通貨アプリケーションの構造

通貨換算アプリケーションでは、メイン・データベース(キューブ)は2つ以上のスライスに分けられます。1つのスライスがローカル・データの入力を処理し、別のスライスが共通通貨に換算された入力データのコピーを保持します。

Essbaseでは、通貨換算に必要な為替レートが別個の通貨キューブに保持されます。必要なタグを割り当てた後にEssbaseによってメイン・キューブから自動的に生成される通貨キューブ・アウトラインは、通常、指定した換算率をメイン・キューブのセクションにマップします。生成された通貨キューブは、他のEssbaseキューブと同様に編集できます。

メイン・キューブのMarketディメンションは、通貨キューブの通貨名にマップされます。メイン・キューブのMeasuresディメンションは、通貨キューブの通貨カテゴリにマップされます。メイン・キューブのScenarioディメンションは、通貨キューブの通貨タイプにマップされます。

メイン・キューブ

Essbaseで通貨キューブ・アウトラインが自動的に生成されるようにするには、メイン・アウトラインのディメンションとメンバーを変更します。サンプル通貨アプリケーションでは、メイン・キューブはInterntlです。

メイン・キューブ・アウトラインには、3からn個のディメンションを含めることができます。メイン・キューブには、少なくとも次のディメンションが含まれる必要があります。

  • 時間としてタグ付けされたディメンション。ディメンションを時間としてタグ付けすると、メイン・キューブの時間ディメンションと同じディメンションが通貨キューブで生成されます。Sample_Currency.Interntlキューブの時間ディメンションはYearです。

  • 勘定科目としてタグ付けされたディメンション。ディメンションを勘定科目としてタグ付けし、そのメンバーに通貨カテゴリを割り当てると、通貨キューブに、個別の通貨カテゴリごとのメンバーを含むディメンションが作成されます。カテゴリの割当てによって、様々な勘定科目またはメジャーへの様々な為替レートの適用が可能になります。Sample_Currency.Interntlキューブの勘定科目ディメンションはMeasuresです。

    メンバーのそれぞれの子孫はその祖先の通貨カテゴリ・タグを継承します。メンバーおよびメンバーのサブ分岐には、独自のカテゴリを指定することもできます。

    たとえば、利益と損失(P&L)勘定科目では、貸借対照表の勘定科目で使用されている為替レートとは異なるレートが使用されている場合があります。さらに、勘定科目によっては、換算が不要な場合もあります。たとえば、Sample_Currency.Interntlキューブでは、Margin%やProfit%などのメンバーは換算不要です。換算不要のメンバーを換算なしとしてタグ付けします。「換算しない」タグは継承されません。

  • 国としてタグ付けされた市場関連のディメンション。ディメンションを国としてタグ付けし、各国に通貨名を割り当てると、通貨キューブに各通貨のメンバーが作成されます。Sample_Currency.InterntlキューブのMarketディメンションには、国としてタグ付けされています。すべての現地通貨を会社の共通通貨であるUSDに換算する必要があるため、このディメンションの通貨名はUSD (米ドル)です。

    複数のメンバーに同じ通貨名を指定できるため、通貨名の数は、通常、ディメンション内のメンバーの合計数未満になります。次に示すように、Sample_Currency.Interntlキューブでは、Marketディメンションの15メンバーに対して通貨名を6つのみ使用しています。メンバー・ヨーロッパの各子には別々の通貨が使用されているため、個別の通貨名を割り当てる必要があります。しかし、米国ディメンションとその4つの地域メンバーでは同じ通貨が使用されています。これは、カナダ・メンバーとその3つの市区町村メンバーの場合も同様です。指定したメンバーの子が通貨を共有している場合は、親メンバーにのみ通貨名を定義する必要があります。

ディメンションとメンバー 通貨名

市場 - 国

米国

East

West

South

Central

USD (米ドル)

カナダ

トロント

バンクーバー

モントリオール

CND (カナダ・ドル)

ヨーロッパ

イギリス

ドイツ

スイス

スウェーデン

GBP (英国ポンド)

EUR (ユーロ)

CHF (スイス・フラン)

SEK (スウェーデン・クローナ)

通貨換算のメイン・キューブ・アウトラインを準備するときに、現地通貨データを保持するキューブのスライスと換算後のデータを保持するキューブのスライスをEssbaseに通知するオプションの通貨パーティションを作成できます。通貨パーティションとしてタグ付けするディメンションには、現地通貨の値と換算後の値の両方のメンバーが含まれます。現地通貨データは、通貨換算計算スクリプトを使用して、共通の通貨データに換算されます。Sample.Interntlキューブでは、Scenarioディメンションが通貨パーティション・ディメンションです。

通貨キューブ

メイン・キューブ・アウトラインのメンバーに通貨タグを割り当てると、Essbaseで通貨キューブが自動的に生成されます。Sample_Currencyアプリケーションでは、通貨キューブはXchgrateです。

通貨キューブでは、レベル0のメンバー(非動的計算メンバー)をすべて保管する必要があります。つまり、通貨キューブの生成元のキューブにもレベル0のメンバー(非動的計算メンバー)がすべて保管されている必要があります。

通貨キューブは、次の3つのディメンション(およびオプションの4番目のディメンション)で必ず構成されます。

  • 時間としてタグ付けされたディメンション。一般に、メイン・キューブ内の時間としてタグ付けされたディメンションと同じです。このため、通貨キューブでは、長期にわたる通貨の変動を追跡し、メイン・キューブの様々な時間スライスを正確に変換できます。Sample.Xchgrateキューブでは、時間としてタグ付けされたディメンションはYearです。

    メイン・キューブの時間ディメンションの各メンバーは、通貨キューブで定義される必要があります。メイン・キューブの期間別の値は、通常、通貨キューブのそれぞれの期間の為替レートに換算されます(ただし、データ値は任意の期間の為替レートで換算できます)。

  • 国としてタグ付けされたディメンション。メイン・キューブで定義された市場(または国)に関連する通貨の名前が含まれます。メイン・キューブの各通貨名は、通貨キューブにも存在する必要があります。通貨名によって、換算時の国と為替レートのマッピングが定義されます。

    Sample_Currency.Xchgrateキューブでは、国ディメンションはCurNameです。次の表は、CurNameディメンションの通貨名をリストしています。

    ディメンションとメンバー 別名

    CurName - 国

    USD

    CND

    GBP

    EUR

    CHF

    SEK

    米ドル

    カナダ・ドル

    英国ポンド

    ユーロ

    スイス・フラン

    スウェーデン・クローナ

  • 勘定科目としてタグ付けされたディメンション。メイン・キューブ内の勘定科目としてタグ付けされたディメンションのメンバーに様々なレートを適用できます。メイン・キューブの勘定科目ディメンション用に定義されたカテゴリを使用して、通貨キューブの勘定科目ディメンションのメンバーが生成されます。たとえば、総利益(Gross Profit)と純利益(Net Profit)の換算には特定のカテゴリのレートを使用し、その他の勘定科目の換算には他のレートを使用する必要が生じることがあります。

    Sample_Currency.Xchgrateキューブでは、勘定科目としてタグ付けされたディメンションはCurCategoryで、勘定科目カテゴリにはP&L (利益と損失)やB/S (貸借対照表)などがあります。

  • 通貨キューブには、通常、通貨タイプ・ディメンションが含まれ、異なる通貨換算シナリオを利用できます。通常、アプリケーションには様々なシナリオ(実績、予算、予測など)用に様々な為替レートがあります。シナリオ間でデータ換算を行うには、使用するレートのタイプを選択します。

    通貨タイプ・ディメンションは、通貨アウトラインを作成したときに作成され、メイン・キューブに直接マップされません。このため、このディメンションのメンバー名はメイン・キューブのメンバー名と一致させる必要がありません。

    Sample_Currency.Xchgrateキューブでは、通貨タイプ・ディメンションはCurTypeです。CurTypeには、実績および予算のシナリオが含まれます。