ポータルの概要
ポータルの概要
WebLogic Portal にようこそ。この節ではポータルについて説明するとともに、WebLogic Portal のフレームワークによって多彩なポータルを簡単に短時間で作成する方法について説明します。
ポータルとは
World Wide Web の出現当初から、ユーザは一度に 1 つの Web ページにアクセスしています。最初は、ネットワークにアクセスしているユーザやインターネット接続しているユーザに、プラットフォームを問わないコンテンツが与えられたことが大きく評価され、この新技術の欠点や不利な点はすべて隠されていました。後に、Java、JavaScript など新しく登場した技術やアプリケーション サーバによって、アプリケーションの機能性、操作性、安定性がもたらされ、パフォーマンスが向上しました。これらはインターネット コンピューティングを支える柱となっています。
今や、組織ではこれ以上のものが必要とされています。従来のアプリケーション、プロセス、データを Web インタフェースで表示できるだけではなく、一度に複数のページで表示できることが求められています。すなわち、ポータルが必要とされているのです。
ポータルとは、統一されたインタフェースでアプリケーションおよび情報にアクセスするための単一ポイントをユーザに提供する、便利な Web サイトです。
ポータルを使用すると、ユーザはポートレットと呼ばれる自分専用のウィンドウで各アプリケーションおよび Web ページを表示することができ、1 つのブラウザ ウィンドウに複数のポートレットを配置することができます。たとえば図 1 に示すように、1 つのポータル ページにログイン用、検索用、ニュース フィード表示用、カレンダー アプリケーションを使用したアポイントメント管理用のポートレットを表示できます。
図 1 ポータル デスクトップ
ポートレットはポータル ページ上に整列されているため、ユーザはページ タブやドロップダウン メニューなどのポートレットにアクセスする方法によって、ページ間を簡単に移動することができます。図 1 のポータルは、[Home]、[My Workspace]、[HR] の 3 つのページで構成されており、それぞれのリンクがログイン ポートレットのすぐ上に表示されています。
WebLogic Portal
WebLogic Portal の柔軟性に富んだ強力なフレームワークにより、アプリケーション ロジックまたは Web ページに関係なくポータル インタフェースを作成することができます。また、WebLogic Workshop で使用できるポータル開発ツールによって、開発するアプリケーションおよび Web サービスをポータル インタフェースでシームレスに簡単に表示することができます。
さらに、WebLogic Portal のフレームワーク、ライフサイクル管理ツール、およびビジネス サービスによりポータルをスピーディに作成および構築して、ビジネス ポリシー、プロセス、セキュリティ要件を実施する一方で、従業員、パートナー、および顧客に、アプリケーション、情報、ビジネス プロセスを統合した対象者固有のビューを提供します。
WebLogic Portal のフレームワークおよびツールは多彩で簡単に使用できるため、複雑で高機能なポータルを短時間で作成することができます。
ポータルのすべての要素、すなわちページ、ポートレット、ポータルのルック アンド フィールはそれぞれ個別のコンポーネントであるため、別個に短期間で開発し、動的に組み合わせて、再利用できます。これにより、ポータル開発者、ポータル管理者、エンド ユーザは対象者固有のカスタム ポータルを作成および集約化することができます。
以下の節では、WebLogic Portal のフレームワーク、ツール、およびサービスについて詳しく説明します。
ポータルの構造
WebLogic Portal では、ポータルはブラウザに表示される以上の機能を持っています。ポータルはリソースの集合であり、「デスクトップ」と呼ばれるさまざまなビューに構築することができます。ポータルはデスクトップとしてユーザに表示され、1 つのポータルに複数のデスクトップを表示することができます。技術的な観点から言えば、図 1 はポータルというよりむしろデスクトップです。ポータルは、ポートレットなどデスクトップには含めることのできないのさまざまなリソースで構成することができます。
たとえば、従業員のデスクトップの [HR] ページでは、フォームや休日スケジュールなど機密性の低い人事ポートレットを表示できます。マネージャのデスクトップの [HR] ページは、従業員の給与情報や勤務評定など機密性の高い人事ポートレットで構成することができます。機密性の高いポートレットも低いポートレットもすべて、1 つのポータルに含まれています。
図 2 は図 1 と同じポータル デスクトップであり、作成元の WebLogic Workshop Portal デザイナで開かれたものです。ポータル デスクトップは、ポータル内で利用可能なリソースを使用して作成されます。
図 2 とその下の表には、ポータル デスクトップの主要なコンポーネントが示されています。
図 2 WebLogic Workshop ポータル デザイナにおけるポータル デスクトップ
1
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デスクトップ (およびルック アンド フィール)
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デスクトップは、ポータルの特定のビューを構成するポータル コンポーネントの最上位レベルのコンテナである。
ルック アンド フィールは、柔軟性に富んだポータル フレームワークの重要な要素として、デスクトップ レベルで機能する。ルック アンド フィールは、1 つの XML ファイルによって参照される 2 つの部分、すなわちスキンおよびスケルトンで構成されている。スキンは、デスクトップの外観を決定するグラフィック、スタイル、および JavaScript コードで構成されている。スケルトンは、すべてのポータル コンポーネントを表示する物理的境界を制御する。
[プロパティ エディタ] ウィンドウ (⑦) では、デスクトップにさまざまなルック アンド フィールを選択できる。ポータル管理者およびエンド ユーザも、デスクトップのルック アンド フィールを変更することができる。
ポータル管理者は、ポータル開発者が WebLogic Workshop で作成するデスクトップ以外に、新しいデスクトップを作成することができる。
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ヘッダとフッタ (シェル)
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デスクトップのヘッダおよびフッタは、デスクトップのブック、ページ、ポートレットの外側にコンテンツを表示する (通常、上部または下部)。ヘッダ/フッタの組み合わせは、シェルによって定義される。シェルは XML ファイルの一種で、表示するコンテンツ (色、グラフィック、パーソナライズされたコンテンツ) を構成する JSP ファイルまたは HTML ファイルをポイントする。
[プロパティ エディタ] ウィンドウで、デスクトップにさまざまなシェルを選択できる。ポータル管理者およびエンド ユーザも、デスクトップのシェルを変更することができる。
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トップレベル ブック (およびメニュー、テーマ)
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トップレベル ブックは、すべてのサブブック、ページ、およびポートレットで構成されている。トップレベル ブックは、デスクトップに使用する初期メニューのナビゲーション スタイルを定義する。デスクトップに追加するサブブックごとに、異なるナビゲーション スタイルを選択できる。
[プロパティ エディタ] ウィンドウで、ブックにさまざまなナビゲーション メニューのスタイルを選択できる。ポータル管理者およびエンド ユーザも、ブックのナビゲーション スタイルを変更することができる。
ブックにはテーマを適用することもできる。テーマとは、ブックに他のデスクトップとは物理的に異なる外観を持たせるためのルック アンド フィールのサブセットである。ポータル管理者およびエンド ユーザも、テーマを変更することができる。
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ページとブック (およびメニュー、テーマ)
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ページおよびサブブックは、ポートレットの編成に使用するナビゲーション可能なコンテナである。
ブックにはさまざまなメニューのナビゲーション スタイルを適用でき、テーマにはページやブックを適用できる。ポータル管理者およびエンド ユーザも、ナビゲーション メニューやテーマを変更することができる。ポータル管理者は、ポータル開発者が WebLogic Workshop Portal デザイナで作成するページやブック以外の、新しいページやブックを作成することもできる。
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レイアウト (およびプレースホルダ)
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レイアウトは、ページ上のブックやポートレットの位置を決定する。XML ファイルによって定義されるレイアウトは、セルまたはプレースホルダに分かれており、それぞれの中にポートレットやブックが配置される。
[プロパティ エディタ] ウィンドウで、ページにさまざまなレイアウトを選択できる。プレースホルダ内で、ポートレットどうしを互いに水平または垂直のどちらに配置するかを指定できる。ポータル管理者およびエンド ユーザも、ページ レイアウトを変更することができる。
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ポートレット (およびテーマ)
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ポートレットとは、デスクトップ上の Web コンテンツおよびアプリケーションを表示するコンテナである。ポートレット ウィザードまたはポートレット デザイナを使用して WebLogic Workshop で作成する各ポートレットは、.portlet 拡張子を持つ単一の XML ファイルであり、表示するコンテンツまたはアプリケーションを参照する。
ポートレット デザイナおよび [プロパティ エディタ] ウィンドウを使用してポートレットのプリファレンスを追加し、ポートレットのモード (編集やヘルプなど) をコンフィグレーションして、ポートレットに多彩な機能を追加できる。これらはすべて、.portlet XML ファイルに保存される。
WebLogic Portal のフレームワークは柔軟性に富んでいるため、1 つのポートレットを何回でも再利用できる (ポートレットの新しいインスタンスを作成)。ソース ファイルの .portlet を変更すると、各ポートレット インスタンスのコンテンツは自動的に更新されるが、ポートレットの各インスタンスは固有の方法 (タイトルバー ラベルの変更など) でコンフィグレーションできる。
ポータル開発者、ポータル管理者、およびエンド ユーザは、ポートレットにテーマを適用できる。
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7
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[プロパティ エディタ] ウィンドウ
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ポータル デザイナでポータル コンポーネントを選択する際、[プロパティ エディタ] ウィンドウでプロパティを設定できる。開発環境でのポータルのコンフィグレーションは、ほとんどを [プロパティ エディタ] ウィンドウで行い、変更内容はポータルまたはポートレット XML ファイルに自動的に書き込まれる。
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図 3 は、ポータル コンポーネントの階層関係を正確に示したものです。WebLogic Workshop の [ドキュメント構造] ウィンドウには、ポータル コンポーネント間の親子関係が、基となる .portal
XML ファイルのとおりに表示されます (図を参照)。ポータル デザイナで作業すると、自動的に XML が作成されます。
図 3 ポータル デスクトップの階層構造
XML には、ポータル要素のコンフィグレーション属性が含まれています。
1 つの Web アプリケーション内の複数のポータルとデスクトップ
WebLogic Portal アーキテクチャにより、1 つの Web アプリケーション (ポータル Web プロジェクト) に複数のポータルを作成できます。さらに、各ポータルに複数のデスクトップを表示できます。これにより、複数の対象者に対して、再利用可能なポータル リソースを備えた、カスタマイズされたコンテンツおよびアプリケーションを提供することができます。
セキュリティ - 委託管理および資格
WebLogic Portal では、基盤となる WebLogic Server のロールおよびセキュリティ ポリシーのアーキテクチャが拡張されています。WebLogic Portal のコンポーネント フレームワークでは再利用が可能なため、ポータル管理者は動的でコンフィグレーション可能なポリシーを使用して、個々の管理領域、タスク、およびポータル リソースに委託管理を設定することができます。ポータル管理者は、ポータル リソースに資格を設定して、ポータル デスクトップおよびコンテンツへのエンドユーザのアクセスを制御することもできます。たとえば、ポータル管理者は、正規従業員とマネージャにそれぞれ別のデスクトップを作成できます。各デスクトップにはそれぞれ適した資格が設定されているため、従業員がログインすると従業員デスクトップしか表示されず、マネージャにはどちらのデスクトップも表示されます。1 つのデスクトップ内の各ポートレットに資格を付与する方法もあります。この場合、従業員は資格が付与されているポートレットしか表示できません。
WebLogic Portal のツールおよびサービス
上述の機能のほかに、動的で多彩な多機能ポータルを簡単に作成するために、WebLogic Portal では以下のような機能およびサービスも用意されています。
マルチチャネル サポート - WebLogic Portal には、モバイル デバイス用ポータルの開発をすばやく柔軟に行うための、マルチチャネル フレームワークが組み込まれている。複数のデバイスに対して同時に機能するポータルを開発できる。
コンテンツ管理 - BEA の仮想コンテンツ リポジトリにより、BEA と互換性のある複数のコンテンツ管理システムを 1 つのインタフェースに統合できる。仮想コンテンツ リポジトリのすべてのコンテンツを各自のポータルで使用できる。WebLogic Portal では、コンテンツ リポジトリおよび再利用可能な [My Content] ポートレットを使用して、仮想コンテンツ リポジトリに格納されているコンテンツのアップロード、管理、表示、および検索を行うこともできる。
対話管理 - WebLogic Portal では、WebLogic Workshop の拡張および統合ツールと WebLogic Administration Portal を使用して、ポータル アプリケーションへのパーソナライゼーションおよびキャンペーンの追加とポータルにおけるユーザ動作の追跡を行うことができる。
検索 - 再利用可能な [Portal Search] ポートレットでは、コンフィグレーション可能な検索機能を全社的に利用できる。WebLogic Portal の組み込みの検索機能を使用すると、検索インデックスを構築してファイル システム、ODBC、および HTTP の各検索を実行できる。
コラボレーション - 再利用可能なコラボレーション ポートレット ([My Mail]、[My Task List]、[My Calendar]、[My Contacts]、および [Discussion Forums]) では、ポータルのコラボレーション ツールを利用できる。
My Yahoo!Enterprise Edition ポートレット - My Yahoo! Enterprise Edition を使用すると、100 種類以上の使い慣れた My Yahoo! モジュールをポータルにシームレスに組み込めるようになる。これらのダイナミックなモジュールは、Yahoo! が提供する (25 の地域から 13 言語で) 2,700 ものコンテンツ ソースをベースとしており、主要ニュース、企業ニュース、株価、マーケット情報、天気、スポーツ、地図、旅行、ノートパッド、カレンダー、Package Tracker などの豊富なコンテンツやツールがある。
Java コントロール - ビルド済みの Java コントロールを使用すると、ポータル開発者はポータル アプリケーションの機能 (ユーザの作成、認証、プロパティ設定管理など) に Java コードをすみやかに追加できる。
WebLogic Portal 訪問者ツール - WebLogic Portal 訪問者ツールを使用すると、エンド ユーザはブック、ページ、ポートレットを追加および再編成し、デスクトップで使用されているルック アンド フィール、ページ レイアウト、フッタ (シェル) を変更することによって、ポータル デスクトップをカスタマイズできる。
コマース - WebLogic Portal のコマース API および JSP タグを使用して、ポータル アプリケーションにコマースを追加できる。
API - WebLogic Portal では完全な Java API が提供されている。API の Javadoc については、http://edocs.beasys.co.jp/e-docs/workshop/docs81/doc/ja_JP/portal/buildportals/navReference.html を参照。
オープン スタンダード サポート - WebLogic Portal は JSR (Java Specification Request) 168 ポートレット仕様に完全に対応している。ポートレット仕様により、ポートレットとポータル間の相互運用性が確保され、集約、パーソナライゼーション、プレゼンテーション、およびセキュリティの領域に対応する一連の API が定義される。
ポータル開発ライフサイクル
WebLogic Portal のフレームワーク、ツール、およびサービスにより、統合されたシームレスなポータル開発ライフサイクルが提供されます。ポータル開発ライフサイクルには、開発と管理という 2 つの主要な部分があり、これらは相互に依存し反復する関係にあります。
開発 - WebLogic Portal では、さまざまな対象者向けに柔軟に構築できるポータルに Web サービス、Java ページフロー、ビジネス プロセス アプリケーション、およびパーソナライゼーション機能を簡単に表示できるように、WebLogic Workshop が拡張されている。開発では、アプリケーション、標準ベースのコンポーネント、ポータル リソースを作成する。EJB または Web サービスを作成する J2EE 開発者、タグ ライブラリを使用してポートレット用 JSP を構築するアプリケーション デザイナ、デスクトップを作成するポータル デザイナ、ポータル アプリケーションで使用されるアイコン、イメージ、スタイル シートを作成するグラフィック デザイナのすべてが、アプリケーションおよびポータル リソースの開発に含まれる。
開発者は WebLogic Workshop Portal Extensions を使用して、ポータル デスクトップ、ページ、ポートレット、キャンペーンなどのリソースを管理者に提供し、管理者はユーザがこれらのリソースを利用できるようにする。
開発者はポータル管理者がユーザに設定するユーザ プロファイル プロパティ (フィールド) も作成し、ポータルに WebLogic Portal 訪問者ツールを搭載してエンド ユーザがポータル デスクトップをカスタマイズできるようにする。
管理 - ポータル管理では、WebLogic Administration Portal を使用してポータルの集約および管理を行う。ポータル管理者は開発者が作成したリソースを使用して、ポータルを構築および変更し、プロダクションの準備をする。たとえば管理者は、開発者が作成したデスクトップ、ページ、ポートレットなどのリソースを使用して、新しくポータルを構築したり、キャンペーンのコンテンツ クエリを変更することができる。管理者は、新規ポータルおよびデスクトップ、ブック、ページ、ポートレットなどのポータル リソースを作成することもできる。WebLogic Portal のコンポーネントベースのフレームワークにより、管理者は委託管理を設定したり、訪問者の資格を定義して、特定のポータル コンポーネントおよびコンテンツを管理および表示できるユーザを決定することができる。
ポータル管理では、開発環境のサポートに必要なその他の重要なタスクも行う。たとえば管理者は、開発者がコンテンツ セレクタ、プレースホルダ、キャンペーンのクエリを作成できるように、BEA の仮想コンテンツ リポジトリでコンテンツ リポジトリをコンフィグレーションする必要がある。管理者は、開発者がアプリケーションの対象とするユーザの追加および管理も行う。
図 4 に、WebLogic Administration Portal を示します。左のリソース ツリーのデスクトップ構造は、図 3 の WebLogic Workshop の [ドキュメント構造] ウィンドウに示されている、WebLogic Portal デザイナで作成された構造と一致する。
図 4 WebLogic Administration Portal
ポータル管理では、ポータル自体の管理のほかにユーザおよびグループ管理、委託管理および訪問者資格の設定、対話管理の変更 (パーソナライゼーションおよびキャンペーン)、コンテンツ管理、サーバ設定のコンフィグレーションを行います。
関連情報
ポータルの作成および管理についての情報および手順は、以下のドキュメントを参照してください。