6 ポリシーベースのスケーリング
ポリシーベースのスケーリングとは
WLDFには2つのエラスティック・アクション、スケール・アップおよびスケール・ダウンが用意されており、スケーリング操作を実行するポリシーに割り当てることができます。スケール・アップおよびスケール・ダウン・アクションの詳細は、「エラスティック・アクション」を参照してください。1つのスケーリング・アクションのみ、指定のポリシーに割り当てることができます。
たとえば、例6-1は、起動するとスケール・アップ・アクションを実行するポリシーを作成、構成するWLSTコマンドを示しています。次の点に注意してください。
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スケール・アップ・アクション
scaleUpが作成されます。このアクションは、動的クラスタDynamicClusterを、サーバー・インスタンス1つのみスケール・アップするように構成されます。 -
highMarkという名前のポリシーが、10秒ごとに評価されるように構成されます。 -
ポリシーが起動される、つまり
trueと評価されると、対応するスケール・アップ・アクションが実行されます。
同様に、例6-2は、起動するとスケール・ダウン・アクションを実行するポリシーの構成を示しています。次の点に注意してください。
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スケール・ダウン・アクション
scaleDownが作成されます。このアクションは、動的クラスタDynamicClusterを、サーバー・インスタンス1つのみスケール・ダウンするように構成されます。 -
LowMarkという名前のポリシーが、10秒ごとに評価されるように構成されます。 -
ポリシーが起動される、つまり
trueと評価されると、対応するスケール・ダウン・アクションが実行されます。
例6-1 動的クラスタをスケール・アップするポリシーの作成
scaleUp=wn.lookupScaleUpAction('scaleUp')
if scaleUp == None:
print "Creating scale up action"
scaleUp=wn.createScaleUpAction('scaleUp')
scaleUp.setScalingSize(1)
scaleUp.setClusterName(DynamicCluster)
high=wn.createWatch('highMark')
high.setExpressionLanguage('EL')
high.getSchedule().setMinute('*')
high.getSchedule().setSecond('*/10')
high.getRuleType()
high.setAlarmType('AutomaticReset')
high.setAlarmResetPeriod(150000)
high.setRuleExpression("wls:ClusterHighThroughput('"+DynamicCluster+"', '10s', '30s', 250, 60)")
high.addNotification(scaleUp)
high.setEnabled(true)
例6-2 動的クラスタをスケール・ダウンするポリシーの作成
scaleDown=wn.lookupScaleDownAction('scaleDown')
if scaleDown == None:
print "Creating scale down action"
scaleDown=wn.createScaleDownAction('scaleDown')
scaleDown.setScalingSize(1)
scaleDown.setClusterName(DynamicCluster)
low=wn.createWatch('lowMark')
low.setExpressionLanguage('EL')
low.getSchedule().setMinute('*')
low.getSchedule().setSecond('*/10')
low.getRuleType()
low.setAlarmType('AutomaticReset')
low.setAlarmResetPeriod(60000)
low.setRuleExpression("wls:ClusterLowThroughput('"+DynamicCluster+"', '10s', '60s', 50, 75)")
low.addNotification(scaleDown)
low.setEnabled(true)
ノート:
動的クラスタの自動拡張度を構成するには、スケーリング・ポリシーとそれに対応するエラスティック・アクションを定義したドメイン・スコープの診断システム・モジュールを作成し、その診断モジュールのターゲットを管理サーバーに設定する必要があります。
スマート・ルールの導入
スマート・ルールは、一連の設定可能パラメータを持ち、その設定可能パラメータの値を指定することで複合ポリシー式を作成できるようにする、事前パッケージ済のファンクションです。
スマート・ルールは、単独で、または複合ポリシー式を作成するために他の述語とともに、ポリシー式内で述語として使用できます。スマート・ルールのポリシー式は、Java Expression Language (EL)を使用して指定されます。『Oracle WebLogic Server診断フレームワークの構成と使用』のスマート・ルールベースのポリシーの構成に関する項を参照してください。
ポリシーベースのスケーリングでは、スマート・ルールが使用できます。「ポリシーベースのスケーリング例」では、スマート・ルールのwls:ClusterHighThroughput()およびwls:ClusterLowThroughput()をルール式で使用するポリシーの使用方法を説明します。これら2つのスマート・ルールは、例6-1および例6-2でも示しています。
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例6-1は、
wls:ClusterHighThroughput()スマート・ルールを示しています。このスマート・ルールは、各管理対象サーバーのThreadPoolRuntimeMBean.Throughput属性の平均値によって示される、クラスタにおける平均スループットが増大しているかどうかを測定します。例に示されているように、このスマート・ルールは、動的クラスタ
DynamicCluster内の少なくとも60パーセントのサーバーにおいて、10秒間隔で収集した過去30秒の平均Throughput値が250以上の場合に起動されます(つまりtrueと評価されます)。このスマート・ルールが起動されると、スケール・アップ・アクションscaleUpが実行され、クラスタでサーバー・インスタンスが起動されます。 -
例6-2は、
wls:ClusterLowThroughput()スマート・ルールを示しています。このスマート・ルールは、各管理対象サーバーのThreadPoolRuntimeMBean.Throughput属性の平均値によって示される、クラスタにおける平均スループットが減少しているかどうかを測定します。例に示されているように、このスマート・ルールは、動的クラスタ
DynamicCluster内の少なくとも75パーセントのサーバーにおいて、10秒間隔で収集した過去60秒の平均Throughput値が50未満の場合に起動されます(つまりtrueと評価されます)。このスマート・ルールが起動されると、スケール・ダウン・アクションscaleDownが実行され、クラスタでサーバー・インスタンスが停止されます。
スマート・ルールベースのポリシーの作成および構成の詳細は、次を参照してください。
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WebLogic Server管理コンソールを使用して、Oracle WebLogic Server管理コンソール・オンライン・ヘルプの診断システム・モジュールに対するスマート・ルール・ベースのポリシーの作成を参照してください
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『Oracle WebLogic Server診断フレームワークの構成と使用』のスマート・ルール・リファレンスに関する項を参照してください。
ポリシーベースのスケーリング例
wls:HighThroughput()およびwls:LowThroughput()スマート・ルールを使用して高負荷時に動的クラスタをスケール・アップし、要求が減少したら動的クラスタをスケール・ダウンするポリシーを作成できます。
前提条件
正常にこの例を実行するには、先に環境を準備して、この例で使用する必要なファイルをダウンロードします。
この項では、次のタスクを取り上げます。
必要なソフトウェアのインストール
この例を実行するには、次のソフトウェアをダウンロードしてインストールします。
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Oracle WebLogic Server—手順および詳細は、『Oracle WebLogic ServerおよびCoherenceのインストールと構成』の「Oracle WebLogic ServerとCoherenceのソフトウェアのインストール」を参照してください。
ノート:
この例のためにWebLogic Serverをインストールして使用するには、有効なJDK 8がある必要があります。『Oracle WebLogic Serverの新機能』のJDK 8認定に関する項を参照してください。
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Apache HTTPサーバー - サポートされているApache HTTPサーバーのインストール環境があることを確認します。https://www.oracle.com/technetwork/middleware/ias/downloads/fusion-certification-100350.htmlを参照してください。
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WebLogic Server対応のApache HTTPサーバー2.2.xプラグインは、My Oracle Support (http://support.oracle.com)およびSoftware Delivery Cloud (http://edelivery.oracle.com)のWebサイトから、必要なバイナリ・ファイルおよびヘルパー・ファイルを含むzipファイルとしてダウンロードできます。Apache HTTPサーバーのプラグインを構成する方法の詳細は、Apache HTTPサーバー・プラグインの構成に関する項を参照してください。
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Apache JMeter - Apache JMeterは、
http://jmeter.apache.org/download_jmeter.cgiから、説明を表示してダウンロードおよびインストールできます。
必要なファイルのダウンロードと解凍
拡張度デモのJARファイルは、次の場所にあるWebLogic Serverブログの記事動的クラスタの拡張度からダウンロードできます。
https://cdn.app.compendium.com/uploads/user/e7c690e8-6ff9-102a-ac6d-e4aebca50425/92a4be11-24be-41af-a122-be88dcc2684d/File/bd70c19e88c1927f0919d42171cbfe2b/wls_elasticity_demo.zip
この例で使用する拡張度JARから、次のファイルを解凍します。
ノート:
同じディレクトリに、次のファイルをすべて保存します。この例では、このディレクトリをDEMO_HOMEと呼びます。
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create-domainスクリプト - このスクリプトによってこの例のドメインが作成されます。 -
Elasticity5MinuteDemo.jmx- この例で使用するJMeterテスト・プラン。 -
Elasticity1HourDemo.jmx- オプションの、より長いJMeterテスト・プラン。
環境の設定
WebLogic ServerをORACLE_HOMEディレクトリにインストールしたら、setWLSEnvスクリプト・コマンドを実行して、この例に環境変数を設定します。
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コマンド・ウィンドウを開きます。
ノート:
Windowsシステム上でこのデモを実行する場合、管理者権限が必要になる場合があります。その場合は、次のとおりにコマンド・ウィンドウを開きます。
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「起動」をクリックします。
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コマンド・プロンプトを右クリックして「管理者として実行」を選択します。
「スタート」メニューに「コマンド プロンプト」がない場合、「検索」フィールドに
「コマンド」と入力し、「コマンド プロンプト」を右クリックします。 -
求められたら、管理者の資格証明を入力します。
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コマンド・ウィンドウで、
ORACLE_HOME/wlserver/server/binディレクトリに移動します。 -
setWLSEnvスクリプトを実行します。たとえば:Windows:
ORACLE_HOME\wlserver\server\bin> setWLSEnv.cmdUnix:
prompt> sh setWLSEnv.sh
ドメインとそのリソースの作成
create-domainスクリプトを使用してドメインを作成すると、この例のために、次のようにドメインが設定されます。
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elasticity_domainドメインとディレクトリを作成します。 -
動的クラスタ
DynamicClusterと4つの動的サーバーDynamicCluster-1、DynamicCluster-2、DynamicCluster-3およびDynamicCluster-4を作成し、構成します。 -
スマート・ルールベースのポリシー
highMarkとlowMark、およびエラスティック・アクションscaleDownとscaleUpを作成して構成します。
ドメインを作成するには:
Apache Webサーバーの構成と起動
Apache HTTPサーバーおよびApache HTTPサーバーのプラグインのインストール後、次の詳細を使用してhttpd.confファイルを構成してください。
LoadModule weblogic_module /home/myhome/weblogic-plugins/lib/mod_wl.so
また、WebLogicクラスタと、そのクラスタ内の管理対象サーバーのすべてのポートを指定します。かわりにクラスタのDNS名を指定することもできます。たとえば:
<IfModule mod_weblogic.c>
WebLogicCluster localhost:8001,localhost:8002
</IfModule>
<Location>
SetHandler weblogic-handler
</Location>Apache Webサーバーの起動
Apacheのbinディレクトリで次のコマンドを使用して、Apache Webサーバーを起動します。
httpd.exesudo systemctl start httpd動的サーバーの構成とアクティビティの表示
start-serversスクリプトを実行すると、次のWebLogic Serverインスタンスが起動します。
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管理サーバー
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DynamicClusterという名前が付いた、動的クラスタにある次の2つのサーバー・インスタンス:-
DynamicCluster-1 -
DynamicCluster-2
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WebLogic Server管理コンソールかFusion Middleware Controlを使用して、DynamicClusterの構成と、クラスタ内で実行中デモとして現在実行中のサーバー・インスタンスの数を表示できます。
たとえば、WebLogic Server管理コンソールにDynamicClusterを表示するには、次のようにします。
『Oracle WebLogic Serverサーバーの起動と停止の管理』のサーバーの起動と停止に関する項を参照してください。
監視ダッシュボードを使用したスケーリング操作の監視
JMeterでテスト・プランを起動したら、WebLogic Server管理コンソールの管理ダッシュボードを使用して、JMeterテストにより生成されるサーバー・アクティビティを表示できます。実行中のサーバー・インスタンス数が負荷に応じて4までランプアップすることを確認できます。シナリオが完了すると、追加のインスタンスは、最小実行サーバー・インスタンス数の2つに達するまでスケール・ダウンされます。このシナリオ全体は、5分間続きます。
モニタリング・ダッシュボードにアクセスするには:
図6-3で、次に注目してください。
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上部の4つのグラフに、管理対象サーバー・インスタンス
DynamicCluster-1、DynamicCluster-2、DynamicCluster-3およびDynamicCluster-4に関するスループットが表示されています。 -
上2つのグラフに表示されているサーバー・インスタンス
DynamicCluster-1およびDynamicCluster-2は、スループットのスパイクが2:42:00頃に始まっています。 -
DynamicCluster-3のグラフは、サーバー・インスタンスDynamicCluster-1およびDynamicCluster-2でスループットのスパイクが発生したときにこの第3のサーバーが起動されたことを示しています。 -
下部のグラフは、クラスタ内のアクティブな管理対象サーバーの数(
ClusterRuntimeMBeanインスタンスのAliveServerCount属性の値)を示しています。このグラフは、第3および第4のサーバー・インスタンスがいつ頃に起動されたかを示しています。 -
第3のサーバー・インスタンス
DynamicCluster-3は、2:42:00と2:43:30の間に起動されました。 -
第4のサーバー・インスタンス
DynamicCluster-4は、最初の3つのサーバー・インスタンスにおけるスループットの増加と軌を一にして、2:46:00の直後に起動されたことに注目してください。 -
新しいサーバー・インスタンスが起動されると、他のサーバー・インスタンス上のスループットが、それに対応して低下することに注目してください。


