JAX-WS を使用した WebLogic Web サービスの開始

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JWS ファイルのプログラミング

以下の節では、Web サービスを実装する JWS ファイルのプログラミングについて説明します。

 


JWS ファイルと JWS アノテーションの概要

WebLogic Web サービスをゼロからプログラムする方法は 2 つあります。

  1. JSR-181、JAX-WS 仕様、および WebLogic Web サービス プログラミング モデルで規定されているように、標準の EJB または Java クラスに Web サービス Java アノテーションを付けます。
  2. デプロイメント記述子、WSDL ファイル、データ マッピング記述子、データ バインディング アーティファクト (ユーザ定義のデータ型用) など、JSR-109 で指定されているさまざまな XML 記述子ファイルやアーティファクトと、標準の EJB または Java クラスを結合します。

Oracle では、上記のオプション 1 を実行することを強くお勧めします。ユーザ自身が XML メタデータ記述子を作成しなくても、JWS にユーザが含めたアノテーションに基づいて必要な記述子やアーティファクトが WebLogic Ant タスクおよびランタイムによって生成されるためです。このプロセスの方がはるかに簡単なだけでなく、Web サービスの情報が多数の Java ファイルや XML ファイル内に分散されず、JWS ファイルで集中管理されます。

アノテーション付きの Java Web サービス (JWS) ファイルは、Web サービスの中核部分です。このファイルには Web サービスの動作を決定する Java コードが含まれています。JWS ファイルは、Java メタデータ アノテーションを使用して Web サービスの形式や特性を指定した、通常の Java クラス ファイルです。JWS ファイルでは、Web Services Metadata for the Java Platform 仕様 (JSR-181) で定義される標準的な JWS アノテーションに加え、作成中の Web サービスの種類 (JAX-WS または JAX-RPC) に基づいたその他のアノテーション セットの使用が可能です。JAX-WS Web サービスおよび JAX-RPC Web サービスに対してサポートされている JWS アノテーションの完全なリストについては、『WebLogic Web サービス リファレンス』の「Web サービスのアノテーション サポート」を参照してください。

JWS ファイルをプログラミングする際は、基本的な Web サービス機能をプログラムするためにアノテーションを含めます。アノテーションは、JWS ファイル内のさまざまなレベル、さまざまな対象で使用されます。一部のアノテーションはクラス レベルで使用され、そのアノテーションが JWS ファイル全体に適用されることを示します。それ以外のアノテーションには、メソッド レベルで使用するものや、パラメータ レベルで使用するものがあります。

 


JWS ファイルの Java 要件

JWS ファイルをプログラミングする場合は、Web Services Metadata for the Java Platform 仕様 (JSR-181) で指定された一連の要件に従う必要があります。特に、Web サービスを実装する Java クラスは、次の要件に従う必要があります。

 


JWS ファイルのプログラミング : 一般的な手順

以下の手順では、Web サービスを実装する JWS ファイルをプログラミングするための一般的な手順を説明します。

注意 : JWS ファイルを作成してあり、そこに JWS アノテーションを追加する予定であることを前提としています。

各 JWS アノテーションの詳細については、『WebLogic Web サービス リファレンス』の「JWS アノテーション リファレンス」を参照してください。

表 4-1 JWS ファイルのプログラミング手順
#
手順
説明
1
JWS ファイルで使用する標準の JWS アノテーションをインポートする。
標準の JWS アノテーションは javax.jws または javax.jws.soap パッケージにある。次に例を示す。
import javax.jws.WebMethod;
import javax.jws.WebService;
import javax.jws.soap.SOAPBinding;
2
必要に応じて、追加のアノテーションをインポートする。
サポートされている JWS アノテーションの完全なリストについては、『WebLogic Web サービス リファレンス』の「Web サービスのアノテーション サポート」を参照。
3
必須の標準 @WebService JWS アノテーションをクラス レベルで追加して、Java クラスが Web サービスを公開することを指定する。
4
標準の @SOAPBinding JWS アノテーションをクラス レベルで追加して、Web サービスと SOAP メッセージ プロトコル間のマッピングを指定する (省略可能)。
特に、このアノテーションを使用して、Web サービスがドキュメントリテラルか、ドキュメントエンコードかなどを指定する。「Web サービスと SOAP メッセージ プロトコルのマッピングの指定 (@SOAPBinding アノテーション)」を参照。
この JWS アノテーションは必須ではないが、JWS ファイルで明示的に指定し、クライアント アプリケーションが Web サービスの呼び出しに使用する SOAP バインディングのタイプを明確にすることが推奨される。
5
クラス レベルで JAX-WS @BindingType JWS アノテーションを追加し、Web サービス エンドポイント実装クラスに使用するバインディング タイプを指定する (省略可能)。
6
パブリック オペレーションとして公開する JWS ファイルの各メソッドで標準の @WebMethod アノテーションを追加する (省略可能)。
必要に応じて、標準の @Oneway アノテーションを使用し、そのオペレーションが入力パラメータだけを取り、値を返さないことを指定する。「JWS メソッドをパブリック オペレーションとして公開することの指定 (@WebMethod および @OneWay アノテーション)」を参照。
7
@WebParam アノテーションを追加し、公開されるオペレーションの入力パラメータの名前をカスタマイズする (省略可能)。
8
@WebResult アノテーションを追加し、公開されるオペレーションの戻り値の名前と動作をカスタマイズする (省略可能)。
9
独自のビジネス コードを追加する。
Web サービスが希望どおりに動作するように、独自のビジネス コードをメソッドに追加する。

JWS ファイルの例

以下のサンプル JWS ファイルでは、簡単な Web サービスの実装方法を示します。

package examples.webservices.simple;
// 標準の JWS アノテーション インタフェースをインポートする
import javax.jws.WebMethod;
import javax.jws.WebService;
import javax.jws.soap.SOAPBinding;
// Web サービスの portType 名を「SimplePortType」、サービス名を「SimpleService」、
// 生成される WSDL で使用される targetNamespace を「http://example.org」と指定する、
// 標準の JWS アノテーション
@WebService(name="SimplePortType", serviceName="SimpleService",
targetNamespace="http://example.org")
// サービスと SOAP メッセージ プロトコルのマッピングを指定する、
// 標準の JWS アノテーション。特に、SOAP メッセージが
// document-literal-wrapped 型であることを指定する
@SOAPBinding(style=SOAPBinding.Style.DOCUMENT,
use=SOAPBinding.Use.LITERAL,
parameterStyle=SOAPBinding.ParameterStyle.WRAPPED)
/**
 * この JWS ファイルは、1 つのオペレーション sayHello を含む簡単な
 * Java クラス実装の WebLogic Web サービスの基本となる
 *
 */
public class SimpleImpl {
  // メソッドがパブリック オペレーションとしてエクスポーズされることを指定する、
  // 標準の JWS アノテーション。アノテーションにはメンバー値の
  // 「operationName」が含まれていないので、オペレーションのパブリック名は
  // メソッド名 sayHello と同じになる
  @WebMethod()
public String sayHello(String message) {
System.out.println("sayHello:" + message);
return "Here is the message: '" + message + "'";
}
}

JWS ファイルが Web サービスを実装することの指定 (@WebService アノテーション)

次のコードの抜粋のように、標準の @WebService アノテーションを使用して、JWS ファイルが Web サービスを実装することをクラス レベルで指定します。

@WebService(name="SimplePortType", serviceName="SimpleService",
targetNamespace="http://example.org")

この例では、Web サービスの名前は SimplePortType であり、jwsc Ant タスクによって生成される WSDL ファイルの wsdl:portType 要素に後でマップされます。サービス名は SimpleService であり、生成される WSDL ファイルの wsdl:service 要素にマップされます。生成される WSDL で使用される対象ネームスペースは http://example.org です。

@WebService アノテーションの以下の追加の属性を指定することもできます。

@WebService アノテーションの属性はいずれも必須ではありません。各属性のデフォルト値については、Web Services Metadata for the Java Platform (JSR 181) 仕様を参照してください。

Web サービスと SOAP メッセージ プロトコルのマッピングの指定 (@SOAPBinding アノテーション)

ここでは、Web サービスを SOAP メッセージ プロトコルで使用できるようにします。そのためには、JWS ファイル内にクラス レベルで標準の @SOAPBinding アノテーションを含めて、Web サービスの SOAP バインディング (document-encoded または document-literal-wrapped など) を指定します。次のコードの抜粋を参照してください。

@SOAPBinding(style=SOAPBinding.Style.DOCUMENT,
use=SOAPBinding.Use.LITERAL,
parameterStyle=SOAPBinding.ParameterStyle.WRAPPED)

この例で、Web サービスは document-wrapped-style エンコーディングとリテラル メッセージ フォーマットを使用しています。@SOAPBinding アノテーションを使用しない場合でも、これらはデフォルトのフォーマットとなります。

(style=SOAPBinding.Style.DOCUMENT 属性と一緒に) parameterStyle 属性を使用して、Web サービス オペレーションのパラメータが、SOAP メッセージ本文全体を表すかどうか、または、オペレーションと同じ名前の最上位要素内にラップされる要素かどうかを指定します。

次の表では、標準および WebLogic 固有の @SOAPBinding アノテーションの 3 つの属性の指定できる値とデフォルト値を示します。

表 4-2 @SOAPBinding アノテーションの属性
属性
指定できる値
デフォルト値
style
SOAPBinding.Style.RPC
SOAPBinding.Style.DOCUMENT
SOAPBinding.Style.DOCUMENT
use
SOAPBinding.Use.LITERAL
SOAPBinding.Use.LITERAL
parameterStyle
SOAPBinding.ParameterStyle.BARE
SOAPBinding.ParameterStyle.WRAPPED
SOAPBinding.ParameterStyle.WRAPPED

JWS メソッドをパブリック オペレーションとして公開することの指定 (@WebMethod および @OneWay アノテーション)

標準の @WebMethod アノテーションを使用して、JWS ファイルのメソッドを Web サービスのパブリック オペレーションとして公開することを指定します。次のコードの抜粋を参照してください。

public class SimpleImpl {
  @WebMethod(operationName="sayHelloOperation")
public String sayHello(String message) {
System.out.println("sayHello:" + message);
return "Here is the message: '" + message + "'";
}
...

この例では、SimpleImpl JWS ファイルの sayHello() メソッドが、Web サービスのパブリック オペレーションとして公開されます。ただし、operationName 属性では、WSDL ファイル内のオペレーションのパブリック名は sayHelloOperation になることを指定しています。operationName 属性を指定しない場合は、メソッドの名前がオペレーションのパブリック名になります。

action 属性を使用してオペレーションのアクションを指定することもできます。SOAP をバインディングとして使用する場合、action 属性の値によって、SOAP メッセージ内の SOAPAction ヘッダの値が決まります。

標準の @Oneway アノテーションを使用して、オペレーションが呼び出し側アプリケーションに値を返さないことを指定できます。次の例を参照してください。

 public class OneWayImpl {
  @WebMethod()
@Oneway()
  public void ping() {
System.out.println("ping operation");
}
...

オペレーションが一方向であることを指定する場合、実装するメソッドは void を返す必要があります。パラメータとしてホルダ クラスを使用したり、チェック済み例外を送出したりすることはできません。

@WebMethod アノテーションの属性はいずれも必須ではありません。@WebMethod および @Oneway アノテーションに関する追加情報や、各属性のデフォルト値については、Web Services Metadata for the Java Platform (JSR 181) 仕様を参照してください。

JWS ファイル内のどのパブリック メソッドにも @WebMethod アノテーションを付けていない場合、デフォルトではすべてのパブリック メソッドが Web サービス オペレーションとしてエクスポーズされます。

オペレーションのパラメータと WSDL 要素のマッピングのカスタマイズ (@WebParam アノテーション)

標準の @WebParam アノテーションを使用して、Web サービス オペレーションの入力パラメータと生成される WSDL ファイルの要素との間のマッピングをカスタマイズしたり、パラメータの動作を指定したりします。次のコードの抜粋を参照してください。

 public class SimpleImpl {
  @WebMethod()
@WebResult(name="IntegerOutput",
targetNamespace="http://example.org/docLiteralBare")
public int echoInt(
@WebParam(name="IntegerInput",
targetNamespace="http://example.org/docLiteralBare")
int input)
  {
System.out.println("echoInt '" + input + "' to you too!");
return input;
}
...

この例では、生成される WSDL ファイル内の echoInt オペレーションのパラメータ名は IntegerInput になります。JWS ファイルに @WebParam アノテーションがない場合、生成される WSDL ファイル内のパラメータ名は、メソッドのパラメータ名 input と同じになります。targetNamespace 属性は、パラメータの XML ネームスペースが http://example.org/docLiteralBare であることを指定します。この属性は、パラメータと XML 要素がマップされる、ドキュメント スタイルの SOAP バインディングを使用する場合にのみ有効です。

@WebParam アノテーションの以下の追加の属性を指定することもできます。

@WebParam アノテーションの属性はいずれも必須ではありません。各属性のデフォルト値については、Web Services Metadata for the Java Platform (JSR 181) 仕様を参照してください。

オペレーションの戻り値と WSDL 要素のマッピングのカスタマイズ (@WebResult アノテーション)

標準の @WebResult アノテーションを使用して、Web サービス オペレーションの戻り値と生成される WSDL ファイル内の対応する要素との間のマッピングをカスタマイズします。次のコードの抜粋を参照してください。

 public class Simple {
  @WebMethod()
@WebResult(name="IntegerOutput",
targetNamespace="http://example.org/docLiteralBare")
public int echoInt(
@WebParam(name="IntegerInput",
targetNamespace="http://example.org/docLiteralBare")
int input)
  {
System.out.println("echoInt '" + input + "' to you too!");
return input;
}
...

この例では、生成される WSDL ファイル内の echoInt オペレーションの戻り値の名前は IntegerOutput になります。JWS ファイルに @WebResult アノテーションがない場合、生成される WSDL ファイル内の戻り値の名前は、ハードコード化された名前 return になります。targetNamespace 属性は、戻り値の XML ネームスペースが http://example.org/docLiteralBare であることを指定します。この属性は、戻り値と XML 要素がマップされる、ドキュメント スタイルの SOAP バインディングを使用する場合にのみ有効です。

@WebResult アノテーションの属性はいずれも必須ではありません。各属性のデフォルト値については、Web Services Metadata for the Java Platform (JSR 181) 仕様を参照してください。

エンドポイントに使用するバインディングの指定 (@BindingType アノテーション)

JAX-WS @BindingType アノテーションを使用すると、Web サービス エンドポイント実装クラスに使用するバインディングをカスタマイズすることができます。次のコードの抜粋を参照してください。

import javax.xml.ws.BindingType;
import javax.xml.ws.soap.SOAPBinding;
public class Simple {
  @WebService()
@BindingType(value=SOAPBinding.SOAP12HTTP_BINDING)
public int echoInt(
@WebParam(name="IntegerInput",
targetNamespace="http://example.org/docLiteralBare")
int input)
  {
System.out.println("echoInt '" + input + "' to you too!");
return input;
}
...

この例のデプロイメントされたエンドポイントでは、SOAP1.2 over HTTP バインディングが使用されます。何も指定しない場合、バインディングのデフォルトは SOAP 1.1 over HTTP になります。

@BindingType アノテーションの以下の追加属性を指定することもできます。

@BindingType アノテーションの詳細については、JAX-WS 2.1 Annotations を参照してください。

 


Web サービスの実行時情報へのアクセス

クライアント アプリケーションが、JWS ファイルで実装された WebLogic Web サービスを呼び出すと、WebLogic Server は、Web サービスやクライアントが、サービスに関する実行時情報のアクセス、および場合によっては変更に使用できるコンテキストを自動的に作成します。

実行時情報には、以下のいずれかの方法でアクセスできます。

以降の節では、BindingProviderWebServiceContext、および MessageContext を使用して実行時情報へアクセスする方法の詳細を説明します。

プロトコル バインディング コンテキストへのアクセス

注意 : com.sun.xml.ws.developer.JAXWSProperties および com.sun.xml.ws.client.BindingProviderProperties API は、Sun Microsystems が提供する JDK 6.0 の拡張としてサポートされています。これらの API は JDK 6.0 キットの一部としては提供されないため、変更される可能性があります。

javax.xml.ws.BindingProvider インタフェースを使用すると、クライアント アプリケーションから、プロトコル バインディングの要求および応答コンテキストへアクセスすることができます。Web サービス クライアント ファイルの開発に関する詳細については、「Web サービスの呼び出し」を参照してください。

次に、コンテキストを使用して HTTP リクエスト ヘッダ情報へアクセスする簡単な Web サービス クライアント アプリケーションの例を示します。太字のコードについては、例の後のプログラミングのガイドラインで説明しています。

package examples.webservices.hello_world.client;

import javax.xml.namespace.QName;
import java.net.MalformedURLException;
import java.net.URL;
import java.util.Map;
import javax.xml.ws.BindingProvider;
import javax.xml.ws.handler.MessageContext;
import com.sun.xml.ws.developer.JAXWSProperties;
import com.sun.xml.ws.client.BindingProviderProperties;

/**
 * Simple Web サービスの sayHelloWorld オペレーションを呼び出す
 *簡単なスタンドアロン クライアント アプリケーション
 */

public class Main {
public static void main(String[] args) {
HelloWorldService service;
try {
service = new HelloWorldService(new URL(args[0] + "?WSDL"),
new QName("http://hello_world.webservices.examples/",
"HelloWorldService") );
} catch (MalformedURLException murl) { throw new RuntimeException(murl); }
HelloWorldPortType port = service.getHelloWorldPortTypePort();
String result = null;
result = port.sayHelloWorld("Hi there!");
System.out.println( "Got result: " + result );
Map requestContext = ((BindingProvider)port).getRequestContext();
requestContext.put(BindingProvider.ENDPOINT_ADDRESS_PROPERTY,
"http://examples.com/HelloWorldImpl/HelloWorldService");
requestContext.put(JAXWSProperties.CONNECT_TIMEOUT, 300);
requestContext.put(BindingProviderProperties.REQUEST_TIMEOUT, 300);
Map responseContext = ((BindingProvider)port).getResponseContext();
Integer responseCode =
(Integer)responseContext.get(MessageContext.HTTP_RESPONSE_CODE);
...
}
}

上記の例の太字のコードで示すように、Web サービスの実行時コンテキストにアクセスするには、JWS ファイルで以下のガイドラインに従います。

次の表に、Web サービスの実行時情報にアクセスするために JWS ファイルで使用可能な javax.xml.ws.BindingProvider のメソッドをまとめます。

表 4-3 BindingProvider のメソッド 
メソッド
戻り値
説明
getBinding()
バインディング
バインディング プロバイダのバインディングを返す。
getRequestContext()
java.Util.Map
要求メッセージのコンテキストおよびメッセージの初期化に使用されるコンテキストを返す。
getResponseContext()
java.Util.Map
応答コンテキストを返す。

要求および応答コンテキストを取得したら、次の表で定義している BindingProvider プロパティ値と、「MessageContext プロパティ値の使用」で定義している MessageContext プロパティ値にアクセスできます。

表 4-4 BindingProvider のプロパティ
プロパティ
タイプ
説明
ENDPOINT_ADDRESS_PROPERTY
java.lang.String
対象サービス エンドポイント アドレス。
PASSWORD_PROPERTY
java.lang.String
認証用パスワード。
SESSION_MAINTAIN_PROPERTY
java.lang.Boolean
サービス クライアントがサービス エンドポイントとのセッションに参加するかどうかを示すフラグ。デフォルト値の false は、サービス クライアントが参加しないことを示す。
SOAPACTION_URI_PROPERTY
java.lang.String
SOAPAction URI. を指定する SOAPAction のプロパティ。このプロパティは、SOAPACTION_USE_PROPERTYtrue に設定されている場合にのみ有効。
SOAPACTION_USE_PROPERTY
java.lang.Boolean
SOAPAction を使用するかどうかを指定する SOAPAction のプロパティ。
USERNAME_PROPERTY
java.lang.String
認証用ユーザ名。

また、前の例の以下の点に注目してください。

Web サービス コンテキストへのアクセス

javax.xml.ws.WebServiceContext インタフェースを使用すると、Web サービスから、処理されている要求に関連するセキュリティ情報や実行時メッセージ コンテキストにアクセスできます。WebServiceContext は通常、@Resource アノテーションを使用してエンドポイントに注入されます。

次に、コンテキストを使用して HTTP リクエスト ヘッダ情報へアクセスする簡単な JWS ファイルの例を示します。太字のコードについては、例の後のプログラミングのガイドラインで説明しています。

package examples.webservices.jws_context;
import javax.jws.WebMethod;
import javax.jws.WebService;
import java.util.Map;
import javax.xml.ws.WebServiceContext;
import javax.annotation.Resource;
import javax.xml.ws.handler.MessageContext;
@WebService(name="JwsContextPortType", serviceName="JwsContextService",
targetNamespace="http://example.org")
/**
 * @Context アノテーションの使い方を示す簡単な Web サービス
 */
public class JwsContextImpl {
  @Resource
private WebServiceContext ctx;
  @WebMethod()
public String msgContext(String msg) {
MessageContext context=ctx.getMessageContext();
Map requestHeaders = (Map)context.get(MessageContext.HTTP_REQUEST_HEADERS);
}
}

上記の例の太字のコードで示すように、Web サービスの実行時コンテキストにアクセスするには、JWS ファイルで以下のガイドラインに従います。

次の表に、Web サービスの実行時情報にアクセスするために JWS ファイルで使用可能な javax.xml.ws.WebServiceContext のメソッドをまとめます。

表 4-5 WebServiceContext のメソッド 
メソッド
戻り値
説明
getMessageContext()
MessageContext
現在のサービス要求の MessageContext を返す。「MessageContext プロパティ値の使用」で定義しているように、HTTP_REQUEST_HEADERSMESSAGE_ATTACHMENTS など、アプリケーション スコープのプロパティのみアクセス可能。
getUserPrincipal()
java.security.Principal
現在のサービス要求の送信者を識別するプリンシパルを返す。送信者が認証されていない場合、null を返す。
isUserInRole(java.lang.String role)
boolean
指定された論理的なロールに認証ユーザが含まれているかどうかを示すブール値を返す。ユーザが認証されていない場合、false を返す。

MessageContext プロパティ値の使用

次の表では、Web サービスの WebServiceContext から直接、あるいはクライアント アプリケーションや Web サービスのメッセージ ハンドラからアクセス可能な javax.xml.ws.handler.MessageContext プロパティ値を示しています。詳細については、Javadoc の javax.xml.ws.handler.MessageContext を参照してください。

表 4-6 MessageContext のプロパティ 
プロパティ
タイプ
説明
HTTP_REQUEST_HEADERS
java.util.Map
リクエスト メッセージの HTTP リクエスト ヘッダのマップ。
HTTP_REQUEST_METHOD
java.lang.String
GET、POST、PUT などの HTTP リクエスト メソッド。
HTTP_RESPONSE_CODE
java.lang.Integer
最終呼び出しの HTTP 応答ステータス コード。
HTTP_RESPONSE_HEADERS
java.util.Map
HTTP 応答ヘッダ。
INBOUND_MESSAGE_ATTACHMENTS
java.util.Map
着信メッセージの添付のマップ。
MESSAGE_OUTBOUND_PROPERTY
java.lang.Boolean
メッセージの方向。このプロパティは、発信メッセージの場合は true、着信メッセージの場合は false
OUTBOUND_MESSAGE_ATTACHMENTS
java.util.Map
発信メッセージの添付のマップ。
PATH_INFO
java.lang.String
リクエスト パス情報。
QUERY_STRING
java.lang.String
リクエストのクエリ文字列。
REFERENCE_PARAMETERS
java.awt.List
WS-Addressing 参照パラメータ。リストには、wsa:IsReferenceParameter="true" 属性がマークされているすべての SOAP ヘッダを含める必要がある。
SERVLET_CONTEXT
javax.servlet.ServletContext
リクエストに関連するサーブレット コンテキスト オブジェクト。
SERVLET_REQUEST
javax.servlet.http.HttpServletRequest
リクエストに関連するサーブレット リクエスト オブジェクト。
SERVLET_RESPONSE
javax.servlet.http.HttpServletResponse
リクエストに関連するサーブレット応答オブジェクト。
WSDL_DESCRIPTION
org.xml.sax.InputSource
WSDL ドキュメントの入力ソース (解決可能な URI)。
WSDL_INTERFACE
javax.xml.namespace.QName
ポート タイプまたは WSDL インタフェースの名前。
WSDL_OPERATION
javax.xml.namespace.QName
現在のメッセージが所属する WSDL オペレーションの名前。
WSDL_PORT
javax.xml.namespace.QName
メッセージを受け取った WSDL ポートの名前。
WSDL_SERVICE
javax.xml.namespace.QName
呼び出し対象サービスの名前。

 


ステートレス セッション EJB を実装すべき場合

jwsc Ant タスクでは、JWS ファイルを処理するときは常に、Web サービスの基底の実装としてプレーン Java オブジェクトが選択されます。

しかし、Web サービスの基底の実装をステートレス セッション EJB にして、EJB が提供するすべての機能 (インスタンス プール、トランザクション、セキュリティ、コンテナ管理による永続性、コンテナ管理による関係、データ キャッシュなど) を活用したい場合もあります。Web サービスの実装を EJB にする場合は、次の節のプログラミング ガイドラインに従ってください。

EJB 3.0 では、EJB を実装する場合に必要な EJB リモートおよびホーム インタフェース クラスおよびデプロイメント記述子ファイルを、手動で作成するのではなく、自動的に生成することができるメタデータ アノテーションが導入されました。EJB 3.0 の詳細については、「Oracle WebLogic Server 10g リリース 3 エンタープライズ JavaBeans (EJB) 3.0」を参照してください。

JWS ファイルに EJB を実装するには、次の手順に従います。

以下の例では、ステートレス セッション EJB を実装する簡単な JWS ファイルを示します。関連するコードは太字で示されています。

package examples.webservices.jaxws;

import weblogic.transaction.TransactionHelper;
import javax.ejb.Stateless;
import javax.ejb.SessionContext;
import javax.ejb.TransactionAttribute;
import javax.ejb.TransactionAttributeType;
import javax.annotation.Resource;
import javax.jws.WebService;
import javax.jws.WebMethod;
import javax.transaction.SystemException;
import javax.transaction.Status;
import javax.transaction.Transaction;
import javax.xml.ws.WebServiceContext;

/**
* トランザクションを認識したステートレス EJB 実装の JWS
*/

// Web サービスのポート名、サービス名、および対象ネームスペースを
// 指定する標準の JWS アノテーション
@WebService(
name = "Simple",
portName = "SimpleEJBPort",
serviceName = "SimpleEjbService",
targetNamespace = "http://www.bea.com/wls/samples")

// 標準の EJB アノテーション
@Stateless
public class SimpleEjbImpl {

@Resource
private WebServiceContext context;
private String constructed = null;

   // WebMethod アノテーションで、以降のメソッドを Web サービスのパブリック
   // オペレーションとしてエクスポーズする
@WebMethod()
@TransactionAttribute(TransactionAttributeType.REQUIRED)
public String sayHello(String s) throws SystemException {
Transaction transaction =
TransactionHelper.getTransactionHelper().getTransaction();
int status = transaction.getStatus();
if (Status.STATUS_ACTIVE != status)
throw new IllegalStateException("transaction did not start,
status is: " + status + ", check ejb annotation processing");

return constructed + ":" + s;
}

 


ユーザ定義の Java データ型のプログラミング

Web サービス オペレーションとして公開される JWS ファイルのメソッドでは、パラメータや戻り値として必ずしも組み込みのデータ型 (String や integer など) を取る必要はなく、独自に作成する Java データ型を使用することができます。ユーザ定義のデータ型の例としては、String の銘柄記号と integer の売買株式数という 2 つのフィールドを持つ TradeResult が挙げられます。

JWS ファイルで、1 つまたは複数のメソッドのパラメータまたは戻り値としてユーザ定義のデータ型を使用する場合は、データ型の Java コードを独自に作成して、JWS ファイルにそのクラスをインポートし、適切に使用する必要があります。必要なデータ バインディング アーティファクトはすべて、jwsc Ant タスクが後で作成します。

ユーザ定義のデータ型の Java コードを記述するときは、以下の基本的な要件に従います。

jwsc Ant タスクでは、最も一般的な XML および Java データ型のデータ バインディング アーティファクトを生成できます。サポートされるユーザ定義のデータ型のリストについては、「サポートされるユーザ定義のデータ型」を参照してください。サポートされる組み込みデータ型の全リストについては、「サポートされる組み込みデータ型」を参照してください。

以下の例では、BasicStruct という簡単な Java ユーザ定義データ型を示します。

package examples.webservices.complex;
/**
* integer、String、および String[] 型のプロパティを持つ、
 * BasicStruct という簡単な JavaBean を定義する
 */
public class BasicStruct {
  // プロパティ
  private int intValue;
private String stringValue;
private String[] stringArray;
  // ゲッターおよびセッター メソッド
  public int getIntValue() {
return intValue;
}
  public void setIntValue(int intValue) {
this.intValue = intValue;
}
  public String getStringValue() {
return stringValue;
}
  public void setStringValue(String stringValue) {
this.stringValue = stringValue;
}
  public String[] getStringArray() {
return stringArray;
}
  public void setStringArray(String[] stringArray) {
this.stringArray = stringArray;
}
}

以下の JWS ファイルの抜粋では、BasicStruct クラスをインポートして、1 つのメソッドのパラメータおよび戻り値として使用する方法を示しています。完全な JWS ファイルについては、「サンプル ComplexImpl.java JWS ファイル」を参照してください。

package examples.webservices.complex;
// 標準の JWS アノテーション インタフェースをインポートする
import javax.jws.WebMethod;
import javax.jws.WebParam;
import javax.jws.WebResult;
import javax.jws.WebService;
import javax.jws.soap.SOAPBinding;
// WebLogic 固有の JWS アノテーション インタフェースをインポートする
// BasicStruct JavaBean をインポートする
import examples.webservices.complex.BasicStruct;
@WebService(serviceName="ComplexService", name="ComplexPortType",
targetNamespace="http://example.org")
...
public class ComplexImpl {
  @WebMethod(operationName="echoComplexType")
public BasicStruct echoStruct(BasicStruct struct)
  {
return struct;
}
}

 


JWS ファイルからの別の Web サービスの呼び出し

JWS ファイル内から別の Web サービス (WebLogic Server にデプロイされている Web サービス、または .NET などの他のアプリケーション サーバにデプロイされている Web サービス) を呼び出すことができます。その手順は、「スタンドアロンの Java クライアントからの Web サービスの呼び出し」で説明した手順と似ています。ただしこの場合は、clientgen Ant タスクを実行してクライアント スタブを生成するのではなく、呼び出し側の Web サービスを構築する jwsc Ant タスクに <clientgen> 子要素を含めてクライアント スタブを生成します。その後は、スタンドアロン クライアント アプリケーションの場合と同じように、JWS ファイル内で標準の JAX-WS API を使用します。

詳細な手順については、「別の Web サービスからの Web サービスの呼び出し」を参照してください。

 


SOAP 1.2 の使用

WebLogic Web サービスでは、Web サービスとそのクライアントの間でデータや呼び出しを転送する際に、メッセージ フォーマットとしてデフォルトでバージョン 1.1 の SOAP (Simple Object Access Protocol) が使用されます。WebLogic Web サービスでは、SOAP 1.1 と新しい SOAP 1.2 の両バージョンがサポートされており、いずれかのバージョンを自由に使用できます。

Web サービスでバージョン 1.2 の SOAP を使用するように指定するには、JWS ファイルで @javax.xml.ws.BindingType アノテーションをクラス レベルで使用し、その 1 つの属性を SOAPBinding.SOAP12HTTP_BINDING という値に設定します。次の例を参照してください (関連コードは太字で示しています)。

package examples.webservices.soap12;
import javax.jws.WebMethod;
import javax.jws.WebService;
import javax.xml.ws.BindingType;
import javax.xml.ws.SOAPBinding;
@WebService(name="SOAP12PortType",
serviceName="SOAP12Service",
targetNamespace="http://example.org")
@BindingType(value = SOAPBinding.SOAP12HTTP_BINDING)
/**
* この JWS ファイルは、1 つのオペレーション sayHello を含む簡単な
 * Java クラス実装の WebLogic Web サービスの基本となる。このクラスでは、
 * バインディングとして SOAP 1.2 を使用する。
 *
 */
public class SOAP12Impl {
  @WebMethod()
public String sayHello(String message) {
System.out.println("sayHello:" + message);
return "Here is the message: '" + message + "'";
}
}

Web サービスで SOAP 1.2 を使用する上で、このアノテーションを設定する以外の設定は必要ありません。その Web サービスを呼び出すクライアント アプリケーションを変更する場合も含め、WebLogic Web サービス ランタイムによってすべて自動的に処理されます。

 


XML スキーマの検証

デフォルトでは、SOAP メッセージは XML スキーマに対して検証されません。以降の節で説明するように、サーバまたはクライアントでドキュメントリテラル Web サービスに対して XML スキーマ検証を有効化することができます。

注意 : この機能により、Web サービス要求に対してわずかな処理が追加されます。

サーバでのスキーマ検証の有効化

注意 : com.sun.xml.ws.developer.SchemaValidation API は、Sun Microsystems が提供する JDK 6.0 の拡張としてサポートされています。この API は JDK 6.0 キットの一部としては提供されないため、変更される可能性があります。

サーバでスキーマ検証を有効化するには、エンドポイント実装で @SchemaValidation アノテーションを追加します。次に例を示します。

import com.sun.xml.ws.developer.SchemaValidation;
import javax.jws.WebService;
@SchemaValidation
@WebService(name="HelloWorldPortType", serviceName="HelloWorldService")
public class HelloWorldImpl {
public String sayHelloWorld(String message) {
System.out.println("sayHelloWorld:" + message);
return "Here is the message: '" + message + "'";
}
}

アプリケーション内のエラーを管理する場合、独自の検証エラー ハンドラ クラスを引数としてアノテーションに渡すことができます。次に例を示します。

@SchemaValidation(handler=ErrorHandler.class)

クライアントでのスキーマ検証の有効化

注意 : com.sun.xml.ws.developer.SchemaValidationFeature API は、Sun Microsystems が提供する JDK 6.0 の拡張としてサポートされています。この API は JDK 6.0 キットの一部としては提供されないため、変更される可能性があります。

クライアントでスキーマ検証を有効化するには、SchemaValidationFeature オブジェクトを作成し、PortType スタブ実装の作成時に引数として渡します。

package examples.webservices.hello_world.client;
import com.sun.xml.ws.developer.SchemaValidationFeature;
import javax.xml.namespace.QName;
import java.net.MalformedURLException;
import java.net.URL;
public class Main {
  public static void main(String[] args) {
HelloWorldService service;
try {
service = new HelloWorldService(new URL(args[0] + "?WSDL"),
new QName("http://example.org", "HelloWorldService") );
} catch (MalformedURLException murl) { throw new RuntimeException(murl); }
SchemaValidationFeature feature =
new SchemaValidationFeature();
HelloWorldPortType port = service.getHelloWorldPortTypePort(feature);
String result = null;
result = port.sayHelloWorld("Hi there!");
System.out.println( "Got result: " + result );
}
}

アプリケーション内のエラーを管理する場合、独自の検証エラー ハンドラを引数として SchemaValidationFeature オブジェクトに渡すことができます。次に例を示します。

      SchemaValidationFeature feature = 
new SchemaValidationFeature(MyErrorHandler.class);
HelloWorldPortType port = service.getHelloWorldPortTypePort(feature);

 


JWS プログラミングのベスト プラクティス

以下のリストでは、JWS ファイルをプログラミングする場合のベスト プラクティスを示します。


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