ファイル・システムのバックアップおよびリストア操作に対する主要なユーザー・インタフェースは、Webツールおよびobtoolです。Oracle Secure Backupでデータのバックアップおよびリストアに使用される基礎となるエンジンは、obtarです。obtarコマンドライン・インタフェースは直接使用できますが、この手法は上級ユーザーのみを対象にしています。この章の内容は次のとおりです。
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関連資料: obtarコマンドの構文、セマンティックおよび例は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
obtarは、基礎となるOracle Secure Backupのエンジンで、ファイル・システム・データをテープとの間でやり取りします。obtarは、オリジナルのBerkeley UNIXのtar(1)コマンドから派生したものですが、obtoolまたはWebツールを介しては公開されない機能が使用できるようになります。
obtarの主な用途は、ファイル・システムのバックアップおよびリストアです。ファイルまたはディレクトリは、obtarコマンドラインまたはバックアップ記述ファイル(BDF)に指定できます。バックアップ記述ファイルは、バックアップ・イメージの対象または対象外となるパス名のリストが格納されるASCIIファイルです。
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注意: Webツールまたはobtoolを使用してバックアップ・ジョブ用のデータセット・ファイルを指定すると、Oracle Secure Backupは内部的にデータセット・ファイルをBDFに変え、obtarに入力として提供します。 |
obtarユーティリティは、様々なモード(obtar -g、obtar -xなど)で操作できます。表12-1に、これらのモードを基本タスクに分類して示します。
表12-1 obtarの操作
| 操作 | モード | 説明 | 関連項目 |
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ファイル・システム・データのバックアップ |
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ファイル・システム・データのリストア |
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バックアップのコンテンツのリスト表示およびカタログ化 |
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「obtarによるバックアップおよびボリュームのコンテンツのリスト表示およびカタログ化」 |
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ボリュームのラベル付け、再利用、ラベル付けの解除 |
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必要なOracle Secure Backupのカタログ・データが生成されるようにディレクトリおよびファイルをバックアップする場合(-g、-Gまたは-Nオプションを使用する場合など)は、obtoolまたはWebツールを使用してカタログを参照し、ファイルをリストアできます。しかし、カタログ・ファイルを生成しない場合でも、RAWリストア操作は実行できます。
obtarを使用すると、単一ファイルのオンデマンド・バックアップからファイル・システムおよびネットワーク全体の全体/増分バックアップまで、様々なバックアップ・タスクを実行できます。
バックアップは、obtar -gまたはobtar -cコマンドを実行して開始します。obtarコマンドを実行するホストをオペレータ・ホストと呼びます。バックアップするデータがあるホストをクライアント・ホストと呼びます。
この項の内容は次のとおりです。
バックアップするデータは、バックアップ・イメージと呼ばれる特殊な構造で保存されます。バックアップ・イメージは、旧バージョンの製品ではアーカイブと呼ばれていました。obtarを使用して作成されたバックアップ・イメージは、IEEE POSIX.1データ記録形式に準拠しています。バックアップ・イメージは、テープ・デバイスにロードされるメディアに作成できます。
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注意: Oracle Secure Backupには、ネイティブの仮想テープのサポートはありません。 |
obtar -gとともに使用できるオプションの1つが、-fです。このオプションは、バックアップ・イメージを作成するテープ・デバイスの名前を指定します。-fに対する引数は、Webツールまたはobtoolのmkdevコマンドを使用して構成したテープ・デバイスの名前です。-fオプションを指定しないと、obtarはTAPE環境変数(定義されている場合)によって指定されるデバイスを使用します。
大量のデータをバックアップしている際に、バックアップ・イメージがボリュームをまたいで続く必要がある場合があります。テープ・ドライブがライブラリ内に存在する場合、obtarは自動的に現在のボリュームをアンロードし、バックアップを続けるのに適した別のボリュームがないかライブラリのインベントリを検索します。obtarをインストールおよび構成する方法により、デバイスがライブラリ内部に存在するとみなすかどうかが指定されます。
スタンドアロンのテープ・ドライブ(ライブラリ内に存在しないドライブ)を使用している場合、obtarはテープを巻き戻してアンロードし、オペレータ・ホストには次のようなメッセージが表示されます。ここでvol-idは、ボリューム・セット内の次のボリュームを指します。
End of tape has been reached. Please wait while I rewind and unload the tape. The
Volume ID of the next tape to be written is vol-id.
The tape has been unloaded.
次に、obtarは次のボリュームをロードして準備ができたら[Enter]キーを押すように要求します。
Please insert new tape on device
and press <return> when ready:
バックアップは次のボリュームへと続きます。
obtar -gを使用する際に、バックアップするデータをバックアップ記述ファイルに指定します。バックアップ記述ファイル(BDF)は、バックアップ・イメージの対象および対象外のパス名のリストが格納されるASCIIファイルです。通常、バックアップする予定のデータを所有するホストごとに1つのBDFを作成し、BDFごとに別個のobtar -gコマンドを実行します。
次の例では、all_bdfに記述されたデータをtape1のボリュームにバックアップしています。
obtar -g all_bdf -f tape1
BDFは、各行に1つの文を指定した、文のリストで構成されます。各文は、1文字のディレクティブ(必ず列1に指定)およびパス名またはホスト名で構成されます。
次のタイプの文を指定できます。
ホスト名の文: バックアップされるクライアント・ホストの名前を指定します。ホスト名の文は、:dlsun1976のようにコロン(:)・ディレクティブで始まります。
対象の文: バックアップ・イメージに含めるディレクトリまたはファイルを指定します。この文は、+/private/lashdownのようにプラス記号(+)ディレクティブで始まります。
対象外の文: バックアップ・イメージから除外するディレクトリまたはファイルを指定します。BDFには次のタイプの対象外の文を挿入できます。
インクルード・ファイルの文: BDFに挿入するファイルを指定します。インクルード・ファイルの文は、./home/bdfのようにドット(.)・ディレクティブで始まります。インクルード・ファイルは、すべてのBDFに共通する対象外の文のリストを指定する場合に使用します。
例12-1に、BDFの例を示します。コメント行には、#(番号記号)が先頭に付いています。
例12-1 サンプルBDF
# Use the host named chicago as the client # host :chicago # Back up all files and directories in the /home # directory +/home # Do not back up any directories or files with the # extension ".bak" that are in the /home directory # or any of its subdirectories !*.bak # Do not back up any directories or files that begin # with the letters "tmp" that are directly under # the /home directory -tmp* # Do not back up any Oracle database files in the /home # directory or any of its subdirectories ~files
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関連資料:
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「全体および増分ファイル・システム・バックアップ」では、増分バックアップの概要について説明しています。全体バックアップでは、obtarは、前回のバックアップ後に変更されたかどうかに関係なくすべてのデータをバックアップします。増分バックアップでは、obtarは、前回のバックアップ後に変更があったデータのみをバックアップします。前回の全体バックアップ後に変更があったデータ、あるいは特定レベルの増分バックアップ後に変更があったデータのみをobtarがバックアップするようにリクエストできます。
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注意: バックアップ・レベルを0以外に指定した場合に、obtarは、これまでバックアップされたことがないデータを検出すると、レベル0のバックアップに戻ってメッセージを標準出力に送信します。 |
obtarは、クライアント・ホストのbackup-datesファイルを使用して、特定のレベルの前回のバックアップが実行された時期を判断します。このファイルは、管理サーバー上の管理データに格納されています(「管理データ」を参照)。
増分バックアップを実行するには、obtar -gを使用する必要があります。バックアップ・レベルは、obtar -Lオプションを使用して指定します。表12-2に、-Lオプションに対する引数を示します。
表12-2 -Lオプションに対する引数
| 引数 | 説明 |
|---|---|
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より下位レベルで、前回のバックアップ後に変更があったファイルのみを保存できます。 このタイプのバックアップは、累積増分バックアップと呼ばれます。バックアップ・レベル0は |
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BDFに指定されたすべてのファイルを保存します。 |
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任意のレベルで、増分バックアップ後に変更があったファイルを保存します。このタイプのバックアップは、差分増分バックアップと呼ばれ、レベル10でのバックアップに相当します。 |
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前回の全体バックアップ後に変更があったデータのみを保存します。このバックアップは、レベル1でのバックアップに相当します。 |
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全体バックアップに相当します。ただし、全体/増分バックアップ・スケジュールに影響を与えない方法でバックアップの記録を保存します。このオプションは、増分バックアップのスケジュールに影響を与えずにオフサイト・ストレージのバックアップ・イメージを作成するときに使用すると便利です。 |
obtar -Lを使用しても、指定された日時の後に変更があったファイルのみをバックアップすることができます。
obtarは、UNIXのdumpユーティリティと互換性がある10バックアップ・レベルをサポートします。dumpユーティリティも同様に、10バックアップ・レベルを提供します。
次の例に、バックアップ・スケジュールを作成する1つの方法を示します。データに対するほとんどの変更がその週に発生し、週末には、変更はたとえあったとしてもほんの少ししか発生しないと判断したとします。この状況で、次のスケジュールを使用するとします。
日曜日の夜に全体バックアップ(レベル0)を実行
月曜日〜木曜日の夜にレベル1の増分バックアップを実行
金曜日の夜にレベル2の増分バックアップを実行
日曜日に、BDFのall_bdfを使用して全体バックアップを実行するために、次のコマンドを指定します(obtarはデフォルトで全体バックアップを実行するので、-L fullと指定する必要はありません)。
obtar -g all_bdf
月曜日に、増分バックアップを実行し、日曜日の全体バックアップ後に変更があったデータのみをバックアップします。
obtar -g all_bdf -L 1
火曜日、水曜日および木曜日に、レベル1のバックアップを実行して日曜日の後に変更があったデータをバックアップし、前日に作成されたレベル1の増分バックアップを事実上置き換えます。
obtar -g all_bdf -L 1
金曜日に、レベル2のバックアップを実行し、木曜日のバックアップ後に変更があったデータをバックアップします。
obtar -g all_bdf -L 2
このバックアップ・スケジュールの場合、月曜日のリストア操作には、日曜日の全体バックアップ時に書き込まれたボリュームが必要になります。火曜日〜金曜日のリストア操作には、次のバックアップのボリュームが必要になります。
日曜日の全体バックアップ
最新の増分バックアップ
土曜日または日曜日のリストア操作には、次のバックアップのボリュームが必要になります。
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関連資料: obtar -Lの構文は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
obtar -cを使用すると、単一バックアップ・イメージを作成できます。obtar -cは、オンデマンド・バックアップを実行したり、別のサイトに移送できるボリュームにデータをバックアップするのに使用することがあります。
バックアップ・イメージをテープに作成するには、-fオプションを使用してテープ・ドライブ名を指定します。次の例では、ディレクトリ/docをtape1というテープ・ドライブにロードされたボリュームにバックアップしています。
obtar -c -f tape0 /doc
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関連資料:
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非リレーショナル・データベースを保持するWindowsコンポーネントをバックアップするには特別な操作をする必要があります。これらのコンポーネントには次のものがあります。
Active Directory
証明書サービス
クラスタ構成
リムーバブル記憶域マネージャ
これらのWindowsデータベース・コンポーネントは特殊な用途のAPIを定義し、それらのAPIによって関連データはバックアップおよびリストアされます。この項では、これらのWindowsデータベース・コンポーネントをバックアップする方法について説明します。
Oracle Secure Backupは、テキスト文字列を使用してデータベースのタイプおよび名前を識別します。これらのテキスト文字列は、バックアップまたはリストアする(またはすでにバックアップされている)データのIDが消費または作成される場所にパス名(リーフ名)のかわりに出現します。これらの場所は次のとおりです。
ファイル・ヘッダー(バックアップ・イメージ内)
一時的なASCIIの索引ファイル
各クライアント・ホストのバックアップ・カタログ
obtarコマンドライン・インタフェース
obtarバックアップ記述ファイル(BDF)
次の例のように、デーベース識別子はカンマで区切られます。
database,db-type[,db-name]
この構文では、databaseはリテラル・テキスト文字列であるのに対し、db-typeはユーザーが定義する文字列の1つです。データベースに名前がある場合は、db-typeの後にカンマで区切って続けます。
ディレクトリ・サービス・データベースをバックアップするには、ActiveDirectoryというdb-typeを指定したデータベース識別子をBDFまたはobtarコマンドラインで使用します。
database,ActiveDirectory
db-typeは、大/小文字を区別しません。Active Directoryの場合、データベース識別子には関連付けられたdb-nameがありません。
Active Directoryデータベースをバックアップするには、ディレクトリ・サービスが稼働している必要があります。Active Directoryデータベースをリストアするには、次のようにディレクトリ・サービス復元モードで再起動する必要があります。
Windowsを再起動します。
「Windowsを起動しています」プログレス・バーが表示されたら、[F8]を押します。
「Windows 2000 拡張オプション メニュー」から、「ディレクトリ サービス復元モード」を選択します。
前述の手順により、コンピュータはスタンドアロン・サーバーとして再起動されます。その後、セキュリティ アカウント マネージャ(SAM)がレジストリに格納されたユーザー/グループ定義の最小セットを使用するため、Oracle Secure Backupのサービス(observiced)が正常にログインできるように、Oracle Secure Backupのサービス・アカウントの調整が必要になる場合があります。
証明書サービス・データベースをバックアップするには、CertificateServiceというdb-typeを指定したデータベース識別子をBDFまたはobtarコマンドラインで使用します。
database,CertificateService
db-typeは、大/小文字を区別しません。証明書サービスの場合、データベース識別子には関連付けられたdb-nameがありません。
証明書サービス・データベースをバックアップするには、証明書サービスが稼働している必要があります。データベースを復元するには、証明書サービスを停止する必要があります。ExchangeデータベースやSQLデータベースと同様に、windowscontrolcertificatecerviceポリシーを使用して証明書サービスの自動的な起動および停止をOracle Secure Backupに要求できます。
obtar -xオプションを使用すると、バックアップ・イメージからファイルを抽出できます。バックアップ・イメージのコンテンツ全体または一部のみを抽出できます。
所有しているディレクトリにデータをリストアするのに、特殊な権限は必要ありません。所有していないディレクトリにデータをリストアするには、rootとしてログインするか、obtarコマンドで-Rオプションを指定する必要があります。-Rを使用する場合は、特権ユーザーとしてのリストア実行(perform restores as privileged user)権限が指定されたクラスに属するユーザーとしてログインする必要があります。
次のコマンドは、デバイスtape1にロードされたボリューム上にあるバックアップ・イメージ4のコンテンツを抽出します。
obtar -x -f tape1 -F 4
抽出されるとおりにバックアップ・イメージのコンテンツを表示するには、-vオプションを使用します。たとえば、次のコマンドは、バックアップ・イメージ4のコンテンツを抽出し、それを表示します。
obtar -x -v -f tape1 -F 4 doc/ doc/chap1 doc/chap2 test/ test/file1 test/file2
次のコマンドは、バックアップ・イメージのファイルと同じ名前を持つ/docディレクトリのファイルが上書きされないようにします。
obtar -x -f tape1 -k /doc
次のコマンドは、RAWファイル・システム・パーティションのコンテンツをリストアします。
obtar -x -f tape0 /dev/rdsk/dks0d10s1
パーティションはフォーマット済で、現在アンマウントされていることを前提とします。
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関連資料: obtar -xの構文、セマンティックおよび例は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
-sオプションをobtar -xとともに使用すると、元の場所以外の場所にデータを抽出できます。このオプションは、絶対パス名を使用してデータをバックアップした場合に特に便利です。-sを使用しないと、データは元のディレクトリにリストアされ、同じ名前の既存データは上書きされます。
-sを使用すると、replacement文字列でリストア対象のパス名のprefixが置き換えられます。prefixには、元のパス名の最も左の部分まで含める必要があります。たとえば、/home/jane/testディレクトリをバックアップし、データを/home/tmp/testにリストアする場合は、-s,/home/jane,/home/tmp,のように文字列を指定します。
replacement文字列を省略するとnull文字列とみなされ、prefixが検出されたすべてのpathnameからprefixは削除されます。デリミタは、構文の文ではカンマ(,)として示されていますが、prefixまたはreplacement文字列に含まれていなければ、どんな文字でもかまいません。
次のコマンドは、/docディレクトリを抽出し、/tmp/docというディレクトリにリストアします。
obtar -x -f tape1 -s ,/doc,/tmp/doc, /doc
この項では、その他のobtarリストア・オプションについて説明します。
obtarをUNIXのパイプまたはソケットとともに使用している場合、さらにデータを受け取っている場合でもデータのブロックが一部だけ戻されることがあります。この動作が原因でobtarが失敗する可能性があります。-Bオプションを使用して、obtarで読取りを複数回実行してブロックを埋めることができます。
たとえば、Oracle Secure Backupがインストールされていないホストに接続されているデバイスからデータをリストアするとします。次のコマンドは、loganというホストに接続されているデバイスから/docディレクトリをリストアします。
rsh logan cat /dev/nrst0 | obtar -x -B -f - /doc
-fオプションを使用してリモート・デバイスを指定する場合、-Bを使用する必要はありません。これは、obtarのネットワーク・プロトコルにより全ブロックの読取りおよび書込みが保証されるためです。
通常、データは元のタイムスタンプでリストアされます。-mオプションを指定すると、データのタイムスタンプは現在の日時に変更されます。
次の例では、/oldディレクトリ内のすべてのディレクトリおよびファイルのタイムスタンプが現在の日時に変更されています。
obtar -x -m -f tape0 /old
ブロックへの直接位置指定をサポートするデバイスを使用している場合、-qオプションを使用してボリューム上の特定データを迅速に検索できます。-qに対する引数は、obtoolのls --backup --positionコマンドから取得する位置文字列です。-qを使用すると、ボリュームは指定した場所に直接位置指定されます。
たとえば、obtoolでlsコマンドを使用すると、ファイル/home/gms/output/test001の位置が特定されます。
obtool ls --backup --position /home/gms/output/test001 test001 Backup Date & Time ID Volume ID Volume Tag File Sect Level Position 2006/01/11.10:16:28 3 VOL000106 00000110 11 0 000045020008
位置データを取得すると、次の例に示すように-qオプションをobtar -tとともに指定できます。
obtar -t -f tape1 -q 000045020008
この項では、obtarを使用してボリューム上の個々のバックアップ・イメージのコンテンツをリスト表示する方法と、単一バックアップ・イメージまたはボリューム全体のボリュームおよびバックアップ・イメージ・ラベルをリスト表示する方法について説明します。
この項の内容は次のとおりです。
obtar -tを使用すると、バックアップ・イメージに含まれるファイルおよびディレクトリの名前を表示できます。バックアップ・イメージのコンテンツ全体または一部のみをリスト表示できます。obtar -tでは、NDMPアクセスされるデバイス上のファイルのバックアップは表示されません。
次のコマンドは、デバイスtape1にロードされたボリュームの現在の位置で検出されたバックアップのコンテンツを表示します。
obtar -t -f tape1 project/ project/file1 project/file2 project/file3
ボリューム・セット上の特定のバックアップ・イメージのコンテンツを表示するには、-Fオプションを使用します。たとえば、次のコマンドは、バックアップ・イメージ4のコンテンツを表示します。
obtar -t -f tape1 -F 4 doc/ doc/chap1 doc/chap2 test/ test/file1 test/file2
バックアップ・イメージに関するその他の情報を表示するには、-vオプションを使用します。次のコマンドは、-vオプションを使用してバックアップ・イメージ4に関するその他の情報を表示します。
obtar -t -v -f tape1 -F 4 drwxrwxr-x jane/rd 0 Feb 24 16:53 2000 doc/ -rw-r--r-- jane/rd 225 Feb 24 15:17 2000 doc/chap1 -rwxrwxr-x jane/rd 779 Feb 24 15:17 2000 doc/chap2 drwxrwxr-x jane/rd 0 Feb 24 16:55 2000 test/ -rwxrwxr-x jane/rd 779 Feb 24 16:54 2000 test/file1 -rw-r--r-- jane/rd 225 Feb 24 16:54 2000 test/file2
バックアップ・イメージに含まれる特定のファイルまたはディレクトリに関する情報を表示するには、コマンドラインに最後の引数としてファイルまたはディレクトリの名前を指定します。たとえば、次のコマンドは、バックアップ・イメージ4に含まれるディレクトリtestに関する情報を表示します。
obtar -t -f tape1 -F 4 test test/ test/file1 test/file2
バックアップ・イメージからのパス名は複数指定できます。次のコマンドは、ディレクトリtestおよびdocに関する情報を表示します(ディレクトリはバックアップ・イメージに出現する順序でリスト表示されます)。
obtar -t -f tape1 -F 4 test doc doc/ doc/chap1 doc/chap2 test/ test/file1 test/file2
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関連資料: obtar -tの構文、セマンティックおよび例は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
obtar -Gtを指定すると、バックアップ・イメージのコンテンツをカタログ化できます。RMANまたはファイル・システムのバックアップをカタログ化できますが、obtar -tではNDMPバックアップはカタログ化されません。1回にカタログ化できるイメージは1つのみです。
例12-2では、テープ・ドライブtape1にロードされたボリューム上のバックアップ・イメージ1をカタログ化しています(出力の一部のみを示します)。この例では、イメージにはホストstadf56上の/home/someuserディレクトリのファイル・システム・バックアップが含まれています。
例12-2 ファイル・システムのバックアップ・イメージのカタログ化
# obtar -f tape1 -tG -F 1
Volume label:
Volume tag: DEV100
Volume ID: VOL000001
Volume sequence: 1
Volume set owner: root
Volume set created: Tue Nov 22 15:57:36 2005
Archive label:
File number: 1
File section: 1
Owner: root
Client host: stadf56
Backup level: 0
S/w compression: no
Archive created: Tue Nov 22 15:57:36 2005
/home/someuser/
/home/someuser/.ICEauthority
/home/someuser/.Xauthority
/home/someuser/.aliases
/home/someuser/.bash_history
/home/someuser/.bash_logout
/home/someuser/.bash_profile
/home/someuser/.bashrc
.
.
.
例12-3でも、テープ・ドライブtape1にロードされたボリューム上のバックアップ・イメージ1をカタログ化しています。この例では、イメージにはアーカイブREDOログのRMANのバックアップが含まれています。
例12-3 RMANのバックアップ・イメージのカタログ化
# obtar -f tape1 -tG -F 1
Volume label:
Volume tag: ADE202
Volume ID: RMAN-DEFAULT-000002
Volume sequence: 1
Volume set owner: root
Volume set created: Mon Feb 13 10:36:13 2006
Media family: RMAN-DEFAULT
Volume set expires: never; content manages reuse
Archive label:
File number: 1
File section: 1
Owner: root
Client host: stadv07
Backup level: 0
S/w compression: no
Archive created: Mon Feb 13 10:36:13 2006
Backup piece name: 05hba0cd_1_1
Backup db name: ob
Backup db id: 1585728012
Backup copy number: non-multiplexed backup
Backup content: archivelog
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関連資料: obtar -tGの構文、セマンティックおよび例は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
obtar -zを使用すると、バックアップ・イメージのボリューム・ラベルを表示できます。また、-zオプションをobtar -tおよびobtar -gとともに使用するとボリューム・ラベルの表示が、obtar -cとともに使用するとボリューム・ラベルの作成ができます。
たとえば、次のコマンドは、デバイスtape1にロードされたボリューム上の4番目のバックアップ・イメージのボリューム・ラベルを表示します。
obtar -z -f tape1 -F 4 Volume label: Volume ID: VOL000105 Volume sequence: 1 Volume set owner: jane Volume set created: Tue Mar 2 10:13:14 2002 Backup image label: File number: 4 File section: 1 Owner: jane Client host: chicago Backup level: 0 S/w compression: no Archive created: Tue Mar 2 10:13:14 2002
obtar -zを使用すると、バックアップ・イメージが読み取られます。バックアップ・イメージが読み取られるときは常に、読み取られたばかりのバックアップ・イメージの後、かつ次のバックアップ・イメージのボリューム・ラベルの前に、ボリュームは位置指定されます。たとえば、前述のコマンドの後に別のobtar -zコマンドを入力すると、バックアップ・イメージ5が存在する場合は、そのボリューム・ラベルが表示されます。
obtar -zf tape0 Volume label: Volume ID: VOL000003 Volume sequence: 1 Volume set owner: gms Volume set created: Wed May 01 14:08:23 2000 Backup image label: File number: 5 File section: 1 Owner: gms Client host: campy Backup level: 0 S/w compression: no Archive created: Wed May 01 14:08:23 2000
obtar -zzを使用すると、次の例のように、ボリューム上のすべてのラベルを表示できます。
obtar -zzf tape0 Seq Volume Volume Backup Image Client Backup Backup Image Create # ID Tag File Sect Host Level Date & Time 1 VOL000003 1 1 campy 0 05/01/00 14:08:23 1 VOL000003 2 1 phred 0 05/01/00 15:37:00 1 VOL000003 3 1 mehitibel 0 05/01/00 15:38:08
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関連資料: obtar -zおよび-zzの構文、セマンティックおよび例は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
obtarを使用すると、テープ・ボリュームに事前にラベルを付け、そのラベルによってテープの印刷されたラベル(ボリューム・タグ)とテープの記録されたコンテンツを関連付けることができます。
テープ・ボリュームに事前にラベルを付けるには、次の手順に従います。
初めてボリュームを使用する前に、一意の識別子を割り当てます。識別子の長さは1〜31文字です。テープの外側の印刷されたラベル(ボリューム・タグ)にこの識別子を書き込みます。
書込み可能なボリュームをアクセス可能なテープ・ドライブに設置します。
Oracle Secure Backupがインストールされたホストから、次の操作を行います。
obtarによって、volume-tagが指定したtape-deviceに書き込まれます。たとえば、次のコマンドは、tape0で検出されたテープ・ボリュームにタグWKLY58010を付けます。
obtar -Xlabel -Xtag:WKLY58010 -f tape0
マシンでの読取りが可能なタグ(バーコード)が付けられたボリュームが、バーコード・リーダーを装備したライブラリ内に存在する場合は、-Xtagオプションを省略できます。
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注意: テープ・ボリュームのラベル付け、再利用およびラベル付けの解除は、格納されているデータを事実上消去します。これらの操作は、ボリュームに有効なデータが格納されていない場合にかぎり実行してください。 |
テープにラベルを付けると、obtarによってボリューム・タグとボリュームIDの間の関係が保持されます。タグは外部的な識別子であるのに対し、IDは内部的な識別子です。そのボリュームのラベルが表示されるときは、必ずボリューム・タグも表示されます。同様に、リストア時にボリュームが要求されるときは、ボリュームIDとタグの両方が表示されます。
ボリュームにラベルを付けるとき、必要に応じてボリュームの使用を特定のメディア・ファミリに限定するようにobtarに指示できます。その場合、指定した以外のメディア・ファミリ用のデータは、そのボリュームに書き込むことができなくなります。
ボリュームに対するメディア・ファミリを選択するには、オプション-Xfa:family-nameをobtarコマンドラインに指定します。たとえば、テープ・ドライブrdrive MMR-2006のテープにラベルを付け、その使用をメディア・ファミリINCRに限定する場合は、次のように入力します。
obtar -Xlabel -Xtag:MMR-2006 -f rdrive -Xfa:INCR
obtarは、永続的に特定のメディア・ファミリに限定されるボリュームのラベルを表示する際、メディア・ファミリ名の横に(permanent)と表示します。
Volume label: Volume tag: MMR-2006 Volume ID: INCR-000007 Volume sequence: 1 Volume set owner: root Volume set created: Sun Dec 18 20:16 PM 2002 Media family: INCR (permanent)
メディア・ファミリの制限を解除するには、ボリュームのラベル付けの解除または再利用をobtarに指示します。ボリュームのラベル付けを解除すると、格納されているすべての情報が事実上消去されることになります。これには、既存のボリューム・ラベル情報も含まれます。ボリュームのラベル付けを解除するには、次のように入力します。
obtar -Xunlabel -f device [-Xow]
-Xowオプションは、obtarでボリューム・ラベルに残存する有効期限を無視する場合にかぎり使用します。
ボリュームの再利用はボリュームのラベル付けの解除に似ていますが、再利用の操作は既存のボリューム・ラベルを保持するようにobtarに指示します。ボリュームを再利用するには、次のように入力します。
obtar -Xreuse -f device [-Xow]
-Xowオプションは、ラベル付けの解除操作で使用されるときと同じ意味をここでも指定します。たとえ残存していても、ボリューム・ラベルで検出された有効期限は無視するようにobtarに指示します。
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関連資料: obtar -Xlabel、-Xunlabel、-Xreuseの構文、セマンティックおよび例は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
この項では、obtarを最大限に利用する方法について説明します。また、obtarのより高度なバックアップ機能のいくつかについて情報を示します。
この項の内容は次のとおりです。
デフォルトでは、obtarは、tarと完全に互換性があるバックアップ・イメージを生成します。この項では、obtarを使用して作成したバックアップ・イメージとともにtarを使用するためのヒントを示します。
obtar -gを使用してバックアップ・イメージを作成すると、バックアップ・イメージに関する情報を提供する複数のファイルがバックアップ・イメージ内に作成されます。obtarでは、これらのファイルは特殊ファイルと認識され、実際のファイルとしてバックアップ・イメージから抽出されることはありません。tarでは、これらのファイルは通常のファイルとして表示されます。つまり、tarを使用してバックアップ・イメージを抽出すると、接頭辞###が付いた複数のファイルが作成されます。obtar -xを使用してバックアップ・イメージをリストアすると、これらのファイルは作成されません。
次のobtarのオプションはいずれも使用でき、tarとの互換性も保持できます。
-b, -B, -c, -f, -h, -l, -m, -p, -t, -v, -x
複数のボリュームにまたがるバックアップ・イメージの抽出にtarを使用する場合、複数のボリュームにまたがるバックアップ・イメージの各セクションが有効なtarファイルとなります。obtarはバックアップ・イメージのコンテンツを正しく抽出できますが、tarはバックアップ・イメージの最初のセクションを抽出した後、早々にファイルの終わりになります。この時点で、ボリュームの区切りをまたいで続くファイルの最初の部分のデータしか抽出されていません。ファイルを完全にリストアするには、次のようにする必要があります。
抽出を続行するため、最初のファイルの断片を上書きされない場所に移動します。
次のボリュームをロードし、抽出を続行します。2番目のファイルの断片が抽出されます。
UNIXのcatコマンドを使用して、2番目のファイルの断片を最初のファイルの断片の最後に追加して完全なファイルを取得します。次に例を示します。
cat first_frag second_frag > complete_file
ファイルの断片を削除します。
バックアップされるデータにシンボリック・リンクが含まれるとき、obtarは通常、リンク・テキストのみをバックアップし、リンクが指定するデータをバックアップしません。-hオプションを使用すると、obtarはリンク・テキストだけでなくデータもバックアップします。次のコマンドは、home_bdfというBDFのパスにある、指定先のデータをバックアップしています。
obtar -g home_bdf -f /dev/nwrst1 -h
明示的なリンクのパス名をBDFに挿入するか、obtar -cを使用すると、-hオプションの使用に関係なく、リンクが指定するデータがバックアップされます。しかし、BDF(またはコマンドライン)に明示的に記述されたリンクをobtarで追跡しない場合は、-Xnochaselinksを指定して追跡を抑制できます。
obtarは、オフサイトと呼ばれるバックアップ・レベルをサポートします。オフサイト・バックアップは、全体(レベル0の)バックアップに相当します。ただし、全体/増分バックアップ・スケジュールに影響を与えない方法でこのバックアップの記録を保存します。このオプションは、増分バックアップのスケジュールを妨害せずにオフサイト・ストレージのバックアップ・イメージを作成するときに使用すると便利です。オフサイト・バックアップをリクエストするには、-L offsiteを指定します。
通常、obtarはツリーのバックアップ時にブロックまたは文字特殊ファイルに遭遇すると、特殊ファイルの名前と属性のみをバックアップ・イメージに書き込みます。しかし、ブロックまたは文字特殊ファイルがバックアップ・ツリーのトップレベルにある場合、明示的にまたはワイルドカードを使用して、obtarはファイル名、属性およびコンテンツをバックアップします。たとえば、次のコマンドは、/devディレクトリ内のすべての特殊ファイル名で構成されるバックアップ・イメージを作成しますが、特殊ファイルのオープンも読取りも行いません。
obtar -cvf tape0 /dev
一方、次のコマンドは、/dev/sd0a、/dev/sd13a、sd13bなどをオープンし、基礎となるRAWファイル・システムのコンテンツ全体をバックアップ・イメージに書き込みます。
obtar -cvf tape0 /dev/sd0a /dev/sd13*
この形式のアクセスはネイティブのUNIXファイル・システムを経由しないため、非UNIXデータが格納されているRAWファイル・システム(データベースが格納されているディスク・パーティションなど)のバックアップに使用できます。
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注意: マウントされたファイル・システムは、バックアップまたはリストアしないでください。ファイル・システムがマウントされると、バックアップまたはリストア中に他のプロセスによるアクティビティでファイル・システムが変更され、内部的な矛盾が発生する原因となることがあります。 |
また、RAWファイル・システムをバックアップおよびリストアするときには、次の考慮事項に注意してください。
obtarには、RAWファイル・システム上でどのブロックが使用中または未使用であるかが不明であるため、ベンダー提供のUNIXファイル・システムを使用するバックアップ(使用中のブロックのみを保存)とは対照的に、常にファイル・システム全体が保存されます。
データをRAWファイル・システムにリストアするとき、リストア先のファイル・システムのサイズは、バックアップされたファイル・システムのサイズ以上である必要があります。
RAWファイル・システムをリストアするとき、ファイル・システム上に現存するすべてのデータが失われ、バックアップ・イメージのデータで全面的に上書きされます。
RAWファイル・システム(あるいは他のブロックまたは文字特殊ファイル)をリストアするには、RAWファイル・システムが(mkfs、mkvolなどのツールを使用して)フォーマット済であり、RAWファイル・システムを参照する特殊ファイルがすでに存在している必要があります。それ以外の場合は、データは通常のファイルとしてリストアされません。
-Mを使用すると、Exabyte 8500、8500cおよび8505形式のテープ・デバイスの設定と、ハードウェア圧縮のオン/オフができます。構文は次のとおりです。
-Mparameter:value
Exabyte 8500、8500cおよび8505のテープ・デバイスを使用している場合、-Mを使用してExabyte 8200テープ・デバイスで使用することもできるバックアップ・イメージを作成できます。形式を設定するには、次のように指定します。
-M format:{8200|8500}
8200形式に変更するには8200と、8500形式に変更するには8500と指定します。どちらも指定しないと、8500形式が使用されます。
また、-Mは、ハードウェア圧縮をサポートするデバイスについてハードウェア圧縮をオンまたはオフにするのにも使用できます。ハードウェア圧縮はデフォルトでオンに設定されます。ハードウェア圧縮を設定するには、次のように指定します。
-M compress:{on|off}
ハードウェア圧縮をオンにするにはonと、オフにするにはoffと指定します。
バックアップ・イメージを作成する際にハードウェア圧縮をオンにすると、データをリストアする際に、データはデバイスによって自動的に解凍されます。
ハードウェア圧縮をオンにした場合は、-Zオプションを指定しないでください。このオプションは、ソフトウェア圧縮を有効にします。
WangDAT 2600デバイスを使用している場合、ドライブが自動的にテープを再フォーマットするため、圧縮設定の変更に約55秒かかります。
2つの-Mオプションを使用すると、同じコマンドで形式と圧縮を変更できます。次に例を示します。
obtar -g my_bdf -f tapet0 -M format:8200 -M compress:off
スパース・ファイルとは、穴(書き込まれたことのないファイルの領域)があるファイルです。通常、obtarはスパース・ファイルの特殊な処理を実行しません。obtar -gまたはobtar -cを使用してバックアップ・イメージを作成する際に-Pオプションを指定すると、バックアップ・イメージのスパース・ファイルは圧縮されます。その後、そのバックアップ・イメージをリストアすると、スパース・ファイルは元の形式にリストアされます。
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注意: このオプションは、Windows 2000下のスパース・ファイルには適用されません。これらのファイルは、常にスパース形式でバックアップおよびリストアされます。 |
通常、obtarが増分バックアップの対象にするファイルを決定するとき、ファイルのmtimes、すなわちファイルのコンテンツが最後に変更された時間を使用します。しかし、ファイルは、mvまたはcp -pを使用してディレクトリに追加されると、バックアップされないことがあります。これは、このようなファイルの変更時間は、元のファイルの変更時間のままであるためです。増分バックアップの対象の基準としてmtimesではなくステータス変更時間(ctimes)を使用するようにobtarに指示すると、この問題に対処できます。ファイルのステータス変更時間は、ファイルのinodeが最後に変更された時間です。
ctimesを使用すると、mtimesを使用して選択されたファイル全部と、ディレクトリに移動またはコピーされたファイル全部が選択されます。このオプションを指定するには、コマンドラインに -Xuse_ctimeを指定します。スケジュール済バックアップの場合は、-Xuse_ctimeをoperations/backupoptionsポリシーに指定できます。
-Xuse_ctimeの使用には、次のデメリットがあります。mtime基準を使用する場合、obtarは、バックアップ後に各ファイルの最終アクセス時間(atime)をリセットします。つまり、ファイルのバックアップという動作では、ファイルのatimeは変更されません。しかし、ctimeを選択基準として使用する場合、obtarは最終アクセス時間をリセットできません。これは、最終アクセス時間のリセットにより、ファイルのステータス変更時間がリセットされるためです。したがって、あらゆる増分は全体バックアップに変わります。つまり、-Xuse_ctimeを指定すると、-Xupdtuもオンになります。
重要な点は次のとおりです。
-Xuse_ctimeを指定しない場合、増分の基準はmtimeです。atimesは変更されないままで、移動されたファイルは欠落することがあります。
-Xuse_ctimeを指定する場合、増分の基準はctimeです。atimesはバックアップの時間を反映し、移動されたファイルは取得されます。
obtar -gを使用してバックアップ・イメージを作成すると、通常、索引およびボリューム・ラベルの作成と、バックアップ日付ファイルの更新が行われます。-Sオプションをobtar -gとともに使用すると、この動作のいずれかまたは全部を抑制できます。
-Sオプションの構文は、次のとおりです。
-S{a|G|U|z}
-Sに対する引数は、次のとおりです。
a
索引およびボリューム・ラベルの作成と、バックアップ日付ファイルの更新を抑制します。
G
索引データの作成を抑制します。
U
バックアップ日付ファイルの更新を抑制します。
z
ボリューム・ラベルの作成を抑制します。
バックアップを定期的に実行するとき、コマンドラインからではなく、シェル・スクリプトからバックアップを実行した方が簡単な場合があります。
Oracle Secure Backupホームのsamplesディレクトリに、autoobtarというサンプルのシェル・スクリプトがあります。独自のシェル・スクリプトを作成するためにアイデアを求めてこのファイルを調べると役立つことがあります。
シェル・スクリプトを使用する際に、obtar -yオプションを使用してステータス・ファイルを作成できます。ステータス・ファイルは、バックアップ・セッションに関する情報を提供します。-yオプションの構文は次のとおりです。ここでpathnameは、オペレータ・ホストに対してローカルなファイルです。pathnameがすでに存在する場合は、上書きされます。
-y pathname
例12-4に、サンプルのステータス・ファイルを示します。表12-3では、ステータス・ファイルのエントリについて説明します。
例12-4 サンプルのステータス・ファイル
status 0 devices 1 volumes VOL000017 file 5 host chicago start_time Wed Mar 31 2005 at 15:40:04 (733610404) end_time Wed Mar 31 2005 at 15:40:13 (733610413) entries_scanned 12 entries_excluded 0 entries_skipped 0 mount_points_skipped 0 files 9 directories 3 hardlinks 0 symlinks 0 sparse_files 0 filesys_errors 0 unknown_type 0 file_kbytes 9 dev_kbytes 16 dev_iorate 174.3 KB/s wrt_iorate 305.1 KB/s path /home/pablo/test1 0 path /home/pablo/test1 0 path /home/pablo/test2 0
表12-3 ステータス・ファイルのエントリ
| エントリ | 意味 |
|---|---|
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status |
バックアップ全体に対するステータス・コード。各ステータス・コードは、 |
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volumes |
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file |
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host |
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start_time |
セッションの開始日時。 |
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end_time |
セッションの終了日時。 |
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entries_scanned |
読み取られたファイル・システム・オブジェクトの数。 |
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entries_excluded |
バックアップ記述ファイルの対象外の文により、バックアップ・イメージから除外されたファイル・システム・オブジェクトの数。 |
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entries_skipped |
増分バックアップ時にスキップされたファイル・システム・オブジェクトの数。 |
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mount_points_skipped |
スキップされたマウント・ポイントの数。 |
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files |
バックアップ・イメージに含められたファイルの数。 |
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directories |
バックアップ・イメージに含められたディレクトリの数。 |
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hardlinks |
バックアップ・イメージに含められたハード・リンクの数。 |
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symlinks |
バックアップ・イメージに含められたシンボリック・リンクの数。 |
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sparse_files |
バックアップ・イメージに含められたスパース・ファイルの数。 |
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filesys_errors |
発生したファイル・システム・エラーの数。 |
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unknown_type |
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file_kbytes |
バックアップ・イメージを作成するために読み取られたファイル・データのKB数。 |
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dev_kbytes |
バックアップ・イメージに書き込まれたデータのKB数。 |
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dev_iorate |
バックアップ・イメージ作成期間に対するI/Oレート。 |
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wrt_iorate |
データをテープに実際に書き込み始めてから終わるまでのI/Oレート。 |
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path pathname status |
バックアップ・イメージに含められたデータ。 |
バックアップからディレクトリ・ツリーの部分を除外することがあります。たとえば、BDFまたはobtarコマンドラインに/homeと指定しても、バックアップから/home/bobを除外するという場合です。データセットおよびスケジューラを使用している場合、exclude pathデータセット・ディレクティブによってこのタスクを実行できます。
あるいは、除外するディレクトリに.ob_no_backupというファイルを作成します。次に例を示します。
touch /home/bob/.ob_no_backup
オプション -Xmarkerfilesをコマンドラインに指定すると、.ob_no_backupという名前のファイルが検索されます。この名前のファイルを検出すると、格納元のディレクトリとそのサブディレクトリがスキップされます。
デフォルトでは、obtarは、ローカルまたはリモート・マウント・ポイントを横断しません。ローカル・マウント・ポイントは、ローカル・ファイル・システムをマウントします。リモート・マウント・ポイントは、ネットワークを介してアクセスされるファイル・システムのローカル・マウントです。
BDFのマウント・ポイント文を使用すると、obtarのデフォルトの動作を無視し、バックアップ時にマウント・ポイントを横断することができます。また、obtarのオプションを使用してマウント・ポイントの動作を制御することもできます。表12-4に、obtarによるマウント・ポイントの処理方法を制御する方法をまとめます。
表12-4 obtarのマウント・ポイントの動作の制御
| マウント・ポイントの制御方法 | 説明 | 関連項目 |
|---|---|---|
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BDFのマウント・ポイント文 |
マウント・ポイントを横断するように |
「BDFのマウント・ポイント文によるマウント・ポイントの横断」 |
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マウント・ポイントを横断したり、すべてのBDFのマウント・ポイント文を無視したりしないように |
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「-Xchkmnttabオプションによるリモート・マウント・ポイントの回避」 |
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他のマウント・ポイント制御オプションまたはBDFのマウント・ポイント文に関係なく、すべてのマウント・ポイントを横断するようにobtarに指示します。 |
「-Xcrossmpオプションによるマウント・ポイントの横断」 |
BDFでマウント・ポイント文を使用すると、バックアップ時にobtarがローカルおよびリモート・マウント・ポイントを横断するかどうかを決定できます。BDFのマウント・ポイント文は次のとおりです。
@crossallmountpoints
すべてのローカルおよびリモート・マウント・ポイントを横断することを指定します。
@crossremotemountpoints
リモート・マウント・ポイントのみを横断することを指定します。
@crosslocalmountpoints
ローカル・マウント・ポイントのみを横断することを指定します。
マウント・ポイント文の範囲ルールは次のとおりです。
すべてのパスの前に指定されたマウント・ポイント文は、すべてのパスに適用できます。
特定のパスの直後に指定されたマウント・ポイント文は、そのパスにのみ適用できます。
マウント・ポイント文がすべてのパスの前に指定されている場合、その文の後のマウント・ポイント文は最初のマウント・ポイント文を補足します。
たとえば、/loc_mt1上のローカル・ファイル・システムおよび/rem_mt1上のリモート・ファイル・システムをマウントするLinuxホストがあるとします。例12-5では、マウントされたファイル・システムのどちらでもファイルはバックアップされません。
マウントされたファイル・システムをすべて横断するには、次の構文を使用してcrossmount.bdfというBDFを作成します。
@crossallmountpoints /loc_mt1 /rem_mt1
例12-6に示すコマンドを入力すると、マウントされたファイル・システムはどちらもバックアップできます。
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関連資料: BDFのマウント・ポイント文の詳細は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
前の項で説明しているように、BDFでマウント・ポイント文を使用して、マウント・ポイントを横断するようにobtarに明示的に指示できます。BDFにマウント・ポイント文が挿入されている場合でも、obtarでローカルまたはリモート・マウント・ポイントを横断しない場合は、-lオプションを指定できます。
前の項で説明されている例を想定した場合、例12-7では-lが指定されているため、マウントされたファイル・システムはバックアップされません。
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関連資料: -lオプションの詳細は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
デフォルトでは、obtarはstat(2)操作を実行して、ファイルがマウント・ポイントであるかどうかを判別ます。リモートでマウントされたファイル・システムが停止または応答しない場合、stat(2)操作が原因でobtarの処理がハングする可能性があります。
-Xchkmnttabオプションは、これらのstat(2)操作を実行する前にローカル・マウント表(/etc/mnttab)を調査し、リモート・マウント・ポイントであると判断されたディレクトリをスキップするようにobtarに指示します。ローカル・マウント・ポイントはスキップされません。-Xchkmnttabの使用において次の事柄に注意してください。
-Xchkmnttabオプションは、リモート・マウント・ポイントをスキップまたは横断するようにobtarに指示するBDFの文に優先します。
-Xchkmnttabオプションは、-Xcrossmpによって無効にされます。
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関連資料: -Xchkmnttabオプションの詳細は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。 |
Oracle Secure Backupは、2GB超のカタログ・ファイルをサポートします。このサポートは、サイズが2GB超のファイルをサポートするオペレーティング・システムおよびファイル・システムに限定されています。2GBのファイル・サイズをサポートするOracle Secure Backupの管理サーバーには、Solaris 2.8以上(64ビットのみ)があります。