72 DBMS_FLASHBACK
DBMS_FLASHBACK
を使用して、指定した時間または指定したシステム変更番号(SCN)にデータベースのバージョンをフラッシュバックできます。
この章のトピックは、次のとおりです:
72.1 DBMS_FLASHBACKの概要
DBMS_FLASHBACK
は、ユーザーが過去の特定の時点でのデータベースを表示するためのインタフェースを提供し、個々のトランザクションの結果を選択して削除できるトランザクション・バックアウト機能も追加されています。データベースを過去の時点に戻すフラッシュバック・データベースとは異なります。
DBMS_FLASHBACK
が有効化された場合、ユーザー・セッションはデータベースのフラッシュバック・バージョンを使用します。また、アプリケーションをデータベースのフラッシュバック・バージョンで実行することができます。
DBMS_FLASHBACK
は、次のような場合に使用できます。
-
自己修復: 誤って表から行を削除してしまった場合、その行をリカバリできます。
-
電子メールおよびボイスメールなどのパッケージ・アプリケーション: フラッシュバックを使用して、現行のメッセージ・ボックスに削除したメッセージを再挿入し、削除した電子メールをリストアできます。
-
意思決定支援システム(DSS)およびオンライン分析処理(OLAP)アプリケーション: データ分析またはデータ・モデリングを実行し、季節的需要の推移を見ることができます。
72.3 DBMS_FLASHBACKのタイプ
次の表に、DBMS_FLASHBACK
によって使用されるタイプを説明します。
表72-1 DBMS_FLASHBACK
タイプ | 説明 |
---|---|
|
トランザクション名またはトランザクション識別子( |
72.4 DBMS_FLASHBACKの例外
DBMS_FLASHBACKでは、次のエラー・メッセージが作成されます。
表72-2 DBMS_FLASHBACKエラー・メッセージ
エラー | 説明 |
---|---|
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指定された時間が古すぎます。 |
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無効なシステム変更番号が指定されました。 |
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ユーザーは、フラッシュバック・モードにおいて、読取り専用またはシリアル化可能トランザクションを開始できません。 |
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ユーザーは、コミットされていないトランザクションにおいてフラッシュバックを有効化できません。 |
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ユーザーは、別のフラッシュバック・セッションにおいてフラッシュバックを有効化できません。 |
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72.5 DBMS_FLASHBACKの操作上のノート
接続切断または別の接続の開始によりセッションが終了すると、DBMS_FLASHBACK
は自動的に無効化されます。
フラッシュバック・モードでオープンされたPL/SQLカーソルは、フラッシュバック時間またはSCNの時点での行を戻します。データベースにおける異なる同時セッション(接続)では、異なる実時間またはSCNに対してフラッシュバックを実行できます。セッションがフラッシュバック・モードで実行されている間は、DMLおよびDDL処理ならびに分散処理を行うことはできません。オープンしているPL/SQLカーソルは、フラッシュバックを無効にしてDMLを実行するまで使用できます。
自動UNDO管理(AUM)モードでは、保存期間コントロールを使用して、必要なデータベース・バージョンを取得するためにどのくらい過去に戻るかを制御できます。過去24時間のフラッシュバックを実行する必要がある場合は、DBAはundo_retention
パラメータを24時間に設定する必要があります。このように、システムはデータの旧バージョンを再生成するのに十分なロールバック情報を保持しています。
UNDO表領域に対しRETENTION
GUARANTEE
句を設定すると、期限切れになっていないUNDOが廃棄されないようにできます。システムの領域が小さくなると、期限切れになっていないUNDOは新たに生成されたUNDOで上書きされる可能性があるため、 UNDO_RETENTION
自体は保証されません。このような状況は、RETENTION
GUARANTEE
によって防ぐことができます。詳細は、Oracle Database管理者ガイドを参照してください。
フラッシュバックが有効化されたセッションでは、SYSDATE
は影響を受けません。引き続き、現在の時間が提供されます。
ログイン・トリガーにおいてDBMS_FLASHBACK
を使用し、アプリケーション・コードを変更せずにフラッシュバックを有効化できます。
72.6 DBMS_FLASHBACKの例
高年齢従業員を削除したことにより、その従業員に提出された人員レポートがすべて削除された場合に、フラッシュバックを使用する方法を次に示します。フラッシュバック機能を使用すると、消失した従業員をリカバリし、再挿入できます。
DROP TABLE employee; DROP TABLE keep_scn; REM -- Keep_scn is a temporary table to store scns that we are interested in CREATE TABLE keep_scn (scn number); SET ECHO ON CREATE TABLE employee ( employee_no number(5) PRIMARY KEY, employee_name varchar2(20), employee_mgr number(5) CONSTRAINT mgr_fkey REFERENCES EMPLOYEE ON DELETE CASCADE, salary number, hiredate date ); REM -- Populate the company with employees INSERT INTO employee VALUES (1, 'John Doe', null, 1000000, '5-jul-81'); INSERT INTO employee VALUES (10, 'Joe Johnson', 1, 500000, '12-aug-84'); INSERT INTO employee VALUES (20, 'Susie Tiger', 10, 250000, '13-dec-90'); INSERT INTO employee VALUES (100, 'Scott Tiger', 20, 200000, '3-feb-86'); INSERT INTO employee VALUES (200, 'Charles Smith', 100, 150000, '22-mar-88'); INSERT INTO employee VALUES (210, 'Jane Johnson', 100, 100000, '11-apr-87'); INSERT INTO employee VALUES (220, 'Nancy Doe', 100, 100000, '18-sep-93'); INSERT INTO employee VALUES (300, 'Gary Smith', 210, 75000, '4-nov-96'); INSERT INTO employee VALUES (310, 'Bob Smith', 210, 65000, '3-may-95'); COMMIT; REM -- Show the entire org SELECT lpad(' ', 2*(level-1)) || employee_name Name FROM employee CONNECT BY PRIOR employee_no = employee_mgr START WITH employee_no = 1 ORDER BY LEVEL; REM -- Sleep for a short time (approximately 10 to 20 seconds) to avoid REM -- querying close to table creation EXECUTE DBMS_LOCK.SLEEP(10); REM -- Store this snapshot for later access through Flashback DECLARE I NUMBER; BEGIN I := DBMS_FLASHBACK.GET_SYSTEM_CHANGE_NUMBER; INSERT INTO keep_scn VALUES (I); COMMIT; END; / REM -- Scott decides to retire but the transaction is done incorrectly DELETE FROM EMPLOYEE WHERE employee_name = 'Scott Tiger'; COMMIT; REM -- notice that all of scott's employees are gone SELECT lpad(' ', 2*(level-1)) || employee_name Name FROM EMPLOYEE CONNECT BY PRIOR employee_no = employee_mgr START WITH employee_no = 1 ORDER BY LEVEL; REM -- Flashback to see Scott's organization DECLARE restore_scn number; BEGIN SELECT scn INTO restore_scn FROM keep_scn; DBMS_FLASHBACK.ENABLE_AT_SYSTEM_CHANGE_NUMBER (restore_scn); END; / REM -- Show Scott's org. SELECT lpad(' ', 2*(level-1)) || employee_name Name FROM employee CONNECT BY PRIOR employee_no = employee_mgr START WITH employee_no = (SELECT employee_no FROM employee WHERE employee_name = 'Scott Tiger') ORDER BY LEVEL; REM -- Restore scott's organization. DECLARE scotts_emp NUMBER; scotts_mgr NUMBER; CURSOR c1 IS SELECT employee_no, employee_name, employee_mgr, salary, hiredate FROM employee CONNECT BY PRIOR employee_no = employee_mgr START WITH employee_no = (SELECT employee_no FROM employee WHERE employee_name = 'Scott Tiger'); c1_rec c1 % ROWTYPE; BEGIN SELECT employee_no, employee_mgr INTO scotts_emp, scotts_mgr FROM employee WHERE employee_name = 'Scott Tiger'; /* Open c1 in flashback mode */ OPEN c1; /* Disable Flashback */ DBMS_FLASHBACK.DISABLE; LOOP FETCH c1 INTO c1_rec; EXIT WHEN c1%NOTFOUND; /* Note that all the DML operations inside the loop are performed with Flashback disabled */ IF (c1_rec.employee_mgr = scotts_emp) then INSERT INTO employee VALUES (c1_rec.employee_no, c1_rec.employee_name, scotts_mgr, c1_rec.salary, c1_rec.hiredate); ELSE IF (c1_rec.employee_no != scotts_emp) THEN INSERT INTO employee VALUES (c1_rec.employee_no, c1_rec.employee_name, c1_rec.employee_mgr, c1_rec.salary, c1_rec.hiredate); END IF; END IF; END LOOP; END; / REM -- Show the restored organization. select lpad(' ', 2*(level-1)) || employee_name Name FROM employee CONNECT BY PRIOR employee_no = employee_mgr START WITH employee_no = 1 ORDER BY LEVEL;
72.7 DBMS_FLASHBACKサブプログラムの要約
この表は、DBMS_FLASHBACK
サブプログラムを示し、簡単に説明しています。
表72-3 DBMS_FLASHBACKパッケージのサブプログラム
サブプログラム | 説明 |
---|---|
セッション全体においてフラッシュバック・モードを無効化します。 |
|
セッション全体においてフラッシュバックを使用できるようにします。SCNをOracleの数値タイプとして使用し、セッションのスナップショットを指定した数値に設定します。フラッシュバック・モードでは、すべての問合せにおいて、指定した実時間またはSCNの時点と一致したデータが戻されます。 |
|
セッション全体においてフラッシュバックを使用できるようにします。スナップショット・タイムは、 |
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現在のSCNをOracleの数値タイプとして戻します。SCNを使用して、特定のスナップショットを格納できます。 |
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トランザクションをバックアウトするためのメカニズムを提供します。 |
72.7.1 DISABLEプロシージャ
このプロシージャは、セッション全体においてフラッシュバック・モードを無効化します。
構文
DBMS_FLASHBACK.DISABLE;
例
次の例では、従業員Joeの2000年8月30日時点での給与を問い合せています。
EXECUTE dbms_flashback.enable_at_time('30-AUG-2000'); SELECT salary FROM emp where name = 'Joe' EXECUTE dbms_flashback.disable;
72.7.2 ENABLE_AT_SYSTEM_CHANGE_NUMBERプロシージャ
このプロシージャは、SCNを入力パラメータとして使用し、セッションのスナップショットを指定した数値に設定します。
フラッシュバック・モードでは、すべての問合せにおいて、指定した実時間またはSCNの時点と一致したデータが戻されます。セッション全体においてフラッシュバックを使用できるようにします。
構文
DBMS_FLASHBACK.ENABLE_AT_SYSTEM_CHANGE_NUMBER ( query_scn IN NUMBER);
パラメータ
表72-4 ENABLE_AT_SYSTEM_CHANGE_NUMBERプロシージャのパラメータ
パラメータ | 説明 |
---|---|
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システム変更番号(SCN)。トランザクションのコミットごとに増分するデータベースのバージョン・ナンバーです。 |
72.7.3 ENABLE_AT_TIMEプロシージャ
このプロシージャは、セッション全体においてフラッシュバックを使用できるようにします。
スナップショット・タイムは、query_time.で指定された時間に最も近いSCNに設定されます。セッション全体においてフラッシュバックを使用できるようにします。
構文
DBMS_FLASHBACK.ENABLE_AT_TIME ( query_time IN TIMESTAMP);
パラメータ
表72-5 ENABLE_AT_TIMEプロシージャのパラメータ
パラメータ | 説明 |
---|---|
|
これは、
|
72.7.4 GET_SYSTEM_CHANGE_NUMBERファンクション
このファンクションは、現在のSCNをOracleの数値データ・タイプとして戻します。現行の変更番号を取得し、後で使用するために保存できます。これは特定のスナップショットの保存に便利です。
構文
DBMS_FLASHBACK.GET_SYSTEM_CHANGE_NUMBER RETURN NUMBER;
72.7.5 TRANSACTION_BACKOUTプロシージャ
このプロシージャは、一連のトランザクションをバックアウトするためのメカニズムを提供します。ユーザーは、トランザクション名またはトランザクション識別子(XIDS
)のいずれかを指定して、これらのプロシージャをコールできます。
このプロシージャは、トランザクションの依存性の分析、DMLの実行およびサブプログラムで実行された操作に対する広範囲なレポートの生成を行います。このプロシージャは、トランザクション・バックアウトの一部として実行されたDMLはコミットしません。ただし、行および表に対する必要なロックを正しい形式で保持するため、他の依存性がシステムに入力されることはありません。変更を永続的なものにするには、明示的にトランザクションをコミットする必要があります。
システム表DBA_FLASHBACK_TRANSACTION_STATE
およびDBA_FLASHBACK_TRANSACTION_REPORT
にレポートが生成されます。
構文
DBMS_FLASHBACK.TRANSACTION_BACKOUT numtxns NUMBER, xids XID_ARRAY, options NUMBER default NOCASCADE, timeHint TIMESTAMP default MINTIME); DBMS_FLASHBACK.TRANSACTION_BACKOUT numtxns NUMBER, xids XID_ARRAY, options NUMBER default NOCASCADE, scnHint TIMESTAMP default 0 ); DBMS_FLASHBACK.TRANSACTION_BACKOUT numtxns NUMBER, txnnames TXNAME_ARRAY, options NUMBER default NOCASCADE, timehint TIMESTAMP MINTIME ); DBMS_FLASHBACK.TRANSACTION_BACKOUT numtxns NUMBER, txnNames TXNAME_ARRAY, options NUMBER default NOCASCADE, scnHint NUMBER 0);
パラメータ
表72-6 TRANSACTION_BACKOUTプロシージャのパラメータ
パラメータ | 説明 |
---|---|
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入力として渡されたトランザクションの数。 |
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配列の形式でのトランザクション識別子のリスト。 |
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配列の形式でのトランザクション名のリスト。 |
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次のように、依存しているトランザクションをバックアウトします。
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トランザクションの開始に関する時間ヒント。 |
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トランザクションの開始に関するSCNヒント。 |
使用上のノート
ノート:
TRANSACTION_BACKOUT
を使用する際の制限については、『Oracle Database開発ガイド』のフラッシュバック・トランザクションの使用に関する項を参照してください。
-
トランザクション名を使用する場合は、時間ヒントを指定する必要があります。時間ヒントは、指定したすべてのトランザクションがバックアウトを開始する前の時間にする必要があります。
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SCNヒントを指定する場合、その値は、指定した入力セット内で最も古いトランザクションの開始前にする必要があり、それ以外の値では、エラーが発生してプロシージャが終了します。指定せず、トランザクションがUNDO保存内でコミットされた場合は、データベース・システムで開始時刻を特定できます。