CORBA ネーム・サービスを使用するアプリケーションの開発

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Tuxedo CORBA ネーム・サービス

CORBA ネーム・サービスを使用するアプリケーションの開発

ここでは、以下の内容について説明します。

開発手順

表 4-1 は、CORBA ネーム・サービスを使用する BEA Tuxedo CORBA アプリケーションの開発プロセスの概略です。

表 4-1 開発プロセス

手順	説明
1	CosNaming インターフェイスの OMG IDL を取得します。
2	CosNaming インターフェイスの宣言およびプロトタイプをインクルードします。
3	BEA Tuxedo 名前空間に接続します。
4	BEA Tuxedo 名前空間にオブジェクトをバインドします。
5	名前を使用して BEA Tuxedo 名前空間でオブジェクトをロケートします。

このトピックの手順を実行する前に、CORBA ネーム・サービスのサーバ・プロセスを開始する必要があります。詳細については、CORBA ネーム・サービスのサーバ・プロセスの起動を参照してください。

このトピックの開発手順が完了したら、buildobjclient コマンドと buildobjserver コマンドを使用して、CORBA ネーム・サービスを使用するサーバ・アプリケーションとクライアント・アプリケーションをコンパイルします。buildobjclient コマンドと buildobjserver コマンドの詳細については、『BEA Tuxedo コマンド・リファレンス』を参照してください。

ステップ 1: CosNaming インターフェイスの OMG IDL を取得する

BEA Tuxedo CORBA アプリケーションは、CosNaming.idl で定義したインターフェイスを使用して CORBA ネーム・サービスにアクセスします。この Object Management Group (OMG) インターフェイス定義言語 (IDL) ファイルは、CORBA ネーム・サービスで使用するインターフェイス、COSnaming データ構造体、例外を定義します。CosNaming.idl ファイルは、以下のディレクトリの場所にあります。

Windows

drive:¥%TUXDIR%¥include¥CosNaming.idl

UNIX

/usr/local/$TUXDIR/include/CosNaming.idl

リスト4-1 は、CosNaming.idl の OMG IDL を示しています。CORBA C++ および Java アプリケーションの両方で同じ OMG IDL ファイルが使用されます。

コードリスト 4-1 CosNaming.idl

#ifndef _COSNAMING_IDL_
#define _COSNAMING_IDL_

module CosNaming {

#pragma prefix "omg.org/CosNaming"
	typedef string Istring;

	struct NameComponent {
		Istring id;
		Istring kind;
	};

    	typedef sequence<NameComponent> Name;

	enum BindingType { nobject, ncontext };

	struct Binding {
		Name        binding_name;
		BindingType binding_type;                   
	};

	typedef sequence <Binding> BindingList;                    

	interface BindingIterator;
	
	interface NamingContext {
		enum NotFoundReason { missing_node, 
					 not_context, 
					 not_object };

		exception NotFound { 
			NotFoundReason  why;
			Name            rest_of_name;
		};

		exception CannotProceed {
			NamingContext   cxt;
			Name            rest_of_name;
		};

		exception InvalidName{};                               
    
		exception AlreadyBound {};

		exception NotEmpty{};

		void    bind(in Name n, in Object obj)      
			 raises(NotFound, 
			       CannotProceed, 
				InvalidName, 
				AlreadyBound);

		void   rebind(in Name n, in Object obj)   
			raises(NotFound, 
				CannotProceed, 
				InvalidName);

		void    bind_context(in Name n, in NamingContext nc)        
			raises(NotFound, 
				CannotProceed, 
				InvalidName, 
				AlreadyBound);

		void    rebind_context(in Name n, in NamingContext nc)  
			raises(NotFound, 
				CannotProceed, 
				InvalidName);

		Object  resolve (in Name n)
			raises(NotFound, 
				CannotProceed, 
				InvalidName);

		void    unbind(in Name n)
			raises(NotFound, 
				CannotProceed, 
				InvalidName);

		NamingContext   new_context();
		NamingContext   bind_new_context(in Name n)
			raises(NotFound, 
				AlreadyBound,
				CannotProceed, 
				InvalidName);

        		void    destroy() raises(NotEmpty);
		void    list(in unsigned long    how_many,
			      out BindingList     bl,
			      out BindingIterator bi);

};

	interface BindingIterator {
		boolean next_one(out Binding b);
		boolean next_n(in unsigned long how_many, 
			        out BindingList bl);
		void    destroy();
	};

	interface NamingContextExt:NamingContext {
		typedef string StringName;
		typedef string Address;
		typedef string URLString;

	StringName  to_string(in Name n) raises(InvalidName);
	Name        to_name(in StringName sn) 
				raises(InvalidName);
	exception InvalidAddress {};

	URLString   to_url(in Address addr, in StringName sn)
				raises(InvalidAddress, InvalidName);

	Object      resolve_str(in StringName n)
				raises(NotFound, 
					CannotProceed,
					InvalidName, 
					AlreadyBound
			);
		};
};

#pragma ID CosNaming "IDL:omg.org/CosNaming:1.0"
#endif // _COSNAMING_IDL_

ステップ 2: CosNaming インターフェイスの宣言およびプロトタイプをインクルードする

CosNaming インターフェイスの宣言とプロトタイプは、CORBA ネーム・サービスのソフトウェア・キットの一部として提供されます。

CORBA C++ クライアント・アプリケーションでは、次の文を BEA Tuxedo CORBA クライアント・アプリケーションに追加して、ネーミング・インターフェイスの宣言とプロトタイプをインクルードします。

#include "CosNaming_c.h"

BEA Tuxedo CORBA C++ クライアント・アプリケーションのインクルード・ファイルは、$TUXDIR/include ディレクトリ (UNIX システム) または %TUXDIR%¥include ディレクトリ (Windows システム) にあります。
CORBA Java クライアント・アプリケーションでは、次の文を BEA Tuxedo CORBA クライアント・アプリケーションに追加して、ネーミング・インターフェイスの宣言とプロトタイプをインクルードします。

import org.omg.CosNaming.*;

CORBA ネーム・サービスのインターフェイスは、org.omg.CosNaming パッケージにあります。

BEA Tuxedo CORBA Java クライアント・アプリケーションの Java パッケージは、$TUXDIR/udataobj/java/jdk/m3envobj.jar ファイル (UNIX システム) および %TUXDIR%¥udataobj¥java¥jdk¥m3envobj.jar ファイル (Windows システム) にあります。
サード・パーティのオブジェクト・リクエスト・ブローカ (ORB) を使用する場合、コンパイルする前に、クライアント・ソース・スタブ・プログラムに CosNaming インターフェイスをインクルードまたはインポートします。

ステップ 3: BEA Tuxedo 名前空間に接続する

Bootstrap オブジェクトは、名前空間のルートに接続するために、NameService 環境オブジェクトをサポートしています。NameService 環境オブジェクトを使用する場合、オブジェクト・リクエスト・ブローカ (ORB) が名前空間のルートを特定します。次に、オブジェクト・リファレンスを CosNaming::NamingContext または CosNamingContextExt にナロー変換できます。オブジェクトを名前空間にバインドし、名前空間の名前を解決する前に、BEA Tuxedo 名前空間に接続する必要があります。

Bootstrap オブジェクトまたは CORBA インターオペラブル・ネーミング・サービス (INS) のブートストラップ処理メカニズムを使用すると、NameService 環境オブジェクトへの初期リファレンスを取得できます。BEA クライアント ORB を使用する場合は、BEA 社固有のメカニズムを使用します。別のベンダのクライアント ORB を使用する場合は、CORBA INS メカニズムを使用します。BEA Tuxedo ドメインのブートストラップ処理の詳細については、BEA Tuxedo オンライン・マニュアルの『CORBA プログラミング・リファレンス』の「第 4 章 CORBA ブートストラップ処理のプログラミング・リファレンス」を参照してください。

リスト4-2 およびリスト4-3 では、BEA Tuxedo 名前空間との通信を確立する C++ コードと Java コードを示します。

コードリスト 4-2 C++ による名前空間への接続例

...
Tobj_Bootstrap * bootstrap = new Tobj_Bootstrap (v_orb.in(), "");
CORBA::Object_var var_nameservice_oref=
	bootstrap.resolve_initial_references("NameService");
root = CosNaming::NamingContext::_narrow (obj);
...

コードリスト 4-3 Java による名前空間への接続例

...
Tobj_Bootstrap bootstrap = new Tobj_Bootstrap(orb, "");
org.omg.CORBA.Object NameServiceobj = 
	gBootstrapObjRef.resolve_initial_references("NameService");
CosNaming.NamingCOntextExt ns_root = 
	CosNaming.NamingContextExtHelper.narrow (ns_obj);
...

名前空間のルートの文字列化されたオブジェクト・リファレンスを使用して、BEA Tuxedo ドメインで名前空間に接続することもできます。文字列化されたオブジェクト・リファレンスを使用するには、CORBA ネーム・サービスのサーバ・プロセスを開始するときに -f コマンド行オプションを指定する必要があります。-f コマンド行オプションは、文字列化されたオブジェクト・リファレンスを CNS_ROOT_FILE 環境変数、または以下の場所のいずれかに書き込みます。

Windows

%APPDIR%¥cnsroot.dat

UNIX

$APPDIR/cnsroot.dat

名前空間のルート用の文字列化されたオブジェクト・リファレンスは、CORBA ネーム・サービスのサーバ・プロセスが開始または終了しても変更されません。文字列化されたオブジェクト・リファレンスは、特定のサーバ・プロセスではなく、特定のホスト・マシンに関連付けられているためです。BEA Tuxedo 名前空間と通信するために取得されている文字列化されたオブジェクト・リファレンスを、ほかの BEA Tuxedo と通信するために使用することはできません。

リスト4-4 およびリスト4-5 では、文字列化されたオブジェクト・リファレンスを使用して BEA Tuxedo 名前空間との通信を確立する C++ コードと Java コードを示します。

コードリスト 4-4 文字列化されたオブジェクト・リファレンスを使用する C++ の例

...
Tobj_Bootstrap * bootstrap;
bootstrap = new Tobj_Bootstrap (v_orb.in(), "");
CORBA::Object_var obj = GetRefFromFile ("cnsroot.dat", v_orb);
root = CosNaming::NamingContext::_narrow (obj);
...

コードリスト 4-5 文字列化されたオブジェクト・リファレンスを使用する Java の例

...
Tobj_Bootstrap bootstrap = new Tobj_Bootstrap(orb, "");
BufferedReader inFile = 
	newBufferedReader(new FileReader ("cnsroot.dat"));
String root_ior_string = inFile.readLine ();
org.omg.CORBA.Object ns_obj = 
	orb.string_to_objecet (root_ior_string);
CosNaming.NamingContextExt ns_root =
	CosNaming.NamingContextExtHelper.narrow (ns_obj);
...

セキュリティとトランザクションも利用する BEA Tuxedo CORBA アプリケーションで、文字列化されたオブジェクト・リファレンスを使用する場合は、以下の制限事項に注意してください。

BEA Tuxedo CORBA アプリケーションは、文字列化されたオブジェクト・リファレンスを使用して BEA Tuxedo 名前空間に接続する前に、Bootstrap オブジェクトを作成して、IIOP リスナ/ハンドラに接続する必要があります。Bootstrap オブジェクトを最初に呼び出すことで、BEA Tuxedo アプリケーションは、IIOP リスナ/ハンドラへの正式な接続を確立します。

BEA Tuxedo アプリケーションが最初に Bootstrap オブジェクトを作成しなかった場合、名前空間から取り出したオブジェクトでトランザクションとセキュリティを使用することはできません。トランザクションとセキュリティは、正式な接続を使用する必要があります。
複数の IIOP リスナ/ハンドラが UBBCONFIG ファイルで定義されている場合、BEA Tuxedo CORBA アプリケーションは、UBBCONFIG ファイル内で TOBJADDR 環境変数が定義している最初の IIOP リスナ/ハンドラを使用する必要があります。

CORBA ネーム・サービスは、IIOP リスナ/ハンドラのデフォルトのホストとポートを使用して、名前空間のルートに対して文字列化されたオブジェクト・リファレンスを作成します。UBBCONFIG ファイルで定義されている最初の IIOP リスナ/ハンドラが、デフォルト IIOP リスナ/ハンドラと見なされます。デフォルト IIOP リスナ/ハンドラを使用すると、CORBA ネーム・サービスによって取得されたすべてのオブジェクト・リファレンスが正式な接続になります。トランザクションとセキュリティは、正式な接続を使用する必要があります。

ステップ 4: BEA Tuxedo 名前空間にオブジェクトをバインドする

BEA Tuxedo 名前空間にオブジェクトをバインドする方法には、以下の 2 種類があります。

cnsbind コマンド
CosNaming::NamingContext オブジェクトの bind() メソッド

cnsbind コマンドを使用すると、アプリケーション・オブジェクトまたはネーミング・コンテキスト・オブジェクトを BEA Tuxedo 名前空間にバインドできます。cnsbind コマンドを使用する前に、CORBA ネーム・サービスのサーバ・プロセスを開始する必要があります。cnsbind コマンドの詳細については、CORBA ネーム・サービス・リファレンスを参照してください。

リスト4-6 とリスト4-7 では、CosNaming::NamingContext オブジェクトの bind() メソッドの C++ および Java コード・インプリメンテーションを示します。このコード例では、Name の id フィールドと kind フィールドを表す 2 つのパラメータを受け付けます。この 2 つのパラメータは、SimpleFactory オブジェクトの Name を初期化し、SimpleFactory オブジェクトを名前空間にバインドします。

コードリスト 4-6 C++ による BEA Tuxedo 名前空間への名前のバインディング例

...
//名前空間で SimpleFactory オブジェクトの識別に使用する
//Name の確立

CosNaming::Name_var				factory_name = new CosNaming::Name(1);
	factory_name->length(1);
	factory_name[(CORBA::ULong) 0].id = 
					(const char * "simple_factory";
	factory_name[(CORBA::ULong) 0].kind = 
					(const char *) "";
//SimpleFactory のオブジェクト・リファレンスを作成

s_v_factory_refer = TP::create_object_reference(
					_tc_SimpleFactory->id(),
					"simple_factory",
					CORBA::NVList::_nil()
);
//NameService オブジェクト・リファレンスを取得。リスト 4-2 を参照
//SimpleFactory のオブジェクト・リファレンスを名前空間に配置

root->bind(factory_name, s_v_fact_ref);
...

コードリスト 4-7 Java による BEA Tuxedo 名前空間への名前のバインディング例

...
//SimpleFactory のオブジェクト・リファレンスを作成
org.omg.CORBA.object fact_ref = 
	TP.create_object_reference(
		SimpleFactoryHelper.id()	
		"simple_factory",
		null
	);

...
//NameService オブジェクト・リファレンスを取得。リスト 4-3 を参照
//SimpleFactory のオブジェクト・リファレンスを名前空間に配置
	CosNaming.NameComponent[] factName =
		ns_root.to_name("simple_factory");
	ns_root.bind(factName, fact_ref);

...

ステップ 5: 名前を使用してBEA Tuxedo 名前空間でオブジェクトをロケートする

CosNaming::NamingContext オブジェクトの resolve() メソッドを使用して、BEA Tuxedo ドメインの名前空間でオブジェクトをロケートします。リスト4-8 とリスト4-9 では、Name の id フィールドと kind フィールドを表す 2 つのパラメータを受け付ける C++ および Java コードを示します。コード例では、ネーミング・コンテキストにバインドし、名前を解決し、指定したオブジェクトのオブジェクト・リファレンスを取得します。

コードリスト 4-8 C++ による BEA Tuxedo 名前空間での名前のロケート例

...
//名前空間で SimpleFactory オブジェクトの識別に使用する
//Name の確立
CosNaming::Name_var				factory_name = new CosNaming::Name(1);
	factory_name->length(1);
	factory_name[(CORBA::ULong) 0].id = 
					(const char * "simple_factory";
	factory_name[(CORBA::ULong) 0].kind = 
					(const char *) "";

//SimpleFactory オブジェクトを名前空間でロケート
CORBA::Object_var v_simple_factory_oref = 
		root->resolve( *factory_name);
SimpleFactory_var v_simple_factory_ref =
		SimpleFactory::_narrow(v_simple_factory_oref.in());

//BEA Tuxedo CORBA ネーム・サービスから取得したリファレンスを使用して Simple オブジェクトを検索
Simple_var v_simple = v_simple_factory_ref->find_simple();
...

コードリスト 4-9 Java による BEA Tuxedo 名前空間での名前のロケート例

...
//文字列名を基に名前空間で SimpleFactory オブジェクトを検索
org.omg.CORBA.Object simple_fact_oref =
	ns_root.resolve_str("simple_factory");
SimpleFactory simple_factory_ref =
	SimpleFactoryHelper.narrow(simple_fact_oref);

//Simple オブジェクトを検索
Simple simple = simple_factory_ref.find_simple();
...