Oracle TimesTen In-Memory Database概要

キャッシュ・グループのロードと更新

Oracleのデータは、最初にTimesTenにロードされキャッシュ・グループに移入されます。キャッシュ・グループへのロードが終了したら、そのキャッシュ・データは、TimesTenキャッシュ・グループとOracleデータベースのいずれでも更新できます。Cache Connectでは、キャッシュ・グループからOracleへの更新の伝播とOracleからキャッシュ・グループへのデータのリフレッシュを、いずれも自動的に実行できます。

図8.3 データのロードおよび更新の伝播/リフレッシュ

アプリケーションは、次の方法を選択して、OracleデータベースからTimesTenにキャッシュ・グループ・データをロードできます。

キャッシュ・グループ全体を一度にロードします。これは、キャッシュ・グループ全体の内容がメモリーに収まる場合に適した方法です。また、TimesTenではキャッシュ・グループ全体をアンロードすることもできます。

キャッシュ・インスタンスをそのキャッシュ・インスタンス・キーでロードします。この場合、キャッシュ・インスタンスを構成するレコードが、リクエストに応じてTimesTenにロードされます。キャッシュ・インスタンスがすでにTimesTenにロードされている場合、リクエストは無視されます。この方法は、キャッシュの容量がキャッシュ・グループによって記述されるすべてのデータを保持できるほど大きくない場合に適しています。また、TimesTenでは、キャッシュ・インスタンスをそのキャッシュ・インスタンス・キーでアンロードすることもできます。

キャッシュ・グループがUSERMANAGEDまたはREADONLYの場合は、キャッシュ・インスタンスをWHERE句でロードします。この方法は、キャッシュ・インスタンスをそのキャッシュ・インスタンス・キーでロードする方法と似ていますが、この場合は、キャッシュ・インスタンスはIDではなく、WHERE句で記述されます。また、キャッシュ・インスタンスをWHERE句でアンロードすることもできます。

TimesTenキャッシュ・グループ表に対してSELECT問合せを実行して表にデータが見つからない場合は、Oracle表からキャッシュ・グループ表にデータを透過的にロードします。

この項の後半の内容は次のとおりです。

OracleからTimesTenへの更新

次のメカニズムを使用して、TimesTenキャッシュ・グループを、Orable実表の最新状態と同じ状態に維持できます。

完全自動リフレッシュ: CREATE CACHE GROUP文のAUTOREFRESH MODE FULL句で指定します。TimesTenは、指定された時間間隔でキャッシュ・グループ全体を自動的にリフレッシュします。

増分自動リフレッシュ: CREATE CACHE GROUP文のAUTOREFRESH MODE INCREMENTAL句で指定します。完全自動リフレッシュとは異なり、増分自動リフレッシュでは、前回のリフレッシュ以降にOracleで変更されたレコードのみが更新されます。TimesTenは、指定された時間間隔で自動的に増分リフレッシュを実行します。

手動リフレッシュ: アプリケーションで、REFRESH CACHE GROUP文を明示的に発行して、キャッシュ・グループ全体または特定のキャッシュ・インスタンスをリフレッシュするアプリケーションで指定します。これはUNLOAD CACHE GROUP処理の後に、LOAD CACHE GROUP処理を続けた場合と同じです。

透過的ロード: TransparentLoad属性を設定して指定します。キャッシュ・グループ表に対してSELECT問合せを実行して表にデータが見つからない場合、TimesTenでは、Oracle表からキャッシュ・グループ表にデータを自動的にロードできます。透過的ロードは、AUTOREFRESH属性を持つキャッシュ・グループを除いたすべてのタイプのキャッシュ・グループに対して実装できます。

各メカニズムにはメリットとデメリットがあります。増分自動リフレッシュでは変更のあった行のみがリフレッシュされますが、更新を常時監視するにはOracleでのトリガーの使用が必要です。このため、オーバーヘッドが増え、更新が遅くなります。完全自動リフレッシュでは、Oracleで更新を常時監視する必要はありませんが、キャッシュ内であらゆるものが一度に更新されます。手動リフレッシュは、アプリケーションで制御され、特定のキャッシュ・インスタンスと特定のスケジュールに対してカスタマイズできますが、リフレッシュを実行するタイミングを決定するために必要なロジックによって、アプリケーションのオーバーヘッドが増えます。透過的ロードでは、リクエストに応じて特定のデータをOracle表からTimesTenに自動的にロードできます。

様々な状況で、これらのメカニズムは有効です。たとえば、Oracle表の更新が1日に1度のみ行われ、更新される行数が多い場合は、完全自動リフレッシュが最適です。Oracle表の更新頻度は高いものの、それぞれの更新で変更される行数が少ない場合は、増分自動リフレッシュが最適です。また、リフレッシュを実行する必要のあるタイミングがアプリケーションのロジックで既知の場合は、手動リフレッシュが最適です。キャッシュ・コンテンツが動的で、最新のデータを持つ特定のキャッシュ・インスタンスが必要な場合は、透過的ロードが最適です。たとえば、顧客がコール・センターに連絡する場合に、顧客情報を即座にロードすることができます。

TimesTenからOracleへの更新

TimesTenキャッシュ・グループで更新されるデータについては、次のメカニズムを使用することで、Oracleデータベースの状態を最新のキャッシュ・グループと同じ状態に維持できます。

伝播: 次のいずれかの方法で指定できます。

CREATE USERMANAGED CACHE GROUP文でPROPAGATEオプションを指定します。

CREATE SYNCHRONOUS WRITETHROUGH CACHE GROUP文を使用して、同期のWRITETHROUGH（SWT）キャッシュ・グループを作成します。

CREATE ASYNCHRONOUS WRITETHROUGH CACHE GROUP文を使用して、非同期のWRITETHROUGH（AWT）キャッシュ・グループを作成します。

PROPAGATEオプションを有効にすると、キャッシュ・グループに対するすべての変更が自動的にOracleデータベースに伝播されます。PROPAGATEオプションが有効になっている1つ以上のキャッシュ・グループ、またはSWTキャッシュ・グループの1つ以上のキャッシュ・グループを変更したトランザクションをアプリケーションで終了した場合、TimesTenはまずOracleでトランザクションをコミットし、次にTimesTenでコミットします。この方法では、Oracleが常に最新のデータのイメージを反映できるように、データがTimesTenでコミットされる前に、Oracleはデータに関係する必要なロジックを適用できます。PROPAGATEオプションまたはSWTキャッシュ・グループは、キャッシュとOracleを常に同期する必要がある場合に使用します。

AWTキャッシュ・グループへの変更は、Oracleへの適用を待機せずにコミットされます。AWTキャッシュ・グループは、レスポンス時間が短くパフォーマンスも良好ですが、変更は非同期でOracleに適用されるため、キャッシュとOracleのデータは必ずしも同一ではありません。

フラッシュ: アプリケーションでFLUSH CACHE GROUP文を明示的に発行して指定します。フラッシュ処理を使用すると、更新をTimesTenのUSERMANAGEDキャッシュ・グループからOracleに手動で伝播できます。フラッシュ処理は、特定の時間内に複数のレコードに対する更新が頻繁に行われる場合に有効です。各トランザクションの更新を個々に伝播するのではなく、フラッシュ処理によって更新がすべて一度に処理されます。フラッシュ処理を実行するには、CREATE CACHE GROUP文のPROPAGATEオプションが無効になっている必要があります。フラッシュ処理では、削除は伝播されません。

エージング機能

TimesTenにロードされたキャッシュ・インスタンスは、TimesTenから自動的にエージ・アウトできます。使用量ベースのエージングまたは時間ベースのエージングを指定できます。使用量ベースのエージングでは、指定した範囲のメモリー使用量で最低使用頻度（LRU）のデータが削除されます。時間ベースのエージングでは、指定した存続期間および頻度のエージング処理に基づいてデータが削除されます。エージングはキャッシュ・インスタンスに基づいているため、キャッシュ・グループのルート表のみに定義できます。同じシステムに使用量ベースのエージングと時間ベースのエージングを構成できますが、特定のキャッシュ・グループに1つのタイプのエージングしか定義できません。

詳細は、『Oracle TimesTen Cache Connect to Oracle開発者および管理者ガイド』のキャッシュ・グループでのエージングの実装に関する項を参照してください。

パススルー機能

TimesTenアプリケーションでは、TimesTenデータベースへの単一接続を介して、TimesTenキャッシュ・グループまたはOracleデータベースのいずれかにSQL文を送信できます。このような単一接続は、図8.4に示すパススルー機能で、SQL文はTimesTenのキャッシュ表でローカルに処理できるのか、またはOracleに転送する必要があるのかをチェックすることによって使用可能になります。パススルー機能の設定では、パススルーの対象とする文の種類とそれを実行する状況が指定されます。

図8.4 TimesTenパススルー機能

パススルー機能の具体的な動作は、データベース属性PassThroughで制御されます。詳細は、『Oracle TimesTen Cache Connect to Oracle開発者および管理者ガイド』のパススルー・レベルの設定に関する項を参照してください。