26 BI Publisherの高可用性

Enterprise Manager 13cリリース1 (13.1.0.0.0)以降では、Enterprise Managerを実行するすべてのシステム上でBI Publisherが自動的に構成されます。詳細は、「Enterprise ManagerでのBI Publisherの構成」を参照してください。

また、このリリースではBI Publisherの高可用性の完全なサポートが導入されています。この利点は次のとおりです。

任意のEnterprise Managerシステムで、常に次のいずれかの組合せを実行できます。

  • OMS (JVMDを含む)およびBI Publisher。これはデフォルトの構成です。

  • OMS (JVMDを含む)のみ

  • BI Publisherのみ

  • OMSもBI Publisherも含まない

Enterprise Managerで複数のOMSがサーバー・ロード・バランサの背面に構成されている場合、この意味は重要です。詳細は、Enterprise Managerアドバンスト・インストレーションおよび構成ガイドの「Enterprise Managerで使用するためのサーバー・ロード・バランサ」を参照してください。

ノート:

以前のバージョンのEnterprise Managerでは、BI Publisherの高可用性はサポートされません。ただし、Enterprise Manager 12cリリース4 (12.1.0.4)およびEnterprise Manager 12cリリース5 (12.1.0.5)では複数のBI Publisherサーバーの実行がサポートされていました。しかしながら、これらのリリースでは前述した信頼性やスケーラビリティのためのオプションはありませんでした。

この章の内容は次のとおりです。

ノート:

BI Publisherソフトウェアは、Enterprise Manager 12.1.0.4以上がインストールされているすべてのシステムに自動でインストールされます。この章では、このようなシステムでBI Publisherサーバーを構成するステップについて説明します。

BI Publisherの高可用性の概要

BI Publisherの構成は、Enterprise Manager 13cリリース1 (13.1.0.0.0)以降では自動的に行われます。詳細は、「Enterprise ManagerでのBI Publisherの構成」を参照してください。Enterprise Managerで使用した場合にBI Publisherの高可用性がサポートされるようになりました。

Enterprise Managerを最初にインストールすると(新規インストール時、または以前のリリースのEnterprise Managerのアップグレード時)、「最初の」BI Publisherサーバー「BIP」が構成されます。これをプライマリBI Publisherサーバーと呼びます。

BI Publisherは、すべての構成データおよびレポート定義を、オペレーティング・システムのファイルシステム・ベースのリポジトリに格納します。このボリュームは構成ボリュームと呼ばれます。

追加の共有ファイルシステムが、WebLogic関連のスケジューリング・バイナリを格納するために使用されます。このボリュームはクラスタ・ボリュームと呼ばれます。

ノート:

構成ボリュームについて適切で定期的なバックアップ戦略を定めることが重要です。これらのバックアップの間隔はBI Publisherの使用方法によって変わります。

BI Publisherの高可用性が機能するようにサポートするには、これらのファイルシステムに対する読取り/書込み権限をすべてのOMSシステムに提供する必要があります。これは、次の図に示す標準のネットワーク・ファイルシステム・テクノロジを使用して実現します。

ネットワーク・ファイルシステムの設定

この画面の詳細は、「Enterprise ManagerでのBI Publisherの構成」を参照してください。

BI Publisherの高可用性では、BI Publisherの共有記憶域ファイルシステムでも高可用性を実現する必要があります。また、構成ボリューム・システムは、標準のオペレーティング・システム・コマンドまたは業務用のバックアップ・ソリューションを使用して、定期的に(毎日または毎時などの頻度で)バックアップする必要があります。また、構成ボリュームのためにRAID (Redundant Array of Inexpensive Drives)ストレージ・デバイスなどの高可用性ディスク・ソリューションを使用することを強くお薦めします。少なくともRAID 1 (冗長性)を使用してください。その他のRAIDレベル(RAID5、RAID0+1、RAID 10など)も使用できます。冗長性ではなく速度を目的としているため、RAID 0は使用できません。RAID1そのものとバックアップ・ソリューションを混同しないでください。RAIDではディスク・ドライブ障害や他のファイルシステムの破損に対する保護が提供されますが、定期的なバックアップは必要です。構成ボリューム上に保存されているファイルを損失すると、すべてのBI Publisherサーバー(プライマリとセカンダリの両方)が機能しなくなります。さらに、カスタマイズ・レポート定義もすべて失われます。

ノート:

行っているBI Publisherレポート開発のレベルに合った頻度で構成ボリュームをバックアップすることが非常に重要です。定期的にレポートの作成や編集を行っている場合は、このようなバックアップを作成して開発作業の成果が失われないようにする必要があります。

共有記憶域ボリューム(構成ボリュームクラスタ・ボリューム)はすべてのEnterprise Managerシステムにマウントする必要があります。マウントには標準のオペレーティング・システム・コマンドを使用できます(NFSなど)。Enterprise Managerはオペレーティング・システムの起動時に自動的に起動するように構成されるため、これらの共有記憶域ボリュームがマウントされるように特定のオペレーティング・システム構成ファイルを編集する必要があります。たとえば、Linuxではファイル/etc/fstabがこの目的に使用されます。

ノート:

BI Publisher共有記憶域を構成するための領域要件は、レポート・カタログとそれに関連する管理情報の格納に必要な領域の容量に応じて異なります。

インストール時、BI Publisherリポジトリは約400MBの記憶域を使用します。最初は、予測されるEnterprise Managerレポート要件を満たすのに十分な領域を用意するために、BI Publisher共有記憶域で10 GBを利用可能にする必要があります。その後、追加のEnterprise Managerプラグインをインストールし、より多くのレポートを作成するにつれて、必要な領域は増大します。そのため、この記憶域は、将来容易に拡張できるようにしてください。

Enterprise Managerがインストールされると、BI Publisher共有記憶域が自動的に構成されます。

ただし、Enterprise Managerのインストール時に、前に示したインストーラ画面の「Oracle BI Publisherの共有場所の構成」セクションを選択しないことも可能です。この場合は、追加のEnterprise Managerシステムが追加されるか前のリリースからアップグレードされる前に、次のコマンドを実行する必要があります。

emctl config oms -bip_shared_storage -config_volume <vol1> -cluster_volume <vol2>

追加OMSシステムでセカンダリBI Publisherサーバーを構成するには、標準のOracle Management Serviceの追加プロビジョニング・ジョブを使用します。追加のOMSシステムはセカンダリBI Publisherサーバーを含むように自動的に構成されます。

ノート:

「Oracle Management Serviceの追加」プロビジョニング・ジョブが使用できるのは、Enterprise Managerのインストール時に自動的に、または前述のコマンドを使用して手動で、BI Publisherが構成されてからです。

BI Publisherの共有記憶域の場所の特定

BI Publisherの共有記憶域の場所は、Enterprise Manager OMSプロパティとして格納されています。次のemctlコマンドを使用して、共有記憶域の場所を問い合せることができます。

emctl get property -name
oracle.sysman.core.eml.ip.bip.SharedStorageConfigVolume
 
emctl get property -name
oracle.sysman.core.eml.ip.bip.SharedStorageClusterVolume

例:

-bash-3.2$ emctl get property -name
oracle.sysman.core.eml.ip.bip.SharedStorageConfigVolume
 
Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13c Release 4
Copyright (c) 1996, 2019 Oracle Corporation.  All rights reserved.
SYSMAN password:
Value for property oracle.sysman.core.eml.ip.bip.SharedStorageConfigVolume at
Global level is /oracle/BIP/config

共有記憶域デバイスを使用するBI Publisherの手動構成

ノート:

UNIXのNetwork File System (NFS)をBI Publisher共有記憶域ボリュームに使用する場合、NFSオートマウンタによって管理されるNFSボリュームを使用しないでください(NFSオートマウンタは通常、記憶域を動的にマウントするため)。BI PublisherまたはWebLogic (あるいは両方)で問題が発生する可能性があるためです。かわりに、固定のマウント・ポイントを使用するNFSマウントを使用します。たとえば、/oracle/em/BIPCluster/ /oracle/em/BIPConfigです。ファイルレベルの不一致が発生しないように、この共有記憶域はhard NFSオプションを使用してマウントする必要があります。

前述の概要説明のとおり、複数のBI Publisherサーバーをサポートするには、BI Publisher共有記憶域を構成する必要があります。この処理はインストール時にEnterprise Managerインストーラによって行うことを強くお薦めします。

ただし、後からこの共有記憶域を構成することもできます。その場合には次のコマンドを使用します。

emctl config oms -bip_shared_storage -config_volume <vol1> -cluster_volume <vol2>

これらのボリューム(前の項で示したvol1およびvol2など)の記憶域の場所は、いつでも使用できるように保持してください。これらのファイルを削除しないでください。

このコマンドは、WebLogic管理サーバーのパスワードと、リポジトリ・ユーザー(SYSMAN)のパスワードを求めるプロンプトを表示します。

コマンドは次のステップを実行します。

  1. 指定された資格証明を検証します。
  2. いくつかの前提条件テストを実行します。これには次のものがあります。
    • 2つのボリュームが、以前に構成した共有ストレージ・ボリュームと同一であってはなりません(存在する場合)。

    • 2つのボリュームが個別のものである必要があります。

    • 2つのボリュームに対応するファイルシステムのマウント・ポイントが存在する必要があります。

    • 2つのボリュームは完全に空である必要があります。

    • 2つのボリュームが書込み可能である必要があります。

  3. ローカル・システム上のBI Publisherサーバー(BIPという名前のBI Publisherサーバー)が停止されます。
  4. 既存のBI Publisherファイルシステムベースのリポジトリ(BI Publisherの構成時にインストールされたもの)が、構成ボリューム(-config_volume)にコピーされます。
  5. BIPという名前のプライマリBI Publisherサーバーが再構成されて、クラスタ・ボリューム(-cluster_volume)に格納されたWebLogic JMSキューおよびWebLogic永続ストア(BI Publisherのスケジューラによって使用される)を使用するようになります。
  6. BI Publisherのスケジューラが再構成されて、複数のBI Publisherサーバーをサポートし、前述の新しい場所を使用できるようになります。
  7. 2つのボリュームの値は、Enteprise Managerリポジトリ・データベースにOMSプロパティとして格納されます。
  8. プライマリBI Publisherが構成されて、新しい構成ボリュームを指すようになります。
  9. BI Publisherが起動されます。
  10. 全体的なステータスが表示されます。

次の例は、emctl config oms -bip_shared_storageコマンドを実行すると生成される出力を示しています。

$ emctl config oms -bip_shared_storage -config_volume /BIP_STORAGE/config -cluster_volume /BIP_STORAGE/cluster                                
Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13c Release 4
Copyright (c) 1996, 2019 Oracle Corporation.  All rights reserved.
Enter Admin User's Password :
Enter Enterprise Manager Root (SYSMAN) Password :
Stopping BI Publisher Server...
BI Publisher Server Successfully Stopped
BI Publisher Server is Down
Copying The BI Publisher repository from the location '...
...gc_inst/user_projects/domains/GCDomain/config/bipublisher/repository' 
to the location '/BIP_STORAGE/config/bipublisher/repository'. 
This can take some time.  Do not interrupt this command while it is running.
Copied BI Publisher repository to the location '/BIP_STORAGE/config/bipublisher/repository'
Configuring BI Publisher server named 'BIP' for use in a High Availability environment. This operation can take some time. Do not interrupt this command while it is running.
Updating BI Publisher Scheduler configuration ...
Updating BI Publisher shared storage properties ...
The BI Publisher properties have been updated.
The BI Publisher storage for configuration data is in the location '/BIP_STORAGE/config'
The BI Publisher storage for cluster data is '/BIP_STORAGE/cluster'
BI Publisher has been configured to point to the BI Publisher repository in the location '/BIP_STORAGE/config'
Starting BI Publisher Server ...
BI Publisher Server Successfully Started
BI Publisher Server is Up
BI Publisher storage has been configured for the BI Publisher server named 'BIP' running at the URL: https://em.example.com:9702/xmlpserver
Overall result of operations: SUCCESS

セカンダリBI Publisherサーバーの追加

前述したように、追加のBI Publisherサーバーを構成する方法は2つあります。使用される方法は、BI Publisher共有記憶域がいつ構成されるかによって異なります。

パスA

Enterprise Managerのインストール

  1. プライマリBI Publisherサーバーが自動的に構成されます。オプションで無効にします。

  2. BI Publisher共有記憶域が自動的に構成されます。

  3. 「OMSの追加」プロビジョニング・ジョブを使用してOMSを追加します。

    セカンダリBI Publisherサーバーが追加のOMSシステムとともに自動的に構成されます。

パスB

Enterprise Managerのインストール

  1. プライマリBI Publisherサーバーが自動的に構成されます。オプションで無効にします。ただし、BI Publisher共有記憶域の自動構成は無効になります。
  2. emctl config oms -bip_shared_storageを使用して、BI Publisherの共有記憶域を構成します。
  3. 「OMSの追加」プロビジョニング・ジョブを使用してOMSを追加します。

    セカンダリBI Publisherサーバーが追加のOMSシステムとともに自動的に構成されます。

これら2つの手順から、BI Publisherを含むセカンダリOMSシステムを追加するために必要な前提条件がわかります。

「OMSの追加」プロビジョニング・ジョブを使用したセカンダリBI Publisherサーバーの自動構成

Enterprise Managerの高可用性インストールの構築を計画している場合、追加したすべての追加OMSシステムに、セカンダリBI Publisherが自動的に構成されます。

追加OMSシステムの追加とセカンダリBI Publisherサーバーの自動構成

BI Publisher共有記憶域が自動または手動で構成されると、「OMSの追加」プロビジョニング・ジョブによって追加BI Publisherサーバーも構成されます。ここで必要な操作は、追加のOMSシステムについて、使用するHTTPおよびHTTPSポートを入力することのみです。「OMSの追加」プロビジョニング・ジョブが、前提条件のステップを実行して、BI Publisherの共有記憶域が構成されていることを確認します。また、この共有記憶域が正しくマウントされており、最初のOMSシステムでも、追加のOMS (およびBI Publisher)が構成されているシステムでも使用可能であることも確認されます。

追加OMSシステムが正しく動作することの確認

emctl status omsコマンドを使用すると、追加OMSの構成が成功したことを確認できます。

$ emctl status oms
Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13c Release 4  
Copyright (c) 1996, 2019 Oracle Corporation.  All rights reserved.
WebTier is Up
Oracle Management Server is Up
JVMD Engine is Up

セカンダリBI Publisherサーバーの詳細の確認

セカンダリBI Publisherサーバーの情報を取得するには、次のコマンドを実行します。

emctl status oms -details

セカンダリBI Publisherサーバーのサーバー名はBIPxで、xはOMSのサーバー番号と一致します(たとえば、EMGC_OMS2 : BIP2、EMGC_OMS3 : BIP3)。EMGC_OMS1が実行しているプライマリBI Publisherサーバーの名前は必ず「BIP」です(数値の接尾辞はありません)。

$ emctl status oms -details
Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13c Release 4  
Copyright (c) 1996, 2019 Oracle Corporation.  All rights reserved.
Enter Enterprise Manager Root (SYSMAN) Password : 
Console Server Host        : emoms2.example.com
HTTP Console Port          : 7788
HTTPS Console Port         : 7799
HTTP Upload Port           : 4889
HTTPS Upload Port          : 4900
EM Instance Home           : /oracle/gc_inst/em/EMGC_OMS2
OMS Log Directory Location : /oracle/gc_inst/em/EMGC_OMS2/sysman/log
SLB or virtual hostname: slb.example.com
HTTPS SLB Upload Port : 4900
HTTPS SLB Console Port : 443
Agent Upload is unlocked.
OMS Console is unlocked.
Active CA ID: 1
Console URL: https://slb.example.com:443/em
Upload URL: https://slb.example.com:4900/empbs/upload
 
WLS Domain Information
Domain Name            : GCDomain
Admin Server Host      : emoms1.example.com
Admin Server HTTPS Port: 7101
 
Oracle Management Server Information
Managed Server Instance Name: EMGC_OMS2
Oracle Management Server Instance Host: emoms2.example.com
WebTier is Up
Oracle Management Server is Up
JVMD Engine is Up
 
BI Publisher Server Information
BI Publisher Managed Server Name: BIP2
BI Publisher Server is Up
 
BI Publisher HTTP Managed Server Port   : 9701
BI Publisher HTTPS Managed Server Port  : 9803
BI Publisher HTTP OHS Port              : 9788
BI Publisher HTTPS OHS Port             : 9851
BI Publisher HTTPS SLB Port             : 5443
BI Publisher HTTP SLB Port              : 8080
BI Publisher is unlocked.
BI Publisher Server named 'BIP2' running at URL: https://slb.example.com:5443/xmlpserver
BI Publisher Server Logs: /oracle/gc_inst/user_projects/domains/GCDomain/servers/BIP2/logs/
BI Publisher Log        : /oracle/gc_inst/user_projects/domains/GCDomain/servers/BIP2/logs/bipublisher/bipublisher.log