1 概要

Fusion Middlewareドメイン・テンプレートおよび拡張テンプレートは、Javaアーカイブ(JAR)ファイルです。これに該当するJARファイルには、WebLogicドメインの作成や拡張に必要なファイルとスクリプトが格納されています。

この章のトピックは、次のとおりです:

テンプレートのタイプ

WebLogic Serverのインストール時に、テンプレート・タイプごとに特定のタスクを実行します。既存のテンプレートから、カスタムのテンプレートを作成することもできます。

テンプレートには次の種類があります。

  • ドメイン・テンプレート: ドメイン内のすべてのリソースのセットを定義しているテンプレート。インフラストラクチャ・コンポーネント、アプリケーション、サービス、セキュリティ・オプション、および環境とオペレーティング・システムの一般的なオプションを含みます。

    WebLogic Server製品をインストールすると、事前定義済の基本WebLogic Serverドメイン・テンプレートがインストールされます。このテンプレートには、管理サーバーや基本的な構成情報など、WebLogicドメイン内の中核的なリソース・セットが定義されています。基本WebLogic Serverドメイン・テンプレートの詳細は、「基本WebLogic Serverドメイン・テンプレート」を参照してください

    ドメイン・テンプレート・ビルダーまたはpackコマンドを使用して、既存のドメインからカスタム・ドメイン・テンプレートを作成できます。

  • 拡張テンプレート: 既存のドメインに追加できるアプリケーションやサービスを定義しているテンプレート。製品コンポーネント機能とJDBCやJMSなどのリソースを含みます。

    WebLogic Server製品をインストールすると、事前定義済の拡張テンプレートがいくつかインストールされます。インストールする製品によって、構成ウィザードで使用できるテンプレートが異なります。WebLogic Serverのインストールには、「WebLogic Serverテンプレート」で説明しているテンプレートが含まれます

    ドメイン・テンプレート・ビルダーを使用して、既存のドメインまたはテンプレートからカスタム拡張テンプレートを作成できます。

  • 管理対象サーバー・テンプレート: リモート・マシン上での管理対象サーバー・ドメインのディレクトリ作成に必要な、ドメイン内のリソースのサブセットを定義します。

    packコマンドを使用すると、カスタム管理対象サーバー・テンプレートを作成できます。PackおよびUnpackコマンドによるテンプレートとドメインの作成Packコマンドに関する項を参照してください。

  • 再構成テンプレート: 以前のWebLogic ServerバージョンからWebLogicドメインをアップグレードしている場合は自動的に実装されます。WebLogic Advanced Web Services for JAX-WSなどの現在インストールされている製品が、アップグレードするドメインとの互換性のために更新を必要とする場合は、再構成テンプレートが提供され、製品が自動的に現在のリリースと互換性を持つように(たとえば製品の新機能を実装するなど)されます。『Oracle WebLogic Serverのアップグレード』グラフィカル・モードでのWebLogicドメインの再構成に関する項の説明に従って再構成ウィザードを実行すると、ウィザードはインストールされているすべての製品を自動的に検出し、各製品に利用可能な再構成テンプレートがあるかどうかを特定し、次に再構成テンプレートを適用してその製品を更新します。

    また、再構成テンプレートは、SOAおよびWeb CenterなどのFusion Middleware構成ウィザードを介して構成されるすべてのFusion Middleware製品に対しても提供されます。この機能により、WebLogic Serverの新しいリリースにアップグレードする際にFusion Middleware製品のドメインを更新できます。

    再構成テンプレートのJARファイル名は、base_template_name_reconfig_versionになります。たとえば、Web Services for JAX-WSテンプレートはwls_webservices_jaxws.jarで、WebLogic Server 12.1.2の関連する再構成テンプレートはwls_webservices_jaxws_reconfig_12.1.2.jarになります。

WebLogic Serverテンプレートのインストール先

事前定義済のテンプレートは、WebLogic Server製品をインストールしたディレクトリ内に配置されます。

事前定義済テンプレートの場所の詳細は、表1-1を参照してください。

次の表は、WebLogic Serverのインストールにより提供される事前定義済のテンプレートJARファイルの場所を示しています。ORACLE_HOMEはインストール・ディレクトリ、WL_HOMEは製品インストール・ディレクトリ内のWebLogic Serverディレクトリです。

表1-1 テンプレートの場所

テンプレートのタイプ ディレクトリの場所

WebLogic Serverドメイン、拡張および再構成

WL_HOME\common\templates\wls

Fusion Middleware拡張および再構成

ORACLE_HOME\oracle_common\common\templates\wls

ORACLE_HOME\PRODUCT_HOME\common\templates\wls

テンプレート・ツール

テンプレート・ツールは、テンプレートの作成に役立ちます。また、ドメインの作成や拡張にテンプレートを使用する際にも役立ちます。

次の表に、これらのツールの詳細を示します。

表1-2 テンプレート・ツール

目的 このツールを使用

ドメインの作成

既存のドメインの拡張

リモート・マシンでの新しい管理対象サーバー・ドメインの作成

ドメイン・テンプレートの作成

拡張テンプレートの作成

ドメイン・テンプレート・ビルダー

ドメイン・テンプレート・ビルダーを使用したドメイン・テンプレートの作成Domain Template Builderを使用した拡張テンプレートの作成を参照してください

管理対象サーバー・テンプレートの作成

  • WLST writeTemplateコマンド(オンライン)

  • packコマンド

    PackおよびUnpackコマンドによるテンプレートとドメインの作成Packコマンドに関する項を参照してください。

ドメインのアップグレード

再構成ウィザード

Oracle WebLogic ServerのアップグレードWebLogicドメインの再構成を参照してください。

ノート:

ドメインの作成や拡張に使用されるすべてのツールは、構成フレームワークと呼ばれる基礎となる共通インフラストラクチャを利用します。

テンプレート依存

拡張テンプレートからリソースを追加するには、WebLogic Serverリソースがドメインに設定されていることが必要になります。この依存関係が、テンプレート依存です。

たとえば、製品とともに提供されるすべての拡張テンプレートは、最低限、基本WebLogic Serverドメイン・テンプレートにより構成されたセキュリティ・レルム・リソースおよび管理サーバーに依存します。他の拡張テンプレートは複数のテンプレートからのリソースに依存します。たとえば、WebLogic Serverサンプルをサポートするためにドメインを拡張するには、既存のドメインにすでに基本WebLogic Serverドメイン・テンプレートおよびWebLogic Serverデフォルト・ドメイン拡張テンプレートからのリソースが含まれている必要があります。

テンプレートJAR内のtemplate-info.xmlファイルは、特定のテンプレートにとってのテンプレート依存関係を定義します。依存関係は連鎖します。たとえば:

  • テンプレートAは、そのtemplate-info.xmlファイルでテンプレートBおよびテンプレートCへの依存を定義しています。

  • テンプレートBは、そのtemplate-info.xmlファイルでテンプレートDおよびテンプレートEへの依存を定義しています。

  • テンプレートCは、そのtemplate-info.xmlファイルでテンプレートFへの依存を定義しています。

この例では、構成ウィザードの「テンプレート」画面でテンプレートAを選択すると、テンプレートB、C、D、EおよびFがドメインに自動的に追加されます。これらのテンプレートが1つでも「テンプレート」画面に表示されている場合は、それらのテンプレートのチェック・ボックスが自動的に選択されています。これにより、「テンプレート」画面で製品テンプレートを選択すると、選択した製品に必要なリソースを構成する他のすべての製品テンプレートが、構成ウィザードによって必ず自動的にドメインに追加されます。

同様に、WebLogic Scripting Tool (WLST)スクリプトでテンプレートJARを指定すると、そのテンプレートが(直接的であれ間接的であれ)依存する他のテンプレートがすべてドメインに追加されます。同じ例に基づき、WLSTスクリプトでテンプレートAを指定すると、テンプレートB、C、D、EおよびFもドメインに追加されます。スクリプトで明示的に指定する必要はありません。

テンプレートに含まれるファイル

ドメインは、テンプレートに含まれている基本ファイルと追加ファイルに基づいて作成または拡張されます。

どのテンプレートにも含まれる基本的なファイルはconfig.xmlおよびtemplate-info.xmlです。次の表では、ドメイン・テンプレートまたは拡張テンプレートに含まれているファイルについて説明します。

表1-3 テンプレートに含まれるファイル

ファイル名 説明

製品コンポーネント・ファイル

個別のOracle製品コンポーネントでドメイン設定を完了するために使用される様々なファイル。このようなファイルでは、セキュリティとデフォルト・データベース設定用の情報が提供されることがあります。

*-jdbc.xml

製品コンポーネントで必要とされるJDBCシステム・リソースでドメインを設定または拡張します。テンプレートで、*-jdbc.xmlファイルはconfig\jdbcディレクトリに格納する必要があります。ドメイン内の各JDBCリソースに対して1つのXMLファイルがあります。これらのファイルは、ドメイン内にJDBCリソースがある場合のみ存在します。

*-jms.xml

製品コンポーネントで必要とされるJMSシステム・リソースでドメインを設定または拡張します。ドメインにJMSリソースが必要な場合は、テンプレートで、*-jms.xmlファイルはconfig\jmsディレクトリに格納する必要があります。ドメイン内の各JMSリソースに対して1つのXMLファイルがあります。これらのファイルは、ドメイン内にJMSリソースがある場合のみ存在します。

clusters.script

構成ウィザード・フレームワークにおけるクラスタのデフォルトの自動構成を変更するために使用されます。デフォルトでは、リソースはクラスタにターゲット指定されています。クラスタからリソースを割当て解除してから別のコンポーネントに割り当てることができます。ターゲットを指定するには、次の置換変数を使用できます。

  • %AManagedServer%—任意の管理対象サーバー

  • %AllManagedServers%—すべての管理対象サーバーのカンマ区切りのリスト

  • %AdminServer%—管理サーバー名

  • %Cluster%—クラスタ名

  • %ProxyServer%—プロキシ・サーバー名

  • %HTTPProxyApp%—httpプロキシ・アプリケーション定義

ノート: 次の追加の考慮事項を確認してください:
  • 置換される予定のオブジェクトの名前属性を使用する必要があります。

  • 「すべて」を意味するワイルドカードとしてアスタリスク(*)を使用できます。

このファイルは必要ありません。使用するときは、scriptディレクトリに配置する必要があります。このファイルが存在しない場合、デフォルトのターゲット指定が使用されます。

テンプレートにconfig-groups.xmlファイルが含まれている場合、clusters.scriptファイルは無視されます(存在する場合)。

config.xml

テンプレートがドメインに作成または追加するリソースが定義されるファイル。テンプレートでは、config.xmlファイルはconfigディレクトリに格納する必要があります。

config-groups.xml

このファイルには、アプリケーション、サービス、サーバー、クラスタ、およびこれらのアイテム間の関連を作成するマッピングの定義が含まれます。これによって、1つのトポロジから別のトポロジに遷移するとき(1つのサーバーから複数のサーバーへの遷移、1つのサーバーから1つのクラスタへの遷移など)、機能的に関連するアプリケーションおよびサービスが単一の処理として動作できるようになります。これによって、ドメイン構成を拡張するときにアプリケーションとサービスの依存関係すべて合致することが保証されます。

ノート: このファイルは決して変更しないでください。テンプレートで提供された状態のまま使用する必要があります。

アプリケーション・グループまたはサービス・グループ(あるいはその両方)は、アプリケーションおよびサービスに関連する機能セットを指定します。アプリケーションおよびサービスは、特定のサーバーまたはクラスタ上でグループ化されます。

ドメイン・トポロジ・セクションには、サーバーの定義や、固有のサーバーまたはグループ、あるいはサーバーやクラスタへのアプリケーションおよびサービスのターゲット指定が含まれます。これには次の定義が含まれます。

  • サーバー・グループ定義—アプリケーションとサービスのセットに関連した機能を含むサーバーを指定します。これによって、自動でクラスタを作成できるようになります。

  • クラスタ・グループ定義—アプリケーションとサービスのセットに関連した機能を含むクラスタを指定します。これによって、自動でクラスタを作成できるようになります。

  • アプリケーション/サービス・グループ・マッピング定義—アプリケーション/サービス・グループ名を介して、アプリケーション・グループまたはサービス・グループ(あるいはその両方)を固有のサーバー、サーバーのグループ、またはクラスタにターゲット指定します。

WebLogic Server 12.1.2の時点では、ドメイン・トポロジ・セクションにより、コンパクトおよび拡張ドメイン・プロファイルに対して別個のサーバー・グループ、起動グループ、およびアプリケーションまたはサービス・グループのマッピング定義を定義できます。ドメイン・プロファイルの詳細は、「config-groups.xmlおよびstartup-plan.xml」を参照してください

config-mapping.xml

このファイルは、名前または値ペアを使用して、デプロイメント・プラン内で定義されたカスタム変数に動的に値を割り当てるために使用されます。

database.xml

このファイルは、JDBCデータ・ソース定義が必要なFusion Middleware製品テンプレートにのみ含まれます。これによって、データ・ソースは、Oracleリポジトリ作成ユーティリティ(RCU)を介してデータをデータベース・オブジェクトへ構成およびロードするのに必要なコンポーネント・スキーマへグループ化されます。また、適用可能なデータベース・ベンダーおよびドライバも含まれるため、Fusion Middleware構成ウィザードではサポートされていないデータベースを選択する可能性がなくなります。

ノート: このファイルは決して変更しないでください。テンプレートで提供された状態のまま使用する必要があります。

file-definition.xml

Fusion Middleware製品テンプレートにのみ適用されます。ドメイン作成または拡張時に実行されるファイル・コピーおよび文字列置換操作を定義します。

jdbc.index

データベースの設定に使用されるSQLスクリプトの場所を特定します。ファイルには、実行が必要な順序でスクリプトがリストされています。目的のスクリプトがテンプレートに含まれていない場合でも、そのスクリプトが製品のインストール・ディレクトリ内に存在する場合は、スクリプトを指定するパス名の中で、次のようにティルダ(~)文字を使用することで製品のインストール・ディレクトリを表します。

~/integration/common/dbscripts/oracle/reporting_runtime.sql

具体的には、このティルダはstringsubs.xmlファイル内の$USER_INSTALL_DIR$変数に指定されたディレクトリ・パスを表します。

テンプレートでは、jdbc.indexファイルは_jdbc_\dbtype\dbversionディレクトリに格納する必要があります。dbtypeはOracleなどのデータベースのタイプ、dbversionは9iなどのデータベース・バージョンを示します。

データ・ソースに関連するSQLファイルのリストのほか、jdbc.indexファイルには、データ・ソースに関連付けられたカテゴリ情報が含まれます。利用可能なデフォルトのdbCategoriesは以下のとおりです。

  • p13nDataSourceデータ・ソースに関連付けられたP13Nデータベース・オブジェクトのドロップ/作成カテゴリ。このデータ・ソースはp13n.jarドメイン・テンプレートの一部です。

  • p13nDataSourceデータ・ソースに関連付けられたPortalデータベース・オブジェクトのドロップ/作成カテゴリ。このデータ・ソースはwlp.jarドメイン・テンプレートの一部です。

  • appsGroupSpaceDataSourceデータ・ソースに関連付けられたGroupSpaceデータベース・オブジェクトのドロップ/作成カテゴリ。このデータ・ソースはwlp_groupspacedb.jarドメイン・テンプレートの一部です。

これらのすべてのテンプレートjarファイルは、WL_HOME\common\templates\applicationsディレクトリにあります。

jvm-config.xml

このファイルは、WebSphere環境のFMW製品インストール専用で、WebLogic Server環境では無視される可能性があります。

security.xml

ドメイン・リソースへのIDとアクセスを確立するユーザー・グループとロールを作成するために使用されます。デフォルトのAdminユーザーはドメイン・テンプレートのsecurity.xmlファイルからのみ作成できます。ただし、ドメインまたは拡張テンプレートのいずれかに含まれているsecurity.xmlファイルによってユーザー・グループとロールを作成できます。

startscript.xml

ドメインのルート・ディレクトリおよびbinディレクトリに配置される*.cmdおよび*.shファイルを作成するために使用します。

startup-plan.xml

ドメイン・レベルまたはサーバー・グループ・レベルで、WebLogic Serverインスタンスの起動パラメータを定義します。このファイルでは、次の1つ以上の起動パラメータが定義されます。

  • 環境変数

  • Javaシステム・プロパティ

  • Javaプロトコル・ハンドラ

  • WLS PRE_CLASSPATH

  • WLS POST_CLASSPATH

  • Javaライブラリ・パス

  • WLS JVM初期ヒープ・サイズ

  • WLS JVM最大ヒープ・サイズ

  • WLS JVM Permanentサイズ

  • WLS JVM最大Permanentサイズ

  • その他のjava引数

テンプレートでコンパクト・ドメインと拡張ドメインの両方のプロファイルを定義する場合は、別個の起動パラメータ定義のグループが各プロファイル・タイプに対して1つ定義されます。ドメインに使用される起動パラメータは、コンパクト・ドメインと拡張ドメインのどちらを作成するかによって異なる場合があります。ドメイン・プロファイルと起動グループの詳細は、「config-groups.xmlおよびstartup-plan.xml」を参照してください

stringsubs.xml

ドメイン作成または拡張時に文字列置換を受け取る文字列置換値とファイルを特定します。文字列置換を受け取るファイルは、置換変数とともに準備されている必要があります。ドメイン作成時または拡張時に、構成ウィザード・フレームワークはマクロを実行し、WL_HOME\common\lib\macrorules.xml (WL_HOMEはWebLogic Serverインストール・ディレクトリ)からの情報に基づいて適切な文字列置換により変数を置き換えます。

template-info.xml

テンプレート名、ソフトウェア・バージョン、テンプレートのタイプ(ドメインまたはアプリケーション)、作成者、説明などのテンプレート識別情報を提供します。このファイルには、(該当する場合)テンプレート依存情報も含まれます。

was-variable.xml

このファイルは、WebSphere環境のFMW製品インストール専用で、WebLogic Server環境では無視されます。

config-groups.xmlおよびstartup-plan.xml

これらのファイルは、多数のテンプレートに含まれています。config-groups.xmlファイルは、1つ以上のドメイン・トポロジ・プロファイル、アプリケーション・サービス・グループ、サーバー・グループおよびアプリケーション・サービス・マッピングを定義します。startup-plan.xmlファイルでは、グローバル(ドメイン全体)レベルまたはサーバー・グループ・レベルでサーバー起動パラメータを定義します。

複数のテンプレートを使用してドメインを作成する場合、ドメインに含まれるすべてのテンプレートのconfig-group.xmlファイルを使用して、そのドメインのconfig-groups.xmlファイルが作成されます。

同様に、ドメインに含まれるすべてのテンプレートのstartup-plan.xml ファイルがマージされて、そのドメインのstartup-plan.xmlファイルが作成されます。ドメイン作成時に、マージされた起動プランが使用され、そのドメインに適切なスクリプトが生成されます。

マージされたconfig-groups.xmlおよびstartup-plan.xmlファイルは、ドメインのinit-infoディレクトリに格納されます。

ノート:

init-infoディレクトリ内のconfig-groups.xmlファイルまたはstartup-plan.xmlファイルは、手動で編集しないでください。

以降のセクションでは、これらのアイテムの詳細と、ドメイン内でそれらがどのように協働するかについて説明します。

ドメイン・トポロジ・プロファイル

ドメインには、拡張(クラスタ化)またはコンパクト(単一インスタンス・サーバー)のドメイン・トポロジがあります。デフォルトでは、ドメインは拡張ドメインとして作成されます。コマンドラインからFusion Middleware構成ウィザードを実行する場合、ウィザードの画面で、ドメインのトポロジとして拡張またはコンパクトのいずれかを選択できます。『構成ウィザードによるWebLogicドメインの作成』CONFIG_JVM_ARGS環境変数の設定に関する項を参照してください。

ドメイン・プロファイルは一部のFusion Middleware製品テンプレートでのみ定義されるため、WebLogic ServerにFusion Middleware製品がインストールされていないドメインには適用しないでください。

ノート:

また、WLSTを使用してドメインを作成する場合は、ドメイン・トポロジ・プロファイルを指定することもできます。WebLogic Server WLSTコマンド・リファレンスcreateDomainおよびreadTemplateに関する項を参照してください。

いくつかのグラフィカル・インタフェースでは、適切なプロファイルが自動的に構成されます。たとえば、JDeveloperドメイン作成ユーティリティを使用してドメインを作成する場合、ドメインはコンパクト・プロファイルで作成されます。Fusion Middleware構成ウィザードを使用してドメインを作成する場合、デフォルトではドメインは拡張プロファイルで作成されます。

Fusion Middleware製品テンプレートのconfig-groups.xmlファイル内にある<domain-topology>要素のprofile属性で、ドメインのドメイン・プロファイルを定義できます。ドメイン・プロファイルは、コンパクトまたは拡張のいずれかです。<domain-topology>でカスタム・プロファイルと拡張プロファイルを別個に定義しない場合、<domain-topology>で定義される構成は、両方のタイプのドメインに使用されます。

ドメイン・プロファイルでは、次のものが定義されます。

  • プロファイルのサーバー・グループ

  • 管理サーバーが属するサーバー・グループ。管理サーバー・グループは、ユーザーが展開できません。

  • サーバー・グループをユーザーが展開可能かどうか、つまりユーザーが管理対象サーバーをそれに割り当てることができるかどうか。ただし、サーバー・グループをユーザーが展開可能ではない場合でも、サーバー・グループにすでに割り当てられた既存のサーバーをクローニングすることで、管理対象サーバーをサーバー・グループに割り当てることができます。

    ノート:

    ドメイン内のユーザーが展開可能なサーバー・グループをすべてリストするには、WLSTオフライン・コマンドlistServerGroups()を使用します。

  • 各定義済サーバー・グループにターゲット指定されたアプリケーション・サービス・グループ。そのターゲットを継承するサーバー・グループに割り当てられるすべてのサーバー。

  • サーバー・グループに追加される任意のサーバーの名前に接頭辞が割り当てられるかどうか。たとえば、接頭辞xyzがサーバー・グループに定義されており、server2という名前のサーバーをそのグループに追加する場合、サーバー名はxyz_server2として登録されます。

表1-4は、拡張ドメイン・プロファイルとコンパクト・ドメイン・プロファイルの違いを示しています。

表1-4 拡張ドメインとコンパクト・ドメインの違い

拡張ドメイン コンパクト・ドメイン

クラスタ化ドメインとも呼ばれます。

単一インスタンス・ドメインとも呼ばれます。

管理サーバーを含みます。ドメイン内に、Fusion Middleware製品の管理対象サーバーを含みます。Fusion Middleware管理対象サーバーはクラスタに割当て可能です。

管理サーバーのみを含み、ドメイン内のFusion Middleware製品の管理対象サーバーまたはクラスタは含みません。このドメイン・タイプは主に開発目的で使用されます。

1つの管理サーバー・サーバー・グループと、1つ以上の管理対象サーバー・サーバー・グループを定義します。

管理対象サーバー・サーバー・グループを定義します。管理対象サーバー・サーバー・グループはconfig-groups.xmlで定義可能ですが、使用されません。

config-groups.xmlで定義されるすべてのアプリケーション・サービス・グループがターゲット指定されます。一部のアプリケーション・サービス・グループは管理サーバー・サーバー・グループにターゲット指定され、その他のアプリケーション・サービス・グループは管理対象サーバー・サーバー・グループにターゲット指定されます。

定義済アプリケーション・サービス・グループの全部または一部が管理サーバー・サーバー・グループにターゲット指定されます。一部のアプリケーション・サービス・グループはターゲット指定できません。

新規ドメインに対してドメイン・プロファイルを選択するには、次の2つの方法があります。

  • FMW構成ウィザードを使用してドメインを作成する場合、「構成タイプ」画面で、使用するプロファイルを選択します。『構成ウィザードによるWebLogicドメインの作成』構成タイプに関する項を参照してください。

  • WLSTを使用してドメインを作成する場合、createDomainまたはreadTemplateコマンドで使用するプロファイルを指定します。WebLogic Server WLSTコマンド・リファレンス「createDomain」または「readTemplate」を参照してください。デフォルトのプロファイル・タイプは拡張です。

アプリケーション・サービス・グループ、サーバー・グループおよびアプリケーション・サービス・マッピング

Fusion Middlewareテンプレートのconfig-groups.xmlファイルで、アプリケーション・サービス・グループ、サーバー・グループおよびアプリケーション・サービス・マッピングを定義できます。これにより、アプリケーションとサービスを、ドメイン内の適切なアプリケーション・サーバーに自動的に割り当てることができます。

  • アプリケーション・サービス・グループ: アプリケーション・サービス・グループは<app-svc-groups>要素内で定義されます。各<group>要素は、一意のアプリケーション・サービス・グループを定義します。これには、アプリケーション・デプロイメント、ワーク・マネージャ、JMSシステム・リソース、ライブラリ、製品ドメイン内で必要となるその他のアイテムなど、ドメインに含める様々なアプリケーションおよびサービスが含まれます。一部のアプリケーション・サービス・グループはコンパクト・ドメインで使用できませんが、アプリケーション・サービス・グループは各ドメイン・プロファイルに対して常に同じになります。アプリケーション・サービス・グループは、複数のサーバー・グループにマップできます。

  • サーバー・グループ: 名前付きサーバー・グループです。通常、ドメインのconfig-groups.xmlファイルには、少なくとも1つの管理サーバー・グループと管理対象サーバー・グループがそれぞれ定義されています。これらは、<domain-topology>要素内の<server-group>要素により定義されます。コンパクト・プロファイルで管理サーバー・サーバー・グループと管理対象サーバー・サーバー・グループの両方を定義できますが、コンパクト・ドメインで使用されるのは管理サーバー・サーバー・グループのみであることに注意してください。

    サーバー・グループをユーザーが展開可能なグループとして定義している場合、管理対象サーバーをサーバー・グループに追加できます。ユーザーが展開可能なサーバーは、Fusion Middleware構成ウィザードの「管理対象サーバー」画面の「サーバー・グループ」ドロップダウン・リストにリストされています。WLSTでは、listServerGroupsコマンドを使用して、どのサーバー・グループをユーザーが展開可能かどうかを判別できます。

  • アプリケーション・サービス・マッピング: アプリケーション・サービス・マッピングは、各定義済サーバー・グループに対してどのアプリケーション・サービス・グループがマップされるかを定義します。これらのマッピングはドメイン・プロファイルによって異なります。これらは、config-groups.xml<domain-topology>要素内の<app-svc-group-mapping>要素で定義されます。

サーバー・グループは、定義済アプリケーション・サービス・グループを各定義済サーバー・グループにマップすることにより、Fusion Middlewareアプリケーションおよびサービスを1つ以上のサーバーにターゲット指定します。必要に応じて、特定のアプリケーション・サービス・グループを複数のサーバー・グループにマップできます。特定のサーバー・グループにマップされた任意のアプリケーション・サービスは、そのグループに割り当てられたすべてのサーバーに自動的にターゲット指定されます。

たとえば、config-groups.xmlで次のアイテムが定義されているとします。

  • サーバー・グループADMIN-SVR(管理サーバーのサーバー・グループ)

  • サーバー・グループMGD-SVRS(管理対象サーバーのサーバー・グループ)

  • アプリケーション・サービス・グループADMIN-APPS(管理サーバー上でのみ実行されるアプリケーション・サービスを定義)

  • アプリケーション・サービス・グループMAIN-APPS(管理対象サーバー上で実行されるアプリケーションを定義)

  • アプリケーション・サービス・グループMAIN-LIBS(管理サーバーと管理対象サーバーにターゲット指定される必要のあるライブラリを定義)

  • MAIN-APPSをMGD-SRVSサーバー・グループにマップするアプリケーション・サービス・マッピング

  • ADMIN-APPSをADMIN-SVRサーバー・グループにマップするアプリケーション・サービス・マッピング

  • MAIN-LIBSをADMIN-SVRサーバー・グループにマップするアプリケーション・サービス・マッピング

  • MAIN-LIBSをMGD-SVRSサーバー・グループにマップするアプリケーション・サービス・マッピング

この例では、ADMIN-APPSで定義されるすべてのアプリケーションとその他のリソースは、管理サーバーにターゲット指定されます。MAIN-APPSで定義されるすべてのアプリケーションとその他のリソースは、すべての管理対象サーバーにターゲット指定されます。MAIN-LIBSで定義されるすべてのライブラリは、管理サーバーとすべての管理対象サーバーにターゲット指定されます。

サーバー・グループでのサーバーの追加または削除

WLST setServerGroups()コマンドを使用して、ユーザーが展開可能な任意のサーバー・グループ、またはユーザーが作成した任意のサーバー・グループにサーバーを追加できます。任意のサーバー・グループからサーバーを削除することもできます。次に、このコマンドの使用例を示します。

# add a server to a server group
setServerGroups('my_server4', 'XYZ-MAN-SRVS', '180000')

# remove a server from a server group by setting the group to null
serverGroup = []
setServerGroups('my_server3', serverGroup

起動グループ

テンプレート内のstartup-plan.xmlファイルは、様々な起動パラメータがドメイン内の異なるサーバーまたはサーバー・グループ用に定義されるようにする、起動グループを定義します。ドメイン・テンプレートには、次のものが含まれます。

  • グローバル起動定義。これにより、ドメイン内のすべてのサーバーに対するドメイン全体の起動設定が定義されます。

  • 1つ以上のサーバー起動グループ。これらはサーバー・グループに関連付けられます。存在する場合、これらのサーバー起動グループは、サーバー・グループに割り当てられたすべてのサーバーに対する起動設定を定義します。サーバー起動グループがグローバル・レベルですでに定義されている設定を定義する場合、サーバー・レベルの定義が優先されます。

拡張ドメイン・プロファイルとコンパクト・ドメイン・プロファイルに対して、異なる起動設定を定義できます。また、ドメインを作成する場合、ドメインに複数のテンプレートを適用できます。そのため、すべての可能な起動設定と起動グループは、ドメインの/init-infoディレクトリ内の単一のstartup-plan.xmlファイルに結合されます。サーバーを起動する際に、このファイルを参照して次のことが特定されます。

  • サーバーの起動グループ(存在する場合)。サーバーの割当て先の起動グループとサーバー・グループに基づきます。

  • サーバーのサーバー・グループの割当て先の起動グループに基づく、サーバー用の起動設定。

サーバーがサーバー・グループに割り当てられていない場合は、startup-plan.xmlで定義されているグローバル設定を使用して起動されます。

表1-3startup-plan.xmlに、このファイルで構成可能な起動パラメータを示します。

サーバーの起動構成の管理

ドメインのマージされたstartup-plan.xmlファイルには、そのドメイン内のサーバーの起動パラメータが定義されていますが、オフラインのWLSTを使用して、次の操作を実行する必要が生じる場合があります。

  • 独自の起動グループの作成による、ドメイン内の1つ以上のサーバーに対する一意の起動パラメータの定義。

  • サーバー・グループの起動パラメータの調整。

  • 起動グループでのサーバーの追加または削除。サーバーの削除は、ユーザーが変更不可能なサーバー・グループでも実行可能ですが、サーバーの追加は、ユーザーが変更可能なサーバー・グループか、自分で作成したサーバー・グループでのみ行うことができます。

ドメインのstartup-plan.xmlファイルは、起動構成に加えた変更で自動的に更新されます。

起動グループの作成および変更

ドメイン内の既存のサーバー・グループから、新しい起動グループを作成できます。新しい起動グループは、起動グループの作成に使用したサーバー・グループから起動パラメータのみを継承します。次に、新しい起動グループの起動パラメータ設定を変更して、それに個々のサーバーを割り当てることができます。

ドメイン内のサーバー・グループを特定するには、次の2つの方法があります。

  • WLSTコマンドlistServerGroups()を入力します。このコマンドはユーザーが展開可能なサーバー・グループのみを表示します。

  • ドメインのinit-info/config-groups.xmlファイルを開きます。サーバー・グループ名は、このファイル内の<server group>要素のname属性により定義されます。

次のWLSTの例は、サーバー・グループJRF-MAN-SVRに基づいてXYZ-MGD-SVRSという名前の新しい起動グループを作成し、サーバーをそのグループに追加し、新しいグループの設定を表示および調整する方法を示しています。

例1-1 起動グループの作成および変更

# Create a new startup group called XYZ-MGD-SVRS based on the startup settings 
# for server group JRF-MAN-SVR
addStartupGroup('XYZ-MGD-SRVS', 'JRF-MAN-SVR')

# Set the startup group for my_server1 to XYZ-MGD-SRVS
setStartupGroup('my_server1', 'XYZ-MGD-SRVS')
# select the XYZ-MGD-SRVS startup group for modification
cd('/StartupGroupConfig/XYZ-MGD-SRVS')

# display the setting for MaxHeapSize 
get('MaxHeapSize')
'1024'
# change the setting for MaxHeapSize
set('MaxHeapSize', '1536')

# get Java system properties for a startup group as a Python dictionary
dictionary = get('SystemProperties')

# set Java system properties for a startup group
dictionary['key.1'] = 'value.1'
dictionary['key.2'] = 'value.2'
set('SystemProperties',dictionary)

# get Java environment settings for a startup group as a Python dictionary
dictionary = get('EnvVars')

# set Java system properties for a startup group
dictionary['env.1'] = 'value.1'
dictionary['env.2'] = 'value.2'
set('EnvVars',dictionary)

ノート:

set('EnvVars',{})コマンドによって、すべてのカスタマイズがリセットされ、起動グループの環境変数が、起動グループに関連付けられたサーバー・グループから派生した設定に戻ります。