Oracle ACFSの概要

Oracle Automatic Storage Management Cluster File System (Oracle ACFS)は、マルチプラットフォームのスケーラブルなファイルシステムであり、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)の機能を拡張して、すべてのカスタマ・ファイルをサポートするストレージ管理テクノロジです。

Oracle ACFSでは、実行可能ファイル、データベース・データファイル、データベース・トレース・ファイル、データベース・アラート・ログ、アプリケーション・レポート、BFILEおよび構成ファイルなど、Oracle Databaseファイルおよびアプリケーション・ファイルがサポートされます。他にも、ビデオ、オーディオ、テキスト、イメージ、設計図、その他の汎用アプリケーションのファイル・データがサポートされます。Oracle ACFSは、LinuxおよびUNIXのPOSIX標準に準拠しています。

次の図に示すように、Oracle ACFSファイルシステムはOracle ASMと通信し、Oracle ASMストレージを使用して構成されます。

図1-1 Oracle ACFSのストレージ・レイヤー

図1-1の説明が続く
「図1-1 Oracle ACFSのストレージ・レイヤー」の説明

Oracle ACFSでは、次のことを可能にするOracle ASM機能を利用します。

  • Oracle ACFSの動的なファイル・システムのサイズ変更

  • Oracle ASMディスク・グループ・ストレージへの直接アクセスによるパフォーマンスの最大化

  • I/Oの並列性向上によるOracle ASMディスク・グループ・ストレージ全体でのOracle ACFSの分散の平均化

  • Oracle ASMミラー化保護メカニズムによるデータの信頼性の確保

Oracle ACFSでは、Oracle ASMインスタンスおよびディスク・グループのステータス更新やディスク・グループのリバランスなどのOracle ASMの状態遷移に関与するために、Oracle ASMインスタンスとの通信を確立し、維持します。Oracle ACFSおよびOracle ASM動的ボリューム・マネージャ(Oracle ADVM)を備えたOracle Automatic Storage Managementでは、すべてのカスタマ・データをサポートし、Oracle Restart(スタンドアロン)構成とクラスタ構成の両方で、複数のベンダー・プラットフォームおよびオペレーティング・システム環境にわたってOracleストレージ管理ツールおよびサービスの共通セットを提供します。

Oracle ACFSは、Oracle Clusterwareテクノロジと密接に結びついており、Clusterwareクラスタ・メンバーシップの状態遷移と、Oracle Clusterwareリソースベースの高可用性(HA)管理に直接関与します。さらに、Oracleのインストール、構成、検証および管理ツールが、Oracle ACFSをサポートするために更新されました。

Oracle ACFSは、ネイティブ・オペレーティング・システム・ファイルシステム・ツールと標準のアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)を使用してアクセスと管理ができます。Oracle ASMコンフィギュレーション・アシスタントを使用して、Oracle ACFSを管理することもできます。Oracle ACFSには、業界標準のネットワーク・アタッチド・ストレージ(NAS)ファイル・アクセス・プロトコルであるネットワーク・ファイルシステム(NFS)および共通インターネット・ファイルシステム(CIFS)を使用してアクセスできます。

ファイル・データの共有に加えて、Oracle ACFSではストレージ管理サービスを提供します。たとえば、Oracle Grid Infrastructureのクラスタ全体のマウント・レジストリ、オンライン・ファイルシステムの動的サイズ変更、各ファイルシステムの領域使用効率のよい複数のスナップショットなどがあります。

Oracle ACFSは、次の機能を提供して、Oracle全体のストレージ管理に貢献します。

  • Oracle ASMおよびOracle Clusterwareテクノロジと統合された汎用のスタンドアロン・サーバーおよびクラスタ・ファイルシステム・ソリューション

  • ネイティブ・オペレーティング・システムまたはサード・パーティ・ファイルシステムのソリューションに代わる、複数のベンダー・プラットフォームおよびオペレーティング・システムにわたるファイルシステム機能の共通セット

  • スタンドアロン内およびクラスタ全体で共有されるOracle Databaseホーム、すべてのOracle Databaseファイルおよびアプリケーション・データ

  • 均一で一貫した共有ファイル・アクセスと、すべてのカスタマ・アプリケーション・ファイルに対するクラスタ全体でのネーミング

  • Oracle Clusterware高可用性リソースとの統合

Oracle ACFSは、大容量の記憶域と多数のクラスタ・ノードに対応します。多数のファイルシステムおよびファイルを効率的に管理し、エクサバイト対応のファイルおよびファイルシステム容量により、小型ファイルと大型ファイルの両方をサポートします。Oracle ACFSの最適化された高速ディレクトリ検索により、何百万ものファイルを持つ大型ディレクトリを検索できます。

Oracle ACFSでは、スパース・ファイルがサポートされます。Oracle ACFS疎ファイルは、NFSサーバーおよび関連付けられたOracle ACFSファイル・システムによって、一般に適切な順序で受信されなかったNFSクライアント書込み操作に大きな利点を与えます。通常、アプリケーションがファイルの終端を越えて書き込む場合、ストレージが割り当てられ、古いファイルの終端を越えて、また新しい書込みの先頭にゼロが挿入されます。この機能を使用すると、ゼロが挿入されるのではなく、ファイルにホールが残ります。ホールが読み取られると、Oracle ACFSでは、このようなホールをメモリー内のゼロで埋めます。疎ファイル機能は、NFSパフォーマンスにも、このタイプの書込みを意図的に実行するその他のアプリケーションのパフォーマンスおよびディスク使用率にも有益です。さらに、仮想マシンの一部のイメージ・ファイルなど、本質的にスパースである(つまり、大量の未使用領域がある)ファイルにとって時間とストレージの削減という利点もあります。疎ファイルのサポートについては、COMPATIBLE.ADVMディスク・グループ属性を12.2以上に設定する必要があります。

Oracle ACFSファイル・システムは通常、すべてのクラスタ・ノードにマウントされてクラスタの単一ネームスペースを提供し、各ノードが、マウントされたファイル・システムに対して同じビューとアクセス機能を保持するようにします。メンバーに障害が発生した場合、別のクラスタ・メンバーが、障害の発生したメンバーにかわり、未処理のメタデータ・トランザクションをただちにリカバリします。リカバリ後に、他のアクティブ・クラスタ・メンバーとリモート・クライアント・システムによるアクセスが再開されます。

次のリストに、Oracle ACFSに関する重要な情報を示します。

  • すべてのアプリケーションでは、write()サイズを大きくすると(8K以上など)、Oracle ACFSのパフォーマンスは最適になります。

  • 最高のパフォーマンスを実現するために、Linuxシステム上のディスク・グループのディスク用の期限I/Oスケジューラを使用します。

  • Oracle ACFSでは、Oracle ASMの管理に関連付けられたファイル(Oracle Grid Infrastructureホーム内およびOracle ASMの診断ディレクトリ内のファイルなど)は、サポートされません。

  • Oracle ACFSでは、Oracle Cluster Registry(OCR)および投票ファイルはサポートしません。

  • Oracle ACFSの機能では、ASMおよびADVMのディスク・グループの互換性属性が11.2以上に設定されていることが必要です。

  • Oracle DatabaseホームにOracle ACFSのファイルシステムを使用するには、Oracle 11gリリース2 (11.2)以上のリリースである必要があります。

注意:

次の機能は、Oracle ACFS 20cではサポート対象外となります。

  • Oracle ACFSレプリケーション・バージョン1のサポート対象外

    Oracle ACFS 20c以降、Oracle ACFSレプリケーション・プロトコル・バージョン1はサポート対象外になりました。レプリケーション・プロトコル・バージョン1は、Oracle ACFS 12cリリース2 (12.2.0.1)で導入されたスナップショットベースのレプリケーション・バージョン2に置き換えられました。

  • SolarisおよびWindowsでのOracle ACFS暗号化のサポート対象外

    Oracle ACFS 20c以降、SolarisおよびMicrosoft Windowsオペレーティング・システムでOracle ACFS暗号化がサポート対象外になりました。

    Oracle SolarisおよびMicrosoft WindowsでのOracle ACFS暗号化は、RSAテクノロジに基づいています。RSAテクノロジのリタイアが通知されました。Linuxでは代替テクノロジを使用するため、Oracle ACFS暗号化はLinuxで引き続きサポートされ、この非推奨に影響を受けません。

  • Oracle ACFSセキュリティ(Vault)およびACFS監査のサポート対象外

    Oracle ACFS 20c以降、Oracle ACFSセキュリティ(Vault)およびACFS監査はサポート対象外になりました。

    採用が制限されたクラスタ機能をサポート対象外にすることにより、オラクル社では、すべての機能の中核となるスケーリング、可用性および管理性の向上に注力できます。Oracle ACFSセキュリティ(Vault)とACFS監査はサポート対象外になりました。

  • Microsoft WindowsでのOracle ACFSのサポート対象外

    Oracle ACFS 20c以降、Oracle ACFSはWindowsでサポート対象外になりました。

    Oracle ACFSは、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)用のOracle Databaseファイル、および複数のホスト間で共有する必要がある汎用ファイル(非構造化データ)の2つの主要なユースケースに使用されます。Oracle Real Application Clustersのファイルの場合、Oracle ASMの使用をお薦めします。汎用ファイルの場合は、ユースケースに応じて、Oracle Database File System (DBFS)にファイルを移動するか、Microsoft Windows共有ファイルにファイルを移動することをお薦めします。

  • Oracle ACFSリモートのサポート対象外

    Oracle ACFS 20c以降、メンバー・クラスタ(ACFSリモート)上のOracle ACFSがサポート対象外になりました。

    メンバー・クラスタ(ACFSリモート)でのOracle ACFSがサポート対象外になりました。採用が制限された特定のクラスタ機能をサポート対象外にすることにより、オラクル社では、すべての機能の中核となるスケーリング、可用性および管理性の向上に注力できます。特定のクラスタ機能を非推奨にし、制限付きの採用とすることにより、オラクル社では、すべての機能の中核となるスケーリング、可用性および管理性の向上に注力できます。

  • クラスタ・ドメイン - メンバー・クラスタのサポート対象外

    Oracle Grid Infrastructure 20c以降、Oracleクラスタ・ドメイン・アーキテクチャの一部であるメンバー・クラスタはサポート対象外になりました。

    採用が制限された特定のクラスタ機能をサポート対象外にすることにより、オラクル社では、すべての機能の中核となるスケーリング、可用性および管理性の向上に注力できます。Oracleクラスタ・ドメインは、ドメイン・サービス・クラスタ(DSC)とメンバー・クラスタで構成されます。メンバー・クラスタは、当初、より大きなクラスタ資産の管理を簡素化し、特定の障害と構成の停止時間を最小限にするために導入されましたが、その間にスタンドアロン・クラスタの改善により、同じ効果が得られ、メンバー・クラスタの使用が不要になっています。その結果として、現在メンバー・クラスタを使用しているお客様には、将来的にスタンドアロン・クラスタの使用をお薦めしています。

関連項目: