使用します。
Windowsホストでは、Oracle Secure Backupサービスを停止する必要があります。
「サービス」アプレットを開きます。
「Oracle Secure Backup Services」サービスを右クリックし、「停止」を選択します。